メディアとつきあうツール  更新:2010-07-23
すべてを疑え!! MAMO's Site(テレビ放送や地上デジタル・BSデジタル・CSデジタルなど)/サイトのタイトル
<ジャーナリスト坂本 衛のサイト>

放送デジタル化
(地上デジタル放送、BSデジタル放送、CSデジタル放送)

ここでは、「BSデジタル放送」や「CSデジタル放送」、さらに2003年12月から東名阪の大都市圏でスタートした「地上デジタル放送」(地上波デジタル)についての論考や発言を掲載しています。

≪このページの目次≫

デジタル放送に関する文献を調べる研究者・学生のみなさんへ

 放送デジタル化について、あるいは地上デジタル放送、BSデジタル放送、CSデジタル放送などに関する文献を探して、このページにたどりつかれた方もいらっしゃるかと思いますので、ちょっとご注意。

 放送関係の雑誌記事を調べるには、これまでNHK放送文化研究所(文研、NHK放文研とも)サイトの「放送関係雑誌記事索引」がなかなか便利でした。しかし、サイトのリニューアルにともなって、NHK放送文化研究所の「放送関係雑誌記事索引」では、NHKに都合の悪い(らしい)記事について、論文名の詳細を省略する、著者名を省略するなど、極めて程度の低い情報操作が横行するようになりました。(笑)

 こんなものが「放送文化研究」の名に(もちろん「学問」の名にも)値しないことは明らかで、そのような「研究所」であることを天下に示すためこのまま省略し続けるべきだ(まともなデジタル放送文献を探すにはかえって役立つし)と思いますが、デジタル放送に関する文献を調べる研究者・学生のみなさんが、こんな哀れな記事索引だけに従って文献を集めたり、集めた資料に基づいて論文を書くと、大恥をかきますから、気をつけましょう。

 「『放送研究と調査』にも掲載している、放送関係の雑誌索引を掲載しています。参考資料のリサーチなどにご利用ください。」などという誘い言葉に引っかからないよう、一言ご忠告まで。

▼恣意的に論文名や著者名を省略するNHK文研サイトの「放送関係雑誌記事索引」。
3pの「NHK会長記事」が29pの「GALAC総力特集」の倍の面積を占めるのも、楽しい。
刊行年月の誤りが、単なる誤植でなくてイラガラセならば、これまた愉快な話である。

NHK放送文化研究所サイト「放送関係雑誌記事索引」の一部

▼たとえば、このような論文名・著者名だと省略される、のかもしれない

WEB放送批評サイト「GALACバックナンバー」の一部

放送デジタル化ページのご案内

 目次に掲げた放送デジタル化やデジタル放送についての文章のタイトルは、発表時のものであるため、内容をつかみにくいかもしれません。そこで読者のニーズにしたがって簡単なガイダンスを記しておきます。参考にしていただければ幸いです。

◆「デジタル」という言葉について知りたい方は
→あと8年で、テレビが粗大ゴミ? 脚注の「デジタル信号」を参照。
→放送リンク集「テレビ関係ハード」 でも参考になるサイトを紹介しています。
◆デジタル放送(放送デジタル化)全般について知りたい方は
→絶対破れない―デジタルの「掟」
とりわけBSデジタル放送と地上デジタル放送に共通する(多チャンネル化を目指すCSデジタルではあまり顕在化していない)「デジタル」なる放送方式についての「幻想」ともいうべき、事実や原理を踏まえない誤解や、的はずれで過剰な期待を指摘しています。総務省や家電メーカーや放送業界にとってのデジタルではなく視聴者にとってのデジタルを、伝送技術におけるデジタルではなく番組ソフトにおけるデジタルの意味を考えます。
→ぎゃらく式放送未来図
地上、BS、CSデジタル放送や地上放送の携帯受信、モバイル放送など、2011年前後に実現しているとされるデジタル放送を俯瞰《ふかん》しています。中でも地上デジタル放送の普及については、その問題点を指摘し、語られるバラ色の将来像に対して灰色の将来像をも提示します。
→テレビ論の「テレビの原理と放送局」は、テレビの原理から説き起こしてデジタル放送に触れていますので、テレビメディアの中でのデジタル放送の位置づけを見るには参考になるかもしれません。
◆地上デジタル放送について知りたい方は
→2011年 地上アナログ放送を停止できない10の理由
現「国策」によれば、2011年7月24日までに現在の地上アナログ放送(アナログ地上波)を停止・終了し、地上デジタル放送(デジタル地上波)に完全移行する予定です。しかし、このスケジュール通りにはいかず、2011年7月までに現行アナログ放送を停止できないことが確実です。その理由を10項目に整理して述べます。ここまで事態を正確に見通した論考は、現時点の日本では残念ながら、これ以外に存在しません。
→2011年にアナログ放送停止は無理 地上デジタル放送は計画を見直すべき
2003年12月にスタートした地上デジタル放送(地上波デジタル)の問題点をごく短くまとめています。「日経エンタテインメント!2004年5月号の「OPINION」欄に掲載。
→地上デジタル放送 現行計画「すでに破綻」の決定的な理由10
2003年12月にスタートした地上デジタル放送(地上波デジタル)の問題点を10項目に整理のうえ指摘しています。執筆は2003年8月。筆者は地上放送をデジタル化する現行計画をやめよといっているのではなく、放送がデジタル化することは当然だが、現行の地上放送デジタル化計画は欠陥が多すぎてうまくいかないから修正すべきだといっています。念のため。
→【Q&A】ここがわからん?? 教えて!! 地上デジタル放送
地上デジタル放送のメリットは何か、地上デジタル放送をを受信するにはどんな機器が必要かといったQ&Aはいくらでもある他サイトにまかせ、地上デジタルでどんな放送が流れるのか、地上デジタルを共同受信する問題点は何かなど、いくつかにポイントをしぼって解説しています。
→地上デジタル放送【政策提言】日本国はこの修正提言を採用する以外に道はない
すでに始まっている地上デジタル放送計画にただ反対するだけでは無責任な話です。全国で地上デジタル放送を開始する時期や地上アナログ放送停止のスケジュールの見直し、現行計画が無視している検討すべき問題点などについて、修正計画を具体的に提言します。放送業界の中枢で地上放送のデジタル化に関わる専門家の意見を踏まえた提言であり、3〜4年のうちには具体的に検討せざるをえない見通しです。
→あと8年で、テレビが粗大ゴミ?
地上デジタル放送 現行計画「すでに破綻」の原稿と大意はそう変わりませんが、10年後の現行地上放送停止を決めた「電波法改正」、「東京タワーの半径1キロ圏」の地図、「デジタル信号」とは?、「地上波デジタル化の行動計画」の詳細、「小さな高精細度テレビ」とはなど、地上デジタル放送に関する詳細な脚注をつけています。ただし一部工事中です。
→テレビ放送デジタル化は失敗する
「規制緩和」「自由化」という観点から放送デジタル化行政を振り返り、BSデジタルや地上デジタル放送計画のかかえる問題点を指摘しています。CSデジタルの多チャンネルではテレビの世界は大きく広がったが、テレビをきれいで横長にしデータ放送などのオマケをつけるだけでは、テレビの世界はほとんど広がらない(だから多くの視聴者に受け入れられない)というのが、筆者の基本的な考えです。
→2011年アナログ地上波停止は不可能である
スケジュール通りには現行の地上アナログ放送を止めることができない見通しを明らかにしています。執筆は、国会が電波法改正を決めた2001年7月の直後。10年後に地上アナログ放送を止め、地上デジタル放送に全面移行すると国会が議決したことすら、ほとんどのメディアが報じていない段階です。
→地上波のデジタル化 なんのためにやるのか きちんと説明を
地上デジタル放送に関する毎日新聞のインタビューに答えた記事。記者の関心から論点を整理しています。「地上波」という言葉が使われ、まだ「地上デジタル放送」という呼び方が一般化していないころの記事。
→地上放送デジタル化に公共投資350億円はなぜだ!?
アナアナ変換が1800億円かかるというが、郵政省は1998年の1年だけで、始まってもいない地上デジタル放送の箱モノに350億円を投じています。継続取材はしませんでしたが、翌年以降も追加予算がついたはず。官僚というものは税金をどれほどいい加減に消化するかがわかるでしょう。
→放送リンク集「地上デジタル放送」「Q&A」 でも参考になるサイトを紹介しています。
◆BSデジタル放送について知りたい方は
→1000日1000万台が絶対不可能な数学的証明
放送局がBSデジタル放送の設備およびコンテンツ(番組)に投じる資金と、視聴者がBSデジタル受信機(BSハイビジョンテレビやBSデジタルチューナー)に投じる資金の、ケタ違いのギャップを指摘し、BSデジタル放送の普及見通しが甘すぎることを示します。
→BSデジタル放送 1000日1000万台が”絶望的”な10の理由
2000年12月にスタートしたBSデジタル放送の問題点を、10項目に整理のうえ指摘しています。執筆は2000年10月で、BSデジタルが始まる前ですが、その後の現状はおおむねこの原稿で指摘した通りです。普及がパッとしない現在ではどうとでもいえますが、BSデジタル放送スタート前にこのように的確な分析をした記事や学術論文を、残念ながら私はほとんど知りません。
→日本のテレビが危ない
「サイゾー」2000年09月号サイトへ。スタート前で計画段階にあったBSデジタル放送や地上デジタル放送の杜撰《ずさん》な進め方を批判しています。
→BS-4電監審答申 地上民放首脳陣の”評価”
民放がBS放送参入への道筋をどうやら確実にした1993年頃の放送業界事情をレポート。この時点ではBS-4(現行BSデジタル放送を流している衛星)がデジタル化されるとは誰も思っておらず、当時の民放は2000年段階のBSデジタル放送など、まるでヤル気がなかったことがわかります。
→放送リンク集「BS」「Q&A」でも参考になるサイトを紹介しています。
◆CSデジタル放送について知りたい方は
→どう育てる? 揺籃期CS文化
スタート3年後のCSデジタル放送を概観して、ハードではないCS放送というソフトとは何かを論じ、その可能性を考えます。独自のCS文化が花開きつつあるが、さらに実り豊かなものにするためには、CSデジタルは地上放送(放送局が同じなのだからBSデジタル放送や地上デジタル放送も入る)とできるだけ異なる行き方をすべきだという結論です。
→体験!CSデジタル多チャンネル――パーフェクTV!と暮らす
1996年10月にスタートしたCSデジタル放送について、97年2月にレポート。古くなった記述も少なくありませんが、開局直後でまだ淘汰される前のCS事情をある程度はつかめるでしょう。失敗し淘汰されていったCSチャンネルやCS番組を考えることは、CSとは何かを理解するヒントになります。
→ぎゃらく式放送未来図【CS】専門性の徹底を
CS放送の概要、受信方法、普及の現状と将来見通し、メディアとしての弱点などを解説しています。
→放送リンク集「CS」「Q&A」でも参考になるサイトを紹介しています。
◆郵政省(現総務省)が放送デジタル化をどのように進めていったかについて知りたい方は
→郵政省デジタル化のゴリ押し
1994年頃にデジタルへ大きく舵を取った郵政省放送行政についてのレポートで、以下の2つの要約です。
→日本放送行政の歩みと問題点
同上。シンポジウムの報告ですので、読みやすいでしょう。
→マルチメディア時代の放送ビジネス(郵政省の動向)
同上。「通信と放送の融合」が盛んに叫ばれていたころの、放送局むけのシンポジウムの記録です。
→郵政お得意 ビジョンなき「ハイビジョン見直し」発言のドタバタ
郵政省がアナログハイビジョンに時代遅れのレッテルを貼り、NHKを中心とする放送局や家電メーカーを震撼させた事件のレポートです。ハイビジョン受像機が60万円もした1994年の執筆。現在熱心にデジタル化を推進するテレビメーカーが、わずか10年前にアナログを否定されて猛反発していたことは、記憶しておいてよいことです。
→放送制度・官僚論にも参考になる論文がおいてあります。

地上デジタル放送? 地上波デジタル? 地デジ?
――デジタル放送の呼び方について

 まあ、どうでもよい話ですが、少々混乱している気配もあり、私が書いたものでも必ずしも統一していないので、CS、BS、地上波などデジタル放送の呼び方について説明を加えておきます。

 日本で放送デジタル化の幕を開けたのは1996年のCS(Communications Satellite=通信衛星)を使うデジタル放送でした。これをどう表記するか、原稿を書くときに私も考えました。考えられる呼び方・書き方はCSデジタルまたはデジタルCS、さらに「放送」をつけるCSデジタル放送またはデジタルCS放送の4つ。BSと対比するなど「メディア」に重きをおくときはCSデジタル、アナログと違う「放送方式」に重きをおくときはデジタルCSと呼び、より丁寧にいう場合は放送をつけるのが自然でしょう。もちろん、どれも間違いとはいえません。私は、論文の冒頭でまず「CSデジタル放送」と書き、あとは「CSデジタル」を使うことが多かったと思います。

 2000年に始まったBS(Broadcasting Satellite=放送衛星)を使うデジタル放送も同様で、BSデジタルデジタルBSBSデジタル放送デジタルBS放送、どれも間違いではありません。しかし「デジタル」を頭に持ってくる呼び方・書き方は4文字読んだ後でないとCSかBSかわかりません。ですから、デジタル放送が複数あるときは「BSデジタル」「BSデジタル放送」と「BS」を頭に持ってくるほうがよいでしょう。私は、もっぱらこの言葉を使っていると思います。

 ところで、地上放送のデジタル化の場合は、以上にならうと、地上デジタル、デジタル地上、地上デジタル放送、デジタル地上放送の4つがあるわけです。しかし、このうち「デジタル地上」はなんとも座りが悪く、「地上デジタル」も地上の何のデジタルなのか意味が取りにくい。「地上」という言葉は「CS」「BS」のように特殊な放送用語ではありませんから当然です。そこで、「地上」の代わりに地上の放送電波の意味で「地上波」という言葉を使い、地上波デジタルまたはデジタル地上波と呼びました。丁寧に放送とつける場合は、「波」と重なりますから、地上デジタル放送またはデジタル地上放送とするのが自然です(「地上波デジタル放送」や「デジタル地上波放送」は「白い白馬」のようにダブっています)。BS、CS、地上とあるときはデジタルを後ろに持ってきたほうがよいのは、前述の通りです。

 ところで、かつて地上のデジタル放送は、見出しの都合から短い言い方を好む新聞を中心に「地上波デジタル」という表記が多かったと思います。郵政省や放送局でも、まだ一部の専門家が議論していただけですから、この表記。私も古い論文ではこの表記を使っています。しかし、「地上波」「衛星波」といった呼び方は、専門用語っぽく一般の人むけにはわかりにくいし、BSやCSと並べるときも統一がとれていたほうがよい。そこで総務省やNHKあたりが「地上デジタル放送」といい始め、新聞もそれを採用するようになったわけです。私も最近の文章では「地上デジタル放送」という表記を使っています。

 先日、大学生40人ほどの授業で「家のテレビは個別アンテナで直接受信しているか? それともCATVか?」と聞いたら10人ほどが「わからない」との答え。放送学科の4年と3年ですよ!! 一般の多くの人は、いま見ているテレビが地上放送なのか、衛星から電波が来ているのか、CATVを通して見ているのかなどとは考えない。ふつうのテレビが「地上」のものかどうかもハッキリしないところに「地上波」などといってみても、うまく通じません。

 なお、地上デジタル放送の略語として地デジまたは地デなる言い方もあります。会話ではBSデジも聞かれます。とくに放送関係者は「地デジ」をよく使いますが、あくまで話し言葉であって仲間内の符丁のようなものですから、文章には書かないほうがよろしいです。

 以上、どうでもよいデジタル放送の呼び方についてでした。

【付記】
 こんなページを見つけました。実際に各方面に問い合わせをされていることがすばらしい。「道浦俊彦の平成ことば事情」から。 ことばの話1050「地上デジタル放送」 ことばの話1476「地デジ」

 これを読むと、自分でどのように呼ぶべきかを考えず、誰かがそう呼ぶから自分もそう呼ぶというメディアが多いことに、改めて驚かされます。メディアの報道部門は、政府の呼び方がおかしければ「おかしいから改めよ」というのも仕事のうち。ある法律を「盗聴法」と呼ぶべきだと思えば、政府がそう呼ばなくてもそう表記して警鐘を鳴らすのがマスコミの仕事のはずですが。