≪リード≫ ![]() ※指名手配写真がついているので、オマケに晒《さら》しておきます。 |
昨年の12月に地上デジタル放送がスタートしました。これに伴い、2011年の7月には現行のアナログ放送が停止される予定です。でも、この計画は破たんすると私は確信しています。
まず、アナログ停止までに残された7年強で、すべてのテレビをデジタル放送対応に置き換えるのが物理的に無理だということ。今、日本には1億2000万〜3000万台ほどのテレビがあるといわれます。一方で、生産台数は年間1000万台程度に過ぎません。工場で作られるテレビを明日からすべてデジタル放送対応としても、2011年までに出荷できるのは7000万台。現実には徐々に増産されるから、さらに少ないでしょう。
デジタル化では横長で高画質の映像が強調されていますが、それを視聴者が本当に魅力に思うのかも疑問です。もちろん、音や映像はキレイな方がいい。でも、テレビは1人暮らしの学生や年金生活の高齢者も楽しむもの。いくら映像がキレイでも中身が変わらなければ、みんなが何十万円も出して買い替えるとは思えません。多チャンネル放送もできますが、民放は視聴率が分散するのを嫌がるだろうし、手間だけかかって収入が増えなければ本気でやらない。結 局、高画質以外の魅力に乏しく、それでは普及しないと思います。
仮に2011年までに7000万台が置き換わっても、5000万台以上残る。現実には、そんなに出荷できないし、売れないから、さらに多くのテレビが未対応のままのはず。その段階でアナログ放送を止めるのは絶対に不可能です。
放送の未来を考えれば、デジタル化は確かに必要です。私はデジタル化そのものに反対しているわけではない。ただ、今の計画を無理に進めれば混乱が起き、放送局やメーカーがしっペ返しを食らうのではないかと懸念しています。
例えば、何年か先に「やっぱり無理」と先延ばしになったなら、電機メーカーは生産計画が確実に狂う。停止時期を信じて高い対応テレビを買った視聴者も、壊れたのにまだアナログ放送が続いていたなんて目にあうかもしれない。
一方で、無理矢理2011年にアナログをやめたら、多くの人はデジタル放送を受信できるアダプターなどで対応することになる。でも、それでは高画質の映像は見られない。見た目も中身も変わらないのに、国策だからとアダプターにお金を出すでしょうか。今は複数台テレビがある家も多いですが、2台目3台目は捨てる人が出るかもしれない。それで視聴者が減って困るのはメーカーや放送局です。
結局、今の計画は視聴者に負担を強《し》いるだけで、ニーズをないがしろにしているところに問題がある。無理なくテレビを買い替えられる移行期間をとる。放送局は高画質だけでなく、本当に見たいと思える番組を作る。そうした国民全体が幸せになる計画へと、一刻も早く修正しなければなりません。