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テレビを見るメディア・受信機の種類・系統別に、地上デジタル、BSデジタル、CSデジタル、CATV、携帯電話、インターネット、モバイルの7つを示した。各項目下のデータは、上から順に(1)放送開始年、(2)2011年段階での「公式」普及世帯数(一部推定)、(3)メディアの特徴、(4)放送主体。2011年7月以前は、地上アナログ、BSアナログ、アナログCATVも混在する予定だが、煩雑になるので省略した。なお、「非公式」普及データについては未来図「20XX年 灰色の世界篇」を参照のこと。
※図中に丸数字で記載していますが、読みにくいので再掲します。
(1)2003年12月〜 (2)4800万世帯/1億2〜3000万台 (3)高画質・高音質・横長16対9 (4)地上テレビ局
(1)2000年12月〜 (2)1700万世帯以上 (3)高画質・高音質・横長16対9 (4)地上テレビ(NHK・キー)局
(1)1996年10月〜 (2)数百万世帯以上 (3)多・専門・有料チャンネル (4)CS放送局
(1)1970年前後〜 (2)有料数百万世帯以上 (3)多・専門・有料チャンネル (4)テレビ、CS、CATV局など
(1)1990年代後半〜 (2)3000万世帯以上 (3)多・専門・双方向(オンデマンド) (4)テレビ、CS、CATVほか多様
(1)2005年〜 (2)数千万台以上 (3)低画質・低音質・小型画面 (4)地上テレビ局
(1)2004年10月〜 (2)不明 (3)多・専門・有料チャンネル (4)新規参入局
【解説】 地上デジタル放送はハイビジョン中心だから、フルに楽しむためにはハイビジョン受像機が必要だ。そこで1999年以降のハイビジョン受像機(2002年以降はPDPを含む)の出荷台数を図1に示す。この棒グラフが急激に伸び、年を重ねて2011年に図2(縦棒15本)と同じ面積になれば、将来は明るい。図3(縦棒6本)と同じ程度なら、全世帯で2台目以降のテレビが粗大ゴミと化す。図3にすら及ばなければ、2011年のデジタル完全移行は失敗する。
【サイトアップに際しての補足】 図1はハイビジョン対応の液晶テレビを含まない。もっとも、図4に示すように液晶テレビ2003年出荷分の8割以上が10型以下であり、ハイビジョン対応でないことから、図1の棒グラフに液晶を含めても大きな上乗せとはならないことがわかる。2003年出荷分の2割(約30万台)を占めた10型以上の液晶テレビの大半は4対3テレビである。
それにしても、オリンピックとサッカーW杯(それも私たちが生きている間は2度とないであろう日本主催のW杯!!)があり、4分の3の期間でBSデジタル放送をやっていた4年間に、ハイビジョン受像機が200万台程度しか売れなかった。これはデジタル放送にかなり厳しい見方をしているつもりの私が考えていたより、はるかに悲惨な結果。そしてなお、日本にはおそらく1億1800万〜1億2800万台ほどのハイビジョンに対応していないテレビが残っている。直近4年間に売れたハイビジョンテレビ(PDPを含む)は「誤差の範囲」にとどまったわけだ。
この状況で、あと7年間足らずの期間に残り1億台以上のテレビをハイビジョン受像機に置き換えることは、もちろんまったく不可能である。図2の縦棒1本は800万台を示すから、毎年800万台のペースで置き換えても14年以上かかる。ただし、これはテレビが全然壊れないと仮定した話であって、実際にはテレビは10年前後で壊れはじめるから、もっと長期間かかってしまう(このことを計算に入れない杜撰な試算が多い)。
もちろん国(総務省)はじめ地上デジタル放送に関係する団体(放送局やメーカー)も、2011年段階でのハイビジョン受像機の全世帯普及はさすがに無理、不可能だとわかっている。だから現在では「『地上デジタル放送用受信機』を2011年夏までに1億台普及させる」という目標を掲げており、「『ハイビジョン受像機』を2011年夏までに1億台普及させる」とはいっていない。(たとえば2004年7月27日「総務省 デジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会(第1回)」での配付資料放送デジタル化の進展8pあたりを参照)。
ついでに指摘しておくと、上記資料の4p「地上デジタル放送の進捗状況」にある受信機出荷台数・価格の分析は、あまりにも愚かな子ども騙しです。
「地上デジタル放送受信機は全体の6割を占める薄型テレビが牽引している」と評価するが、私であれば「地上デジタル放送受信機の過半数は価格数十万円のハイビジョン対応PDP・液晶テレビが牽引しており、数十万円のテレビを買わない人にはあまり普及していないのでヤバイ」と考えます。
「昨秋〜今夏で液晶37型の76万円が55万円、プラズマ42型の68.6万円が57.1万円、ブラウン管32型19.7万円が17.9万円になったから、約10〜27%の値下がり→着実に低廉化が進捗」と評価するが、私であれば「昨秋6万台もなかったプラズマテレビが今夏は20万台になったなら、価格が2〜3割下がらないほうが不思議。しかし下がったところで、50万円超テレビの価格変動など、全4800万世帯へのテレビ普及にはほとんど関係ない」「32型ブラウン管は1割値下げ。だがそれを買ったのは2003年716万人の7%でたったの50万人。やっぱり全4800万世帯へのテレビ普及にはほとんど関係ない」と考えます。
経済産業省や国土交通省が出す資料に「ベンツ・セルシオ価格が約10〜27%の値下がり→高級乗用車の低廉化が進捗」と書いてあったら、高級乗用車の全4800万世帯普及に期待が持てるでしょうか? 「ふざけんな」と私は思いますが。
【追記1 地上デジタル放送受信機の普及率は十数%を超えると急増する?】
家電製品やAV(オーディオビジュアル)製品は、16%を超えたら急激に普及する(ロジャースのイノベーター理論=「普及率16%」の論理。上に普及数、横に年数をとったグラフで普及曲線はS字を描き、イノベーターとオピニオンリーダーに行き渡った普及率16%前後を境に、爆発的に普及する)から、ハイビジョン(または地上デジタル受信機、BSデジタル受信機)も、やがてそうなると思っている人が、いまだにいます。
しかし、これは普及率が0%のもの(代替物がない革新的製品)が広がっていくときの理論。そのことと、多くの家庭に普及しているもののうち占有率16%に達した製品が、それを超えて爆発的に普及するかどうかは、まったく別の問題です。「冷蔵庫が普及率16%を超えて爆発的に普及し、その後ほぼ100%に達した」としても、「冷蔵庫のうち400L以上の大型のものが16%を超えた時点から爆発的に普及し、ほぼ100%に普及する」とはいえない。ベンツの占有率が3%、5%、10%と上がっていって16%を超えると爆発的に普及し、やがて日本を走るクルマはほぼ100%ベンツになる、なんて阿呆な予測はありえない!! ロジャースは「ベンツ」ではなく「クルマ」の話をしているのです。
現時点でテレビ受像機はほぼ100%に普及しており、ハイビジョン受像機はその高機能機であって、自動車でいえばベンツやセルシオやシーマに相当する製品です。しかも、日本の現行アナログ受像機は世界最高画質だから、ハイビジョンと大型デジタル対応テレビ(ワイドテレビ)の違いは、ベンツと軽自動車の違いより小さい。もちろんカラーテレビと白黒テレビの違いよりも小さい。「ハイビジョンが世帯普及率16%を超えたら爆発的に普及する」と予測しているアナリストや学者、そして彼らのいい加減な発言を無責任に報じるマスコミを、私はスコーンと抜けていると思っています。(2004年7月)
【追記2 地上デジタル放送はプラズマ(PDF)・液晶テレビが牽引するから、大丈夫?】
PDP・液晶テレビの売れ行きが好調なので、「地上デジタル放送はイケる」と勘違いするデムパ論者も登場したそうです。そんなのは2ちゃんねるが専用スレで原稿流用(使い回し)などを丁寧に報告・批判しているらしいので、そちらでどうぞ。
PDP・液晶テレビの売れ行き好調なことは家電メーカーにとっては「よいニュース」。数は大したことがなくても、単価が高く利益率が高い――つまりとても儲かるからです。映画などが好きで余裕もある人は、PDP・液晶テレビを買うことをおススメします。しかし、PDP・大型液晶テレビ「だけ」が地上デジタルを牽引しているように見えるのは、地上デジタル放送にとって「悪いニュース」に決まっている。地上デジタル放送を見ることのできるPDP・液晶(PDPの全部と、大型のハイビジョン対応液晶テレビ)の価格と台数を調べれば、それは明らかです。
断言しておきますが、30年たってもすべての冷蔵庫が400リットルクラスの大型冷蔵庫に置き換わらないように、30年たってもすべての乗用車がベンツ・セルシオ・シーマクラスの高級乗用車に置き換わらないように、30年たってもすべてのテレビが32インチ以上のプラズマ・液晶ハイビジョンに置き換わることは絶対にありえません。
プラズマ・液晶ハイビジョンが年200万台売れれば、あと何年かで地上デジタル放送が4800万世帯に普及すると考えるのは、ただのバカです。ハイビジョンではない20インチ前後以下の液晶テレビは、価格次第でアナログ対応のブラウン管式テレビと置き換わる可能性が大いにありますが、そのことは地上デジタル放送の普及とは基本的に関係ありません。(2004年12月)
つまり、地上デジタル放送が映りさえすればよく、視聴者が見る画像が16対9だろうが4対3だろうが、高画質だろうが標準画質だろうが、そんなことはどうでもいいという受信機だけ(チューナーやSTB=セット・トップ・ボックス)を含めて1億台普及させるといっているわけだ。ところが、流すのは相変わらずハイビジョン中心の放送だから、2011年段階では放送と多くの受信機・受像機が適合しない事態が想定される。
2011年段階において全4800万世帯でハイビジョンを見ることができないハイビジョン中心の放送は、ハイビジョン中心の放送としては失敗というべきである。
【解説】 BPA(BSデジタル放送推進協会)はNHKの独自調査による推定を紹介し、2004年6月のBSデジタル放送普及世帯を約600万世帯と伝える。だが、うち190万世帯以上がアナログ方式のCATV視聴。デジタル放送をアナログ方式で受信すればそれはアナログ放送だから、デジタル放送の普及に数えるのは明らかにヘンだ。BSデジタルは3年半で400万強の世帯にしか普及しておらず、このペースだと全国4800万世帯に普及するのに40年以上かかってしまう。
【サイトアップに際しての補足】 ゲタ履かせなど無意味、そんなのはやめてまじめに議論しましょうという、ただそれだけのことです。
【解説】 日本の未来図を考えずに、テレビの未来図ばかり考えても、あまり意味がない。その例として、2050年段階での人口構成予測図を紹介しておこう。この図によればF1以下のどの年齢の女性の数よりも、110歳以上の女性(いちばん上にひとまとめにしてある)の数のほうが多い。2050年のテレビ番組表には、どんな番組が並ぶだろう?
【サイトアップに際しての補足】 2050年は私の子どもが老人(65歳)になる頃だが、そのとき段トツで多いのは80歳前後の女性。そんなことより恐ろしいのは、この人口ピラミッドの下のほうで、年齢が若くなるにつれて人口が着実に減っていること。延長線を描くと何百年後かには赤ん坊がゼロに近づく。何かで読んだが、西暦3000年頃には「日本人は1人になる」そうだ。ある東京キー局の技術局長は「50年後を考えて、いまテレビをデジタル化するのだ」と筆者にいったが、「50年後を考えれば、この人口ピラミッドをなんとかしたほうがいい」と思う。
未来年表―遠未来編― 竹野萬雪編(PDFファイル)がおもしろい。
16ページ、2011年7月24日の項には総務省見解と、どういうわけだか坂本衛の見解が並んで載っています。78ページの3000年の項を見ると、「【日本】人口が4万5000人になる(『New York Times』1995.10.7)とあり、坂本が何かで読んだ「日本人は1人」説よりはマシ。
と思ったら、同じ3000年に「【世界】この頃までに、人類は災害か地球温暖化のために滅亡している(車椅子の物理学者スティーブン・ホーキング、『Sunday Times』2000.10.1)」とあり、ダメじゃん。
1996年に誕生し、紆余曲折の末、300万超メディアにまで成長したCSデジタル。売りは数百の専門局による多チャンネル。BS、地上の多チャンネル攻勢をどう迎え撃つか。
CS(Communications Satellite=通信衛星)からの電波を、各家庭のパラボラアンテナで受ける放送。有料放送が中心の多チャンネル・サービスで、日本初のデジタル放送でもある。
一九九六年十月にパーフェクTV!がスタート。これとJスカイBの合併、ディレクTVの参入・撤退をへて、現在はスカイパーフェクTV!(愛称「スカパー!」)が放送中だ。
地上のテレビ――たとえばNHKは、放送設備も、番組の制作も、受信料の集金もすべて自前だ。CSではこれが分かれており(いわゆる「ハード・ソフトの分離」)、衛星事業者の通信衛星を使い、委託放送事業者が番組を制作し、プラットホーム事業者(スカイパーフェクTV!がこれ)が課金システムや放送全体のPRなどを担当する。
東経一二四/一二八度に位置する二衛星を使う「スカパー!」と、東経一一〇度に位置する衛星を使う「スカパー!110」に分かれる。チャンネル数は、スカパー!がテレビ約一九〇+ラジオ約一〇〇に対して、スカパー!110がテレビ+データ放送で八〇弱。その多くはスカパー!の主要チャンネルと共通だが、110にはギャンブルとアダルト関係がない。以上二つの放送は、受信機が異なり、アンテナを向ける方向も違うので、注意が必要だ。
スカパー!受信機はアンテナとセットで二万円前後(初めての加入者には五〇〇〇円のキャッシュバックあり)。加入料は二九四〇円(最初に一回だけ)、その後は基本料月額四一〇円(何も見なくても必要)に加えて、パック料金(セット料金)、単独チャンネル料金、PPV(ペイ・パー・ビュー=見ただけ払い料金)がかかる。パックは映画セット、サッカーセットなどで、月額三〇〇〇〜五〇〇〇円が一般的。
スカパー!110は、専用受信機か三波共用受信機で受信する。
「スカパー!」は、ラジオを数えると三〇〇近い多チャンネル放送。内容は、映画、スポーツ、音楽、エンタテインメント、教育(塾や語学)、アニメ、ギャンブル、アダルトなどの専門チャンネル。映画もハリウッド製、ヨーロッパやアジアの渋い映画、日本の時代劇、邦画会社別というように、ジャンルが細分化されている。
受信機の出荷台数は五〇〇万台に近づきつつあり、契約件数も三六〇万以上。これには店頭展示分やホテルなど法人契約を含み、個人契約数は三二〇万程度(二〇〇三年度末)である。
多チャンネルの魅力に加え、受信機が安く手持ちのテレビにつなげばよい手軽さから、加入者はほぼ順調に増えてきた。ただし、個人契約の対前年度純増件数は、四〜五年前が七〇万前後、二〜三年前が四〇万弱、昨年は二〇万を割り込んでしまった。BSデジタルの開局やWOWOW・NHKの攻勢の影響が考えられる。
「スカパー!110」は、BSデジタル放送とチューナー共用可、データ放送、epと呼ばれる蓄積型放送などを謳い文句に二〇〇二年三月スタート。しかし、受信機がまるで売れず、プラットホームのプラット・ワンはスカパーに吸収され消滅。epサービスも終了。個人契約数は一一万五〇〇〇(二〇〇三年度末)ときわめて少ない。ビジネスとして成立しなかったものを、「敗戦処理」中の段階である。
「CSは雑誌の世界に近い」といわれる。
年間数億円で一チャンネルの放送が可能。五万人から月一〇〇〇円ずつ集めれば年に六億円だから、ビジネスとして成り立つ。定価一〇〇〇円で実売五万部の月刊誌を丸ごとCSに載せてしまえばよいわけだ。理屈はそうでも、実際のビジネスは簡単ではない。現実には一〇〇〇円で月五万部も売れる雑誌は多くない。
だが、専門チャンネルの集合であるCSは、細く深く穿《うが》って、そのチャンネルだけ採算が取れればよいから、さまざまな雑誌が創刊・休刊を繰り返すような展開を見せるだろう。
現状では、まだ専門性が徹底しておらず、地上テレビの「二軍練習場」(駆け出しタレントばかり出る)や「ゲートボール場」(何十年も昔のテレビの再放送ばかり流す)を思わせるチャンネルも散見される。しかし、「ディスカバリーチャンネル」「ヒストリーチャンネル」など、地上放送ではハナから見ることのできない優れたチャンネルも多い。未開拓の分野は広く新しいチャンネルの可能性も小さくない。
地上テレビの視聴率三〇%や視聴者一〇〇〇万人以上というような大当たりはないが、数万〜数十万程度の比較的少数の顧客をしっかりつなぎ止めることができれば、CSの未来は明るい。
雨に弱いことと、画質があまりよくないことは、CS放送の基本的な弱点。視聴者が移り気で一〇%に迫る解約率も悩みのタネだ。三〇〇〜四〇〇万加入で採算が取れるビジネスモデルで、番組制作費が地上テレビよりはるかに少ない(二ケタ違う)ことも、低予算でさえない番組が目につく理由だ。多チャンネルだけにCSは玉石混淆メディア。映画など一部のチャンネルと低予算チャンネルの格差がとても激しい。
料金体系の複雑さと、番組アクセスの困難さ(ちゃんと楽しむには雑誌が欠かせない)も、多チャンネル放送ならではの問題点だろう。
スカパー!には、100チャンネル規模のラジオ放送がある。チャンネル400番台の「スターデジオ」だ。カラオケの第一興商が運営しており、細分化したジャンルのCDを基本的に流しっぱなしにする。CD権利者(レコード会社)の了解を得ずにスタートしたため訴訟沙汰となったが、2002年末に和解が成立。和解条件は楽曲の演奏開始・終了時刻を事前表示しない、新譜CDは発売後シングルは四日間・アルバムは十日間放送しない、アルバムは2〜3週に分けて流す、レコード会社に二次使用料を支払うなど。だからスターデジオは、BGMには最適だが、CDをダビングするには、あまり向いていない。