最近、読み進めていくうちにじわりじわりとハマり始めた漫画・『瑠璃の宝石』で、とても興味深い記事を見つけることが出来ました。 それは、第13話「渚のリサイクル工場」にて綴られていたコラムです。考古学において、例えば縄文式土器の破片から当時の生活様式や年代を推測することが出来るように、近現代においても、後の世で年代を特定するのに手掛かりとなるような、広く共通に認知された器があるのでは?という捉え方の学説。その「器」というのが、コカ・コーラの瓶なのですね。 確かにコカ・コーラの瓶は独特な形状をしています。これは“コンツアーボトル”(胴部がくびれたボトル Contour=は輪郭・外形の意味)と呼ばれ、『暗闇で触っても、地面で破片となっていても「コカ・コーラ」の瓶だと分かる』ということをコンセプトに作られたものだということ。加えて、時代によって過去に何度か微妙にデザインや形状をマイナーチェンジしているのです。こうしたことから、たとえほんの一部の瓶の欠片が出土されたとしても、それがコカ・コーラの瓶だと容易に判別することが出来、またその変化の度合いによって年代を特定する手助けになるという考え方なのですね。 これはとても面白い考察だと思いました。試しにコカ・コーラの瓶の歴史について繙いて見ると、確かにコンツアー・ボトルというコンセプトは踏襲しつつも、過去に何代にも亘って微小ながらもハッキリと判別のつくマイナーチェンジを続けていることがわかります。ちなみ余談ですが、昔、ビン底近くに○や□などの凹み(ラグ・ディンプルと言うらしい)があり、○いヤツが甘口で□いヤツが辛口なんていう都市伝説(※根拠無し!)がありましたが、あんなものどころではない多様な変遷があって、大変に奥深いものでした。 さて、ここでふと気になったのが、過去に私が三浦半島の浜諸磯で採集した「海の色のビン」です。 発見当時はヨコハマ買い出し紀行・第14話「砂の浜」の原作と同様に、「Coca-Cola」のロゴ表記がすっかりと削ぎ落された奇跡的な一致様相に歓喜感激したものでしたが、果たしてこの瓶はいつの時代のものなのだろう?という疑問が、今更ながらに湧き起こってしまったのです。 歴代の瓶を判別するのに最も分かり易い部分はこのロゴ表記部なのですが、ここが波と砂礫との摩滅によってキレイサッパリと消失してしまい、まるで手掛かりがありません。しかしロゴの表記は、古くは文字が盛り上がる感じに陽刻されたエンボス形状だったようで、これがACL印刷に変わったのが、およそ1960年代後半ということ。また、『瑠璃の宝石』でも触れられていましたが、傷や破損を防ぐために瓶底面に施されたギザギザ加工は「ナーリング」と呼ばれるもので、これが認められるものは1960年代以降のものといいいます。このギザギザも残念ながら(!?)微少に薄っすらと確認出来てしまったため、私の見つけた瓶は、それほど古いものというワケではないようです。 以下に、この瓶の外観から得られた特徴を載せておきます。これらから判別できる方が居られましたら、情報をお寄せいただけると嬉しいです。 ・ラグ・ディンプルの形状→○型(○は石塚硝子製、□は日本山村硝子製という通説があるようです。) ・色調→青緑(ジョージア・グリーンというらしい。) ・下部側面に刻印された製造記号?→6・◇・ Y・ 3 (◇内に「N」っぽい刻印は、日本硝子の可能性も?) ・ロゴ表示部(印刷部)の左右パーティングライン上に、特徴的なエンボス(右下写真参照)
まぁおそらく、十中八九は三浦半島がレジャーの最盛期を誇っていた1970〜1990年代くらいのものだと思うのですが、どうなんでしょうね。 波打ち際の砂礫に埋もれていたこの瓶は、果たしてどのくらいのあいだ、海中で過ごして来たのでしょう?そして私が偶然にもこの瓶を拾い上げ、保管をし続けてから、更にもう25年(!!)もの時が経過しました。 プラスチック(ペットボトル)製品が主流となりつつある昨今、海でガラスが見つかるというのは、今後珍しいことになるのかも知れません。 「時代を超えて届いた歴史 海でガラスが拾えるって認識は 今だけのものだと思う」 『瑠璃の宝石』作中で発せられたこの言葉が、妙に心に響きました。 海のなかと私の作業机の棚の上、今やもう、いったいどちらの方が長い時を積み重ねているのでしょうか。青緑色の瓶を透かして見ながら、そんなことに思いを馳せた、ある春の一日でした。 参考資料:『瑠璃の宝石』第3巻/渋谷圭一郎 著(ハルタ コミックス)
『増補 ガラス瓶の考古学』/桜井準也 著(六一書房) 日本ガラスびん協会HP ガラスびん3R促進協議会HP |