その幻想的な演出から、短いシーンでありながら作品全体の中でも特に深い印象を与える一場面。DVD & Blu-ray化にあたっては、記念として風車がデザインされたTシャツまでもが製作・販売されましたね。 私も長らくこの場所を探し出してみたいと思っていましたが、実に30年間、見つけられずじまいでいました。しかし今回、運とタイミングがミラクルに結び付き合い、偶然にもあっさりと判明することに。判ってみれば、スゴく「らしい」場所でしたねー。 これ、古参かつ熱心なサザン・ファンの人たちの間では、とっくに判ってたことなのかなー?明らかに資料として確認できるものも見つかったので、判っていながら、あえて公言してこなかったような気もします。現地はとても静かな場所ですし、今さらあまり蒸し返されても困るような雰囲気でもありましたからね。なので私も先人に倣い、具体的な場所は控えさせていただきます。 現地の状況は、『稲村ジェーン』の撮影当時とほとんど変わらぬ雰囲気で、そこに存在していました。まぁ場所柄、あまり急激な変化が起きるところでもないのでしょうが、それでも階段脇の石積みや木の植生配置に一致を見ると、よくぞこれまで変わらずに居続けてくれたものだと、30年間の緩やかな時の積み重なりに感動すら覚えました。 この石段を降りきると、映像通りの風車の回る『石畳の小道』となっています。しかし既にご存知のように風車は作品上の演出で、実際には風車はもちろん、竹垣も存在しません。ここは結果的に『稲村ジェーン』を代表する美しいシーンとなりましたが、この短い場面のためだけに、なぜあれほど手のかかるセットを作り上げたのかは気になるところですね。ちなみに決定稿台本では風車ではなく、「あたり一面にこぼれる風鈴の音色」となっています。
というわけで、これにて私の気に掛かっていた『稲村ジェーン』の撮影舞台地調査は全て終了し、想いは完全昇華しました。振り返ってみれば、本当に撮影終了直後から消失風景が多く、また脈絡もなく撮影場所が飛んでいたりして、場所の特定に苦労を要しました。でもそれが推理小説のような謎解きの面白さがあり、他の作品に類を見ない楽しみの一つともなっていました。この『稲村ジェーン』のロケ地探しの旅を足掛かりとして、『ヨコハマ買い出し紀行』の給水塔・病院などへと繋がったのは、今でも不思議なシンクロを感じずにはいられません。今後、もう探す場所が無くなってしまったのは少し寂しい気もしますが、また別の視点から新たな発見を求めて、いま一度本編を「通し」でじっくりと観てみようと思います。 |