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犯罪関連用語の基礎知識

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【 さ行 】

- 50音順 -

 

サイコパス
最終陳述
再審制度
裁判員制度
裁判官
裁判官弾劾裁判所
裁判所

裁判の傍聴
裁面調書
差押え
詐欺及び恐喝の罪
殺人罪
SAT
サディズム

サリン
サレンダー

SIT
死刑になる犯罪
自己愛憤怒
時効

死後硬直
自首 出頭
事情聴取 取り調べ
死体損壊罪 死体遺棄罪
示談
実況見分 現場検証
執行猶予
失踪宣告
実名報道
児童虐待防止法
自動車運転死傷処罰法
児童自立支援施設
児童買春・ポルノ禁止法
自白
支払用カード電磁的記録に関する罪
司法解剖 行政解剖
司法取引
指紋
自由心証主義
住居を侵す罪
銃刀法
重要参考人 容疑者 被疑者
出水及び水利に関する罪
純粋窃盗犯

傷害罪 暴行罪

召喚 勾引

状況証拠
証拠
証拠隠滅罪 犯人蔵匿罪
上告
情状酌量

上訴

証人

証人威迫罪

少年院
少年鑑別所
少年法
職務質問
除斥
しろうと理論
人格障害
親告罪
心中
心神喪失 心神耗弱

シンナー
信用及び業務に対する罪
森林放火罪 森林失火罪
スカイマーシャル
スケープゴーティング
スタンフォード監獄実験
ストーカー規制法
ストックホルム症候群
スーパーインポーズ法
スパイト行動

青酸化合物
精神鑑定
正当防衛
生物兵器・化学兵器などの使用罪

生来的犯罪人説

セカンドレイプ
接見
窃視症

窃盗罪 強盗罪

窃盗症

前科

線条痕
宣誓
捜査権
騒乱罪
組織犯罪

措置入院
ソナグラフ
宙(そら)の会
尊厳死
 

 

サイコパス

サイコパス

Psychopath 「精神病質者」のこと。ドイツの精神医学者たちによって、「精神異常ではあるが、もっとも重い場合でも精神病ではなく、もっとも軽い例でも正常性や行為能力をもつとは見なされない」とか、「その人格の異常性に自ら悩むか、またはその異常性のために社会が悩む異常人格」と定義されている。“異常性のために社会が悩む異常人格”という表現から、ソシオパス(社会病質者)という診断名も生まれたが、アメリカ精神医学会は現在、この言葉を診断マニュアルのDSM−Wから削除しており、「反社会性人格障害」と呼ばれている。

このような人間の特徴は、良心の呵責を感じず、感情に奥行きがないため他人に感情移入できず、非常に利己的で自分の利益しか念頭にしかなく、将来を見つめることがないので刹那的に人生を生き、興奮を求めるあまり自分の行動をコントロールできない、など。サイコパスは初めから社会と相容れない人格をもっていて、犯罪はその人格を「表現する方法」である。

最終陳述

最終陳述

裁判において裁判官が判決を言い渡す前に被告人の言い分を念のためもう一度聞くが、ここで被告人が述べた不満の内容によっては審理が再開される場合がある。

再審制度

再審制度

裁判で有罪判決が確定した事件については、二度と裁判のやり直しが行なわれることはない。それを認めてしまうと、判決を確定させる意味がなくなり、司法制度そのものがひどく混乱するおそれがあるからだ。判決の確定まで3回は裁判を受けられるわけだから、基本的にそれで充分な審理ができると考えられている。

だが、人間の行なうことにすべて完璧を求めることはできず、確定した判決に絶対にミスがなかったとは言い切れない。そのために、刑事訴訟法には裁判のやり直し、つまり再審請求のできる条件が定められている(刑事訴訟法435〜453条)。

再審請求は具体的に掲げられた次の7つの理由に限られる(刑事訴訟法435条)。

一 原判決の証拠となつた証拠書類又は証拠物が確定判決により偽造又は変造であつたことが証明されたとき。
二 原判決の証拠となつた証言、鑑定、通訳又は翻訳が確定判決により虚偽であつたことが証明されたとき。
三 有罪の言渡を受けた者を誣告した罪が確定判決により証明されたとき。但し、誣告により有罪の言渡を受けたときに限る。
四 原判決の証拠となつた裁判が確定判決により変更されたとき。
五 特許権、実用新案権、意匠権又は商標権を害した罪により有罪の言渡をした事件について、その権利の無効の審決が確定したとき、又は無効の判決があつたとき。
六 有罪の言渡を受けた者に対して無罪若しくは免訴を言い渡し、刑の言渡を受けた者に対して刑の免除を言い渡し、又は原判決において認めた罪より軽い罪を認めるべき明らかな証拠をあらたに発見したとき。
七 原判決に関与した裁判官、原判決の証拠となつた証拠書類の作成に関与した裁判官又は原判決の証拠となつた書面を作成し若しくは供述をした検察官、検察事務官若しくは司法警察職員が被告事件について職務に関する罪を犯したことが確定判決により証明されたとき。但し、原判決をする前に裁判官、検察官、検察事務官又は司法警察職員に対して公訴の提起があつた場合には、原判決をした裁判所がその事実を知らなかつたときに限る。

再審の請求は控訴又は上告を棄却した確定判決に対して、その言渡しを受けた者の利益のためにこれをすることができる(刑事訴訟法436条)。

再審の請求は原則、有罪判決をした裁判所に対して行う(刑事訴訟法438条)。

有罪の言渡しを受けた者やその法定代理人等、または有罪の言渡しを受けた者が死亡した場合や心神喪失の場合にはその配偶者、直系親族もしくは兄弟姉妹が請求することができる(刑事訴訟法439条)。

刑の執行が終わった後でも請求可能である(刑事訴訟法441条)。

再審の請求を受けた裁判所は再審開始の決定をした場合には刑の執行を停止することができる(刑事訴訟法448条2項)。

再審の裁判では元の判決の刑より重い刑を言い渡すことができない(刑事訴訟法452条)。

1975年(昭和50年)以降、いくつかの事件で再審が行なわれ、逆転無罪判決も出るようになっている。再審の門戸が広がるきっかけになったのは、1975年(昭和50年)に最高裁が出した「白鳥事件決定」である。再審請求の条件のひとつに「無罪判決等を言い渡すべき明らかな証拠をあらたに発見したとき」という項目がある。かつては、「明らかな証拠」の判断基準がきわめて厳しかったが、この最高裁の決定では、「疑わしいときは被告人の利益に、という刑事裁判の鉄則は再審でも適用される」という新判断を示した。

白鳥事件・・・1952年(昭和27年)1月21日夜、札幌市内の路上で市警警備課長の白鳥一雄(36歳)が拳銃で射殺された。その後、20人近い日本共産党員が芋づる式に検挙され、集中的な弾圧捜査が行なわれた。10月、共産党札幌委員会委員長の村上国治が逮捕され、2年10ヵ月の勾留後、殺人の共謀共同正犯で起訴された。このとき、他に2人、起訴されている。法廷では謀議の有無、伝聞証拠の違法性などが争われたが、最大の焦点は唯一の物証である遺体から摘出された弾丸と試射現場土中から発見された2発の弾丸が同一か、また、同一の拳銃から発射されたものであったかどうかということであった。土中に長時間埋没していたにもかかわらず試射弾には腐食割れがなく、また、3個の弾丸は線条痕(銃から発射された弾丸に付く線条の模様のことで、それぞれの銃にはそれ特有の線の模様が付く)が違うので1丁の拳銃から発射されたものなどではなく、物証の捏造が科学的に明らかになった。また、事件発生5ヶ月後、札幌信用組合元従業員の原田政雄が、首謀者は札幌信用組合理事長の佐藤英明、実行者は拳銃殺人の前科がある東出四郎と公表したが、別件で逮捕された佐藤は保釈中の1952年(昭和27年)12月23日、黒い疑惑の中で自殺してしまった。1957年(昭和32年)5月、札幌地裁は村上に無期懲役の判決を下した。1960年(昭和35年)6月、札幌高裁で懲役20年の判決。1963年(昭和38年)10月、最高裁で上告を棄却し、懲役20年の刑が確定した。その後、村上は無実を訴えて、1965年(昭和40年)10月に再審請求を起こした。だが、1969年(昭和44年)、棄却。1971年(昭和46年)7月、異議申し立て棄却。1975年(昭和50年)5月、最高裁で特別抗告棄却となった。しかし、この間、ひとつの成果を残した。従来、再審の開始は“開かずの門”とされてきたが、この条件を「疑わしいときは被告人の利益に」の刑事裁判の原則を適用し、確定判決の事実認定の中に合理的な疑問があれば開始してよいというレベルに緩和する判例を引き出したことである。以降、弘前事件、米谷事件、財田川事件、島田事件、松山事件などの再審への道を開くこととなった。

関連書籍・・・
『白鳥事件』(新風舎文庫/山田清三郎/2005) / 『網走獄中記 白鳥事件 村上国治たたかいの記録』(日本青年出版社/村上国治/1970)
/ 『亡命者 白鳥警部射殺事件の闇』(筑摩書房/後藤篤志/2013) / 『白鳥事件 偽りの冤罪』(同時代社/渡部富哉/2012)

しかし、再審で無罪を勝ち取るためには、有罪を否定するのに充分な立証作業が必要になり、これは「悪魔の証明」と言われており、きわめて難しい。

死刑確定後再審無罪事件

裁判員制度

裁判員制度

国民から選ばれた裁判員が刑事裁判に参加する制度。裁判員は刑事裁判の審理に出席して証拠を見聞きし、裁判官と対等に議論して、被告人が有罪か無罪か(被告人が犯罪を行ったことにつき「合理的な疑問を残さない程度の証明」がなされたかどうか)を判断する。「合理的な疑問」とは、裁判員の良識に基づく疑問で、良識に照らして、少しでも疑問が残るときは無罪、疑問の余地はないと確信したときは有罪と判断することになる。有罪の場合には、さらに、法律に定められた範囲内で、どのような刑罰を宣告するかを決める。裁判員制度の対象となるのは、殺人罪、強盗致死傷罪、傷害致死罪、現住建造物等放火罪、身代金目的誘拐罪などの重大な犯罪の疑いで起訴された事件で、原則として、裁判員6名と裁判官3人が、ひとつの事件を担当する。
(1)裁判所から呼出状が届く
裁判員は、衆議院議員選挙の有権者から選ばれる。まず、選挙人名簿から、向こう1年間の裁判員候補者を無作為に選び、裁判員候補者名簿を作成し、事件の審理が始まる前にその名簿の中からさらに無作為抽出により、その事件の裁判員候補者が選ばれる。

裁判員候補者は、裁判所から呼出状を受け取り、指定された日時に裁判所に出頭する。呼出状には質問票が付いていることがある。裁判員候補者は、質問票に回答を記入し事前に返送するか、あるいは裁判所に持参する。

(2)裁判員選任手続

裁判員は事件ごとに裁判所で裁判員候補者の中から選ばれるが、選任手続においては質問票への回答や、裁判所での質問への回答をもとに裁判員になることのできない事由(欠格事由・就職禁止事由・不適格事由)がないか、裁判官が判断する。裁判員候補者が、理由があって辞退したいと考えている場合には、その旨裁判官に申告し、裁判官が事情を聴いて辞退を認めるかどうかを判断する。

また、検察官と被告人は一定の人数の候補者について理由を示さずに選任しないよう請求することができる。なお、この選任手続や質問票の取扱は裁判員候補者のプライバシーなどに配慮して行われる。

こうして、裁判員候補者の中から、その事件を担当する裁判員が決定される。裁判員には、旅費や日当が支給される。裁判員の仕事をするために休暇を取得したことなどを理由に、使用者が不利益な取扱をすることは禁止されている。また、裁判員の安全を確保するためにさまざまな定めが設けられている。

(3)公判手続

裁判員は公判期日に出頭して刑事裁判の審理に出席する。公判期間は、できるだけ連日開かれ集中した審理が行われる。こうした審理に対応するため、裁判官・検察官・弁護人は公判期間に先だって公判前整理手続を行い、検察官の手元にある証拠を開示したうえで争点を整理し審理の予定を立てておく。

公判期日のはじめに、検察官が起訴状を朗読。起訴状とは検察官が刑事裁判を求めて裁判所に提出する書類のことで、その裁判で検察官が証明しようとする事件の要点などが書かれている。その後、検察官と弁護人双方が、それぞれが描く事件のストーリーを裁判員に説明したうえで(冒頭陳述)証拠の取調べが行われる。

検察官・弁護人の説明や証拠調べは、裁判員に分かりやすい方法で行われる。証拠調べは証人尋問で証人から直接話を聞くことが中心となる。

証拠調べが終了したら、検察官の意見陳述(論告)、弁護人の意見陳述(弁論)が行われて審理は終了となる。

(4)評議・評決

公判審理が終了したら、裁判員と裁判官は、被告人が有罪か無罪か(「合理的な疑問を残さない程度の証明」がなされたか否か)、有罪の場合はどのような刑罰を宣告するかについて議論をする。

有罪・無罪の判断と刑罰の選択については、裁判員は裁判官と対等な権限を持っている。これに対し、訴訟手続に関する問題や法律の解釈については、裁判官のみが判断することになっている。

評議に際しては無罪推定の原則、つまり、被告人は裁判で合理的な疑問を残さない程度に有罪と立証されるまでは、無罪と推定される(有罪とされない)という刑事裁判の大原則を常に念頭に置かなくてはならない。

評議は全員一致を目指して議論するが、どうしても全員一致に至らない場合には多数決による評決を行う。

(5)判決宣告 判決の宣告は裁判員が立会い裁判長が行う。

裁判員の任務は、判決の宣告をもって同時に終了する。その後、裁判官は宣告した判決の内容を判決書にまとめる。

詳しくは、裁判員法(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律が正式名称)を参照。

★主な国の陪審・参審制度・・・『読売新聞』2009年(平成21年)5月21日付より・・・
制度 構成 特徴
アメリカ 陪審制 陪審員12人 被告が無罪を主張した事件が対象。
陪審員はひとつの事件だけを担当する。
イギリス 陪審制 陪審員12人 被告が無罪を主張した重大事件が対象。
任期は2週間。
フランス 参審制 参審員9人
裁判官3人
法定刑が無期または拘禁10年以上の重大事件が対象。
任期は2週間。
イタリア 参審制 参審員6人
裁判官2人
殺人や国家を脅かす犯罪など極めて重大な事件が対象。
任期は3ヶ月。
ドイツ 参審制 参審員2人
裁判官3人
拘禁2年を超える広範囲の事件が対象。
参審員は政党推薦や希望者から選ぶ。任期は5年。
裁判に国民が参加している他の国・・・ロシア、韓国、スリランカ、ブラジルなど。
陪審員は有罪・無罪を決め、量刑は裁判官が決定(アメリカは死刑求刑事件に限り陪審員が量刑も担当)。参審員は裁判官と一緒に評議し、有罪・無罪と量刑の両方を担当。

裁判官

裁判官

裁判の公正を守るため、一般の事件に関しては、民事も刑事も受付け順に機械的に各裁判部に振り分けられていく。そして、それぞれの裁判部に属している裁判官に、やはり同じように機械的に担当事件として振り分けられる。つまり、裁判官は担当する事件を選ぶことができないわけだが、逆に被告人も裁判官を選ぶことができない。

ただし、刑事訴訟法民事訴訟法)では、明らかに公正な裁判を期待できない場合にかぎって、裁判官の除斥(職務から外すこと)を認めている。

刑事訴訟法20条 裁判官は、次に掲げる場合には、職務の執行から除斥される。
 一 裁判官が被害者であるとき。
 二 裁判官が被告人又は被害者の親族であるとき、又はあつたとき。
 三 裁判官が被告人又は被害者の法定代理人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人であるとき。
 四 裁判官が事件について証人又は鑑定人となつたとき。
 五 裁判官が事件について被告人の代理人、弁護人又は補佐人となつたとき。
 六 裁判官が事件について検察官又は司法警察員の職務を行つたとき。
 七 裁判官が事件について第二百六十六条第二号の決定、略式命令、前審の裁判、第三百九十八条乃至第四百条、第四百十二条若しくは第四百十三条の規定により差し戻し、若しくは移送された場合における原判決又はこれらの裁判の基礎となつた取調べに関与したとき。ただし、受託裁判官として関与した場合は、この限りでない。

民事訴訟法23条 裁判官は、次に掲げる場合には、その職務の執行から除斥される。ただし、第六号に掲げる場合にあっては、他の裁判所の嘱託により受託裁判官としてその職務を行うことを妨げない。
 一 裁判官又はその配偶者若しくは配偶者であった者が、事件の当事者であるとき、又は事件について当事者と共同権利者、共同義務者若しくは償還義務者の関係にあるとき。
 二 裁判官が当事者の四親等内の血族、三親等内の姻族若しくは同居の親族であるとき、又はあったとき。
 三 裁判官が当事者の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人であるとき。
 四 裁判官が事件について証人又は鑑定人となったとき。
 五 裁判官が事件について当事者の代理人又は補佐人であるとき、又はあったとき。
 六 裁判官が事件について仲裁判断に関与し、又は不服を申し立てられた前審の裁判に関与したとき。
2 前項に規定する除斥の原因があるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、除斥の裁判をする。

第1審の地方裁判所の場合、比較的軽い事件は、担当する裁判官は1人。それが重い事件になると、3人になる。

同じ1審でも、もともと軽微な事件しか扱わない簡易裁判所はすべて1人の裁判官が審理を行なっている。

控訴審、つまり第2審の高等裁判所になると、事件が重い軽いに関わらず、必ず3人の裁判官が審理する。

さらに、上告審、つまり第3審の最高裁判所の場合は、普通の事件は小法廷で扱われ、5人の裁判官によって審理が行なわれる。大法廷で扱われるのは憲法の解釈が問題になるような大きな事件だけで、これを審理する裁判官は15人で、職業裁判官6人、弁護士4人、検察官2人、官僚2人、法学者1人の「枠」が固定化している。選考過程は明らかにされていないが、法律家出身の後任は最高裁が推薦し、官僚出身者の後任は内閣が人選するのが慣例になっている。

法廷内で正面の一段高いところで、黒い法服に身を包んで座っているのが裁判官であるが、3人で審理する場合は、中央に座っているのが裁判長。その右側(向かって左側)にいる裁判官は「右陪席」、左側(向かって右側)は「左陪席」と呼ばれている。右陪席と左陪席については法律上の権限は同じだが、普通は中堅クラスの裁判官が右陪席、司法修習を終えたばかりの若い裁判官は左陪席に座る習慣になっている。判決文は、まず合議の結論にしたがって左陪席が原稿を書き、それを右陪席と裁判長が順に修正して完成させることが多い。

裁判官弾劾裁判所

裁判官弾劾裁判所

裁判官の身分にふさわしくない行為をしたり、職務上の義務に違反したとして、裁判官訴追委員会から罷免の訴追を受けた(訴えられた)裁判官を辞めさせるかどうか判断する裁判所。また、辞めさせた裁判官に失った資格を回復させるかどうか判断する裁判所でもある。
「弾劾」には、罪や不正を暴くとか、厳しく責任を問うといった意味があり、このことから大統領や大臣あるいは裁判官など、強い身分保障を受けた公務員が非行(その人の地位にふさわしくない行為)を犯した場合に国民(実際には、国民の代表者で構成される議会など)の意思によってその者を罷免する(辞めさせる)制度のことを一般に「弾劾制度」と呼んでいる。
現在の裁判官弾劾裁判所の法廷は昭和51年6月に参議院第2別館内(南棟9階)に造られているが、旧最高裁判所の大法廷が参考にされ広さは約193平方メートル(約58坪)ある。
裁判官弾劾裁判所は国会が憲法64条に基づいて設置した公の弾劾を行う常設の機関で衆議院と参議院の合計14名の国会議員(各議院ごとに7名ずつ)で構成されている。
憲法64条1項・・・国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
なお、裁判官を訴追する裁判官訴追委員会も衆議院と参議院の国会議員で構成されている。
< 弾劾裁判所に訴追された裁判官と判決 >
訴追 肩書き
(#印は同一人物)
主な訴追の理由 判決
1948. 7 静岡地裁浜松支部判事 無断欠勤、懇意の弁護士の商取引に協力 1148.11
不罷免
1948.12 大月簡裁判事 # 知人に対する家宅捜索をその妻に示唆 1950. 2
不罷免
1955. 8 帯広簡裁判事 395件の略式起訴を放置し失効させる 1956. 4
罷免
1957. 7 厚木簡裁判事 # 調停の申立人から酒食の接待を受ける 1957. 9
罷免
1977. 2 京都地裁判事補 首相への偽電話の録音を新聞記者に聞かせる 1977. 3
罷免
1981. 5 東京地裁判事補 破産管財人からゴルフクラブなどを受け取る 1981.11
罷免
2001. 8 東京高裁判事 中学2年生ら少女3人に対する児童買春 2001.11
罷免
2008. 9 宇都宮地裁判事 部下の女性職員に何度も匿名メールを送る 2008.12
罷免
2013. 3 大阪地裁判事補 電車内でスマートフォンを使って女性のスカート内を動画盗撮
少なくても20回程度繰り返し盗撮
2013. 4
罷免
裁判官弾劾裁判所公式サイト

裁判所

裁判所

日本の裁判所は、最高裁判所高等裁判所(本庁は東京、大阪、名古屋、広島、福岡、仙台、札幌、高松の計8ヶ所で、他に6ヶ所の都市に支部が設けられている)、地方裁判所(各都道府県庁の所在地および釧路、函館、旭川の計50ヶ所で、支部を合わせると203ヶ所)、簡易裁判所(438ヶ所)、家庭裁判所(本庁は50ヶ所で、他に主要都市203ヶ所に支部があり、そのうち102支部において家事事件、少年事件の両方が扱われ、101支部においては家事事件のみ扱われている。さらに、交通不便な地域など77ヶ所に家事事件のみを扱う出張所がある)の5種類ある。

最高裁以外の4つは「下級裁判所」と呼ばれ、司法行政の面で最高裁の指揮、命令、監督を受けている。罰金以下の刑にあたる罪、窃盗罪、横領罪などの刑事訴訟と請求額が140万円以下の民事訴訟は簡易裁判所、相続関係や少年事件などは家庭裁判所、それ以外は地方裁判所で扱うことになる。

詳しくは裁判所法 / 社団法人 家庭問題情報センター → 家庭裁判所ってどういうところ?

裁判の傍聴

裁判の傍聴

裁判は誰でも傍聴できるが、これは憲法82条1項で、「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行なふ」と規定していることに基づく。裁判を公開する目的のひとつは、秘密裁判によって不正な有罪判決が下されるのを防ぐことにある。それを監視するのが傍聴人の役目と言える。

一般用の傍聴席とは別に、マスコミ用の記者席が設けられているが、傍聴席全体の約2割ある。優先的に傍聴することができるマスコミには、正しく裁判の内容を報道する義務と責任があると言える。

だが、HIV訴訟など、当事者に対して特別な配慮が必要と裁判官が認めれば、ごくまれにだが、非公開となる場合もある。

日本では審理中の状況をテレビ中継することも写真撮影もまた、法廷内でのやり取りを録音することも許されていない。撮影が許されるのは、開廷前の被告人がいない状態の2分間だけ。審理中の撮影を認めないのは被告人のプライバシーと人権への配慮のためだが、訴訟大国のアメリカで法廷でのやり取りがテレビ放映されているのとは対称的だ。

もっとも、日本でも終戦直後はかなり自由にカメラが法廷に入っていた。だが、昭和20年代の後半に起きた殺人事件の釧路地裁での公判で、あるカメラマンが被告人の表情を正面から撮影しようとして、裁判官席に土足で上がり込み、裁判長を押し退けてレンズを被告人に向けたため、これがきっかけとなって撮影が規制されるようになったのである。

ある事件の裁判の傍聴を希望する場合、その公判日時は管轄の裁判所に電話で問い合せれば教えてくれる。そのほとんどが、事件のあった場所にある地方裁判所で行われるので、被疑者が逮捕され、起訴されれば裁判となるので、管轄の裁判所に電話で被告人となる人の名前とできれば罪名が分かると調べやすくなるかもしれない。特に、殺人事件や強姦事件などの重大犯罪は傍聴希望者も多く、先着順か抽選となるケースがほとんど。

特に目当ての裁判がなければ、直接、裁判所に出向いて受付で事件表を見ながら傍聴する公判を決めてみるのもいいかも。事件表には、刑事のと民事のがあり、さらに東京の場合、東京地裁と東京高裁(同じビル内にあるため)に分かれていて、その日の公判の時間割、被告人の名前、罪名、初公判かなどが書かれている。

公判中は、メモをとったり、絵を描いたりすることができるが、一般の傍聴人には、ごく最近までメモや絵は許されていなかった。しかし、1989年の最高裁判決での「レペタ訴訟」がきっかけとなって、その規制はかなり弱まった。この訴訟を起こしたのはレペタというアメリカ人弁護士で、東京地裁の民事裁判を傍聴したときにメモをとろうとしたのだが、裁判官からやめるように求められた。押し問答の末に退廷を命じられたレペタ氏は、裁判によって自由を侵害されたとして、国に損害賠償を求める民事訴訟を起こしたのである。1審も2審も原告の請求を認めず、最高裁も上告を棄却したので、レペタ氏は敗訴した。しかし、最高裁は判決文の中で、憲法で保障しているわけではないが、傍聴人がメモをとることも尊重に値するという判断を示し、それ以来、裁判所は一般傍聴人のメモに寛容になったのである。

裁判を傍聴するときの服装については、裸や水着など非常識な格好をしていなければ問題ないが、被告や原告を支持する団体のメンバーが、鉢巻き、ゼッケン、たすき、腕章などを着用して入廷することはできない。持ち物についても危険物、棒、旗、ヘルメット、ビラなどは持ち込むことはできない。傍聴人には証言台に立つときは別として、発言権があるわけでないので静粛にしていなければならない。ヤジや拍手も厳禁で、居眠りなどの不謹慎な態度を見せると法廷の神聖さを侮辱したと判断され、退廷を命じられるだけでなく、悪質な場合は処罰されることもある。

私(boro)は暇なとき、東京地裁へ裁判を傍聴しに出かけたりしますが、傍聴するのはB級事件の初公判がほとんど。有名な事件を傍聴したいと思っているのだが、スケジュールが合わなかったり、抽選や先着順となったりするのでなかなか傍聴席を確保できず、いつの間にか気軽にいつでも傍聴できるB級事件を聴くことが多くなってしまった。初公判を傍聴する理由は起訴状朗読を聴かなければどんな事件なのか分からないからである。B級事件の裁判はそのほとんどが2回の公判で終わる。初公判では1時間で検察側の論告・求刑、弁護側の最終弁論、被告人の最終陳述まで進めて結審し、次回が判決公判となり、ほとんど5分程度で終わる。

2002年(平成14年)8月7日、巨人軍の前監督だった長嶋茂雄(当時66歳)宅に包丁をもった無職の男(当時65歳)が押し入り、「三奈に会わせろ。写真を撮らせろ」と家政婦(当時67歳)を脅した事件があったが、このとき次女の三奈(当時34歳)は不在だった。この事件の初公判が10月21日、東京地裁であり、傍聴に出かけた。裁判所に着いたのは開廷5分前で、もしかしたら傍聴席が満席で入れないかもしれないと思いながらも法廷のドアを開けたが、傍聴席には誰もいなかった。結局、一般人で傍聴したのは自分だけで、他に新聞記者らしき人が1人、公判の途中で入ってきたが、その後出たり入ったりを繰り返していた。被告人は当時65歳だったが、足元がおぼつかなくよぼよぼの80歳くらいの老人のように見え、とても事件を起こした男とは思えなかった。三奈の熱烈なファンらしく、彼女をどう思っているのかと問われると、それまで元気がなく、何を訊かれてもぼそぼそと答えていたのに、急に元気になって照れくさそうに笑いながら「ほほのあたりがぽっちゃりしていて可愛い」と述べた。検察側が懲役1年を求刑し1時間ほどで結審した。11月6日、判決公判があり、3年の執行猶予付きになったことを新聞記事で知った。

裁面調書

裁面調書

裁判官面前調書の略で、被告人以外の者が裁判官の面前で供述した内容を録取した書面などを指す。

詐欺及び恐喝の罪

詐欺及び恐喝の罪

刑法246条(詐欺) 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
刑法246条の2(電子計算機使用詐欺) 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処する。
刑法247条(背任) 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法248条(準詐欺) 未成年者の知慮浅薄又は人の心神耗弱に乗じて、その財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処する。
刑法249条(恐喝) 人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
刑法250条(未遂罪) この章の罪の未遂は、罰する。

差押え

差押え

差押えは裁判官が発行した差押許可状にもとづいて行わなければならない。許可状を請求できるのは検察官・検察事務官、警察官である。許可状請求権をもたない者は差押えをすることができない。その許可状には被疑者の氏名、差押えるべき物・場所が明記してなければならない。また、差押えの執行には時間の制限があり、令状に夜間でも執行できるという記載がない場合は原則として、日の出から日没までの間しか差押えのために住居や船舶内などに立ち入ることはできない。なお、差押えには立会人がつけられる。被疑者・弁護人は立ち会うことができないが、捜査機関が認めたときはこの限りではない。

殺人罪

殺人罪

こうすれば死ぬだろうと故意に他人を攻撃し、その結果として相手が死亡すれば殺人罪刑法199条)となり、死刑または無期もしくは5年以上の懲役。(2005年1月1日施行の改正刑法により「3年以上の懲役」を「5年以上の懲役」に改正)

殺人行為には、積極的に禁止されている行為を実行する「作為犯」とするべき行為を実行しない「不作為犯」がある。例えば、生まれたばかりの赤ちゃんにミルクを与えないという行為も殺そうという意思があれば「不作為犯」となる。

「不作為犯」の殺人罪と認められた事件にライフスペース事件がある。

殺そうとしたが、相手が一命をとりとめた場合や、殺そうとして追いかけて相手が転んで死んだ場合は殺人未遂罪(刑法203条)となり、罰せられる。また、殺人を犯す目的で毒薬や凶器を準備すると殺人予備罪(刑法201条)となり、2年以下の懲役に処せられるが、情状によりその刑を免除されることもある。

相手に「死んでくれ」と言い、相手の承諾を得て殺すと同意殺人罪(別名・嘱託殺人罪承諾殺人罪/刑法202条)となる。安楽死は嘱託殺人と呼ばれ、医師が正当な手続きで行なった場合は処罰されない。自殺を決意させたり(教唆)、自殺を決意した人の自殺行為を手助け(幇助)すると自殺関与罪(刑法202条)となる。共に、6ヶ月〜7年の懲役または禁錮。

組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律3条 次の各号に掲げる罪に当たる行為が、団体の活動(団体の意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するものをいう/以下同)として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたときは、その罪を犯した者は、当該各号に定める刑に処する。

3号 刑法199条(殺人)の罪 死刑又は無期若しくは5年以上の懲役(組織的殺人罪

4条 前条第1項第3号、第5号、第6号(刑法225条の2第1項に係る部分に限る。)、9号及び10号に掲げる罪に係る前条の罪の未遂は、罰する(組織的殺人未遂罪)。

6条 次の各号に掲げる罪で、これに当たる行為が、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものを犯す目的で、その予備をした者は、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。

1 刑法199条(殺人)の罪 5年以下の懲役(組織的殺人予備罪)。

SAT

SAT

Special Assault Team の略。(Assault :襲撃、突撃、強襲) ハイジャックや銃器使用の凶悪テロなどが起きた時、人質救出や犯人制圧にあたる精鋭部隊。警視庁など8都道府県警(北海道・警視庁・千葉・神奈川・愛知・大阪・福岡・沖縄)の機動隊に計約200人が配備されている。

1977年(昭和52年)9月28日〜10月1日の日本赤軍によるハイジャック事件(ダッカ事件)を契機に設けられた秘密部隊を警察庁が1996年(平成8年)に「SAT」(Special Assault Team)と命名した。1979年(昭和54年)1月26〜28日の大阪の三菱銀行猟銃強盗殺人事件や、1995年(平成7年)6月21〜22日の函館での全日空機ハイジャック事件(↓)、2000年(平成12年)5月3〜4日の西鉄バスジャック事件に投入された前例がある。一個班約20人編成で、狙撃用のライフルや西鉄バスジャック事件で使われた閃光弾なども装備。危険と隣り合わせの任務だけに、基本的に独身の警察官から選ばれる。海外にも同様の組織はあるが、任務が軍事、警察活動の中間的性格を帯びるため、米国の特殊装備戦術部隊「SWAT」は州警察に、英国の「SAS=特殊空挺任務部隊」は陸軍に所属する。

[ 函館での全日空機ハイジャック事件 ] 1995年(平成7年)6月21〜22日の函館での全日空機ハイジャック事件・・・休職中の銀行員(当時53歳)がオウム真理教(現・アレフ)を装い、水の入ったポリ袋を使って、羽田発函館行きの全日空機(乗員・乗客365人)を乗っ取った。函館地裁では求刑15年に対して懲役8年となり、検察側が量刑が軽すぎるとして控訴、札幌高裁では懲役10年となった。

SATが射殺された初めてのケース・・・

[ 愛知発砲立てこもり事件 ] 2007年(平成19年)5月17日午後4時、愛知県長久手(ながくて)町の住宅街で元暴力団組員の大林久人(当時50歳)が拳銃を発砲して元妻との復縁トラブルの末、元妻を人質に籠城する事件が発生したが、この際、警察官1人が死亡、別の警察官も重傷を負った。男の長男と次女も撃たれた。死亡した警察官は林一歩(かずほ)巡査部長(23歳)で、左胸を撃たれており、翌18日午前0時14分、死亡が確認された。林巡査部長は防弾チョッキを着ていたが、チョッキのすき間の左鎖骨から入った銃弾が心臓に達した。死因は出血死だった。SATの隊員が現場で死亡したのは初めて。翌18日午後、元妻が自力で脱出。午後8時50分ころ、大林が投降し、事件は29時間ぶりに解決した。2008年(平成20年)12月17日、名古屋地裁で判決公判があり、裁判長は「計画は場当たり的で反省の態度も示している。矯正が不可能とまでは言い切れない」として無期懲役を言い渡した。検察側、弁護側ともに控訴した。2009年(平成21年)9月18日、名古屋高裁は無期懲役(求刑・死刑)とした1審・名古屋地裁判決を支持、検察、弁護側双方の控訴を棄却した。9月30日、弁護側が上告。10月1日、検察側も上告。2011年(平成23年)3月22日、最高裁で上告棄却で無期懲役が確定。

サディズム

サディズム

Sadism 「加虐性愛」と訳されることが多い。相手(動物も含む)に身体的苦痛や辱めを与えたりすることが性的な興奮、満足の主要な源泉であるようなパラフィリア(Paraphilia/性倒錯)のことで、心理的にマゾヒズム(Masochism/被虐性愛)と共通の起源をもつという観点からサドマゾヒズムと総称されることが多い。18世紀フランスに実在した作家のマルキ・ド・サド侯爵の作品『ジュスティーヌ』『悪徳の栄え』に由来する言葉であり、ドイツの精神医学者クラフト・エービングによって名づけられた。鞭打ちなどのサディズムの題材は古くから小説やポルノグラフィで好んで描かれてきた。
サディスムでは苦痛それ自体ばかりでなく、苦痛という罰を媒介にして疑似的な支配と服従の関係がつくられることが重要である。

サリン

サリン

Sarin ナチス・ドイツが開発した有機リン系の神経ガス。神経の興奮は神経伝達物質であるアセチルコリンによって伝えられるが、正常なときは、アセチルコリンは酵素によって分解される。だが、サリンなどの有機リン系物質はこの酵素と結合するため、その結果、アセチルコリンが体内にあふれ、次の神経伝達が出来なくなり、中枢神経や運動神経に障害が現れ、死亡する。

サリンが使われた無差別殺人事件に、1994年(平成6年)6月27日の松本サリン事件、翌1995年(平成7年)3月20日の地下鉄サリン事件がある。事件の詳細・・・オウム真理教

サリン等による人身被害の防止に関する法律 略して、サリン防止法が1995年(平成7年)4月21日に公布・施行された。

3条(製造等の禁止) 何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、サリン等を製造し、輸入し、所持し、譲り渡し、又は譲り受けてはならない。

 一 国又は地方公共団体の職員で政令で定めるものが試験又は研究のため製造し、輸入し、所持し、譲り渡し、又は譲り受けるとき。

 二 化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律(平成七年法律第六十五号。以下「化学兵器禁止法」という。)又は外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号)の規定により化学兵器禁止法第二条第三項に規定する特定物質の製造、所持、譲渡し若しくは譲受け、又は輸入をすることができる場合に該当して、製造し、所持し、譲り渡し、若しくは譲り受け、又は輸入するとき。

6条 3条(製造等の禁止)の規定に違反した者は、7年以下の懲役に処する。

2項 前条1項の犯罪の用に供する目的で前項の罪を犯した者は、10年以下の懲役に処する。ただし、同条1項の罪の実行の着手前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。

3項 前2項の未遂罪は、罰する(未遂罪)。

4(予備罪) 製造又は輸入に係る第一項又は第二項の罪を犯す目的でその予備をした者は、三年以下の懲役に処する。

5条(サリン発散罪) サリン等を発散させて公共の危険を生じさせた者は、無期又は2年以上の懲役に処する。

2項(未遂罪) 前項の未遂罪は、罰する。

3項(予備罪) 1項の罪を犯す目的でその予備をした者は、5年以下の懲役に処する。ただし、同項の罪の実行の着手前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。

サレンダー

サレンダー

Surrender 「降伏」と訳される。アメリカにおけるトラウマ研究の第一人者、ハーバード大学医学部準教授のジュディス・ハーマンが用いた言葉。虐待の加害者が徹底的に虐待することで、被害者が一切の抵抗や反抗が無駄と感じたのちに、むしろ加害者に少しでも手心を加えてもらうことや加害者が機嫌よくしてくれることを非常な好意や恩恵と受け取り、それを得るためには何でもし、加害者と仲良しを演じたりするようになる。この場合、被害者は自分のことを最悪の人間と見ることが多い。

何をもって「死」とするのかは法律で定義されているわけではない。したがって基本的には、呼吸停止・心臓停止・瞳孔の拡散という「三兆候説」によって死が確認されることになる。
2009年(平成21年)9月13日午後の参院本会議で成立、可決した改正臓器移植法により、「脳死」は一般的に「人の死」と位置づけられた。それまでは臓器移植が行なわれる場合に限って脳死は「死」としていた。

SIT

SIT

Special Investigation Team の略。(Investigation :捜査、調査、取り調べ) 1963年(昭和38年)3月31日の吉展ちゃん誘拐殺人事件をきっかけとして1964年(昭和39年)4月1日、警視庁の殺人事件を担当する捜査1課の第3強行担当班の中に「特殊班捜査係」として新設された。警視庁内部ではこの特殊班を通称「SIT」と呼ぶことが多い。公式には特殊班捜査係を英訳して「Special Investigation Team」としているが、実はこれは後講釈らしく、「捜査のS」「1課のI」「特殊班のT」にしたというのが本当らしい。

SIT出動の例(一部)・・・
1992年(平成4年)の町田市民家立て篭もり事件
1995年(平成7年)の東京都大田区の幼児篭城人質事件
1998年(平成10年)の東京証券取引所の篭城事件
2007年(平成19年)の暴力団による同じ組員殺害後に自宅アパート立て篭もり事件
2007年(平成19年)の東京都板橋区のアパートの元住人による3人の警官切りつけ立て篭もり事件

死刑になる犯罪

死刑になる犯罪

1、内乱首魁刑法77条)・・・国家の秩序や安全を脅かす罪。首謀者は死刑または無期。

2、外患誘致(刑法81条)・・・外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は死刑(「死刑」以外の刑罰を定めていない犯罪はこの犯罪だけである)。

3、外患援助(刑法82条)・・・外国からの武力の行使があったとき、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与えた者は死刑または無期もしくは2年以上の懲役。

4、現住建造物放火(刑法108条)・・・人が住居に使用、または人がいる建造物、汽車、電車、船舶または鉱坑を放火によって焼損した者は死刑または無期もしくは5年以上の懲役。

5、激発物の破裂(刑法117条)・・・火薬、ボイラーその他の激発すべき物を破裂させて、建造物、汽車、電車、船舶または鉱坑を損壊させた場合は放火罪と同様に罰せられる。また、それ以外の物を損壊し、公共の危険を生じさせた者も同様とする。

6、建造物浸害(刑法119条)・・・出水させて、人が住居に使用、または人がいる建造物、汽車、電車、鉱坑を浸害した者は死刑または無期もしくは3年以上の懲役。

7、汽車電車船舶覆没致死(刑法126条)・・・人がいる汽車や電車、船舶を転覆や沈没または破壊した者は、無期または3年以上の懲役。これによって人を死亡させた者は死刑または無期懲役。

8、往来危険による汽車転覆等(刑法127条)・・・鉄道やその標識、灯台や浮標を損壊し、またはその他の方法により、汽車や電車、船舶の往来の危険を生じさせた者は、無期または3年以上の懲役。これによって人を死亡させた者は死刑または無期懲役。

9、水道毒物混入致死(刑法146条)・・・公衆に供給する飲料の浄水や水源に毒物その他、人の健康を害する物を混入した者は2年以上の懲役。これによって人を死亡させた者は死刑または無期もしくは5年以上の懲役。

10、殺人(刑法199条)・・・死刑または無期もしくは5年以上の懲役。(2005年1月1日施行の改正刑法により「3年」から「5年」に改正された)

11、強盗致死傷(刑法240条)・・・強盗犯人が人を傷つけたときには無期または6年以上の懲役。死亡させたときは死刑または無期懲役。

12、強盗強姦致死傷(刑法241条)・・・強盗犯人が女を強姦したときには無期または7年以上の懲役。それによって女を死亡させるに至ったときは死刑または無期懲役。

以上、刑法では12種類あるが、他に特別法では5種類ある。(↓)

1、爆発物不法使用爆発物取締罰則1条)・・・治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ爆発物ヲ使用シタル者及ヒ人ヲシテ之ヲ使用セシメタル者ハ死刑又ハ無期若クハ七年以上ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス

2、決闘殺人決闘罪ニ関スル件3条)・・・決闘ニ依テ人ヲ殺傷シタル者ハ刑法ノ各本条ニ照シテ処断ス

3、航空機墜落致死航空機の強取等の処罰に関する法律 [ハイジャック防止法] 2条)・・・前条(1条)の罪を犯し、よつて人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。

(第1条 暴行若しくは脅迫を用い、又はその他の方法により人を抵抗不能の状態に陥れて、航行中の航空機を強取し、又はほしいままにその運航を支配した者は、無期又は七年以上の懲役に処する。)

4、人質殺害人質による強要行為等の処罰に関する法律4条)・・・第2条又は前条の罪を犯した者が、人質にされている者を殺したときは、死刑又は無期懲役に処する。

(2条 二人以上共同して、かつ、凶器を示して人を逮捕し、又は監禁した者が、これを人質にして、第三者に対し、義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求したときは、無期又は五年以上の懲役に処する。)

(3条 航空機の強取等の処罰に関する法律(昭和四十五年法律第六十八号)1条1項の罪を犯した者が、当該航空機内にある者を人質にして、第三者に対し、義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求したときは、無期又は十年以上の懲役に処する。)

5、航空機強取等致死航空機の強取等の処罰に関する法律 [ハイジャック防止法] 2条)・・・前条(1条)の罪を犯し、よつて人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。

(第1条 暴行若しくは脅迫を用い、又はその他の方法により人を抵抗不能の状態に陥れて、航行中の航空機を強取し、又はほしいままにその運航を支配した者は、無期又は七年以上の懲役に処する。)

刑法、特別法を合わせて17種類の中で、死刑適用は強盗致死、殺人に集中しており、両方合わせて全体の98%を占めている。

自己愛憤怒

自己愛憤怒

アメリカの精神分析医ハインツ・コフートは、自己愛が傷つけられることによって生じる激しい怒りを自己愛憤怒と呼んだ。自己がしっかりしていないと、この憤怒によって自分がばらばらになる。そのため、あと先のことが考えられないし、相手に容赦のない攻撃をしてしまう。攻撃をしても癒されるわけではないので、攻撃性は執拗なものになる。神戸須磨児童連続殺傷事件の犯人の少年が「酒鬼薔薇」を「おにばら」と読み間違えたことに腹を立てたことなど。

時効

時効

刑事事件の時効には2種類あり、ひとつが刑事訴訟法250条の公訴時効、もうひとつが刑法31条の刑の時効

公訴時効とは、犯人が逮捕されずに、ある一定期間を過ぎてしまうと犯人を起訴することができない時効のこと。一般に時効といえばこちらを指すが、時効の期間は罪状によって異なる。

2010年(平成22年)4月27日施行の改正刑事訴訟法により、時効は次のようになった。

刑事訴訟法250条  時効は、人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。

一 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については30年
二 長期二十年の懲役又は禁錮に当たる罪については20年
三 前二号に掲げる罪以外の罪については10年

2  時効は、人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については次に掲げる期間を経過することによつて完成する。

一  死刑に当たる罪については25年
二  無期の懲役又は禁錮に当たる罪については15年
三  長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については10年
四  長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については7年
五  長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については5年
六  長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については3年
七  拘留又は科料に当たる罪については1年

分かりやすく、表にまとめると次のようになる。

人を死亡させた場合 人を死亡させていない場合
罪の法定最高刑 期間 罪の法定最高刑 期間
死刑(殺人、強盗致死など) 死刑(外患誘致、内乱首魁など) 25年
無期の懲役・禁錮(強姦致死など) 30年 無期の懲役・禁錮 15年
長期20年の懲役・禁錮(傷害致死など) 20年 長期15年以上の懲役・禁錮 10年
長期20年未満の懲役・禁錮
(承諾・嘱託殺人、自動車運転過失致死など)
10年 長期15年未満の懲役・禁錮 7年
長期10年未満の懲役・禁錮 5年
長期5年未満の懲役・禁錮 3年
/ 罰金
拘留または科料 1年

ただし、共犯者が起訴され、その裁判が継続中の場合や、犯人が国外に逃亡中の場合は、時効が停止状態になる。

また、改正刑事訴訟法は施行時点で時効未成立の事件にも適用されることになったが、その主な未解決事件に次のような事件がある。

1995年(平成7年) 八王子スーパー3人射殺事件
1996年(平成8年) JR池袋駅構内での立教大生殺害事件(↓)
1996年(平成8年) 柴又上智大生刺殺放火事件
1997年(平成9年) 千葉都立高校教諭殺害事件
1999年(平成11年) 名古屋市西区主婦殺害事件
2000年(平成12年) 世田谷一家惨殺事件

1996(平成8年)、JR池袋駅構内で立教大4年の小林悟(21歳)が男に殴られ殺害された事件で、2012年(平成24年)4月16日、悟の父親は警察庁に捜査終結を求める要望書を提出した。父親は東京・霞が関で記者会見し、「過去にさかのぼり、公訴時効の撤廃が適用されるのは法の原則に反する」と主張した。2020年(令和2年)12月11日、警視庁は容疑者不詳で書類送検した。今後もホームページなどで情報提供を呼びかけ、有力な情報があれば捜査する。

時効を迎えた有名な事件に、1968年(昭和43年)12月10日に東京都府中市で起きた「3億円事件」や1984年(昭和59年)3月18日江崎勝久・グリコ社長誘拐〜1985年(昭和60年)8月12日「終結宣言」までの「グリコ・森永事件」がある。

また、時効目前にして被疑者が逮捕された有名な殺人事件に、1982年(昭和57年)8月19日の「松山ホステス殺害事件」がある。全国に指名手配された福田和子は時効成立3週間前の1997年(平成9年)7月29日に、福井市内で逮捕され、さらに、その後の取り調べを経て起訴されたのは時効まで約11時間を残すだけというギリギリのタイミングだった。1999年(平成11年)5月31日、松山地裁で無期懲役の判決。2000年(平成12年)12月13日、高松高裁で控訴を棄却。2003年(平成15年)11月18日、最高裁で上告棄却で無期懲役が確定した。

公訴時効がなぜあるのかということについては、(1)事件が時間とともに社会に与える影響が減少していくこと、それにともない長い間逃げ回って生活することは罰を受けるのと同じというもの。(2)証拠の散逸、つまり時間が経つことによって事件の手がかりとなる証拠が失われたり、それを立証することが難しくなることとされている。ちなみにドイツでは最近、殺人の公訴時効を20年から30年に延ばし、特に凶悪な事件については時効そのものをなくしたらしい。

もう一方の刑の時効は、有罪判決が言い渡されたあとに、いつまでも罪を償わずに逃げている場合に適用される時効のこと。脱獄囚などにはこの時効が適用される。(刑法31条↓)

死刑  30年
無期懲役・禁錮  20年
10年以上の懲役・禁錮  15年
3年〜10年未満の懲役・禁錮  10年
3年未満の懲役・禁錮 5年
罰金刑 3年
拘留・科料・没収 1年

なお、起訴されたあとに逃亡し、所在が不明となってしまっている状態の刑確定前の「逃亡被告人」には、時効がまったく適用されない。

損害賠償請求権の時効については、民法724条に規定されている。

民法724条・・・不法行為による損害賠償の請求権は、被害者またはその法定代理人(親や後見人)が、損害の発生したこと及び誰が加害者であるかを知ったときから3年間その権利を行使しないと、時効によって消滅する。また、この請求権は不法行為が行なわれたときから20年過ぎたときも消滅するが、これを除斥期間という。

1968年(昭和43年)12月10日に東京都府中市で起きた3億円事件は、事件発生から7年後の1975年(昭和50年)12月10日に刑事事件としての公訴時効が成立しているが、事件発生から20年後の1988年(昭和63年)12月10日に民事でも公訴時効が成立している。

死後硬直

死後硬直

人間は死の直後、ほとんどの場合、全身の筋肉の緊張がなくなり、死体はダランと弛緩した状態になる。だが、約1〜3時間を経過すると、徐々に硬直が始まる。

死後 1〜 3時間後  あご、首などが硬直し始める
死後 5〜 6時間後  手足の指が硬直し始める
死後11〜12時間後  手足の指の硬直が相当強くなる
死後17〜18時間後  全身の硬直が最も強くなる
死後30〜40時間以上後  全身の硬直が自然に解け始める
死後70〜90時間以上後  全身の硬直が完全に解ける

硬直が解け始めるのは夏の暑い時期では約30時間後、冬の寒い時期では2〜4日間、その状態が続き、その後徐々に硬直が解けていく。また、温度だけでなく湿度や通風の状態で時間的な経過はかなり異なってくる。なかには死後すぐに硬直が起こるケースや硬直する順序が逆に進行するケースがあることも報告されている。

自首 出頭

自首 出頭

犯人が特定される前に、犯人自ら申し出る場合を自首といい、自首すれば刑法42条をもとに減刑される可能性がある。犯人が特定されてから逮捕される前に犯人自ら警察に出向く場合は自首とは言わず、出頭と言い、自首とは別扱いになる。

事情聴取 取り調べ

事情聴取 取り調べ

事情聴取の場合、被疑者としてではなく、参考人という形で聴取されるケースが多く、あくまで任意で行うので、用事があるからという理由で途中で帰宅することもできる。だが、その対象者が被疑者である可能性が高い場合、24時間の行動確認を取られることも覚悟しなければならない。また、事情聴取の間に逮捕状を取ったり、事案がはっきりしてきた場合、その場で逮捕ということもありえる。携帯電話で裁判所に行っている捜査員とやりとりして「逮捕状がでた」となると、そのときから事情聴取が検挙後の取り調べに変わることもある。取り調べは検挙後が原則で、強制力のある事情聴取となる。

死体損壊罪 死体遺棄罪

死体損壊罪 死体遺棄罪

神祠、仏堂、墓所その他の礼拝所に対し、公然と不敬な行為をした者は、6ヶ月以下の懲役もしくは禁錮、または10万円以下の罰金(刑法188条)。

説教、礼拝または葬式を妨害した者は1年以下の懲役もしくは禁錮または10万円以下の罰金(刑法188条2項)。

墳墓を発掘した者は、2年以下の懲役(刑法189条)。

死体、遺骨、遺髪または棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、または領得した者は3年以下の懲役(刑法190条)。

189条の罪を犯して、死体、遺骨、遺髪または棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、または領得した者は、3ヶ月以上5年以下の懲役(刑法191条)。

検視を経ないで変死者を葬った者は、10万円以下の罰金または科料(刑法192条)。

示談

示談

刑事事件で加害者と被害者の間で話し合い、被害者に対し示談金を払って和解すること。示談が成立することで被害届や告訴を取り下げて事件が終了となったり、検察官が不起訴処分にすることもある。起訴されても当事者間で問題が解決されたと判断し、減刑されたり執行猶予が付くこともある。

実況見分 現場検証

実況見分 現場検証

山林の死体遺棄現場のような公共の場所での捜査は令状なしで行なえるが、これを実況見分という。

だが、持ち主のはっきりしている人家やビルの内部などは、勝手に入って捜査をするわけにいかず、令状を取ってから強制的に行なう。これを現場検証という。

どちらも犯行現場の状況を調べたり、証拠を集めたりする作業を行なう意味では内容に変わりはない。

執行猶予

執行猶予

一定の期間、刑の執行を猶予して様子を見る制度。猶予期間中に罪を犯して別の刑を言い渡されない限り、有罪判決はなかったことになる。無事に執行猶予の期間を過ごせば前科にはならない。

執行猶予がつくには条件があり、まず以前に禁錮や懲役の刑を受けたことがないこと、刑を受けたことがあっても、それから5年以上経過していること。その条件を満たした上で、3年以下の懲役か禁錮、または50万円以下の罰金に処する者には、1年〜5年までの執行猶予を言い渡すことができる。また、執行猶予中に罪を犯した場合でも、1年以下の刑であれば、もう1度執行猶予をつけられる。ただし、その場合は保護観察付きの執行猶予となる。

失踪宣告

失踪宣告

生死不明の人を法律上死亡したとみなす効果を生じさせる制度。民法30〜32条に規定されている。行方不明者の生死が7年間明らかでないとき(普通失踪)や、戦争、船舶の沈没、震災などに遭遇し、生死が1年間明らかでない時(危難失踪)、申し立てを受けた家庭裁判所が官報の公告を経て行う。不明者の生存が分かった場合、家裁は本人または利害関係人の請求により、宣告を取り消さなければならない。

実名報道

実名報道

少年法61条は「家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容貌等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞その他の出版物に掲載してはならない」と規定しているが、罰則規定はない。

日本新聞協会は、少年の健全育成を目指す少年法の趣旨にのっとり、実名や顔写真は掲載すべきでないとの方針を決めている。しかし、逃走中に新たな凶悪事件が懸念されるなど、少年の保護より公益が優先する場合は例外としている。

2021年(令和3年)5月に成立した改正少年法は、事件を起こした18・19歳を「特定少年」と位置づけ、2022年(令和4年)4月以降は、起訴後の実名報道の禁止が解除される。

少年の実名を報道した例・・・

1950年(昭和25年)9月22日に起きた日大ギャング事件の山際啓之(やまぎわひろゆき/当時19歳/懲役4〜7年の不定期刑)と共犯の藤本佐文(さぶみ/当時18歳/懲役2年・執行猶予3年)。

1958年(昭和33年)8月に起きた小松川女高生殺人事件の李珍宇(イチヌ/当時18歳/死刑)。

1960年(昭和35年)10月12日に起きた浅沼社会党委員長暗殺事件の山口二矢(おとや/当時17歳/練馬鑑別所で自殺)。

1961年(昭和36年)2月1日に起きた嶋中事件の小森一孝(当時17歳/懲役15年)。

1965年(昭和40年)7月29日に警官を射殺したいわゆる少年ライフル魔事件の片桐操(当時18歳/死刑)。

1968年(昭和43年)10月から11月にかけて4人を射殺した連続射殺魔事件の永山則夫(当時19歳/死刑)。

1972年(昭和47年)2月の連合赤軍あさま山荘事件の加藤倫教(みちのり/当時19歳/懲役13年)と加藤M(当時16歳/中等少年院)。

1988年(昭和63年)11月25日〜翌1989年(昭和64年)1月4日までの41日間、監禁した上で殺害した女子高生コンクリ詰め殺人事件の加害者の少年たち(主犯=当時18歳/主犯=懲役20年)を『週刊文春』(1989年4月20日号)が実名で掲載(担当記者:勝谷誠彦/編集長:花田紀凱)。

1992年(平成4年)3月5日に千葉県船橋市で家族4人を殺害した事件の加害者の関光彦(てるひこ/当時19歳/死刑)を『週刊新潮』(1992年3月19日号)が実名で掲載。

1994年(平成6年)9〜10月に起きた連続リンチ殺人事件の小林正人(当時19歳/死刑)と小森淳(現姓・大倉/当時19歳/死刑)と河渕匡由(現姓・芳我/当時18歳/死刑)を『朝日新聞』やNHKが実名で報道。

1997年(平成9年)6月27日に逮捕された神戸須磨児童連続殺傷事件の加害者のA(当時14歳/医療少年院送致)を同年7月に発売された『フォーカス』(新潮社/現・休刊)や『週刊新潮』(新潮社/目線入り)が実名で掲載。

1998年(平成10年)1月8日、大阪府堺市で少年(当時19歳)による幼児ら3人を殺傷した通り魔事件が発生し、1998年(平成10年)2月18日発売の『新潮45』3月号(新潮社)に犯人の少年の実名と顔写真が掲載された。少年は少年法61条に基づく「実名で報道されない権利」を侵害されたとして、新潮社と編集長の石井昴、執筆者の高山文彦を相手取り、慰謝料などの損害賠償を求めていた。1審の大阪地裁での判決では新潮社側に支払いを命じたが、2000年(平成12年)2月28日の2審の大阪高裁では、「少年法は少年被害者の実名報道を禁じているが、凶悪重大な事件では実名報道も正当と認められる」として少年の請求を棄却した。ちなみに、この通り魔事件の刑事裁判は2002年(平成14年)2月12日、最高裁で、1、2審での懲役18年の判決を支持して被告の上告を棄却する判決が下り、確定した。

1999年(平成11年)4月14日に起きた山口母子殺人事件で加害者の福田孝行(現姓・大月/当時18歳/死刑)を『週間新潮』(2000年3月28日号)が実名と顔写真を掲載。

2013年(平成25年)2月28日、東京・吉祥寺の路上で帰宅途中の女性(22歳)が刺殺された事件で、強盗殺人容疑で逮捕されたルーマニア国籍の少年(当時17歳/無期懲役)と日本国籍の少年(当時18歳/無期懲役)の2人を『週刊新潮』(2013年3月14日号)が「凶悪冷血『未成年ペア』肖像写真と荒廃家庭」と題する記事とともに実名と顔写真を掲載。

2015年(平成27年)1月27日、名古屋市のアパートの一室で女性(77歳)の遺体が見つかり、この部屋に住む名古屋大学の女子学生(当時19歳)が殺人の疑いで逮捕されたが、『週刊新潮』(2015年2月12日号)が「心に魔物を育てた老女殺害『名大女子学生』 特集 19歳の履歴書」と題する記事とともに女子学生の実名と顔写真を掲載。

2015年(平成27年)2月20日、川崎市川崎区港町の河川敷で中学1年生の上村(うえむら)遼太君(13歳)が殺害された事件で主犯(当時18歳/懲役9〜13年の不定期刑)とB(当時17歳/懲役4〜6年6ヶ月の不定期刑)とC(当時17歳/懲役6〜10年の不定期刑)の計3人が逮捕されたが、『週刊新潮』(2015年3月12日号)が「救いがない『川崎中1殺人』の全景 鑑別所でも更生しなかった『18歳主犯』の身上報告」と題する記事とともに主犯の少年の実名と顔写真を掲載(BとCについてはモザイク処理した顔写真のみを掲載)。

2015年(平成27年)9月14日発売の『週刊ポスト』(2015年9月25日・10月2日号)が1997年(平成9年)6月27日に逮捕された神戸須磨児童連続殺傷事件の加害者のA(当時14歳/医療少年院送致)の事件当時の実名と顔写真を掲載。

2021年(令和3年)10月12日、山梨県甲府市の会社員・井上盛司(55歳)と妻・章恵(50歳)が遺体で見つかった事件で、10月21日発売の『週刊新潮』(10月28日号)は逮捕された少年(当時19歳)の実名と顔写真、高校名を掲載した。

2022年(令和4年)4月8日、甲府地検は2021年(令和3年)10月12日に起きた山梨県甲府市の殺人放火事件で男(当時19歳/死刑)を殺人などの罪で起訴し、氏名が遠藤裕喜(ゆうき)であることを公表した。改正少年法施行後、18歳、19歳の「特定少年」の氏名が公表されるのは初めて。甲府地検は今回初めて特定少年の氏名を公表した理由について、「重大事案であり、地域社会に与える影響も深刻」などと説明している。一方、被告の代理人は氏名などの公表について、「事前の弁護人らからの申し入れが認められず遺憾」とのコメントを発表した。

2023年(令和5年)6月14日、岐阜市の陸上自衛隊日野基本射撃場で3人が自動小銃で撃たれ、2人が死亡、1人がけがを負った事件で、6月22日発売の『週刊新潮』(6月29日号)は、「冷酷無比に銃乱射 弾薬奪ってあわや無差別大量殺人」というタイトルで、殺人容疑で送検された自衛官候補生の男(当時18歳)の入隊までの経歴とともに実名と顔写真を掲載した。『週刊新潮』編集部は「無差別大量殺人の惨事になる恐れもあり、社会に与えた衝撃はすさまじい。自衛隊への国民の信頼を揺るがしかねない問題で、重大性に鑑み、実名・顔写真を含め、背景を探る報道をすることが常識的に妥当と判断した」とコメントを発表。

児童虐待防止法

児童虐待防止法

近年、児童虐待が深刻な社会問題となっており、児童福祉法では対処しきれなくなり、児童虐待の防止等に関する法律 略して、児童虐待防止法が2000年(平成12年)5月24日に公布、11月20日に施行された。

2008年(平成20年)4月の改正法施行前までは虐待の疑いがあっても保護者が拒めば立ち入り調査を実施できなかったが、改正法では裁判所の許可を得た上で、鍵を壊すなどして強制立ち入り調査ができるよう児童相談所の権限が強化された。

児童虐待被害、最多1394人=昨年、緊急保護も大幅増−警察庁

児童虐待事件の摘発が昨年1年間に1380件あり、被害に遭った18歳未満の子どもの数は1394人だったことが14日、警察庁のまとめで分かった。いずれも過去最多を更新した。警察が児童相談所(児相)に虐待の疑いを通告した子どもの数は、過去最多の8万252人(確定値)。通告内容では、暴言を浴びせるなどの「心理的虐待」が71.6%で、うち6割以上は子どもの前で妻や夫らに暴力を振るったりする「面前DV」だった。身体的虐待は18.5%だった。児童虐待事件の摘発件数は前年比242件増の1380件で、79.3%が身体的虐待、16.4%が性的虐待。摘発人数は同243人増の1419人だった。被害者との関係で見ると、身体的虐待は実父母が7割以上を占め、性的虐待は養父、継父が計99人で最多だった。被害者数は前年比226人増の1394人。死亡したのは同22人減の36人で、全体に占める割合は2.6%と、これまでで最も低かった。生命の危険があるなどとして警察が緊急で保護した子どもの数は、前年比733人増の4571人。児相から援助要請を受けて警察官が現場に同行したケースは339件あった。

自動車運転死傷処罰法

自動車運転死傷処罰法

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律が正式名称。飲酒運転や悪質な運転で死傷事故を起こしても刑法の「危険運転致死傷罪」の適用が見送られるケースがあり、事故の発生実態に即した法整備が求められていた。さらに、罰則の見直しを求める被害者や遺族等の声を受け、悪質で危険な運転者に対する厳罰化を盛り込んだ新たな法律として2014年(平成26年)5月20日から施行された。
刑法から移行された危険運転致死傷罪(1)〜(5)号
(1)アルコール又は薬物の影響によりで正常な運転が困難な状態で自動車を走行する行為
(2)その進行の制御が困難なほどの高速度で自動車を走行する行為
(3)その進行を制御する技能がないのに自動車を走行する行為
(4)人や車への意図的な接近、割り込みをし、自動車を危険な速度で運転する行為
(5)信号を殊更無視し、危険な速度で自動車を運転する行為
適用対象の追加として、(6)一方通行路や高速道路の逆走、歩行者天国の暴走など「(政令で定める)通行禁止道路を自動車を危険な速度で走行する行為」が追加され、これらの行為によって、人を死亡させると1年以上20年以下の懲役、負傷させると15年以下の懲役となる(第2条)。
政令で定める通行禁止道路とは車両通行止め道路・歩行者専用道路・自転車及び歩行者専用道路・一方通行道路(逆走の場合)・高速道路の中央から右側部分・安全地帯等など。
適用対象の親類型として、アルコールや薬物の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した場合や幻覚や発作を伴う(政令で定める)病気の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転して人を死亡させた場合、危険運転致死傷罪として15年以下の懲役、負傷させた場合は12年以下の懲役となる(第3条)。
政令で定める病気とは認知、予測、判断、操作といった自動車の安全な運転に必要な能力のいずれかを欠くおそれがある症状を呈する総合失調症や低血糖症、そううつ病(そう病、うつ病を含む)・意識障害や運動障害をもたらす発作が再発するおそれがあるてんかん(発作が睡眠中にのみ再発するものを除く)・再発性の失神・重度の眠気の症状を呈する睡眠障害。
アルコールや薬物の影響で運転上必要な注意を怠り死傷事故を起こした場合に、その影響の有無や程度の発覚を免れるために、さらにアルコールや薬物を摂取したり、その場を離れて身体に保有するアルコールや薬物の濃度を減少させるなどすると過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪となり、12年以下の懲役になる(第4条)。
刑法から自動車運転過失致死傷罪が移行され、過失運転致死傷罪に名称変更された。自動車の運転上必要な注意を怠り、人を死傷させると7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金となる(第5条)。
第2条(第3号を除く)の罪を犯した者(人を負傷させた者に限る)がその罪を犯したときに無免許運転をしたものであるときは6ヶ月以上の懲役に処する。第3条の罪を犯した者がその罪を犯したときに無免許運転をしたものであるときは、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は6ヶ月以上の懲役に処する。第4条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、15年以下の懲役に処する。前条の罪を犯した者が、その罪を犯したときに無免許運転をしたものであるときは、10年以下の懲役に処する(第6条)。

児童自立支援施設

児童自立支援施設

法務省管轄で矯正教育が目的の少年院とは違い、児童福祉法上の支援をするために各都道府県に設置が義務付けられている厚生労働省管轄の福祉施設。不良行為をしたり、家庭環境などに問題がある少年を入所させる。また、少年を保護者のもとから通わせて、職員が生活を共にし、生活・学習の指導などを行うケースもある。国立、民間も含め全国に58施設ある。感化院→少年教護院→教護院→児童自立支援施設と名称が変わってきた。

2003年(平成15年)7月1日夜、長崎市で中学1年の男子生徒(当時12歳)が大型電器店から幼稚園児(4歳)を連れ出し、そこから4キロ離れた立体駐車場の屋上から全裸にして20メートル下に突き落として殺害するという事件が起きたが、9月29日、長崎家裁はこの男子生徒を児童自立支援施設へ送致する保護処分を決定した。

2004年(平成16年)6月1日、長崎県佐世保市で小学6年の女子児童(当時11歳)が自分が通う小学校内で同級生の女子児童(12歳)をカッターナイフで殺害するという事件が起きているが、9月15日、長崎家裁佐世保支部はこの女子児童を児童自立支援施設へ送致する保護処分を決定している。佐世保小6同級生殺害事件

児童買春・ポルノ禁止法

児童買春・ポルノ禁止法

児童買春や児童ポルノは、児童の権利を著しく侵害し、児童の心身に有害な影響を及ぼすものとして、児童買春、児童ポルノに係わる行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律 略して、児童買春・ポルノ禁止法が1999年(平成11年)5月26日に公布、11月1日に施行された。

第4条 児童買春をした者は、5年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。

第7条 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

過激で露出度の高い水着を着せた少女のDVDを販売したとして、神奈川県警少年捜査課と栄署などは30日までに、児童買春・ポルノ禁止法違反の疑いで、卸元の会社社長ら33〜54歳の男7人を逮捕した。県警によると、「着エロ」と呼ばれるこうした映像は、児童ポルノに該当するかどうかが業界で「グレーゾーン」とされていたが、2014年6月の法改正で定義が明確化された。逮捕容疑は、社長らは共謀して2014年6月と今年2月、10歳前後の少女2人が出演するDVD計1500枚を計48万6千円で卸先に納品し、販売元の社員は共謀して今年7月、男性客2人にDVD4枚を計約1万2千円で販売した、などとしている。男のうち4人は「グレーラインだと思っていた」などと容疑を否認しているという。県警によると、少なくとも計2200本を販売し、計約560万円を売り上げていた。熊本県警が14年5月に販売サイトを発見し、合同で捜査していた。

自白

自白

自己の犯罪事実の全部またはその重要部分を認める被告人の供述のことをいう。自白は被告人自身が認めた直接証拠であるため、無理に白状させる危険がある。そこで、憲法や刑事訴訟法は自白について証拠能力、証明力に制限を加えることでこの危険を低減しようとしている。このうち、証拠能力に制限を加えるものが自白法則(憲法38条2項、刑事訴訟法319条1項)であり、証明力に制限を加えるものが補強法則(憲法38条3項、刑事訴訟法319条2項)である。
憲法38条2項 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
刑事訴訟法319条1項 強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることができない。
憲法38条3項 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。
刑事訴訟法319条2項 被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。
自白と類似の概念として承認および自認がある。承認は自己に不利益な事実を認める供述であり(刑事訴訟法322条1項)、自白は承認の一種である。
刑事訴訟法322条1項 被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とするものであるとき、又は特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り、これを証拠とすることができる。但し、被告人に不利益な事実の承認を内容とする書面は、その承認が自白でない場合においても、第319条の規定に準じ、任意にされたものでない疑があると認めるときは、これを証拠とすることができない。
また、自認は起訴された犯罪について有罪であると認める陳述であり(刑事訴訟法319条3項)、自白よりも狭い概念である。
刑事訴訟法319条3項 前二項(刑事訴訟法319条1項と2項)の自白には、起訴された犯罪について有罪であることを自認する場合も含む。

支払用カード電磁的記録に関する罪

支払用カード電磁的記録に関する罪

「支払用カード」とはクレジットカード、銀行のキャシュカード、テレホンカードなどのプリペイドカード、エディ、スイカなどのカード型電子マネー、高速道路なETCカードなどをいう。
刑法163条の2(支払用カード電磁的記録不正作出等) 人の財産上の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する電磁的記録であって、クレジットカードその他の代金又は料金の支払用のカードを構成するものを不正に作った者は、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。預貯金の引出用のカードを構成する電磁的記録を不正に作った者も、同様とする。
2項 不正に作られた前項の電磁的記録を、同項の目的で、人の財産上の事務処理の用に供した者も、同項と同様とする。
3項 不正に作られた第一項の電磁的記録をその構成部分とするカードを、同項の目的で、譲り渡し、貸し渡し、又は輸入した者も、同項と同様とする。
刑法163条の3(不正電磁的記録カード所持) 前条1項の目的で、同条3項のカードを所持した者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
偽造テレホンカード約3850枚を所持していたイラン国籍の男に懲役2年の判決。偽造ハイウェイカード90枚を所持していた男に懲役1年2ヶ月の判決が下っている。
刑法163条の4(支払用カード電磁的記録不正作出準備) 163条の2 1項の犯罪行為の用に供する目的で、同項の電磁的記録の情報を取得した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。情を知って、その情報を提供した者も、同様とする。
2項 不正に取得された163条の1 1項の電磁的記録の情報を、前項の目的で保管した者も、同項と同様とする。
3項 1項の目的で、器械又は原料を準備した者も、同項と同様とする。
他人のクレジットカードなどの情報をこっそり機械で読み取って記憶させる「スキミング」という手口がこれにあたる。
刑法163条の5(未遂罪) 163条の2及び前条1項の罪の未遂は、罰する。

司法解剖 行政解剖

司法解剖 行政解剖

司法解剖刑事訴訟法165条と168条に基づいて、犯罪の疑いのある死体(他殺体)について行なわれる。殺人事件のときだけでなく、交通事故、爆発事故、遺棄致死、原因不明など犯罪の被害者である可能性の高い場合にも、法医学の専門医によって行なわれる。

ちなみに警視庁管内における司法解剖は、都内23区については東大・慶応大・東京医科歯科大、都下については杏林大・慈恵医科大に委託されている。

行政解剖死体解剖保存法8条などに基づいて、犯罪とは無関係のようでも死因が普通でない場合、たとえば伝染病や中毒、災害、自殺などの変死体について行なわれる。

司法解剖を行なうためには「鑑定処分許可状」という裁判所の令状が必要だが、行政解剖は令状なしで行なわれる。

解剖するにあたり遺族の了解は求めるが、たとえ遺族が拒否したとしても、警察が必要だと判断すれば止めることはできない。

司法取引

司法取引

アメリカではすべての刑事被告人が陪審員によって裁かれているという印象があるが、実際は陪審裁判は刑事被告人全体のわずか7%にしかすぎない。司法取引とは、被告人が起訴事実の一部を認める代わりに、一部を取り下げてもらうこと。被告人は罪を認める代わりに刑を軽くしてもらうことができ、検察官は面倒な立証作業を省くことができる。また、司法取引を行なえば事実認定は自白だけで済み、審理を行なわずにすぐ判決を下すことができ、裁判所としても効率のいいシステムといえる。アメリカでは刑事事件の90%が、この司法取引によって決着している。残りの10%のうち7割(つまり、全体の7%)が陪審裁判を受け、3割は裁判官による裁判を受けている。
2018年(平成30年)6月、日本でも特定の財政経済・薬物銃器犯罪において、被疑者や被告人が裁判の中で共犯者の供述や証拠の提出といった協力をする代わりに、検察官から不起訴、刑事責任の減免を保証してもらう制度が誕生した。ちなみに、法律上は「取引」ではなく「協議」「合意」と呼ばれている。

指紋

指紋

「証拠を残さない犯罪はない」と言われているが、犯行現場で証拠の代表格が指紋である。指紋は同じものがない「万人不同」、生涯変化しない「終生不変」という特性があり、個人の識別につながる。
指紋の紋様である「隆線」は「渦状紋(かじょうもん)」「蹄状紋(ていじょうもん)」「弓状紋(きゅうじょうもん)」それ以外は「変体紋」となっている。

自由心証主義

自由心証主義

刑事訴訟法318条には、「証拠の証明力は、裁判官の自由な判断にゆだねる」と定められているが、これに基づく考え方をいう。しかし、裁判官が自白で有罪の心証をもっても、他に裏付け証拠がなければ有罪にはできないという自由心証の例外もある(刑事訴訟法219条2項)。もちろん、裁判官の判断が常識に反していれば「事実誤認」などで上訴できる。

住居を侵す罪

住居を侵す罪

刑法130条(住居侵入等) 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
「住居」とは人(住居権をもつ者)が寝起きして食事など日常生活を利用する拠り所をいう。実際に生活の拠点として使っているのであれば、クルマやテントなども「住居」として扱われる場合があり、必ずしも建造物でなくてもいいとされている。
刑法131条 削除
刑法132条(未遂罪) 130条の罪の未遂は、罰する。
訪問販売に来たセールスマンの営業がしつこかったので断るつもりでドアを閉めようとしたとき、セールスマンが片足を入れて邪魔する行為は少なくとも住居侵入の未遂になる。いくら断っても帰ろうとしない場合は特定商取引法(特定商取引に関する法律)に違反することを告げてもいいとのこと。

銃刀法

銃刀法

銃砲刀剣類所持等取締法 略して、銃刀法。 
銃刀法2条(定義) この法律において「銃砲」とは、けん銃、小銃、機関銃、砲、猟銃その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空気銃(圧縮した気体を使用して弾丸を発射する機能を有する銃のうち、内閣府令で定めるところにより測定した弾丸の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定める値以上となるものをいう。以下同じ。)をいう。
2項 この法律において「刀剣類」とは、刃渡り15センチメートル以上の刀、やり及びなぎなた、刃渡り5.5センチメートル以上の剣、あいくち並びに45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフ(刃渡り5.5センチメートル以下の飛出しナイフで、開刃した刃体をさやと直線に固定させる装置を有せず、刃先が直線であつてみねの先端部が丸みを帯び、かつ、みねの上における切先から直線で1センチメートルの点と切先とを結ぶ線が刃先の線に対して60度以上の角度で交わるものを除く。)をいう。
銃刀法31条の3(罰則)など
ピストル、ライフル、機関銃、大砲などを(1丁)不法所持していた場合は1年以上10年以下の懲役となる。両罰規定として法人に300万円の罰金。団体活動として所持していた場合は1年以上15年以下の懲役または1年以上15年以下の懲役及び500万円以下の罰金となる。
ピストル、ライフル、機関銃、大砲などを(2丁以上)不法所持していた場合は1年以上15年以下の懲役となる。両罰規定として法人に500万円以下の罰金。団体活動として所持していた場合は1年以上の有期懲役または1年以上の有期懲役及び700万円以下の罰金となる。
ピストル、ライフル、機関銃、大砲などに実弾などを込めた状態で不法に持ち歩いたりした場合は3年以上の有期懲役となる。両罰規定として法人に1000万円以下の罰金。団体活動として修治していた場合は5年以上の有期懲役または5年以上の懲役及び3000万円以下の罰金となる。
以上の犯行で所持していたピストルなどを提出して自首した場合は刑が軽くなったり、免除される。
猟銃を不法に所持していた場合は1ヶ月以上5年以下の懲役または100万円以下の罰金となる。
その他の銃砲、刀剣類を不法所持した場合は1ヶ月以上3年以下の懲役または50万円以下の罰金となる。
「その他の銃砲」とは強力な威力で金属製などの硬い弾丸を発射できるように改造されたモデルガンやエアガン、麻酔銃、建設用の鋲打ち銃、捕鯨銃、照明弾を発射する信号銃などをいう。
おもちゃのモデルガンやエアガンも外観を金属製に改造したり、本物のピストルに似せて作られたりしたものはたとえ弾が出なくても、ハイジャックや強盗等の犯行で脅しとして使われる可能性があり、これらは「模造拳銃」として不法所持した場合は最高で20万円の罰金となる。ピストルの形以外の「模倣銃器」も他人に販売するために所持した場合は最高で1年の懲役となる。
法律上の「刀剣類」とは・・・
○「鋼質性」があること(炭素含有量0.03〜1.7%の鉄。鋼鉄を作るときに混ぜられる炭素は多すぎても少なすぎても、もろくて刀剣として使えない)
○刃を研磨した上で人や動物に向ければ殺傷できるような形状をしていること(剣、やり、なぎなた、あいくちなど)
○刃渡りが長すぎること
長すぎる刃渡りの基準・・・
刀、やり、なぎなた→15センチ以上。
あいくち→8センチ以上(さらに刃の幅が1.5センチ以上、刃の厚さが2.5ミリ以上)。
剣(両刃)、ダガーナイフ→5.5センチ以上。
飛び出しナイフ、バタフライナイフ→長さに関係なく、刃が外向きで自動で45度以上開く場合は規制の対象外。(ただし、刃渡り5.5センチ以下で、法律に定められた危険性が低い形の飛び出しナイフは規制されない)
切れないが、本物そっくりに見える演劇や舞踊用の「模造刀剣類」も脅迫事件などに使われる可能性があり、不法所持した場合は最高で20万円の罰金となる。
重要参考人 容疑者 被疑者
重要参考人 容疑者 被疑者
重要参考人はマスコミ用語で、逮捕状を出せるほど容疑が固まっているわけではないが、きわめて疑わしい者として捜査機関が事情聴取を行なったときに、こう呼ばれることが多い。罪を犯した疑いのある者をマスコミではより分かりやすい言葉ということで容疑者と呼んでいるが、刑事訴訟法では被疑者という。ちなみに、被告人とは検察官が犯人として起訴した者のこと。

出水及び水利に関する罪

出水及び水利に関する罪

刑法119条(現住建造物等侵害) 出水させて、現に人が住居に使用しまたは現に人がいる建造物、汽車、電車または鉱坑を侵害した者は、死刑または無期、もしくは3年以上の懲役に処する。
「侵害」とは、水力により客体を流出・損壊し、またはその効力を害すること。
刑法120条(非現住建造物等侵害) 1項 出水させて、前条に規定する物以外の物を侵害し、公共の危険を生じさせた者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
2項 侵害した物が自己の所有に係るときは、その物が差し押さえを受け、物権を負担し、賃貸し、または保険に付したものである場合に限り、前項の例による。
刑法121条(水防妨害) 水害の際に水防用の物を隠匿したり損壊、その他の方法により、水防を妨害した者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
刑法122条(過失建造物等侵害) 過失により出水させて、119条に規定する物を侵害した者、または120条に規定する物を侵害し、公共の危険を生じさせた者は、20万円以下の罰金に処する。
刑法123条(水利妨害および出水危険) 堤防を決壊させ、水門を破壊し、その他水利の妨害となるべき行為または出水させるべき行為をした者は、2年以下の懲役もしくは禁錮または20万円以下の罰金に処する。

純粋窃盗犯

純粋窃盗犯

犯罪学的にいうと、「純粋窃盗犯」とは35歳以上の窃盗単一方向累犯者で、かつ刑務所内で無反則の者、と定義される。生涯にわたって窃盗犯罪だけを繰り返し、他の犯罪に手を染めない累犯者。窃盗は犯罪のなかでも最も数の多い犯罪であり、大人の主要刑法犯の半数以上、少年非行の約8割を占める。精神医学者グルーレは窃盗犯罪が平凡でありきたりの犯罪であるから「性格学的に無色」と表現し、各種の犯罪をつなぐセメントであり、ときにそのなかに重大犯罪を析出させる基質であると述べている。また、犯罪学者メツガーは窃盗を「犯罪の退屈な休日」と表現し、研究的な関心を引く魅力に乏しいという。
実際、累犯者の犯罪歴を調べると、ほとんどの累犯者には窃盗の前科がある。窃盗の前科を目印に窃盗犯の特徴を調べても、それは全犯罪者の特徴と変わらない。

傷害罪 暴行罪

傷害罪 暴行罪

こうすれば怪我するだろうと故意に他人を攻撃し、その結果として相手が怪我をすれば傷害罪刑法204条)となり、10年以下の懲役または30万円以下の罰金か科料。それで死亡させたら、傷害致死罪(刑法205条)となり、2年〜15年の懲役。また、自ら人を傷害させなくても現場で勢いを助ければ、現場助勢罪(刑法206条)となり、1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料。

暴行の故意もなく過失で人を怪我させたら過失傷害罪(刑法209条)になり、30万円以下の罰金または科料。それで、死亡させたら、過失致死罪(刑法210条)になり、50万円以下の罰金。

業務上必要な注意を怠り、人を死傷させると、業務上過失致死傷罪(刑法211条)になり、5年以下の懲役若しくは禁錮または100万円以下の罰金に処する。

「業務」とは「仕事」という意味ではなく、社会生活上継続反復してやる行為で、人を死傷させる危険性を含んでいるものを指すため、仕事上でなくても事故を起こすと、罪名は「業務上過失致傷罪」となる。

これに対し、暴行の故意をもって他人の身体に暴行を加え、傷害するに至らなかった場合は暴行罪(刑法208条)となり、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金または拘留も若しくは科料になる。傷害罪には未遂罪の規定がないが、その大部分が暴行罪に該当する。例えば、殴ろうとしたが相手によけられた場合も暴行罪となる。暴行は殴る、蹴るだけでなく、身体に影響を及ぼす病原菌、腐敗物、光、音なども含まれる。

2人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は凶器準備集合罪(刑法208条の3)になり、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金になる。

2項 前項の場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って人を集合させた者は、凶器準備結集罪(刑法208条の3の2項)となり、3年以下の懲役になる。

暴力行為等処罰ニ関スル法律

第一条 団体若ハ多衆ノ威力ヲ示シ、団体若ハ多衆ヲ仮装シテ威力ヲ示シ又ハ兇器ヲ示シ若ハ数人共同シテ刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百八条、第二百二十二条又ハ第二百六十一条ノ罪ヲ犯シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三十万円以下ノ罰金ニ処ス

→<集団等暴行> 団体や大勢(暴力団など)が自分のバックに控えているという威力を示しながら、あるいは凶器を使いながら、または数人がグルになって暴行を行うと3年以下の懲役または30万円の罰金に処する。

第一条ノ二 銃砲又ハ刀剣類ヲ用ヒテ人ノ身体ヲ傷害シタル者ハ一年以上十五年以下ノ懲役ニ処ス

2 前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス

3 前二項ノ罪ハ刑法第三条、第三条の二及第四条の二ノ例ニ従フ

第一条ノ三 常習トシテ刑法第二百四条、第二百八条、第二百二十二条又ハ第二百六十一条ノ罪ヲ犯シタル者人ヲ傷害シタルモノナルトキハ一年以上十五年以下ノ懲役ニ処シ其ノ他ノ場合ニ在リテハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス

→<常習暴行> 過去に何度も暴行行為を繰り返しいる者が懲りずに暴行、脅迫、器物損壊を行うと3ヶ月以上5年以下の懲役に処する。

第二条 財産上不正ノ利益ヲ得又ハ得シムル目的ヲ以テ第一条ノ方法ニ依リ面会ヲ強請シ又ハ強談威迫ノ行為ヲ為シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ十万円以下ノ罰金ニ処ス
2 常習トシテ故ナク面会ヲ強請シ又ハ強談威迫ノ行為ヲ為シタル者ノ罰亦前項ニ同シ

第三条 第一条ノ方法ニ依リ刑法第百九十九条、第二百四条、第二百八条、第二百二十二条、第二百二十三条、第二百三十四条、第二百六十条又ハ第二百六十一条ノ罪ヲ犯サシムル目的ヲ以テ金品其ノ他ノ財産上ノ利益若ハ職務ヲ供与シ又ハ其ノ申込若ハ約束ヲ為シタル者及情ヲ知リテ供与ヲ受ケ又ハ其ノ要求若ハ約束ヲ為シタル者ハ六月以下ノ懲役又ハ十万円以下ノ罰金ニ処ス

2 第一条ノ方法ニ依リ刑法第九十五条ノ罪ヲ犯サシムル目的ヲ以テ前項ノ行為ヲ為シタル者ハ六月以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ十万円以下ノ罰金ニ処ス

軽犯罪法1条 左(下)の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

5号 公共の会堂、劇場、飲食店、ダンスホールその他公共の娯楽場において、入場者に対して、又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、飛行機その他公共の乗物の中で乗客に対して著しく粗野又は乱暴な言動で迷惑をかけた者

29号 他人の身体に対して害を加えることを共謀した者の誰かがその共謀に係る行為の予備行為をした場合における共謀者

決闘罪ニ関スル件 施行:明治23年1月19日

第一条 決闘ヲ挑ミタル者又ハ其挑ニ応シタル者ハ六月以上二年以下ノ重禁錮ニ処シ十円以上百円以下ノ罰金ヲ附加ス

第二条 決闘ヲ行ヒタル者ハ三年以上五年以下ノ重禁錮ニ処シ二十円以上二百円以下ノ罰金ヲ附加ス

第三条 決闘ニ依テ人ヲ殺傷シタル者ハ刑法ノ各本条ニ照シテ処断ス

第四条 決闘ノ立会ヲ為シ又ハ立会ヲ為スコトヲ約シタル者ハ証人介添人等何等ノ名義ヲ以テスルニ拘ラス一月以上一年以下ノ重禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス

2 情ヲ知テ決闘ノ場所ヲ貸与シ又ハ供用セシメタル者ハ罰前項ニ同シ

第五条 決闘ノ挑ニ応セサルノ故ヲ以テ人ヲ誹謗シタル者ハ刑法ニ照シ誹毀ノ罪ヲ以テ論ス

第六条 前数条ニ記載シタル犯罪刑法ニ照シ其重キモノハ重キニ従テ処断ス

召喚 勾引

召喚 勾引

召喚(しょうかん)とは被告人などに対して一定の日時に裁判所などの一定の場所への出頭を命じる強制処分(刑事訴訟法57条・153条・171条)。召喚は裁判所が発した召喚状(刑事訴訟法63条・刑事訴訟規則102条)によって行われる。召喚自体に強制力はない。被告人を召喚する場合、一定の猶予期間をおかなければならない(刑事訴訟法57条・275条・刑事訴訟規則67条・179条など)。
勾引(こういん)とは被告人などを一定の場所に引致する強制処分。被告人を勾引する要件は被告人が(1)住所不定の場合、(2)正当な理由なく召喚に応じない、またはそのおそれがある場合(刑事訴訟法58条1号・2号)、(3)正当な理由なく出頭命令・同行命令(令状や猶予期間が不要という点で召喚とは異なる)に応じない場合(刑事訴訟法68条)である。被告人を勾引した場合、裁判所に引致したときから24時間以内に釈放しなければならない(刑事訴訟法59条)。

状況証拠

状況証拠

犯罪事実を裏付ける証拠には「直接証拠」と「間接証拠」がある。直接証拠には、被疑者や被告人の自白や凶器に附着した指紋、犯行現場を見ていた目撃者の証言などがある。一方、間接証拠は、状況証拠とも呼ばれるもので、犯人の動機や行動を間接的に裏付ける証拠のことである。

たとえば強盗殺人の容疑をかけられている者が、多額の借金を抱えていて、犯行当日までに手形を落とさなければならない状況だったとする。だからといって必ず強盗殺人を犯すわけではないが、その借金が犯行の動機になったことは充分に考えられる。

一般的には、状況証拠だけでは犯罪を立証することはできないと思われるが、実際には、たくさんの状況証拠を積み重ねれば、それだけで有罪の判決を下すこともできる。直接証拠があるに越したことはないが、状況証拠だけでも、被告人の犯行を否定する要素がすべてつぶされてしまうことがあるからだ。ここで、裁判官は冤罪を生まないよう、状況証拠については慎重に検討しなければならない。

状況証拠だけで有罪判決が出た例として、最近の事件ではトリカブト保険金殺人事件(概要)がある。

証拠

証拠

刑事訴訟においては事実の認定は証拠による(刑事訴訟法317条)。
刑事訴訟法では証拠は証拠方法を指す場合と証拠資料をさす場合がある。証拠方法とは裁判所が五官(5つの感覚器官。目・耳・鼻・舌・皮膚)によって取り調べることができる人または物(有形物)、証拠資料とは裁判所が証拠方法を取り調べて得た資料(内容)のこと。
○証拠の種類・・・
(1)直接証拠と間接証拠(状況証拠) 証明すべき事実を直接に証明する証拠が直接証拠、証明すべき事実の立証に役立つ間接事実を証明する証拠を間接証拠という。
(2)本証と反証 挙証責任を負う者がその事実を証明するために提出する証拠が本証、その相手側がその事実を否定するために提出するのが反証。
(3)人的証拠と物的証拠 生存している人間が証拠方法である場合を人的証拠、それ以外の証拠方法を物的証拠という。
(4)人証、物証、書証 口頭で供述して証拠を提出するのが人証で、証人、鑑定人、被告人。物証は物の存在および状態が証拠となり、犯行に使われた凶器など。書証は書面の記載内容が証拠となるもので捜査段階で行われた取り調べで作成された調書。
(5)供述証拠と非供述証拠 人の言葉によって表現された内容を証拠とする証拠方法を供述証拠、それ以外を非供述証拠という。
(6)実質証拠と補助証拠 証明すべき事実の証明に用いられる証拠を実質証拠、実質証拠の証明力に影響する補助事実を証明するのに用いられる証拠を補助証拠という。

証拠隠滅罪 犯人蔵匿罪

証拠隠滅罪 犯人蔵匿罪

罰金以上の刑にあたる罪を犯した者または拘禁中に逃走した者を蔵匿、または隠避させると犯人蔵匿罪刑法103条)になり、2年以下の懲役または20万円以下の罰金。

他人の刑事事件に関する証拠を隠滅、偽造、変造、または偽造や変造の証拠を使用すると証拠隠滅罪(刑法104条)になり、2年以下の懲役または20万円以下の罰金。

103条と104条の罪については、犯人または逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる(刑法105条)。

自分あるいは他人の刑事事件の捜査や審判に必要な知識を有すると認められる者またはその親族に対し、当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請、または強談威迫の行為をすると証人威迫罪(刑法105条の2)となり、1年以下の懲役または20万円以下の罰金。

上告

上告

第1審の判決に納得がいかない場合、被告、原告、検察官といった当事者は、さらに上級の裁判所に不服申立をすることができ、刑事訴訟の場合、第1審が地裁でも家裁でも簡裁でも、不服申立は高等裁判所に対して行ない、これを控訴と呼ぶ。さらに、高裁の判決に不服があれば、訴訟は最高裁に持ち込まれ、これを上告と呼ぶ。それ以上は、いくら不満があっても不服申立はできず、判決は確定する。ひとつの事件で最高3回までは裁判を受けるチャンスがあるということになる。
不服申し立ての猶予期間は判決の翌日から2週間でその期間は控訴のときと同じ。
ただし、民事の場合は、4審まで行くことがありうる。民事訴訟に限って、簡易裁判所からの控訴を地方裁判所に対して行なうことになっている。したがって、上告は高等裁判所、さらに最高裁まで持ち込むことができ、これで計4審となる。ただ、簡裁で扱う民事訴訟は請求額が140万円以下なので、訴訟にかかる費用を考えれば、最高裁まで争うことは考えにくい。
上告の場合は判決に憲法違反や最高裁の判例に抵触する内容がある、などの条件を満たさないと「上告棄却」となる。

情状酌量

情状酌量

刑法66条(酌量減軽) 犯罪の情状に酌量すべきものがあるときは、その刑を減軽することができる。
刑法67条(法律上の加減と酌量減軽) 法律上刑を加重し、又は減軽する場合であっても、酌量減軽をすることができる。
刑法68条(法律上の減軽の方法) 法律上刑を減軽すべき1個又は2個以上の事由があるときは、次の例による。
一 死刑を減軽するときは、無期の懲役若しくは禁錮又は10年以上の懲役若しくは禁錮とする。
二 無期の懲役又は禁錮を減軽するときは、7年以上の有期の懲役又は禁錮とする。
三 有期の懲役又は禁錮を減軽するときは、その長期及び短期の2分の1を減ずる。
四 罰金を減軽するときは、その多額及び寡額の2分の1を減ずる。
五 拘留を減軽するときは、その長期の2分の1を減ずる。
六 科料を減軽するときは、その多額の2分の1を減ずる。
刑法69条(法律上の減軽と刑の選択) 法律上刑を減軽すべき場合において、各本条に2個以上の刑名があるときは、まず適用する刑を定めて、その刑を減軽する。
刑法70条(端数の切捨て) 懲役、禁錮又は拘留を減軽することにより1日に満たない端数が生じたときは、これを切り捨てる。
刑法71条(酌量減軽の方法) 酌量減軽をするときも、第68条及び前条の例による。
刑法72条(加重減軽の順序) 同時に刑を加重し、又は減軽するときは、次の順序による。
一 再犯加重
二 法律上の減軽
三 併合罪の加重
四 酌量減軽

上訴

上訴

未確定の裁判に対して上級裁判所の審判による救済を求めることをいい、控訴上告抗告がある。
控訴、上告は判決に対する上訴であり、第1審に対する不服申し立てが控訴、第2審の判決に対する不服申し立てが上告となる。
上訴制度が設けられた理由にはふたつあり、ひとつ目は裁判官といえども人なので誤判のおそれがあることは否定できないため、不服申し立ての機会を認めて被告人の救済をはかるため。もうひとつの理由は、上級審への審判による救済を認めることで、法令解釈や適用の統一性をはかろうとしたため。
上訴の期間は控訴、上告の場合、判決の翌日から14日以内とされている。ちなみに即時抗告の場合は3日、通常抗告は実益のある間は認められる。
上訴がされると事件は上級裁判所に移り、上級裁判所に訴訟が係属することになる。これを移審という。
また、上訴期間内に上訴がされることによって裁判の確定や裁判の執行は停止することになる。
被告人に上訴を認めるといっても上訴審で審理した結果、原審よりも重い量刑にならないようになっている。これを不利益変更禁止の原則という(刑事訴訟法402・414条)。
この原則は被告人側がより悪い結果になることを恐れてためらうことなく上訴権を自由に行使できるようにする政策に基づいている。ただし、検察側が上訴した場合はその理由にかかわらず、この原則は適用されない。刑の軽重は刑法(10条)だけで決めるのではなく、全体として実質的に考慮して決めなければならない。
被告人の上訴によって破棄差し戻し判決があった場合、差し戻し後の判決にもこの原則の適用がある。再審の判決にもこの適用がある(刑事訴訟法452条)。

証人

証人

裁判所から証人として法廷に出るように求められたときは、合理的な理由がないかぎり、それを拒否できない。指定された日時が都合悪く出廷できなければ別の日時にしてもらうこともできる。証人に決定した人が断固として出廷を拒否した場合は、裁判所が無理やり法廷に連れてくることができる。勾引状(こういんじょう)という令状が発布されて強制的に連行される。また、証言台まで連れていくことができたとしても、証人が宣誓を拒めば宣誓拒否罪、証言を拒めば証言拒否罪、虚偽の陳述をすれば偽証罪という犯罪になってしまう。証人にはそれ相当の交通費と日当が支給される。

証人威迫罪

証人威迫罪

刑法105条の2  自己若しくは他人の刑事事件の捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族に対し、当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。
ちなみに、、、裁判員に選ばれた人(候補者、元裁判員、その親族を含む)に対し、面会、文書の送付、電話をかけることその他のいかなる方法をもってするかを問わず、威迫の行為をした者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律[裁判員法]107条)。

少年院

少年院

少年院は、家庭裁判所から保護処分として送致された少年に対し、その健全な育成を図ることを目的として矯正教育、社会復帰支援等を行う法務省所管の施設のことをいう。

少年院への入院直後の教育課程では、まず心理学や教育学の専門職員によって面接や心理テストが行われ、少年の境遇、経歴、能力、性格等が理解される。そして少年の特質や教育上の必要点が把握され、個別の処遇計画が作られる。中間期の教育では、問題点の改善や健全な考え方の育成を図るための「生活指導」、義務教育や高校教育を行う「教科指導」、勤労意欲を高めて将来の職業の知識・技能を習得する「職業指導」が行われる。そして出院の準備教育では、社会生活へ円滑に適応するための進路指導や院外での活動が行われる。それぞれの段階で、内観法(これまでに身近な人にしてもらったこと、して返したこと、迷惑をかけたことなどを回想し、面接官に報告するなどの方法をとる心理療法)、ロールプレイ(特定の役、たとえば親の役を与えられ、その役を演じたり、相手と役割を変えて演じることによって自分や他人への理解を深める集団療法)、カウンセリング、対人関係訓練などの各種心理療法や教育指導が行われる。

2015年(平成27年)6月1日施行の改正少年院法に伴い、少年院の分類名が変わることになった。法改正により、16歳未満対象の「初等」と16歳以上の「中等」を「第1種」に統合。犯罪傾向がやまない少年が入る「特別」は「第2種」、心身に障害のある少年が入る「医療」は「第3種」に改まった(↓)。

少年院法4条(少年院の種類)  少年院の種類は、次の各号に掲げるとおりとし、それぞれ当該各号に定める者を収容するものとする。

一号  第1種(旧・初等&中等) 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がないおおむね12歳以上23歳未満のもの(次号に定める者を除く。)

二号  第2種(旧・特別) 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだおおむね16歳以上23歳未満のもの

三号  第3種(旧・医療) 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害があるおおむね12歳以上26歳未満のもの

四号  第4種 少年院において刑の執行を受ける者

第3種少年院(旧・医療少年院)は家裁の審判などで、「心身に著しい故障があり、医療措置を必要とする」とされる少年の治療と矯正教育を行なう施設。東京都府中市の関東医療少年院 、神奈川県相模原市の神奈川医療少年院、三重県伊勢市の宮川医療少年院、京都府宇治市の京都医療少年院、大分県中津市の中津少年学院がある。

医療少年院送致の処分になった主な事件・・・

1997年(平成9年)6月28日に神戸須磨児童連続殺傷事件で逮捕された少年(当時14歳)
2000年(平成12年)5月1日に愛知県豊川市での主婦殺害事件の少年(当時17歳)
2000年(平成12年)5月3日の西鉄バスジャック事件の少年(当時17歳)
2000年(平成12年)8月14日、大分県野津町の一家6人殺傷事件の少年(当時15歳)

大分一家殺傷事件・・・2000年(平成12年)8月14日未明、大分県野津町で、高校1年生の男子生徒(当時15歳)が近所の農業を営む岩崎萬正(当時65歳)宅に侵入し、寝ていた家族6人をサバイバルナイフで刺し、妻の澄子(66歳)、その娘の智子(41歳)、智子の子どもの潤也(13歳)の3人を殺害し、主人の萬正と智子の子どもの長女(当時16歳)と次男(当時11歳)の3人に重傷を負わせた事件。智子は離婚後、1993年(平成5年)から自分の子供3人とともに両親と同居していた。犯人の少年は「下着を盗んだことがバレればここには住めなくなる」と動機を供述したという。大分家裁は少年を医療少年院送致とする保護処分を決定した。

関連書籍・・・
『医療少年院 法務教官という名の看護婦』(筑摩文庫/江川晴/2001)

法務省法務省の概要各組織の説明施設等機関少年院

少年鑑別所

少年鑑別所

少年鑑別所は、主として家庭裁判所から観護措置の決定によって送致された少年を収容し、専門的な調査や診断を行なう法務省所管の施設。全国に52ヶ所設置されている。

少年の収容期間は、原則として2週間、さらに継続が必要な場合は4週間収容できる。また、死刑または懲役あるいは禁錮に相当する罪を犯し、その調査に証人尋問や鑑定・検証を行なう必要があるときは最長8週間まで延長できる。

少年鑑別所では、少年たちが非行に走るようになった原因や、今後どうすれば健全な少年に立ち戻れるのかを、医学、心理学、社会学、教育学などの専門的知識や技術によって明らかにする。その結果は鑑別結果通知書として家庭裁判所に送付され、審判や少年院、保護観察所での指導・援助に活用される。

また、少年鑑別所では、非行の問題、知能や性格の問題、家庭内暴力、しつけの問題、いじめ、不登校などの相談を受付けている。相談料は無料だが、検査などをした場合は、検査用紙代のみの実費が必要。

法務省法務省の概要各組織の説明施設等機関少年鑑別所

少年法

少年法

少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正および環境の調整に関する保護処分を行うための少年審判の手続を定めるとともに少年の刑事事件および少年の福祉を害する成人の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とした法律(1948年、公布)。
少年法51条(死刑と無期刑の緩和) ・・・罪を犯すとき18歳に満たない者に対しては、死刑をもつて処断すべきときは、無期刑を科する。
2 罪を犯すとき18歳に満たない者に対しては、無期刑をもつて処断すべきときであつても、有期の懲役又は禁錮を科することができる。この場合において、その刑は、10年以上20年以下において言い渡す。
少年法52条(不定期刑) ・・・少年に対して有期の懲役又は禁錮をもつて処断すべきときは、処断すべき刑の範囲内において、長期を定めるとともに、長期の2分の1(長期が10年を下回るときは、長期から5年を減じた期間)を下回らない範囲内において短期を定めて、これを言い渡す。この場合において、長期は15年、短期は10年を超えることはできない。
2 前項の短期については、同項の規定にかかわらず、少年の改善更生の可能性その他の事情を考慮し特に必要があるときは、処断すべき刑の短期の2分の1を下回らず、かつ、長期の2分の1を下回らない範囲内において、これを定めることができる。この場合においては、刑法第14条第2項の規定を準用する。
3 刑の執行猶予の言渡をする場合には、前2項の規定は、これを適用しない。
職務質問

職務質問

挙動などから犯罪に関係があると思われる者に対し、警察官が職務として行う質問のこと。
警察官職務執行法1条(この法律の目的) この法律は、警察官が警察法(昭和二十九年法律第百六十二号)に規定する個人の生命、身体及び財産の保護、犯罪の予防、公安の維持並びに他の法令の執行等の職権職務を忠実に遂行するために、必要な手段を定めることを目的とする。
2 この法律に規定する手段は、前項の目的のため必要な最少の限度において用いるべきものであつて、いやしくもその濫用にわたるようなことがあつてはならない。
警察官職務執行法2条(質問) 警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。
2 その場で前項の質問をすることが本人に対して不利であり、又は交通の妨害になると認められる場合においては、質問するため、その者に付近の警察署、派出所若しくは駐在所に同行することを求めることができる。
3 前二項に規定する者は、刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所もしくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない。
4 警察官は、刑事訴訟に関する法律により逮捕されている者については、その身体について凶器を所持しているかどうかを調べることができる。

除斥

除斥

刑事訴訟法および刑事訴訟規則は主体の面から公平な裁判所を確保する制度として(1)除斥(じょせき)、(2)忌避(きひ)、(3)回避という制度を設けている。
除斥とは裁判官が被害者であるときなど刑事訴訟法20条で規定された条件に該当する場合、当然に職務の執行から排除されることをいう。
刑事訴訟法20条 裁判官は、次に掲げる場合には、職務の執行から除斥される。
 一 裁判官が被害者であるとき。
 二 裁判官が被告人又は被害者の親族であるとき、又はあつたとき。
 三 裁判官が被告人又は被害者の法定代理人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人であるとき。
 四 裁判官が事件について証人又は鑑定人となつたとき。
 五 裁判官が事件について被告人の代理人、弁護人又は補佐人となつたとき。
 六 裁判官が事件について検察官又は司法警察員の職務を行つたとき。
 七 裁判官が事件について第二百六十六条第二号の決定、略式命令、前審の裁判、第三百九十八条乃至第四百条、第四百十二条若しくは第四百十三条の規定により差し戻し、若しくは移送された場合における原判決又はこれらの裁判の基礎となつた取調べに関与したとき。ただし、受託裁判官として関与した場合は、この限りでない。
ちなみに、忌避(きひ)とは所定の事由がある場合に検察官または被告人の申し立てにより裁判官が職務の執行から排除されることをいい、回避とは裁判官が自ら職務の執行から退くことをいう(刑事訴訟規則13条)。これは刑事訴訟法にはないが、刑事訴訟規則により予断排除の観点から規定された制度になる。
予断排除の原則として、除斥、忌避、回避の制度があることを上記で説明したが、予断排除の原則の例外とされている制度もある。
(1)上訴審の審理・・・上訴審は原判決の当否を審理する制度であるから予断排除の原則が適用されないとされている。
(2)破棄差し戻し後の第1審・・・破棄差し戻しの第1審では控訴裁判所の判断に拘束されるため、訴訟記録を参照しないわけにはいかず、予断排除の原則が適用されない。
(3)略式手続き・・・比較的軽微な事案に適用される制度であることから予断排除の原則が適用されない。

しろうと理論

しろうと理論

マスコミを賑わす犯罪が起きたとき、人々は「そんなことをした人の気持ちが解からない」と言いながら、その原因を説明しようとする。「親のしつけのせいだ」「学校教育が問題だ」「犯罪者の心の傷≠ェ問題だ」・・・など、テレビの前や居酒屋では犯罪の原因論が飛び交う。人々は人間の行動や現象について、心理学者や専門家に問うまでもなくそれぞれ独自の「理論」をもっている。その意味で誰もが「人間学者」であり「心理学者」でもある。こうした「理論」は科学的理論に対比して「素朴理論」や「しろうと理論」(Lay Theories/Lay:しろうとの)と呼ばれる。
しろうと理論には人々の心に大きな影響を与える問題点がある。たとえば、「犯罪は厳しいしつけでなくなる」という理論や逆に「自由にのびのびとさせないことが非行の原因」という理論、「偏差値重視の学校教育が原因」という理論、「社会の価値観の混乱が原因」などなど。こうした理論が犯罪・非行の発生や矯正に影響を及ぼす。
また、犯罪者自身がもっている犯罪のしろうと理論も犯罪者自身の犯罪行動に影響をもつ。犯罪者自身がなぜ犯罪をしたのかをそれで説明し、それに基づいて行動するのである。
[ しろうと理論の特徴 ]
(1)暗黙の理論・・・自分が独自の理論をもっていることをあまり認めない。
(2)経験の理論・・・自らの経験や体験に基づいたその人独自の主観的な理論である。
(3)選択的確証・・・経験に基づいた理論をもった人はその後、自分の理論に合致した事例のみを選択的に探し、一致しない事例は見ないか、無視することで理論の確かさを確認する方法を取る。万一、異なった例に出会ったときは別の解釈をして元の理論の正しさを守ろうとする。
(4)単純な理解・・・犯罪という不可解な現象に耐えられない人々は明白で単純な説明理論を求めるため、その解釈のキーワードを求めるようになる。原因はすべて「心の闇」、、、など。
(5)極端な二分法・・・「性善説」「性悪説」、「遺伝」「環境」、「氏」「育ち」、、、など。
(6)状況の過小評価・・・犯罪者の遺伝や過去、あるいは身体的・性格的な特徴を重視し、その人がおかれている状況や環境を軽視する傾向がある。犯罪に対する人々の見方はこれにかなり支配される。状況を過小評価する理由には、状況や環境などの「無人称」のものに対してでなく、個人に責任の所在を問うことは人間の心理として自然であり、また、その責任を自分で引き受ける姿勢は社会道徳上必要なものとされる。だが、その一方で、この「内的世界を過大評価」すると、現状を冷静に分析・把握することができず、かえって誤った道に進んでしまうことさえある。

人格障害

人格障害

DSM−IVによると、その人のもつ主観的な体験世界や行動の持続的パターンが、その人の属する文化と比べて著しく偏っている場合に人格障害とされる。ただし、これが精神医学的な診断名とされるためには、偏っているだけでなく、本人が激しい苦痛を感じているか、対人関係がうまくできなかったり、定職につけなかったりするなどの社会的・職業的な機能障害の原因になっている場合に限られる。軽い人格障害は10人に1人以上いると言われている。

人格障害は次のように分類される。

妄想性人格障害、分裂病質性人格障害、反社会性ないし非社会性人格障害、境界性ないし情動不安定性人格障害、演技性人格障害、自己愛性人格障害、強迫性人格障害、依存性人格障害、回避性人格障害、受動攻撃性人格障害、その他の人格障害。

妄想性人格障害とは、他人が自分を騙そうとしている、と思い込んだり、家族や友人であっても信用できず好意が受け入れられない人格障害。

反社会性ないし非社会性人格障害とは、規則や社会のルールを守ろうとせず、他人を傷つけたりいじめたりしてもそれを正当化するといった特徴をもつ人格障害。

演技性人格障害とは、広範な様式で過度の情緒性と人の注意をひこうとするパターンを示す人格障害。一般的に感情の起伏が激しく、人の注目を集めていないと不快に感じ、他者との交流においては、しばしば不適切なほど、性的に誘惑的だったり挑発的だったりする行動が目立つ。時効を目前にして殺人容疑で逮捕された元ホステスの福田和子なども演技性人格障害と言われている。

自己愛性人格障害とは、自身に対して誇大なイメージを持ち、注目や共感を求める一方で、否定されると過剰に落ち込んで引きこもりやうつ病になることもある人格障害。

強迫性人格障害とは、 世間一般のルールや自分の決まり事に強いこだわりをもち、柔軟性や融通に欠けるという特徴をもっている人格障害 。

依存性人格障害とは、面倒を見てもらいたいという過剰な要求があり、そのために従属的でしがみつく行動をとる人格障害。何をするにも頼りになる相手にアドバイスを求めたり、承認を求めたりする。

回避性人格障害とは、傷つくことや失敗を極度に恐れ、仕事や恋愛など生活に支障をきたす人格障害。

受動攻撃性人格障害とは、無視、さぼり、抑うつ状態といった行動をとって相手を困らせる人格障害。例えば、仕事などを頼まれても忘れたフリをする。わざとミスをしたり、締め切りを守らなかったりする。笑顔で会話はしておきながらその裏でバカにした態度をとる、など。

親告罪

親告罪

被害者が告訴しなければ起訴できない罪を「親告罪」という。親告罪には名誉毀損罪、侮辱罪がある。

被害者本人の告訴なしでは起訴できないのは被害者のプライバシーを守るため。

心中

心中

本来は心の中、心の奥底を指し、それから人に対して真心を示すこと、義理を立てるという意味が派生した。徳川時代、遊女が客に対してその真心を示す好意を心中立てといい、その方法として誓紙、放爪(爪をはぐこと)、入れ墨、断髪、切指などが用いられたが、その最高の行為は相手のために生命を捧げることとされた。このことから転じて、心中は情死、すなわち相思相愛の男女が変らぬ愛を相手に示すために合意の死を遂げる、という意味になった。戦後の代表的な心中事件のひとつとして1957年(昭和32年)の天城山心中事件がある。
心中という言葉は昭和になってから本来の意味での男女による情死に対してだけでなく、複数の人間による合意自殺一般、さらに合意を伴わない拡大自殺(無理心中)に対してまで広く用いられるようになった。
母子心中を図って子どもを殺害しながら自ら生き残った母親は殺人罪で検挙されることになる。事例の多くは自殺の意図が先行し、残す子どもが不憫だからという理由で子どもを殺害する場合が多く、犯行当時、母親は少なくとも病的な精神状態にある場合が多く、精神鑑定を受けることが少なくない。

心神喪失 心神耗弱

心神喪失 心神耗弱

刑法39条は「心神喪失者の行為はこれを罰しない。心神耗弱者の行為はその刑を減軽する」と定めている。心神喪失とは「(精神の障害によって)事理を弁識し、弁識に従って行為する能力のない状態」、心神耗弱とは「それが著しく障害されている状態」と定義されている(大審院判例)。
重大犯罪を犯しても精神障害の疑いがあれば精神鑑定に付せられ、心神喪失(責任無能力)と判定されれば不起訴、または無罪となる。その後、精神保健指定医の診断の結果、知事命令による措置入院に基づいて極めて短期間に退院となる。
関連事件・・中野近隣騒音殺人事件 / 深川通り魔殺人事件 / 西成覚醒剤常習者通り魔事件 / 斎藤勇東大名誉教授惨殺事件

シンナー

シンナー

thinner 酢酸エチル、トルエン、メタノールといった有害な成分を含む有機溶剤のことで、主にペンキなどの油性の塗料を溶いて塗りやすくするするための材料。これらの有害成分を含んでいる接着剤や塗料、充填剤も法規制の対象。濫用すると一時的な酩酊が生じるが、やがて脳や内臓を侵し、歯を腐食させ、けいれんや意識障害を引き起こし、視力障害や失明の危険もある。

信用及び業務に対する罪

信用及び業務に対する罪

刑法233条(信用及び業務妨害) 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
例として「あのラーメン屋のラーメンにゴキブリが入っていた」「あの農家の作物には有害な化学物質がたくさん付着している」などとインチキを広めて風評被害を生じさせる行為。「某地方銀行は債務超過に陥っていて破たん寸前だ」などと事実無根の内容をネット掲示板に書き込んで取り付け騒ぎを起こさせる行為。
刑法234条(威力業務妨害) 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
刑法234条の2(電子計算機損壊等業務妨害) 人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

森林放火罪 森林失火罪

森林放火罪 森林失火罪

森林法202条 他人の森林に放火した者は、2年以上の有期懲役に処する。
2項 自己の森林に放火した者は、6ヶ月以上7年以下の懲役に処する。
3項 前項の場合において、他人の森林に延焼したときは、6ヶ月以上10年以下の懲役に処する。
4項 前2項の場合において、その森林が保安林であるときは、1年以上の有期懲役に処する。
森林法203条 火を失して他人の森林を焼燬した者は、50万円以下の罰金に処する。
2項 火を失して自己の森林を焼燬し、これによつて公共の危険を生じさせた者も前項と同様とする。
森林法204条 197条、198条及び202条の未遂罪は、これを罰する。

スカイマーシャル

スカイマーシャル

Sky Marshal ハイジャックの発生などに備えて警察官が航空機に警乗する制度またはそのような任務により警乗する者をいう。この制度は1970年代から世界のいくつかの航空会社で行われてきた。
イスラエル発の主要な国際便・国内便には早くからスカイマーシャルが搭乗していた。
アメリカでは1968年に連邦航空局傘下に航空関係者のボランティア活動によるスカイマーシャルプログラムが誕生したが、2001年に発生した9・11同時多発テロ以降は国土安全保障省の連邦航空保安局がアメリカ国内のスカイマーシャル任務を本格的に担当することになった。
日本でのスカイマーシャルは2002年の日韓サッカーワールドカップ開催時に航空機テロ予防・フーリガン騒乱時の対策として大会期間中の日韓および試合開催地への国内便に武装私服警官が警乗したのが始まりである。

スケープゴーティング

スケープゴーティング

Scapegoatting 古代ユダヤで、人の罪を負って荒野に放たれたヤギのことをスケープゴートと言った。フラストレーション状態を解消するため、本来、無関係な個人や集団に原因を転嫁して、非難・攻撃することや弱い者いじめのこと。人間がグループを作ったとき、個人同士が競争し合っているときや目標がはっきりしているときは、割とまとまることが多いが、そうでないときはスケープゴーティング現象が往々にして見られる。

スタンフォード監獄実験

スタンフォード監獄実験

1971年8月14〜20日までアメリカのスタンフォード大学心理学部で心理学者のフィリップ・ジンバルドー(Phlip Zimbardo)の指導で、スタンフォード大学地下実験室を模型の刑務所に改造して、2週間の予定で実験が行われた。その実験の被験者は新聞広告などで集めた普通の大学生などの70人から選ばれた21人のうち、11人を看守役、10人を受刑者役に分け、それぞれの役割を演じさせたところ、時間が経つにつれて、看守役と受刑者役の間に歪んだ関係が発生した。看守役たちは日に日に受刑者役に攻撃するようになり、侮辱的で権威的な行動を繰り返した。一方、受刑者役は受動的になり、看守役から侮辱されてもトラブルを起こさないように命令に従順になっていった。さらに受刑者役は次々と抑うつ状態や心身の発作を起こした。その結果、実験は6日目で中断に追い込まれた。
この実験で分かることは「役割と状況が人を変えていく」という事実がある。たまたま与えられた看守役、受刑者役という「優越感」「劣等感」が内面化し、それを自分たち本来の性質だと思い込んだのである。また、すべての看守役が残虐だったわけではないが、少数の残虐な看守役が他の看守役のモデルとなる役割をした。善良な看守役は残虐な看守役を非難せずに沈黙し、結果として残虐行為を許したという事実があった。
この実験を忠実に再現した映画に『es[エス]』(DVD/監督・オリヴァー・ヒルツェヴィゲル/ドイツ)がある。「es」はドイツ語で「これ」とか「それ」という意味。
関連サイト・・・Stanford Prison Experiment(英文)

ストーカー規制法

ストーカー規制法

Stalker 「忍び寄る者」と訳される。ストーカーを直接取り締まる法令がなく、迷惑防止条例(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 [東京都])違反、軽犯罪法違反、強制わいせつ、脅迫、住居侵入などのさまざまな罪名が適用されてきたが、ストーカー行為からさらに発展して殺人などの凶悪事件になった桶川女子大生ストーカー殺人事件のようなケースがみられることなどから、ストーカー行為等の規制等に関する法律 略して、ストーカー規制法が、2000年(平成12年)5月24日に公布、11月24日に施行された。

ストーカー規制法の対象となるのは「つきまとい等」「ストーカー行為」の2つ。

この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう(第2条)。
一  つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、又は住居等に押し掛けること。
二  その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
三  面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。
四  著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
五  電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールを送信すること。
六  汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
七  その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
八  その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置くこと。

この法律において「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等(前項第一号から第四号までに掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)を反復してすることをいう(第2条2)。

2013年(平成25年)7月23日、一部法改正(電子メールを送信する行為の規制)が施行され、10月3日からは警告等を行うことが出来る警察本部長等が拡大されている。

2016年(平成28年)12月6日、改正ストーカー規制法が衆議院本会議で全会一致で可決・成立し、2017年(平成29年)1月3日、施行された。改正のきっかけとなったのは、2016年(平成28年)5月、東京都小金井市のイベント会場でシンガーソングライター、アイドルとして活動する女性がファンと思われる男に刃物で刺され、一時重体となる事件だった。この事件では、女性が事前に「ツイッターで執拗な書き込みをされている」と警察に相談していたにも関わらず、事件を未然に防止できなかったことが問題視され、ストーカー規制法改正への動きとなった。

今回の改正で、(1)無料通信アプリ「LINE」、Facebook、ツイッターなどで、しつこくメッセージを送信したり、ブログに中傷を書き込んだりすることも、ストーカー行為に規定される。(2)加害者に対する罰則も強化された。ストーカー行為罪の懲役刑の上限が、「6ヶ月以下」から「1年以下」に引き上げられた。罰金も、現行の50万円から、100万円に引き上げられる。(3)今回の改正前のストーカー規制法では、警察が、ストーカー行為をやめるよう警告したにも関わらず、加害者が従わなかった場合にしか、公安委員会は禁止命令を出せないことや警察が加害者の弁明も聞かなければならなかった。そのため、凶悪事件に発展する恐れがあっても、迅速に対処できず、被害を防げない場合があると指摘されていた。今回の改正で、緊急の場合は、事前の警告がなくても、公安委員会が禁止命令を出せるよう変更された。また、被害者の告訴なしに起訴できる「非親告罪」に変更された。

2016年(平成28年)12月に成立した改正ストーカー規制法が2017年(平成29年)6月14日、全面施行される。警察はストーカーの加害者に警告することなく、禁止命令を出すことができる。事態が急展開して殺人などの重大な事件に発展する例もあることから、より迅速な対応を図るのが狙い。

従来の制度は、まず警察が加害者に警告した上で、警告に従わず行為を続けた場合に禁止命令を出す仕組みだった。改正法では、加害者が行為を続ける恐れがある場合は、被害者側の申し出や警察側の職権で警告を経ず命令が出せる。命令に従わず行為を続けると立件の対象になる。また緊急の場合は、加害者から意見をきく聴聞を命令の後に回すこともできる。

2021年(令和3年)8月26日、改正ストーカー規制法が施行される。桶川ストーカー事件をきっかけに2000年に成立したストーカー規制法だが、ネットの普及や技術の進歩を背景に改正を重ね、これで3回目の改正となる。今回の改正では、GPS機器などを用いた位置情報の無断取得に対する規制が盛り込まれた。アプリを悪用して相手のスマートフォンの位置情報を勝手に取得することも規制対象となる。

ストックホルム症候群

ストックホルム症候群

Stockholm Syndrome 1973年8月23日午前10時15分からスウェーデンのストックホルムにある銀行で、男性の犯人たちが21〜32歳までの4人の女性の職員を人質に立て篭もり、8月28日に解放されるまでの131時間に及ぶ監禁の後、警察が人質を解放したが、このときの被害者の態度は社会が想像していたものと違っていた。被害者は警察に敵意と恐怖を向け、犯人に対して同情や愛情を向けるという不思議な心理状態になった。このことから「ストックホルム症候群」と名付けられた。

監禁事件の被害者はさまざまなトラウマティックな体験をする。死の恐怖にさらされ、ときには実際に傷つけたり、人が死ぬ場面を目撃したりする。ストックホルム症候群はこのようなトラウマティックな場面を体験したときに生じる心理的な複合的反応を表す概念であると考えられる。PTSDが事件が終わったあとに長期的な症状として発生してくるのに対し、ストックホルム症候群は事件の最中から発生する。

被害者の加害者への好意、被害者の警察や当局への反感、そしてそれにこたえる監禁者の側の好意の3者がストックホルム症候群を形成する。人質になったとき犯人に対して敵対的な態度をとることは生き延びるために得策とはいえない。意識的なレベルで犯人に迎合したり、命令に従うことも人質としては普通の態度といえる。だが、ストックホルム症候群は無意識レベルにおいてもこのような感情変化が起きている。また、被害者のこのような感情は加害者の心理にも影響を及ぼし、外側の世界に対する一種の連帯感をつくる。加害者のこのような感情も被害者の生命を守る方向に働くようになるので、全体としてストックホルム症候群は被害者が生存する方向へと働くと考えられる。

ストックホルム症候群とは逆に、監禁する者が人質に対し、親近感や特別な感情をもち、攻撃的態度が和らぐ現象を「リマ症候群」という。

スーパーインポーズ法

スーパーインポーズ法

Superimpose 「二重焼きにする」「重ね焼きにする」という意味。身元不明死体が発見された場合、それが白骨死体であったとしても骨や歯から性別、年齢、人種など被害者を特定することができる。このような身体的データと死亡推定時、死因などが揃うと、今度は全国の家出人、失踪者、蒸発者などの中から該当者を探す作業を行なう。ある程度絞り込まれた対象の中から該当者を割り出すとき、よく使われるものにスーパーインポーズ法がある。

スーパーインポーズ法の具体的手順は次の通り。

[ 1 ] 死体を解剖したのち、頭蓋骨の写真を撮る。
[ 2 ] この写真にセロハンのような透明な紙を重ねて、ペンで輪郭をなぞっていく。
[ 3 ] セロハンに描かれた輪郭線に合わせて、該当者の顔写真を拡大する。
[ 4 ] 拡大した写真に、頭蓋骨の写真を重ねて写真を二重焼きにする。
[ 5 ] 目、鼻、上あご、下あご、歯などの位置が一致するかを確認する。

以上の作業を手作業で行なうが、最近はCGなどで行なうようになった。

写真の中には真正面から写っている顔ばかりとは限らず、横顔だったりうつむき加減になっている顔もあるので、そういう場合は頭蓋骨の写真をもう一度撮り直すことになる。口を開けた写真なら頭蓋骨の口を開けて撮るということをする。

こうして両者の写真を重ね合わせて確認するのだが、同一人物であればピッタリと一致するが、別人であればどこかの骨が顔の輪郭から飛び出してしまう。

照合すべき写真がない場合は復顔法(カービング)といって、頭蓋骨の上に粘土などで肉付けをして生前の顔を復元して、交番などによく貼られる「バラバラ事件の被害者。この人を知りませんか?」などのポスターに使われたりする。

スパイト行動

スパイト行動

スパイト spite とは「意地悪」という意味で、英語では意地悪することを spite behavior と言い、この behavior(振る舞い・行動・習性)の部分だけ日本語にして「スパイト行動」と言うようになった。
自分が損をしてでもいいから相手も得させないようにする行動をいう。特に日本人は同調圧力が強い民族と言われており、「俺が我慢しているんだからお前も我慢しろよ」「みんな参加すべき」といった考え方がある。学校や会社で自由に参加できるイベントなどに対し、参加しない人がいるとその人の悪口を言ったり、仲間外れにしたりなどの「いじめ」をする傾向にある。
スパイト行動は多くの場合、嫉妬や偏った正義感、不安が原動力となっており、逆に嫉妬心や偏見、不安が少ない人はスパイト行動をとる傾向が低い。

青酸化合物

青酸化合物

青酸化合物で代表的なものとして、青酸カリ(ウム)や青酸ナトリウムがある。青酸カリはシアン化カリウムで、青酸ナトリウムはシアン化ナトリウムのことだが、これらは、毒物としてのその本体は青酸基という、窒素と炭素がひとつずつ結びついたもの。青酸基にカリウムが結びついたものが青酸カリで、ナトリウムが結びついたものが青酸ナトリウム。

無色の結晶で、高濃度の場合はアルカリ性に保っておかないと、シアン化水素を発生する。この水溶液を俗に青酸と呼ぶ。金属精錬やメッキ、殺虫剤などに使われる。毒殺に用いられてきたものは、このシアン化カリウム塩あるいは、ナトリウム塩であり、どちらも水溶性で飲料にもよく溶ける。シアン化水素の溶液を吸うだけで、皮膚がただれたり、癌になることがある。また、シアン化水素の蒸気を吸うと、ほぼ瞬間的に麻痺が起き、けいれんが始まり、呼吸が止まり死亡する。致死量は0.15〜0.3グラム。

精神鑑定

精神鑑定

被疑者や被告人が犯行当時、刑事責任を問える精神状態にあったかどうかを判断するため、検察官あるいは裁判所からの依頼で精神科医が鑑定すること。

刑法39条では、「心神喪失者の行為は罰せず、心神耗弱者の行為は減刑する」と規定されている。

取り調べの段階で、検察官から委嘱される起訴前鑑定には、1回だけの面接で結論を出す「簡易検定」と、2〜3ヶ月かけて行なう「本鑑定」がある。起訴後に裁判所の命令で行なわれる精神鑑定を「司法精神鑑定」という。

精神科医なら誰でも精神鑑定を行なうことができるわけではなく、精神保健福祉法(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)指定医であることが条件となる。指定医になるには、[ 1 ] 5年以上の診断・治療経験を有する者。[ 2 ] 3年以上の精神障害の診断・治療経験を有する者。[ 3 ] 厚生労働大臣が定める精神障害の診断・治療経験を有する者。[ 4 ] 厚生労働省令で定める研修課程を修了した者。以上に該当する医師のうちから、その申請に基づき厚生労働大臣が指定医に認定する(精神保健福祉法18条)。

精神保健福祉法5条では「精神障害者」を「精神分裂病、中毒性精神病、精神薄弱、精神病質その他の精神疾患を有する者」と規定している。「中毒性精神病」とは、アルコールや覚醒剤による中毒によって精神を侵された者を指す。

[ 司法精神鑑定のプロセス ]

精神鑑定は裁判所か検察庁からの依頼で行なわれる。そのため、興味深い事件だから鑑定してみたいといって精神科医側から申し出ることはできない。司法機関が事件の捜査や審理の過程で、被疑者や被告人の精神状態を詳しく調べる必要があると認めたときに、担当の司法官が精神鑑定をすることを決める。委託された鑑定医は必ずしも受託しなければいけないわけではなく、受けるか断るかを自由に行なうことができる。

[ 鑑定人の宣誓 ] 鑑定人が裁判所に赴き、法廷で<宣誓 良心にしたがって、誠実に鑑定することを誓います 鑑定人○○ 印>などと書かれた宣誓書を起立して読み上げ、署名捺印して法的に「鑑定人」になる。裁判所側が鑑定人の元に赴き、そこで宣誓を行なう場合もある。

[ 事件の把握 ] 刑事事件の鑑定では、鑑定人はまず検事の起訴状や冒頭陳述を読み、事件の概要を頭に入れることから始める。だが、これはあくまでも検察側の主張であることを念頭において念入りに行なう。事件は内容によっては膨大な資料となる。被告人の生活歴なども事細かに書かれており、高さ1メートルに及ぶ資料となることもある。

[ 被疑者の面接 ] 精神鑑定を受ける被告人はたいてい拘置所に収監されているため、鑑定人はそこに出向いて面接を行なう。まずは、被鑑定人の心身の状態を尋ねることから始める。「夜はよく眠れますか?」「最近の気分はどうですか?」などといった会話である。こうした心身のチェックは鑑定人が医者であることを分からせるために必要となる。続いて、被鑑定人の生い立ちに関する質問を始める。「小さい頃はどんな子どもでしたか?」などといったことである。このような質問で被鑑定人の緊張をほぐしていき、相手に自由に話させるような雰囲気作りが大切となる。

[ 関係者面接 ] 精神鑑定では、被鑑定人の問診だけでは計りかねないことがある。そういう場合は関係者に直接会って面談を行い、事実確認する。まず最初に行なわれるのは「家族面接」である。この場合、被疑者をかばうような供述が行なわれることが多いので注意を要する。さらに、友人、知人への聞き取りも重要となる。

[ 心理テスト ] 精神鑑定では問診の補助として心理テストを行なう。代表的なものに次のようなものがある。

(1)知能テスト ・・・ いわゆるIQ検査
(2)ベンダー・ゲシュタルト・テスト   ・・・ 9個の幾何学的な図形を模写させ
脳の機能疾患、精神薄弱、精神病診断を行なう
(3)YG性格検査 ・・・ 120の質問に「はい」「いいえ」で答える性格テスト
(4)バウム・テスト ・・・ 画用紙に一本の木を描かせるテストで性格を見るもの
(5)ロール・シャッハ・テスト ・・・ インクのシミが付いた10枚の紙を見せ「何に見えるか」を問う有名なテスト
(6)ミネソタ多面人格検査(MMPI) ・・・ アメリカのミネソタ大学で考案された質問形式の性格テストで550の質問に「はい」「いいえ」で答える

[ 脳の機能診断 ] (1)被鑑定人の生誕にさかのぼり、妊娠中や出産時に異常がなかったか、乳幼児期の発達に異常がなかったか、あるいは高熱疾患や熱性けいれんなどはなかったかなどが調べられる。(2)脳波検査・・・これでてんかん性の異常や器質的な異常などを見る。(3)CTスキャン・・・頭部の周囲のあらゆる方向からレントゲン線を照射して検査する。(4)MRI・・・核磁気共鳴イメージ装置と呼ばれる最新技術で、CTより格段に鮮明な画像が得られる。

宮ア勤による幼女連続殺人事件の精神鑑定のように、鑑定人によって意見が分かれることは珍しいことではなく、精神医学はある意味で未発達な学問とも言える。真実を究明する場であるはずの法廷が、鑑定人たちの自説の正しさを主張し合う場と化してしまうことも少なくない。

宮ア勤幼女連続殺人事件

正当防衛

正当防衛

刑法36条では「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。 2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。」と規定されている。
[ 成立の要件 ]
○不正、不法な侵害があること・・・他人から暴行を加えられ、殺されようとしているときや何かを盗まれようとしているときに自己防衛のためにする行為が違法であっても罪にはならない。また、不正だが犯罪にならない行為として、精神病者による侵害行為などに対しても正当防衛は認められる。
○急迫であること・・・現在進行している侵害(現行犯)に対してのみ正当防衛は成立する。
○必要な限度を超えないこと・・・凶悪な侵入盗に対して、恐怖のあまり犯人を殺傷しても正当防衛と認められるが、単純な物取りの泥棒を殺したら行き過ぎで過剰防衛になる。

生物兵器・化学兵器などの使用罪

生物兵器・化学兵器などの使用罪

生物兵器・・・炭そ菌、天然痘ウイルスなど、毒素兵器・・・ポツリヌスなど、化学兵器・・・VXガス、マスタードガスなど。
細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約等の実施に関する法律9条 生物兵器又は毒素兵器を使用して、当該生物兵器又は当該毒素兵器に充てんされた生物剤又は毒素を発散させた者は、無期若しくは2年以上の懲役又は1000万円以下の罰金に処する。
2項 生物剤又は毒素をみだりに発散させて人の生命、身体又は財産に危険を生じさせた者は、10年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処する。
3項 前2項の罪の未遂は罰する。
両罰規定として法人に1000万円以下の罰金。
化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律38条 化学兵器を使用して、当該化学兵器に充てんされ、又は当該化学兵器の内部で生成された毒性物質又はこれと同等の毒性を有する物質を発散させた者は、無期若しくは2年以上の懲役又は1000万円以下の罰金に処する。
2項 毒性物質又はこれと同等の毒性を有する物質をみだりに発散させて人の生命、身体又は財産に危険を生じさせた者は、10年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処する。
3項 前2項の未遂罪は罰する。
両罰規定として法人に1000万円以下の罰金。

生来的犯罪人説

生来的犯罪人説

イタリアのの医学者のチェザーレ・ロンブローゾ(Cesare Lombroso)が1876年に出版した『犯罪人論』の中で「犯罪者は生まれながらにして犯罪を行なう運命にある」と主張した。この説は、当時話題になったダーウィンの『種の起源』の進化論とガルに代表される骨相学・人相学の影響を受けたといわれている。ロンブローゾは軍医や監獄医として勤めていたことがあり、その経験から兵士と犯罪者の比較研究を行なった結果、(1)犯罪者は生まれながら犯罪を行なうように運命づけられている、(2)犯罪者は通常人にはない身体的・精神的特徴を有している、(3)犯罪者はヒトへの発展途上にある存在で、先祖返りの隔世遺伝である、という仮説を提示した。そしてこれらの生来的犯罪人は全犯罪者のうち60〜70%ぐらい(のちに35〜40%へと修正)を占めると考えた。このロンブローゾの生来的犯罪人説に対して、のちにイギリスのゴーリングらの研究によって批判され生来的犯罪者は存在しないとされた。

23組の染色体の最後の一対は男子はXY、女子はXXとなるところ、超男性ともいうべきXYYの遺伝子を有する者の存在が発見され、これらの者には通常の男性より強い粗暴傾向が見られるということで、精神病院に収容されているXYY症候群の患者に対する研究が進んだが、むしろ行動能力に乏しく、犯罪能力は一般人に比べて劣っているという指摘もあった。このように生来的犯罪人説は現在では否定される傾向にある。

セカンドレイプ

セカンドレイプ

Second Rape 強姦の被害に遭った人が刑事事件として告訴した場合、警察や弁護士に取り調べを受け、公開された法廷でその事実を明らかにされ、また民事事件では相手側から反論され、さらには世間から偏見や好奇の目にさらされて、性的に辱められることをいう。

強姦は被害者自身が告訴しなければ起訴できない親告罪(強姦致傷や加害者が2人以上のいわゆる輪姦は親告罪から外れる)だが、このセカンドレイプをおそれて告訴しないケースも少なくない。今後はプライバシーの保護が重要な問題となる。

接見

接見

身柄を拘束されている被疑者や被告人が弁護人または弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人になろうとする者と立会人なしに面会または書類、物の授受をすることができる(刑事訴訟法39条)。この面会のことを接見といい、接見交通権と呼ばれる。

接見または授受については法令で、被告人または被疑者の逃亡、罪証の隠滅または戒護に支障のある物の授受を防ぐため必要な措置を規定することができる(刑事訴訟法39条2項)。

捜査のため必要があるときには公訴の起訴前の段階に限り接見または授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。ただし、その指定は被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限するようなものであってはならない(刑事訴訟法39条3項)。

窃視症

窃視症

狭い意味では性的倒錯の一種を意味する。他人の裸体や排泄、性交などの場面などを密かに、相手の承諾なしに覗き見ることによって性的な興奮や満足を体験することである。しかし、ストリップや覗き部屋を訪れたり、性交場面や性器を描写したポルノグラフィを見たり読んだりすることを指して窃視症とは言わない。
窃視そのものはプライバシィの侵害や迷惑行為として軽犯罪法1条23号(正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者は拘留または科料に処す)違反に問われる程度である。しかし、窃視目的で他人の住居やホテルなどに侵入すれば住居侵入罪となり、自慰などで部屋を汚せば器物損壊、ついでに物を盗むと窃盗などの刑法に触れることになる。また、性的に興奮して、見る対象に対して強姦、強制わいせつ、殺人などの実行行為を行うと重罪となる。

窃盗罪 強盗罪

窃盗罪 強盗罪

他人の財物を盗むと窃盗罪刑法235条)となり、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する。

これに対し、暴行または脅迫という手段で他人の財物を奪うと強盗罪(刑法236条)となり、5年以上の懲役。

強盗する目的で、その予備をした場合は強盗予備罪(刑法237条)になり、2年以下の懲役。

また、単なる万引きやひったくりは窃盗だが、追いかけてきた警備員などを殴ったり、突き飛ばしたりすると事後強盗罪(刑法238条)、人を昏睡させて財物を奪うと昏睡強盗罪(刑法239条)となり、共に、強盗罪と同じく5年以上の懲役。

さらに、このとき怪我させたり死に至らしめた場合は強盗致死傷罪(刑法240条)になり、強盗致傷罪は無期または6年以上の懲役、強盗致死罪は死刑または無期懲役(最初から殺意のあった殺人強盗もこれに準じる)。
強盗の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強制性交等の罪(刑法179条第2項の罪を除く。以下この項において同じ。)もしくはその未遂罪をも犯したとき、又は強制性交等の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強盗の罪若しくはその未遂罪をも犯したときは強盗・強制性交等及び同致死罪(刑法241条)となり、無期または7年以上の懲役に処する。
2 前項の場合のうち、その犯した罪がいずれも未遂罪であるときは、人を死傷させたときを除き、その刑を軽減することができる。ただし、自己の意思によりいずれかの犯罪を中止したときは、その刑を軽減し、又は免除する。
3 第1項の罪にあたる行為により人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。また、刑法235条〜238条(ただし、刑法237条の強盗予備罪を除く)の未遂罪(刑法243条)も罰せられる。

窃盗症

窃盗症

Kleptomania クレプトマニア、窃盗癖、病的窃盗ともいい、一見すると無意味で目的のない盗みが反復される。
19世紀前半のフランスの精神科医マルクは「利用価値のない商品の盗みに耽る裕福な夫人たち」を取り上げてクレプトマニアという概念を提唱した。普通の万引きや常習窃盗と違う点はその人にとって金銭的にも実用的にも価値がないような物品を多量に盗むことであり、「利益のための窃盗」ではなく、「窃盗のための窃盗」であるとも言われた。盗品は包装されたまま隠匿されたり、他人に譲られたり、売り場に密かに返却されたりする。共犯をもたない単独犯の行為である。盗みを実行するさいに緊張感を体験し、成功すると解放感、満足感を味わう。他に目的をもたない「放火のための放火」を反復する放火症(ピロマニア)と共通点があり、精神疾患の分類では両者とも「衝動制御の障害」の中に含まれている。

前科

前科

前科が戸籍に記載されたのは、明治5年から15年までの間のことで、太政官の布告によって始まった制度だったが、別に犯罪人名簿というものが作られることになって戸籍には記載されなくなった。戸籍だけでなく住民票にも記載されることはない。

また、不起訴になったり、交通違反で行政処分になった場合は前科とはいわない。

禁錮刑以上の刑を受けた場合は執行を終えるか免除になった日から10年以上の間、罰金以上の刑を受けなければ前科はなくなる。また、罰金以下の刑の場合は5年以上罰金以上の刑を受けなければ前科なしとなる。

線条痕

線条痕

銃から発射された弾丸にはその銃特有の線の模様が付くがこれを「線条痕」という。2つの弾丸の線条痕が一致すれば、それは同じ銃から発射された弾丸だと分かる。永山則夫連続射殺魔事件では、東京、京都、函館、名古屋で射殺事件を起こしているが、現場に残された弾丸の線条痕によって同一犯による事件と判明した。

宣誓

宣誓

証人尋問で証人が法廷で証言を始める前にウソをつかないという誓いを読み上げることになっており、これを宣誓という。この宣誓、地方によって宣誓文の文面が違うようだ。
東京・大阪・・・「良心に従って、真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います」
愛知・・・「良心に従って、本当のことを申しあげます。知っていることを隠したり、ないことを申しあげたりなど決していたしません。以上のとおり誓います」
などなど・・・。

捜査権

捜査権

犯罪の捜査機関は警察だけではなく、刑事訴訟法で、司法警察職員、検察官、検察事務官の3つに捜査する権限が与えられている(刑事訴訟法189〜246条)。

司法警察職員は(普通の警察官の)一般司法警察職員と(海上保安官や麻薬取締官などの)特別司法警察職員に分けられる。

司法警察職員は犯罪があると思うときに捜査を行なう義務があるが、一方、検察官は必要があると思われるときだけ直接捜査をする。

海上保安官や麻薬取締官のほかにも、限定付きの警察権をもつ役職はいろいろある。たとえば、営林署の職員は森林法に関する警察権をもっているので、勝手に山に入って樹木を伐採したりする者がいれば捕まえることができる。また、警察官のいない村の村長にも警察権が与えられている。船舶の船長にも警察権がある。航行中に船内で犯罪行為があれば、船長が捜査を行なうことができる。

騒乱罪

騒乱罪

騒乱の罪は群衆心理に支配された集団の破壊力による公共の平穏の阻害を内容とする必要的共犯の一種としての集合犯である(騒乱罪)。ただし、同じく集合犯である内乱罪とは異なり、未遂、予備等は処罰されない。また、目的犯ではない。
刑法106条 多衆で集合して暴行または脅迫した者は騒乱の罪とし、次の区別に従って処断する。
1 首謀者は1年以上10年以下の懲役または禁錮に処する。
2 他人を指揮しまたは他人に率先して勢いを助けた者は6ヶ月以上7年以下の懲役または禁錮に処する。
3 付和雷同した者は10万円の罰金に処する。
刑法107条(多衆不解散罪) 暴行または脅迫をするため多衆が集合した場合において、権限のある公務員から解散の命令を3回以上受けたにもかかわらず、なお解散しなかったときは、首謀者は3年以下の懲役または禁錮に処し、その他の者は10万円以下の罰金に処する。
「権限のある公務員」とは解散命令をなしうる公務員で警察官のこと。

組織犯罪

組織犯罪

本来は「犯罪を継続的・職業的に遂行するために分業と協業の体系化された組織による犯罪行動」のことをいう。典型的なものとしてスリ集団や麻薬密売組織などがある。組織犯罪処罰法(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律)は殺人その他所定の刑法犯が(1)団体の活動として、そのための組織により行われた場合、または(2)団体に不正な権益を得させる目的等で実行された場合、その処罰を加重することとしている。
組織犯罪、組織的犯罪は主に暴力団など反社会的集団による犯罪に対して用いられてきた用語であったが、近年、元々はそうした要素のないはずの一般企業などにおいて組織的に実行された犯罪に対しても転用されるようになった。

措置入院

措置入院

強制的に精神科の病院に入院させる制度で、錯乱している人がいるときなどの緊急時は誰でも保健所を通じて都道府県知事に申請できる。また、検察官は精神障害のある容疑者や被告について、不起訴または実刑以外の判決が確定したとき、知事に通報する。

知事は申請などを受けると精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の指定医2人以上に診察させ、「精神障害のため、自らを傷つけたり他人に害を及ぼすおそれがある」とした場合、措置入院させる。

精神科入院患者のうち、措置入院は1%の約3400人。大阪の児童殺傷事件の容疑者の宅間守は、事件を起こす2年前に薬物混入事件で不起訴になり、検察官の通報で約40日間、措置入院した。

ソナグラフ

ソナグラフ

Sonagraph 「声紋分析機」のこと。ソナグラフは第2次世界大戦中の1945年(昭和20年)、アメリカのベル研究所がドイツ軍の暗号を解読するために開発したもので、日本では吉展ちゃん誘拐殺人事件(1963年3月31日、事件発生)から導入された。この装置は声の周波数を分析し、横軸を時間、縦軸を周波数で図式化、周波数成分の強弱を濃淡(バー型)や等高線(等高線型)で表したもの。日本では主にバー型声紋が使用されているが、狭帯域幅フィルター(50ヘルツ)は声の高さなどの発声状態を詳細に観察でき、広帯域幅フィルター(3000ヘルツ)は声の時間的変化や強さの集中部分を観察するのに用いる。

関連書籍・・・
『嘘発見器よ永遠なれ 「正義の機械」に取り憑かれた人々』(早川書房/ケン・オールダー/2008)

宙(そら)の会
宙(そら)の会
2009年(平成21年)2月28日、東京都千代田区の明治大学で殺人事件での時効の停止と制度廃止を求める遺族会である「宙(そら)の会」の結成総会があった。殺人事件の時効撤廃・停止の実現と時効が成立した遺族への国家賠償などを求める。時効問題に特化した犯罪被害者の会の結成は初めて。宙の会には、国内外の16事件の遺族20人が参加。世田谷一家惨殺事件(2000年12月)で長男一家4人を失った宮沢良行(会発足当時80歳)を会長に、柴又上智大生刺殺放火事件(1996年9月)で次女を殺害された小林賢二(会発足当時62歳)を代表幹事に選んだ。会によると、「宙」には「無限」という意味があり、時効の撤廃・停止の願いなどを込めたという。
活動目的として(1)時効制度の撤廃・停止の実現(2)遺族の権利確立(3)啓発活動の推進などを掲げた。刑事訴訟法を改正して時効の撤廃を求めるほか、時効成立後、国が容疑者逮捕などの責務を果たしていないとして民事上の責任を求めていく。海外の時効制度との比較や国民の意識調査などの情報を発信し啓発活動も進める。
宮沢会長は「冤罪はあってはならないが、犯人が罰せられない社会はなくした方がいい」と話した。
★「宙の会」会員遺族の主な事件(#印は時効成立)
札幌信金女性職員殺害事件(1990年12月)#
米国ペンシルベニア州男性殺害事件(1992年5月)
兵庫県尼崎市女性殺害事件(1993年7月)#
長野県松本市女性強盗殺害事件(1994年3月)
柴又上智大生刺殺放火事件(1996年9月)
名古屋市西区主婦殺害事件(1999年11月)
世田谷一家惨殺事件(2000年12月)
新宿歌舞伎町44人死亡ビル火災事件(2001年9月)
佐賀県鳥栖市男性会社員撲殺事件(2004年2月)
広島県廿日市市女子高生刺殺事件(2004年10月)
イギリス人女性英会話講師殺害事件(2007年3月)
尊厳死
尊厳死
患者がもはや助かる見込みがなく、延命をほとんど生命維持装置(人工呼吸器など)に頼るしかない場合に「無理に生きたくない」という患者の思い、「そこまでして生かしたくない」という親族の願いを尊重して延命措置を打ち切ること。患者の意識がはっきりしている状態で、事前に「尊厳死」を望み、親族と充分に話し合い、延命の打ち切りの最終判断を担当医師が行っていれば、正当業務行為として罰せられない。

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