海風通信 after season...

route18 「松林のこと」



 突然の夕立により、ひと気の消えた夏の海にやって来たすーちゃんと春日ちゃん。マツボックリが転がる暗い松林を抜けると、鏡のような凪の海が広がっています。「夏の海は おでんだよ」「夏は夕方ですね」と各々の持論を述べ合いながら、花火で楽しく過ごした帰り道、松林で例の不思議タイム。何だろう?あの石祠。何で光(火)が灯ってるの?すーちゃんは線香花火とかって言ってるし、ちょっと気持ちの悪いお話ですね。
 さて、三浦で松林のある砂浜海岸(海の家付き)となると、これはもうすぐにでも特定できるのかと思いきや、今回もまた難題です。意外にも松林のある海岸って少ないんですよ。かつて長浜には、キレイな松林の続く海岸があったことで景勝地としても知られていましたが、それもかなり昔のこと。今では全くその面影は見つけられません。ここにあれば、ロケーションは本当に理想的だったのですけれどね。
 その他、海の家がありながらどことなく「隠れ浜」のようなポイントを挙げてみると、戸津浜、大浦海岸、横堀・胴網海岸などが思いつきますが、雰囲気的に良くても、松林が無いのですよ。胴網海岸なんて、薄暗い山道を抜けた先にたどり着く海岸で、途中、三浦道寸のお墓などが木立の中にひっそりと並び、条件的にはスゴく良いのですけどね。思わず松を植樹してみたい気持ちに駆られました。(←ダメです。)
 いろいろとまわった挙句、苦し紛れに辿り着いたのは、葉山の一色海岸。メジャー過ぎる?いえいえ、私も当初はそう思い込んでいましたが、御用邸裏の海岸あたりはとても静かで、松林も多く残る雰囲気の良い場所だったのです。
▲松林の続く一色公園前の砂浜海岸。 ▲夏はここに海の家が建つが、この状況の方が作中に近い?
 一色公園と御用邸の隣接するあたりが、ほんのり薄暗くて良い感じ。けれどそこは公園なので、山道っぽさはないんですよね。理想を言えば、やっぱり御用邸の中が自然を多く残してそうだなぁ、中を見てみたいなぁと思っていると、わらわらと3人の警察官に囲まれてしまいました。何事かと訊けば、私が御用邸の壁側にバイクを停めたのが原因で、忠告をしに来たということ。あぁ、これはちょっと私の不注意でしたね。皆さんもこの辺をウロウロする時は、お巡りさんに一言挨拶をして動いた方が良いかも知れません。ちなみに御用邸を撮ることも、御用邸方面に向かって写真を撮ることも遠慮した方が良いようです。でないと、たちまち職質に遭ってしまいますよ!?
▲夕暮迫る松林。シーズンを終えた浜辺は、とても静か。 ▲いたるところにマツボックリ。
 夕暮が近づいてくると、ひらけた公園の松林もなんだか不気味な様相を醸し出してきます。遠くにヒグラシのカナカナが聞こえれば、さらに雰囲気も上がります。そしてこの松林が、あともう少し深く続いていたら!と思いながら御用邸の方を見つめると、再びお巡りさんと目が合ってしまいました。
 ……フシギ世界ではなく、現実の暗く冷たい場所に連れていかれることは可能ですが、それはちょっと遠慮しておきましょう。


2015/09/15