海風通信 after season...

route35 「ランプのこと」



 この作品もいよいよ今回で最終回。最後の舞台はやはり『ランプ』でということで、素直に正統的な結末となっています。ラスト・エピソードを飾る表紙の構図もファースト・エピソードと呼応していて、思わずニヤリとさせられますね。
 残念ながら今回も検証すべきロケーション要素が何もないことから、画像無しの考察レポートとなってしまうことをご容赦ください。あぁ、結局最後まで『ランプ』の具体的な立地場所と設定は判明しませんでしたねぇ…。

 まだ春も遠い冬の朝、『ランプ』の前で暖をとっていると、オフの日の店長の姿を目にします。休日時の店長の動向を知らなかったすーちゃん、「ここで何を?」と訊くと、本を読みながら寛ぐのだそう。「昔の長ーい まんが」を読むのがお楽しみとのことですが、これって何の漫画なのでしょう?横山光輝の『三国志』(全60巻)あたりだったら、まぁ妥当なところかな?『美味しんぼ』とかだったりしたら、ちょっと笑えるかも。すーちゃん曰く「ミートソースとナポリタンしか作らない店長が、美味しんぼー?」とかって。(←ちなみにまだ『昔』じゃありません!)あるいは『釣りキチ三平』や『ゴルゴ』、『こち亀』あたりということは……まぁ、無いかなぁ。
 漫画のことはさておき、そんな休日の光景を、自分はかつて見ていた(知っていた)ということに気付かされます。そうして始まる不思議な5分。すーちゃんは自分のドッペルゲンガー(というより、過去の自分?)に出会うことにより、『ランプ』のお店で働こうと思い立った、あの頃の自分の気持ちを再認識することになります。「そうかー、思い出したね あのときの気分」。
 なんという王道的かつ無難な展開でしょう。まるで連載当初から用意されていたような、キレイに整った万能的な結末でしたね。皮肉を言えば、いつ連載終了が決まっても、これさえ最終話に持ってくれば、全てまるく収まるような辻褄の良さ(←芦奈野先生、ゴメンなさい!)。いえいえ、それは裏を返せば、この最終話の手前に、これからいくらでも追加エピソードを挿入できる、無限の可能性を持たせたということでもあります。
 話に捻りや意外性が無く、少し物足りないと感じられた方もいるようですが、私はこうした流れで大変満足、この終わり方で良かったと思っています。
 願わくば、たま〜〜〜に短篇読み切り風に追加エピソードを出していただいて、すーちゃんの不思議で異質な5分間を再び味わわせていただけることが出来たなら……。そんな願いを込めつつ、この検証レポートもひとまず了とさせていただきます。


2020/11/28