海風通信 after season...

route25 「梅の夜のこと」



 何の予定もないオフの一日に、近所で見つけた不思議な現象のお話。
 昼近くまでのんびり寝てようと思っていた休日の朝、けたたましい騒音に叩き起こされるすーちゃん。それは近所の小さな梅林が、開花を間近に控えているにもかかわらず、伐採されている作業音。去年の満開の時に写真を撮っておけば良かったかなと思いつつも、何となく夜にまた気になって梅林へと向かうと、そこは一瞬に、そして一斉に咲いたかと思えるほどの満開の梅…。ありふれた不思議ストーリーのような、それでいて色々な謎が含まれているようなエピソードですが、ストーリー検証は後述します。
 まずは舞台地検証ですが、これは完全にお手上げですね。住宅街にあって、ふらりと立ち寄ることのできる小さな梅林なんて、ピックアップし出したらキリがありません。そこで今回は、三浦半島随一とも言える田浦梅林の画像にて、せめてもの雰囲気を味わってください。
 田浦梅林・正式名称「田浦梅の里」は、約2700本の梅が咲く場所で、『かながわ花の名所100選』にも挙げられています。敷地面積は約6000平方メートル、谷戸の斜面にへばり付くように広がる梅林は、海と空の青を背景に眺望できる高所側から見る景色が抜群です。見頃は2月下旬から3月中旬まで…って、これじゃあ何だか観光ガイドブックみたいな書き方ですね。
 それにしても、ここって結構な観光名所でしょうに、園内や周辺地域がヘンに商売根性を見せないところが印象的でした。花見や行楽客から少しでも金を落としてもらおう、搾り取ろうという姿勢の施設が見つけられないのですね。これはたまたま平日に訪れたからなのでしょうか(でも、梅祭りの期間真っ最中でもあるのですよ!)、なんとも潔くて私的には好感を持ちましたが、当地を訪れる方はお弁当や飲み物の用意をしていった方が良いですよ。園内にはホントに何も商業施設がありません。たしか自販機も無かったように思います。
▲園内高所。梅林越しに長浦港が見渡せる。 ▲芝生広場の下あたりが、いかにも梅林らしい賑わいがある。
 さて、ここからはいくつか気になったストーリー検証。今回のフシギ時間は、伐採・もしくは作業途中で残された木々たちが、「夜に」「一瞬で咲き揃う」場面だと思うのですが、実は他にもミステリーな部分が挿し込まれていますよね。それは近所のオバちゃんの「もったいないねー!せめて花咲かせてからやればいいのにねー」というセリフ。どうして開花直前だった梅林を、早急に処理してしまわなければならなかったのでしょう?工期が決まっていて、すぐにでも駐車場にしなければならなかった、という現実的理由も考えられますが、人情としては、せめてひと花咲かせてあげてから、惜しまれつつ伐採というような対応も出来たとは思うのですが…。
 突飛な発想ですが、これは「ウメ輪紋ウィルス」を示唆しているのではないでしょうか。2014年、青梅市のある公園で、このウィルス感染により園内の全ての梅の木を伐採しなければならないというニュースが話題になりました。このウィルスはアブラムシや接ぎ木によって他の梅の木に感染し、発症すると治療法がないため、見つかり次第全て処分(伐採・伐根)されてしまうのだそうです。
 作品中でも開花直前に問答無用で伐ってしまったのは、いざ咲いてしまうと虫がついてしまったり、花の付いた枝を持ち帰って接ぎ木にされてしまわないようにとの対策かも知れません。けど…あれ?そ、そう言えば…?
 「すーちゃん、枝、持ち帰ってるじゃん!」
 これをきっかけに、新たなるウィルス感染拡大の脅威が……!?って、これはもうコトノバドライブの話じゃなくなってしまいますね。
 冗談はさておき、神奈川県内でも実際に発症の事例は出ています。幸い三浦半島では報告されていませんが、美しい梅林風景を後世に残すためにも、これ以上の被害が拡がらないことを祈るばかりです。


2017/02/28