海風通信 after season...


 「バーベキュー」とは、サウンド・ストーリー『ヨコハマ買い出し紀行3』に収録されている、原作にはないオリジナル・エピソードの一つです。
 このお話、原作とは少し毛色の違った雰囲気を感じることから、ひょっとしたらドラマCDの脚本に携わった方々の着想が反映されているのかも知れません。なんと言うか、せっかくメイン声優さん達を集合させたのだから、ここはひとつ打ち上げ宴会風ストーリーで!みたいなスピンオフ的なノリを感じるのですね。アルファ・ココネ・タカヒロ・マッキ・おじさんが一堂に会するというのも、原作では意外となかった構成ではないでしょうか。
 エピソードのあらすじは、タカヒロが物置の片隅でコンロと炭を見つけて、何年かぶりに皆でバーベキューをしてみた、というもの。バーベキューも終わり、宴会もお開きにしようとしていたところ、「花火持ってくるんだったなぁ…」と名残りを惜しむマッキを見て、ココネが「ねぇ!花火よりいい考えがある。みんなで、怖ぁーいハナシするの!」(←いい考え…ですか?このヘンも原作のココちゃんとは違うような…。)その提案に、怖い話が苦手なアルファさんはビビりまくり。そしてお酒がエスカレートし、酩酊状態となって「ブルー・ライト・ヨコハマ」を歌い出すという顛末。(←ホントかよ?いえ、ホントにそうなんですってば!そして今まで呂律が回らない喋り方をしていたのに、歌い出すと素面に戻っちゃうという違和感も可笑しかったです。)

 さて、このバーベキューをしていた場所が何処だったのか?というのが今回の検証の目的です。音声のみで画像資料が全く無いという前代未聞の検証推理ですが、タカヒロの披露した怪談話に、実は大きな手掛かりが見つけられました。
 それは、「ここの下に水没した病院があるんだけど、ほら、そこに赤十字のマークだけ見える」というセリフ。コトノバドライブの『夜の並木のこと』でも書きましたが、赤十字のマークって軽々に使用できるものではないのですよ。となると自ずと導き出されてくるものは、日本赤十字社の正式な所属組織である赤十字病院だけということになります。そして神奈川県内で赤十字病院として登録されているものは、横浜市立みなと・相模原・秦野のわずか3病院だけという結果に至りました。こうなると、結論はもう一択ですね?「海沿いにあり、この病院を見下ろせる高台にある場所」ということで辿り着いたのが、ココ↓です!

▲港の見える丘公園・展望台から見渡す新山下の湾岸地域。ここから赤十字の病院が見える。

 まさかこのようなカタチで「港の見える丘公園」に来るとは思いませんでしたが、私にとっては人生初の来訪となりました。超のつくほど有名な観光地であるにも関わらず、例によって私のヒネくれ根性により、今までずっと敬遠していた地域でもあったのです。この展望台の眺望にしても、フツーの人ならば、「わぁー!ベイブリッジが見渡せてステキ〜!」となるところを、「やぁ、赤十字の病院が見えるー!」なんて思って見てる人は、たぶん私くらいのものなのでしょうから。
 この展望台から見る病院のロケーションの立地条件も奇妙にマッチしていて、ココネの感じた「もう暗くてよく見えないですね」という距離感や、水没した状況でもマーク部分は海面上に出そうな高低感も見事に合致しています。
(↑※すみません、すごく不謹慎な事を書いていると自分でも思いますが、あくまでフィクションとして捉えて下さい。単純にストーリー上の設定条件と似ているという観点のみで選定しており、歴史的検証でも後述しますが、実際の病院とこのエピソードは全くの無関係です。怪談話もアルファさんが言うように、「それはね〜、きっとぉ〜、サ・カ・ナ♪」です。)
▲肉眼でもハッキリと視認できる赤十字マーク。 ▲屋上付近を拡大。

 それにしても、いくらなんでもバーベキューをした舞台地が「港の見える丘公園」というのは無茶が過ぎるのでは?と感じた方も多くいられるかと思います。私も当初は、サスガにそれは無いだろうと思っていました。しかしそれこそが、このお話が本編とは一線を画したスピンオフなのでは?と推測を立てた肝要部分でもあるのです。本編ではないオリジナル・ストーリーである以上、ある意味お祭り的な展開の物語を構想してみようとする段階で、メインキャラを総出演(アヤセいないけど)させて、場所も『ヨコハマ買い出し紀行』というタイトルなのにほとんど横浜が出ないから、いっそ横浜のどこか高台のランドマークにしよう!…といったような遊び心を、ふんだんに散りばめているのではないでしょうか?(←※以上全て、私の一方的かつ強引な想像です。)
 でも、それが裏付けられていると感じるのは、エピソード内でアルファさんが歌い出す『ブルー・ライト・ヨコハマ』にあると思うのですよ。
 あのタイミングで、何故に『ブルー・ライト・ヨコハマ』なのか?バーベキュー舞台地のロケーション候補はいくつかあったのですが、例えばあれが北の町の高台(横須賀平和中央公園)だったとしたら、何で『ブルー・ライト・ヨコハマ』を歌うのか意味が解らない。(←そこは『横須賀ストーリー』だろ!とかってツッコミを入れたくなる。よね?)また夜景も、ここからだとほとんど「横浜方面」の大まかな夜景としてしか認識できないはずです。
 そして、ココネが思わず感嘆して呟く「わぁ、見て、灯りがあんなに!まだこんなに街灯が残っているなんて…!」、そしてアルファが「うん、時々こうやってここに見に来るんだ。昔の人が、のこしてくれた光…。」というセリフ。「昔の人が のこしてくれた 光」というフレーズは『ヨコスカ巡航』でも使用されていますが、おそらくこれはそれを引用してのオマージュかと。これらのことから、「横須賀よりも更に街灯の多い場所」として、横浜の高台が使用されているのではという推測に至ったのです。
 こうして導き出されたのが『港の見える丘公園』だったのですが、実際に現地に訪れてから更にいろいろと調べてみると、新たな真相が!なんとこの『ブルー・ライト・ヨコハマ』を作詞した橋本淳氏は、『港の見える丘公園』から眺めた夜景をイメージして、この詞を作り出したそうですよ!これはもう、ほとんどビンゴと言って良い確信的展開なのではないでしょうか?
 現実世界ではここでのバーベキューはもちろん禁止ですが、未来世界では人も激減し、そうした規制も無くなっている?という設定なのかも知れません。「まぁー、そんなコトも あんかも知んねーなァ……。」(←byおじさん)。
▲港の見える丘公園展望台施設の全景。 ▲ここから見える定番の眺望はやはり、横浜ベイブリッジ。

 『港の見える丘公園』のある山手地区は、その他さまざまな魅力的なロケーションが広がっていました。やはり横浜を代表する一級の観光スポットだけはありますね。私も食わず嫌いをせず、もっと早くに来るべきだったと思いました。
 それ以外の山手エリアの候補地もいくつかまわって見てみると、『ワシン坂上公園』なんかも小ぢんまりとしながら中々に良いロケーションです。あと、途中にある眺めの良い高台道路が絶妙な塩梅に廃れていて、柵に絡みつく植生が実にヨコハマ的な風景だったことが印象に残りました。思わず写真に収めておいたのですが、ここが後日調べて見ると、桑田佳祐氏の『ダーリン』MVロケ地の一部と判明。やはりどこかで、かつて見た記憶のスイッチに刺激される部分があったのでしょうね。また、この周辺の植物が猛威を振るう隙間から見る赤十字病院も、なにげに魅力的。いろいろな発見があり、久々に歩いていて飽きないエリアでした。
▲ワシン坂上公園からも赤十字病院が見えます。 ▲桑田佳祐の『ダーリン』MVにも出てくる高台道路。

 というワケで、バーベキューの舞台地はこれでバッチリでしょ?と意気揚々に旅を終えましたが、帰宅後に今回の記事をまとめるために『みなと赤十字病院』の歴史的経緯について調べてみたら、全てを無に帰するような事実がそこには示されていました。
 実は、『みなと赤十字病院』は2005年からの移転創設で、それまでは中区根岸町にあったそうなのです。これの何が問題かと言うと、サウンド・ストーリー『ヨコハマ買い出し紀行3』が発売されたのが2002年!……明らかに矛盾が発生しますよね。あるいは2002年代にその建設計画の存在が認識されていたとしても、それをイメージとして落とし込めるかどうか…。まさか、未来にこうした病院が出来ることを見越してオリジナル・ストーリーを作成していたというのなら、見事なまでの先見力なのですが。
 ちなみに、移転前の中区根岸町にあった病院をモデルとしているとすれば、高台の展望地は加曽台あたり?でも、それだと眺めることのできる夜景は根岸湾となり、横浜とは真逆の方向となります。う〜ん……なんとも、もどかしいですね。
 まぁ、この仮説もかなり強引なものですし、様々な方面から自由に想像してみるのも楽しいかも知れません。
 今回は『ブルー・ライト・ヨコハマ』をナビとして、いろいろと引っ張りまわしてもらったみたいです。こんな機会でもなかったら、私としてはまず来るハズもなかった場所だったに違いないでしょうからね。
▲人工物に絡みつく植生がヨコハマっぽい? ▲緑化フェアのシンボルキャラクター・ガーデンベア。

 【追記】:2025年、この『ブルー・ライト・ヨコハマ』を代表曲とする象徴的な歌手でもあった、いしだあゆみさんが逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表します。いしださんの若い頃って私はあまり存じ上げていなかったのですが、今見てみるとお顔立ちが最初期のアルファさんと似ていなくもないかなぁーと感じますね。(髪を後ろにまとめ上げているヘアスタイルなんかの時は、特にそう。)当時の『ブルー・ライト・ヨコハマ』のアルバム・ジャケット(※シングル盤のほうではないです。)の写真など、アイドル期の姿を見ていると、なんとなくそんなふうに思えました。
 ご冥福をお祈りいたします。
2025/12/18(初稿):2025/12/09(撮影)