海風通信 after season...


 はい、これはもう検証もへったくれもない、突発的行動欲求からくる強引な展開レポートですね。
 ことの発端はGoogleマップ上で、何とは無しに黄色いニクいヤツ→「ペグマン」ぺローンと落とした場所で偶然に表示された画像からでした。
 「……あれ?ココの地形の曲線感、第106話『道と町と住人』に出てきた、高台の公園から見た町の風景に似てんじゃね!?」
 そんな程度のニュアンスから抱いた発想、まさに「曲線美の誘惑」というやつです。『THE SQUARE』ですね。(←それは『線美の誘惑』では?)
 …ま、まぁ、たまたま思いついたからこう書いてしまいましたが、なにげに初期のTHE SQUAREのアルバムタイトルって、けっこう記憶に刻まれるものがあると思いませんか?他にも『うち水にRainbow』なんて、毎年夏が来て水を扱うようになると、決まって思い出してしまいます。なんでだろう?語呂が合っているようでそうでもないような違和感からなのかな…?歌詞もないのに、思わず♪うっち水〜にレイ〜ンボゥ〜!とかって口ずさんでいる自分がいたりします。あ、話が逸れまくっていますが、今回のサブタイトルは、そうした理由からなんとなく付けられました。
 とにもかくにも、地形の曲線美に注意を払って、以下の画像を見ていただきたいと思います。
▲蛇行する川と特徴的な建物、そして全体的な地形感に注目! ▲建造物の正体は、秩父太平洋セメント本社工場でした。

 これこれ!このカンジですよ!これが、「草はぼうぼうでも…」とアヤセが呟いた直前のコマの風景描写に似ています。
 この場所は、秩父郡皆野町にある『美の山公園』山頂から見た、秩父市街地方面の展望風景。秩父と言えばセメント→セメントと言えば石灰→石灰と言えば「途中 石灰の山のようなものをいくつか見た」というアヤセの言葉。これを踏まえて画像を見てみると、風景中央に見えている特徴的な建物はなんと『秩父太平洋セメント本社工場』ということでもあり、何気に関連を感じざるを得ません。
 その他にも、この場所は……盆地である・中くらいの町である・駅もある・公園手前まで車で行けるなどの要素も合致しています。これはひょっとして、ひょっとするのでは?…えぇーい、今回は登頂後の結論画像から先にお見せしましょう!これです↓
▲『美の山公園』山頂展望台より南南西方向の眺望。快晴にも関わらず、春霞によってボヤケて見えてしまうのが残念。 

 どうでしょう?あの曲線は浸食地形ではあるものの、残念ながら現在においては川ではなく(え?)、また大きな建物群の位置もまったく合っていなくて(えぇっ?)、なにより日光の差し込む方向がおそらく真逆(ええぇー?)となっていますが、なんとなくそれらしい雰囲気は感じ取っていただけるのではないでしょうか。(←それは全然違っているというコトなんじゃあないのかッ?)
 …いやぁ、まぁ、ねぇ…。春なんだし、桜の時季でもあるし、とりあえず行ってみたいと見ないと検証のしようもないということで、行くのですよ。うん。
 け、決して…↓

 というコトではないんですって……!(汗)
 尚、ここまで読んでいただいた時点で、今回の目的はおおかたクリアしています。以降は単なる登山レポートとなりますので、ヨコハマ要素はほとんど出てきません。なので興味の無い方はスルーしてもらっても結構です。

 『美の山公園』への主な登山ルートは、秩父鉄道の親鼻・皆野・和銅黒谷の3駅からそれぞれコースが設けられていますが、今回は比較的なだらかにゆっくりと時間をかけて登っていくという、親鼻駅からのコースを選択しました。
 しかしこの親鼻駅、無人駅であり、かつ近辺には商店らしきものがほとんど無いのですね。弁当・食糧などは現地でカンタンに調達できるだろうとタカを括っていた私は、ここで思わぬ出鼻を挫かれました。(←旅先では、スマホとかの情報端末は使わないヒトなのよ。変わり者なんです。)
 周辺をうろつき、なんとか見つけ出せたのがヤマザキショップ。地方ではこのテのコンビニが多く見つけられるのが非常に心強いですね。
 でもこのヤマザキショップ、ちょっと変わった個性的なお店でした。たまたまの時間帯だったのかも知れませんが、オニギリ類がいっさい無い!サンドイッチみたいな軽食系も無い!お弁当はチョコッと。惣菜(おかず)コーナーに至っては、ズラリと並んではいるものの、そこには『みそポテト』という見慣れぬ食べ物が、ただの1種類だけ並べられているのです。棚を埋めているのは、『みそポテト(2本入)』・『みそポテト(3本入)』・『みそポテト(5本入)』と、ひたすら『みそポテト』尽くし……。
 「ナ、ナンダココ……??」
 おかずの好みに、もはや選択の余地無し。唯一可能なのは数量の増減だけです。
▲ヤマザキショップ皆野よろづや店。 ▲これが『みそポテト』だ!しかも地元価格で安い!

 この異常な状況に、思わずお店の方に、「この『みそポテト』って何なんです?」と訊いてみました。
 どうやらそれは、ポテトフライに特製の味噌をくぐらせた、秩父地方独特のB級グルメなのだそうです。私は全く知らなかったのですが、これはけっこう有名らしく、今では秩父の名物として色々と浸透しているそう。このお店はその発祥的な存在として知られているようでした。
 「この皆野にバナナマンの設楽さんの実家があってね、設楽さんがTVでコレを話してくれてから、いろんな所から来てくれるようになったのよ〜。」
 お店の気さくなお母さん的店員の女性は、そう話してくれました。なるほど、そうした経緯を知れば、この強気の「みそポテト一点張り」の理由にも納得というものです。ここを訪れる多くの人は、『みそポテト』を目当てにやって来るようなのですね。しかし、思いもかけない場所で、意外な発見やエピソードを得ることができました。こういうコトがあるから、あまり事前情報を仕入れないほうが旅は楽しいのですな。
 ということで、今まさに出来立てホカホカの『みそポテト』と菓子パン(ヤマザキショップだから、パン類は充実している)を購入し、美の山公園登山口へ。ホントは出来立てを今すぐにでも食べてみたかったんですけどねー。冷めても美味しいということで、これは山頂でのお楽しみにとっておくことにしました。
▲蓑山の神様にごあいさつ。 ▲また現れたか!ミミガタテンナンショウ。

 秩父鉄道の踏切を渡り、萬福寺の脇を通り抜けると、なんだか住宅地の私道のようになりつつある場所に、登山口の入口がありました。
 初めはまるで裏山の小道を登るかのような軽いハイキングコース。『みそポテト』の入った袋をブラブラと片手に提げてもラクに歩けるほどでしたが、美の山(本来の名は「蓑山」という)の神様の祀られている石祠を過ぎたあたりから、徐々に斜度を上げてゆきます。このコース全体が北側斜面ということもあるのでしょう。山の雰囲気は全体的に薄暗く、晴れていてもちょっと湿った感じがします。
 こうした状況にある森の中には……おぉ、やはりありました!ミミガタテンナンショウ(耳形天南星)というサトイモ科の植物です。これ、奇妙にも私が『道と町と住人』の「夕方のきれいな公園」を探しに各地へ行くと、高確率で遭遇するのです。日陰にひっそりと咲いていたり、「マムシグサ」というなんだか恐ろしい名称の植物の仲間であるということから、これまでは少し不気味に感じていたものの、こうも目にしていると愛着も湧いてくるというもの。そしてこのうなだれたような容貌から、ひょっとしたら『人型キノコ』の元ネタは、実はミミガタテンナンショウだったのでは?と強引に推測してしまう自分がいたりするのです。(←考え過ぎですね。色も黒だし。)
 ともあれ、この不思議な規則性を楽しみながら登り詰めていくと、40分程度でアッサリと公園状の高台に出ました。どうやらここはもう既に、『美の山公園』の一部である「みはらし園地」という場所らしいのですが、言うほど眺望が良いというわけでもありません。木々の隙間から皆野町の町並みが一望できるものの、求めている景色とは程遠いものでした。なので休憩を挟む暇も作らず、ともかくは山頂展望台を目指して行くことにします。
▲まぁ、公園の階段なんてどこにでもありますが…。 ▲「美の山」を象徴する風景。背後の建造物は『入口展望台』。

 「美の山(みのやま)」は「蓑山」をわざわざ改名して公園化しただけあって、四季を通じて美しい花々を目にすることができます。とりわけ桜の時季は圧巻で、園内の至るところで咲き誇る様子から、「桜の美の山」と呼ばれることも。この桜の木々を「見上げる」だけでなく「見下ろし」ながら、同時にその眼下に拡がる眺望を楽しめるということで、どうしてもこの時季にここに来てみたかったのです。
 園内に展望台は『入口展望台』・『山頂展望台』・『東展望台』と3ヶ所あり、そのどれもが極めて近い場所に集中して存在していますので、すべてを廻ってみて、自分のお気に入りの景色を探して見るのも良いかも知れません。途中、『アヤセが立ち寄った公園内の階段』のような場所も見つかります。(←強引?)また、展望台とは別に、地形的に本当の『山頂』を示す地点もありますが、ここはロケーション的に少し残念かも。(見るとガッカリします。)
 そんな中、やはり一番のビューポイントは『山頂展望台』でした!そこからの眺めが、これです!↓
▲桜並木を手前に拡がる秩父盆地の展望。かつての川が削り取った蛇行線の跡が素晴らしい!中央少し左の尖った山は武甲山。 

 この展望台も良いのですが、展望台のすぐ下に広がる草地の斜面もまた良いです。桜を間近に眺められ、また視界も展望台のそれとほぼ同じなので、地面に腰を下ろしながらゆったりと堪能することができます。せっかくなので、ここで昼食を食べることにしましょう。
 取りい出したるは、例の『みそポテト』!えぇぇ!?休憩無しのハイペースで山頂まで登ってきて、疲れた身体に揚げ物ってどうよ?と思われるかも知れませんが、これが全然イケました。購入してから1時間以上経過しているのに、衣がまだサクサクと香ばしく、なにより味噌ダレが絶妙に旨い!油のしつこさがほとんど感じられないので、3本をペロリとたいらげられました。う〜ん、これなら5本買っても良かったかもなー。よし、次回は5本買おう!
 …なんか、続編があるかのような書き方ですけど、この『蓑山(美の山)』は秩父連山の中にあっても地形的に「独立峰」のような構造になっているため、低山にしては珍しく雲海が発生しやすいのだそう。この雲海の向こうに見える秩父山麓や、セメント工場の妖しい夜景の光もまた幻想的ということで、今度は雲海の発生シーズンである秋口から冬場に来てみたいものです。
 下山ルートは、和銅黒谷駅へと至るコースを選択。こちらも花や山野草が目を楽しませる、のどかな里山風景が続く道となりました。
▲和銅黒谷コースにも桜。ホントに、桜づくし。 ▲麓の里山風景。あっちこっち花盛りでした。
2023/05/06(初稿):2023/04/04(撮影)