海風通信 after season...

かんぱち線・北端のまち


▲未来のターミナル駅は、このあたりに?
現地調査日:2023年06月20日
対象所在地:練馬区光が丘一帯
調査の目的:未来のかんぱち線ターミナル駅周辺散策
備    考:『ヨコハマ買い出し紀行』2001年カレンダー描きおろし地図参照。










◆知られざる『ぴょん!』の塔!?

 『光が丘』は、路面電車「かんぱち線」の北端に位置するターミナル駅。・・・って、これだけでピンと来る人がどれだけいるのかは甚だ疑問なところですが、詳しくはヨコハマ2001年カレンダーや、もしくは芦奈野ひとし画集の『アルファの認識している“全世界”』地図を参照して下さい。
 この辺りの地域については、以前、『ムサシノのカタクリ』にて採り上げたものの、『光が丘』そのものについては何故かノーチェックだったので、今回、近辺に立ち寄ることができたこの機会に散策してみることにしました。
 「かんぱち線」のもととなる環状八号線も、井草より北方面を今回初めて実走。『ムサシノのカタクリ』では、「いつの間にやら通りの名称が『環八通り』から『笹目通り』へと変わっているのが少々気に掛かりますが、道なりなのでここも環八と見做すのでしょう。」と的外れなコトを書いているのがなかなか恥ずかしいのですが、まさか環八がこのエリアを最終工区として、2006年にようやく全線開通したのだとは夢にも思いませんでしたよ。環七と並んで東京では有名な道路ですから、とっくの昔に全線完全開通しているものと思い込んでいたのですね。つまり井草から光が丘近辺までの環八は、ヨコハマ連載当時には存在していなかった道路ということになるのです。私もヨコハマの連載当時に合わせて1990年代の道路地図を使っているので、長らくこのことに気付かず、代替ルートとなっていた笹目通りを環八だと認識していたのでした。
 そうした考えからすると、かんぱち線『光が丘』駅の候補地は、高松六丁目交差点付近よりも都営大江戸線の『練馬春日町駅』あたりのほうが適切なのかも知れません。しかしそれだとロケーション的に特徴もなく、かつ光が丘エリアからも微妙に距離があるということから、ここはやはり現実世界と同じく現行の都営大江戸線『光が丘駅』あたりまで路線を引き込んできたと考えたいところ。というわけで、この駅前から探索をスタートします。
▲環八と交差する練馬春日町駅前。どこか風景が味気ない。 ▲光が丘公園内のイチョウ並木。通称『ふれあいの径』。
 で、探索スタート!とか言いながらも、いきなりの問題。何事かと言うと、実はバイクを停めておくところがなかなか無いのですよ。
 この光が丘という地区、「計画的に規律良く開発された優等生・風紀委員長的なニュータウン」というイメージにピッタリで、バイクの路駐はおろか、自転車の路上放置やゴミの放置・散乱などがほとんど見られないのです。駅前には自転車専用駐輪場が大々的な看板とともに完備され、「ここ以外に停めたらどうなるかは知らんよ?」的な威圧感がヒシヒシと感じられます。店の前に無造作に停めた自転車とかもほとんど無くて、雑然とした下町の環境で育った私としては、この雰囲気は羨ましくも、少し窮屈な気持ちに感じられました。
 加えて、バイクにもあんまり優しい町ではないのかな?トンネルやアンダーパス等の特殊状況下ではなく、普通の生活道路での二輪の時間指定通行禁止区域の標識というものを、今回初めて見ました。なにやら21時〜翌5時まではここら一帯のバイクの通行は禁止なのだそうです。過去に暴走族やら騒音問題とかで何かあった時の名残りなのかも知れません。そしてなにより、バイクの駐輪場がなかなか見つからない。出来れば無料がもちろん理想なのですが、そもそもがバイクを停めてOKな場所がないのです。(なんと、図書館とかもNGでした。)
 ようやく見つけたのが、光が丘公園内の東南口にある総合駐車場。「こんなに余裕のある広い公園なのだから、原付バイクくらいタダで置かせてくれても良いだろうに!」とは思いましたが、やはりしっかりと有料でした。まぁ、こういうところはヘタな場所に無断駐車して、結果、揉めるほうが厄介なので、お金で済めばそれに越したことはないんですけどね。
 けれど、甘んじて停めたこの駐車場内で、思いがけない光景を目にすることとなりました。
 「おぉ!これは、『ぴょん!の塔』のロケーションのようではあるまいか!?」
▲光が丘公園駐車場エリアから見た風景。以前の『ぴょん!の塔』探索では、まさにこうした立地条件を探していました。
 実は公園周辺をグルグルと走って廻っていた時点から気付いていたのですが、なんとこの光が丘にも清掃工場の煙突が存在していたのです!それにしてもこんな場所に、杉並や千歳と同タイプの清掃工場があるとは初耳でした。調べてみると、ヨコハマ連載当時からこの清掃工場は存在していたようですが、不思議と話題や候補にはのぼらなかった物件です。2021年に新工場としてリニューアルされてしまったものの、当時の資料画像と見比べてみても、煙突の外観形状は以前のものとほとんど大差がないようです。
 清掃工場の煙突に主眼を置き、その後も公園内のいろいろな角度から眺めてみたところ、景観的に良いアングルの場所はいくつかありましたが、やはり『ヨコハマ』の作品ロケーションに合う風景としては、この駐車場内が一番条件に合致しています。真っ平らで人工的な地面、そこそこの高度のビル群、右手に見えるのは体育館なのですが、これが廃墟化して骨組みだけになれば・・・(←また不謹慎なコト言ってる。)どうでしょう?かなり条件に近い場所になっているような気がするのですが・・・。
 ここはたぶん、この駐車場を利用しなければ気付かなかったであろう場所だけに、これだけでもお金を払って停めた価値があるというものでした。実際、公園内と街並をゆっくりと見て回るだけでも、ゆうに2時間は掛かるので、素直に駐車場に停めてしまうのが得策なのですけどね。
▲こちらは作品とは関係ありませんが、公園内で最も塔が美しく映えるであろう「芝生広場」から見た景色。
 それから先述したように、公園内には図書館(区立光が丘図書館)も併設していて、これがまた何とも、第18話「古都ムサシノ」に出てくる「上北沢図書館」の外観のモデルになっているような気がするのです。
 え?上北沢図書館は実在していて、外観も所在地も全然違うだろって?やー、まぁ、そうなんですけどねー。何となく直感でそう思ってしまったんですよ。あるいは芦奈野センセイは、この光が丘でいくつかの物件にインスピレーションを受けて、のちにムサシノを構成する世界観の中にこれらを散りばめることによって作品風景へと昇華させた・・・。そのヒントとなるワードが、地図上にポツリと示された『光が丘』だったのではないか?と・・・。考え過ぎでしょうか?でもいいです!私、アルファさ・・・・(←またこのオチかよ。・・・5回目?)
 ともあれ、『清水山の森』や『稲荷山憩いの森』と併せて訪ねてみれば、なかなか充実した北部ムサシノ紀行になるかと思われます。
▲ココネが調べ物をした図書館のモデル?(極めて強引) ▲「昆虫原っぱ」の小径からも塔が良く映える。