海風通信 after season...

一年紀行の帰り道


▲この島は 地図を見て想像するのより ずっとずっと広い。
現地調査日:2022年05月10日
対象所在地:横浜市戸塚区俣野町および国道467号沿線
調査の目的:南へ向かう直線の道と「あの」建造物の確認。
備    考:『ヨコハマ買い出し紀行』第76話「栗」の6コマ目および
       第67話「港」の扉ページ参照のこと。









◆今更!?ながらの コアジロ買い出し紀行・道の途中14 補完編

 旧『海風通信』ホームページでは、アルファさんの一年旅行のトレースをつごう3回に分けてレポートしてきました。ただし最終行程である日野〜相模湾へと南下する部分は、予告しただけで結局未完となっていたことと思います。これは何故かと言うと、あのルートの情景描写があまりにもざっくりとしていたためと、『ホテルエンパイア』の件があったからです。
 『ホテルエンパイア』って、どういうコト?と思った方、上の備考欄に表記されたページを確認してみて下さい。当時のヨコハマファンの間では、そこに描かれたランドマークが「ホテルエンパイアなのでは!?」と推測されていたのです。けれど当時はホテルも既に休業(1995年)し、次いで横浜ドリームランドも閉園(2002年)してしまったことから、廃墟物件としていろいろと「アレ」な都市伝説が飛び交うスポットとなっていたのです。仏塔を模したという外観も、不気味な雰囲気に拍車をかけてしまったのかも知れないですね。こうした経緯で少し近寄りがたい場所となっていたことから、現地調査をずっと敬遠していました。しかしよくよく考えてみると、ヨコハマの作品中では遠景からの描写しかないことですし、なにも無理して近付いたり、侵入したり(←ダメ、ゼッタイ!)することはなかったのですよね。
 ということで、考えを改めて再びホテルエンパイアの現在を調べ直してみると、その後の再利用形態もさることながら、変わらぬ外観の健在ぶりに驚かされました。あの建造物は今や、横浜薬科大学の『図書館棟』として第二の人生(!?)を歩んでいたのですね!当時の面影を残しつつも小ざっぱりとリニューアルされたその姿は、不思議と大学構内施設の雰囲気にマッチしています。通常大学関係者以外は入れませんが、年に数回の一般公開日には入れるそう。(※コロナ禍のここ数年は中止となっています。)うーん、実に明るく開放的で、見事な転身を遂げたものです。
 この図書館棟は22年4月時点で、大規模修復工事の作業中。月末には工事期間が終るというので、G.W.明けを待って行って見ることにました。
▲中原街道沿いにある佐江戸。さえど→サエッタ?(強引だよ!) ▲保土ヶ谷バイパスと交差する中原街道。
 と、ここでまずは前回レポートからの途中となっている、日野以降の考察から進めていきましょう。
 作品中アルファさんが辿った道は、「日野の台地から南のほう」としか解りませんが、あのランドマークを『ホテルエンパイア』とすると、「ホテルエンパイアを南東に見る、南に向かう直線道」という推測が立てられます。これもいろいろなルートが挙げられる中、やっぱり単純に見ると『国道467号線』が有力と思われます。16号線同様、最後に残るのは幹線道路なのでしょう。(それにしてはあまりにも廃れてるし、店もなく、「この先ずーっと海までこんな林ン中」というのも違和感があるけど。)私の理想としては「道志みち」と同じように、アルファさんがかつての旧街道を選んでルートをとっていたのならロマンがあるのになぁと思っていたのですが、『鎌倉街道 上道(かみつみち)』などはもうクネクネとしていて、とても直線道とは呼べないものでした。
 こんな感じからスゴく大雑把にルート予想をしてみると、日野の台地でムサシノ方面への足止めを食らったあと、一旦八王子へと引き返し、そこから16号線をひたすら南下、下鶴間あたりで467号の直線国道へと入り、藤沢・鎌倉へ・・・といった感じとなるでしょうか。
 そんなわけで、調査のしやすさからも467号線をメインに、現・浜薬(横浜薬科大学)図書館棟の見える周辺の風景を探して見ることとしました。

 今回の旅のスタートは、丸子中山茅ヶ崎線(通称:中原街道)から。丸子橋から始まるということでヨコハマとも縁があるし、瀬谷海軍道路・厚木飛行場・大磯アオバトと、これまで何かとお世話になっている路線でもあります。途中通過する「佐江戸」という地名がお気に入りなのは、上記の通り。このルートは中原区さえ抜ければ渋滞もほとんど起こらず、長い距離とは言えさほど苦も無く467号合流点の「桜が丘」まで辿り着けます。日野から大和まではちょっと端折り過ぎましたが、直線道で、かつ浜薬図書館棟が見通せそうなポイントはこの辺あたりからなので、まぁ良しとして下さい。
▲国道467号線。いたってフツーの道路です。 ▲亀井野付近でようやく浜薬図書館棟が眺望できる。
 さて、実際に467号線を走ってみると、そこは作品中とは似ても似つかない、適度に栄えた立派な道路。そこかしこに見覚えのあるチェーン店の看板が目につき、風景情感はまるでありません。まぁ国道クラスなのですから仕方がないのかも知れませんね。何より残念だったのは、南東方面を見渡せる遠景ビューポイントがほとんど見つからなかったこと。浜薬図書館棟なんて、道路上からは全然見えないのです。
 ようやくそれが見受けられるようになったのは、亀井野という地域に入ってからのこと・・・・ってこれ、ほぼ直近(ていうか真横)じゃん!!しかもなんだか様子がヘンだぞ?建物のフォルムがなんだか全体的にボヤけた輪郭だし、外観もイメージより太いような・・・・・?↓
▲図書館棟至近の道路上より。コレジャナイ感。 ▲境川沿いの道は、なんとなく侘びしくて良い。
 近くまで寄ってみてビックリ!それはまだ修復工事の完了していない、作業足場の骨組みで囲われたままの図書館棟が、そこに屹立していました。
 間近で見ると、この建造物の最大の特徴である屋上の三角屋根部分まで隠れてしまい、もうなんかフツーの高層ビルを建設しているような風景にしか見えません。
 「えええぇぇ〜!?4月末には図書館業務を再開したと聞いてたのに・・・?工事自体はまだ終ってなかったの!?ホムペでしっかり告知してくれぇ。」
 思わず愕然としましたが、このような状態の図書館棟を撮影できる機会もなかなかないと考え、自分自身を納得させました。まぁとりあえず遠景から見れば三角屋根もキッチリと確認できますし、なんとなくそれっぽい風景は撮れます。う〜ん・・・でも、これはやっぱりリベンジかなぁ。
 ちなみに、いろいろと図書館棟を眺められる風景を見て回った結果、方角的には境川沿いの道がそれらしくて良い感じですね。河川敷だか畑作地だか分からない少し鄙びた雰囲気の平坦地が拡がり、人口建造物の突出した異質感を際立たせてくれます。
 そして、これもいろいろと走り回った末での副産物ですが、横浜薬科大学の正門脇を抜けた先の道で、思わぬものを発見しました。↓
▲相州春日神社。旧名のほうがインパクトあるのにね。 ▲手水舎の鹿の像。水を飲んでるようで実は吐き出してる?
 それが、この神社。なんか竜宮城っぽいような、アトラクション施設的な明るい存在感が目に留まり、訪ねてみると、ここはかつて横浜ドリームランドがあった頃に併設されていた『ドリームランド春日神社』だということ。現在は『相州春日神社』と名称を変更していますが、浜薬図書館棟とともにドリームランドの名残りを見ることができる、数少ない施設の一つなのですね。
 手水舎に設置された鹿のオブジェに何だか良い雰囲気を感じながら境内に入っていくと、社務所の窓口には『鹿せんべい』が!そして数々のお守り袋のデザインには鹿のイラストが!ここ、どんだけ鹿推しなんだー!?・・・っていうか、鹿せんべいがあるってコトは、鹿がいるのか!?
▲鹿が描かれたお守り多数。 ▲レトロな箱も、代金支払い方法も呑気で良いなぁ。
 あたりをキョロキョロと見回すと、『神鹿苑』なる案内板が見つかり、それに従って行くと、広い柵内にたくさんの鹿がお出迎えしてくれました!
 これらの鹿たちは、奈良の春日大社から賜った神鹿であり、その子孫たちなのだそうです。奈良春日大社からこの春日神社に御分霊を勧請した際、同時に神鹿までをも分けて戴いていたのですね。「春日神社」の分社なのだから、言われてみれば納得です。しかしこれほどの話題性がある神社なのに、何故それほど知られていないのか不思議ですね。神奈川の人にとっては有名なのかな?ともあれ東京近郊に住む鹿好きの人にとっては、わざわざ奈良まで赴かなくても、ここで思いっきり鹿と触れ合えます。(規模や自由度は、やはり本家のほうが格段上ですけどね。)
 というコトで、私も本殿での参拝を早々に済ませ、せんべいを携え、さっそく鹿をモフりに行ってまいります!
▲ノンビリくつろぐ鹿さんたちも、『鹿せんべい』を見るや否や・・・ ▲見事にゾロゾロと集まってきます!そんなに旨いのか、これ?
 苑内砂地にダラダラとくつろいでいた鹿たちは、今度は私が手にせんべいを持っているのを確認するや否や、目の色を変えて近付いてきました。
 フェンス脇には、【この鹿は せんべいを食べると おじぎをします】との看板がありましたが、なんかせんべいをあげる前からお辞儀をしてしまう殊勝な鹿や、猛烈なヘッドバンギングをしながら近付いてくるヤツもいます。こ、これ、もはやお辞儀ではなく、私のことを脅してるのでは!?
 平日の午前中に訪れ、私以外には誰もいなかったということもあるのでしょう。くれくれアピールがとにかくものスゴい!金網の破れた隙間から無理やり顔を捻じり出してきたり、舌を思いっきり伸ばして「ここにせんべい乗っけて!」モーションをするなど、個性は様々。鹿の皆さん、このせんべいは毎日食ってるんでしょう?そんなに欲しいの?、これ・・・。
 せんべいを裏返したり透かしたり、匂いを嗅いだりしていると、それに合わせて鹿の目線も一斉に同一方向に動くのも面白いです。(←遊ぶな!)
 「では、鹿の人にあげましょう。(R・田中一郎)(*1)とお決まりのフレーズを一人勝手にカマしながら、いよいよ餌やりを開始。そして見る見る無くなる鹿せんべい。あまりにも夢中になって激しく動くので、食べてる最中の写真はブレブレになってしまい、結局いい画が撮れませんでした。
 鹿せんべいを食べ尽くした後も、「キュ〜ン、キュー〜ン」とせつなく鳴きながら、お辞儀をする鹿たち。…鹿って、こんな萌える鳴き方だった??
 「あぁ、コレ、ダメなやつだ・・・。」
 思わず2回目の『鹿せんべい』に課金してしまったことは言うまでもありません。
 (*1)究極超人あ〜る「あなたとなら大和路」参照のこと。しかしこれ、よく咄嗟に思い出したなァと自分でも思います。
▲鹿せんべい よこせ! ▲食うもの食ったら、さっさと帰る鹿さん一行。
 というワケで、後半ほとんど『ヨコハマ買い出し紀行』とは関係なくなってしまいましたが、この周辺を訪れる際には、併せて訪れてみては。休日はそれなりに人が多く訪れるそうなので、のんびり楽しむには平日午前中が狙い目。そして鹿せんべいよりも好きなのは、生野菜や食パンだそうです。