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〔追記調査〕おしょうろ流し〜おしょうろさま入手経路を辿る
本編でも気に掛かっていた、『お盆の前、集落内の日用雑貨店で「おしょうろさま」が販売される』という光景をどうしても見てみたくて、翌年の夏に再び取材調査を試みました。訪れた日は、お盆の始まる5日前。このタイミングならば、商店にはお盆用品が充実しているはずです。果たして、下記の文献にも記されているような、三浦ならではの風物詩的情景を見ることはできるのでしょうか?
というわけで、さっそく店内で話を伺うと、なんと「おしょうろさま」はすでに売り切れてしまっていると言います。聞くところによると、7月中には既に店内に並べられて、8月の頭くらいには売り切ってしまうそう。そもそも、訪問販売などをする業者さんがあらかた各戸に売ってしまうため、お店に買いに来る人は、たまたまその場に居合わせなかったり、うっかり買い忘れた人だけなので、それほどの数は置かないということ。う〜ん…「おしょうろさま」が店内に並べられているという「異の場」的な様相をイメージし、写真に収めたいと思っていただけに、最初からアテが外れるとは残念でなりません。 この情況に納得のいかなかった私は、周辺に住む年輩の方々に改めて聞き込みを行いました。結果、やはり三戸地区内において「おしょうろさま」を売る店は、もはや現代においては農協売店以外には無いということが判明しました。しかし、代わりに行商(いわゆる訪問販売)にくる人は、「松輪の人」であるということも分かりました。この人は、「おしょうろさまを製作する人」でもあるようです。行商に来る時期は7月初旬の夕方(人々が家に戻ってくる時間に合わせている)から、軽トラの荷台に「おしょうろさま」を積んで各戸をまわって売り歩くのだといいます。価格は500円〜600円が相場とのこと。 皆さんが「松輪の人」と呼ぶ方の、それ以上の詳しい素性は分からないということでしたが、松輪地区も文献によればお盆に「おしょうろさま」を飾る風習があるようです。松輪の日用雑貨店を訪ねてみれば、何か手掛かりが得られるかも知れません。
この地域が駄目となると、もはや今年は諦めざるを得ないのかも知れません。しかしふと、毘沙門地区にも昔ながらの農協売店があったことを思い出しました。いやいや!それだけでなく、慈雲寺そばにも良い感じの商店があるではないですか。大変失礼な話ですが、駄目元でもという気持ちで後者の商店へと伺いに訪れてみたところ、実に私の描いたイメージに近い、素朴な陳列形態で販売されている「おしょうろさま」が、そこにありました!
お店のおかみさんの話では、毘沙門地区は、今でもお盆に「おしょうろさま」を飾る風習は色濃く残っているとのこと。ただし、三戸のように海に流すということはなく、一般的な盆送りと同じようにお焚き上げをして送り出すようです。やはり三戸地区に残された風習は、特異なものなのですね。 それにしても、こうした風習が三浦の各地にひっそりと、しかし確かに根強く残っているという事実を確認できたことだけでも大きな収穫です。思いもよらぬ遭遇に興奮するあまり、細かな民俗調査を行なうことは失念してしまいましたが、それはまた、いずれかの機会にて。うん、多分そんなに急がなくても大丈夫。きっと10年20年先にも、「おしょうろさま」はこの三浦の地に息づいていることでしょう。今回の取材で出会った人々の言葉から、そんな安心感を抱くことが出来ました。……そして、去年の夏に出会った子供たちの行動からも。 参考文献:神奈川県民俗シリーズ[3] 三戸のおしょうろ流し/赤橋尚太郎 著
三浦市民俗シリーズ[IV] 海辺の暮らし -三戸民俗誌-/田辺 悟 編著 |
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