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weekly book

[ No.401〜500 ]

[ weekly book ]

実際にあった事件や犯罪に関する新刊本・注目本などを週単位で紹介しています(更新は主に水曜日)。
下記の★の日付は更新日で、その日付は下(↓)が古く、上(↑)が新しい。

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★2017.7.12(No.500) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『誰もボクを見ていない なぜ17歳の少年は、祖父母を殺害したのか』
(ポプラ社/単行本/山寺香/2017.6)


2014年、埼玉県川口市で発生した凄惨な事件。少年はなぜ犯行に及んだのか? 誰にも止めることはできなかったのか? 事件を丹念に取材した記者がたどり着いた“真実”。この罪は、本当は誰のものなのか? 少年犯罪の本質に深く切り込んだ渾身のノンフィクション。

一歩踏み込んで何かをすることはとても勇気が必要だと思います。その一歩が目の前の子供を救うことになるかもしれないし、近くに居た親が『何か用ですか?』と怪訝そうにしてくるかもしれない。やはりその一歩は重いものです。そしてそれは遠い一歩です。(中略) つまり他人、子供への関心、注意を持っていなくては二歩も三歩も子供との距離があります。いや、子供の存在にさえ気付いていないかもしれません。だから、自分が取材を受ける理由は世の中に居る子供達への関心を一人でも多くの方に持っていただく為の機会作りのようなものです。(「少年の手記」より)

埼玉祖父母強盗殺人事件・・・2014年(平成26年)3月29日、埼玉県川口市西川口のアパートで、小沢正明(73歳)とその妻の千枝子(77歳)が遺体で発見された。この事件で夫婦の次女の子ども(当時17歳)が逮捕された。母子家庭で育った少年は母親の浪費癖により小中学校に行かせてもらえず、11〜13歳の間、公園やホテルを転々とし、学校や行政機関でも居場所がつめない居所不明の児童だった。しかも、母親に言われて親族にウソを言っては借金をさせられていた。その度に母親から言われたのは「殺してでも借りてこい」だった。2014年12月25日、さいたま地裁は少年に対し、最終的には本人が殺害を決断しているとはいえ、母親の養育や母親の言動に大きく左右されたものだ」として、無期懲役の求刑に対して懲役15年を言い渡した。弁護側が即日控訴。少年の母(当時43歳)は、祖父母から金を奪った行為で共謀したとして、強盗罪などで2014年9月19日、さいたま地裁で懲役4年6ヶ月の判決が下り、母親は控訴せず確定している。 2015年(平成27年)9月4日、東京高裁で少年に対する控訴審があり、「犯行を指示していないという母親の証言には不自然な点があり、強い疑念が残る」として、弁護側の主張を認め、そのうえで、「強盗殺人の結果は重大だが、少年の成育環境や犯行への母親の影響といった考慮すべき事情もある。1審の判決は今回の犯行の重さや、同じような事件の判決に照らして不当とはいえない」として、1審に続いて懲役15年を言い渡した。2016年(平成28年)6月8日 最高裁で、少年側の上告を棄却する決定を出した。少年を懲役15年とした1、2審判決が確定した。

著者・山寺香・・・1978年、山梨県生まれ。2003年、毎日新聞社入社。仙台支局、東京本社夕刊編集部、同生活報道部を経て、2014年4月からさいたま支局。犯罪被害者支援や自殺対策、貧困問題などに関心があり、取材してきた。
★2017.7.5(No.499) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『大量殺人の“ダークヒーロー” なぜ若者は、銃乱射や自爆テロに走るのか? 』
(作品社/単行本/フランコ・ベラルディ(ビフォ)/2017.6)


事件と犯人の綿密な分析によって、動機・心理・社会背景を解明し、「銃乱射」や「自爆テロ」が生命を犠牲にした「表現行為」であり、現代資本主義の構造的な病理であることを明らかにした世界で話題の書! 米・仏・独・韓など7ヶ国で刊行。
★2017.6.28(No.498) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』
(亜紀書房/単行本/スー・クレボルド/2017.6)


死者13人、重軽傷者24人、犯人2人は自殺。 事件の一報を知ったとき、母が心の中で神に願ったのは、息子の死だった……全米を揺るがした銃乱射事件の実行犯の家族が揺れる心のままに綴る、息子のこと、事件後のこと。

著者・スー・クレボルド・・・コロンバイン高校で銃乱射事件を起こしたディラン・クレボルドの母。コロンバイン高校銃乱射事件とは、1999年4月20日、当時同校の4年生で卒業を間近に控えていた2人の少年、エリック・ハリスとディラン・クレボルドが周到な計画に基づいて起こした無差別殺人事件。教師1人をふくむ13人が死亡、24人が負傷し、犯人2人は自殺した。事件発生当時、米国における学校銃乱射事件としては1966年のテキサスタワー乱射事件に次ぐ規模で、コロンバイン高校の悲劇に国中が悲しんだ。著者は事件直後から、家族の生活を細部まで振り返り、原因を追求してきた。その過程で、精神衛生と暴力の関連性についての理解を深めながら、現在は自殺を防止する活動に奔走している。


関連ページ・・・海外の事件
★2017.6.21(No.497) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『うつ病から相模原事件まで 精神医学ダイアローグ』
(批評社/単行本/井原裕/2017.1)


精神科医療における強制治療はあくまでも「必要悪」である――精神科医療界の「常識」と「タブー」を覆し、相模原事件をテーマに精神科医療と治安政策を考察する。
――私は、そもそも隔離・拘束も、強制入院も、電気けいれん療法も、それどころか薬物療法すら好きではありません。患者さんを縛ったり、閉じこめたり、無理やり入院させたり、電気ショックをかけたり、そんなことがしたくて精神科医になったわけではありません。
――では、精神科医の本来の仕事は何か。それは「話し合うこと」です。精神療法だって話し合いですし、それこそが精神科医のアイデンティティのはずです。
そうである限りにおいて、この仕事はまだまだ捨てたものじゃないと私は信じています。――[本文より]

著者・井原裕・・・1987年 東北大学医学部卒業。1994年、自治医科大学大学院修了、医学博士。2001年、ケンブリッジ大学大学院修了、PhD。2008年、獨協医科大学越谷病院こころの診療科教授


目次

はじめに

第1章「疾患喧伝」(disease mongering)について取材を受ける―精神医学の欺瞞
今の精神科の医療は欺瞞だらけ?/疾患喧伝とは何か/病気か生理的な範囲か/製薬会社の疾患啓発活動/疾患喧伝にあおられる精神医学/「医者だから薬を使わないといけない」は間違い/うつ病に抗うつ薬は効くのか?/うつ病のガイドラインも変わる/脳循環・代謝改善剤の経験/薬物療法批判は単なる狂信的な活動ではない

第2章 うつ病と「こころの風邪」
ごあいさつは空中戦/世紀末疫病物語/真犯人は誰だ?/季節の変わり目の心の風邪/昭和時代の「こころの風邪」/「こころの風邪」とうつ病啓発/映画になった「こころの風邪」/うつ病啓発の意義/「こころの風邪」は「脳の病気」?/「牧畜業者」といわれた精神科医たち/おとぎ話の終焉

第3章 生活不活発病としてのうつ病
医療ジャーナリズムの世界/自殺者が三万人を切った理由/「傘がない」と団塊の自殺/自殺好発年齢は四〇、五〇代/高齢化しすぎると自殺は減る/お年寄の四人に一人が認知症?/ヘルス・リテラシーの要請/高齢者の生活習慣病としてのうつ/退職後、うつ状態を呈した七二歳男性/しゃべらないということが所見になる/リタイア後に元気がなくなる/精神科治療は見込み発車/治療は「低侵襲」なほうがいい/薬物療法を急がない/療養指導の実際/生活習慣は簡単には変わらない/薬は使うのか?/不眠を訴える高齢者に対する療養指導/高齢者に睡眠薬は使うべきか/高齢者の不活発は「死に至る病」/身体運動と知的志向の両立

第4章 双極性障害というジョーク
浪花医科大学から若手医師が見学に/VIPのうつ病/カリスマ医師淀屋橋工次先生/職業としての医者/天才かイカサマ師か/外来症例のカンファランス/面接の流れを予想する/課題を中心に面接を展開させる/職場のメンタルヘルス/復職のためのプランニング/診断書の書き方/双極性障害の治療/「うつ病」から「双極性障害」への診断変更/気分変動は病的ではない/療養指導なき薬物療法の弊害/誤診があり得ることを前提にした治療/患者さんの自助努力

第5章 相模原事件をめぐって―精神科医療と治安政策
メディア対応は説明責任/相模原事件と指定医問題は直接の関係はない/精神科医は警察官ではない/措置入院は強制治療/措置入院で医師は人権擁護の責任を負う/退院の際の責任/退院の判断は妥当か/「警察発、病院行き」の“片道切符”/思い込みは病気か/確信犯罪者は刑法学の課題/措置解除後の事件はこれからも起こる/「検討チーム」の刑法学者は機能していない/保安処分に関する議論/一元主義と二元主義/法の抜け穴をふさぐ措置入院制度/論争の歴史をどう総括するか/患者さんにどう説明するか/『イチゴ白書』をもう一度

おわりに
★2017.6.14(No.496) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『日本の暗黒事件』
(新潮新書/森功/2017.6)


巨悪。凶行。陰謀。残虐。
日本を震撼させた「わるいやつら」のすべて!
最前線で大事件の真相を追い続ける著者の記録。

国家体制を激変させた「世紀の大事件」を忘れてはならない。「よど号」ハイジャック犯の北朝鮮亡命と連合赤軍事件、政界最大の汚職・田中角栄とロッキード事件、未解決となったグリコ・森永脅迫事件、史上最悪の山一抗争、謎多きイトマンと住友銀行の醜聞、前代未聞のテロ集団・オウム真理教、救いなき「少年A」……。戦後社会を揺るがした重大犯罪の真相とは?
暗躍する犯人たちの正体は? 報じられなかった内幕は?……経験豊富なジャーナリストが、スクープの裏側や取材秘話を明かしながら、現代の闇に徹底的に迫る! 今こそ知っておきたい事件ノンフィクション。

著者・森功(もり・いさお)・・・1961年、福岡県生まれ。ノンフィクション作家。ジャーナリスト。岡山大学卒業。「週刊新潮」編集部などを経て、独立。2008・9年に「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」を連続受賞。著作には『黒い看護婦』 / 『ヤメ検』など多数。メディア出演も多い。

1970年 「よど号」事件と連合赤軍
1976年 田中角栄とロッキード事件
1984年 グリコ・森永事件――かい人21面相
1984年 史上最悪の暴力団事件「山一抗争」
1986年 三井物産マニラ支店長誘拐事件
1990年 イトマン事件と住銀の天皇
1994年 住友銀行名古屋支店長暗殺事件
1995年 オウム真理教の麻原彰晃
1997年 神戸連続児童殺傷事件の少年A
1998年 和歌山毒物カレー事件と林眞須美
(目次より)


関連ページ・・・「よど号」ハイジャック事件 / オウム真理教 / 神戸須磨児童連続殺傷事件
★2017.6.7(No.495) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『罠 埼玉愛犬家殺人事件は日本犯罪史上最大級の大量殺人だった!』
(サイゾー/単行本/深笛義也/2017.6)


2017年3月に獄死した関根元死刑囚は、共犯者に「30人以上殺した」と告白していた。事件を追うと、主犯とされた風間博子は冤罪だった可能性が浮上!? メディアでは報じられなかった、共犯者の「風間は殺してない」という証言。風間は虚言癖のあるシリアルキラーに罪をなすりつけられたのか??

著者・深笛義也・・・1959年、東京生まれ。横浜市内で育つ。10代後半から20代後半まで、現地に居住するなどして、成田空港反対闘争を支援。30代からライターになる。ノンフィクションも多数執筆。


関連ページ・・・埼玉愛犬家連続殺人事件
★2017.5.31(No.494) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『ミッドナイト・アサシン アメリカ犯罪史上初の未解決連続殺人事件』
(二見書房/単行本/スキップ・ホランズワース/2017.5)


19世紀、希望と活力に満ち溢れた発展途上のテキサス州オースティンの街で、連続殺人事件が起きた。当初狙われていたのは、黒人や移民の女中たちだった。その犯行は大胆で残虐、ターゲットだけを確実に仕留めた。だが、顔を見た目撃者は皆無で、黒人なのか白人なのかも不明だった。犯人はいったい何者なのか?  その儀式的な殺人行為に意味はあるのか?  何人もの容疑者が拘束されたが、殺人がやむことはなかった。誤認逮捕を恐れた黒人は街から逃げだし、女性たちは怯え、武装する市民たちも現れた。市長や警察官たちは業を煮やした――やがて、白人女性にまで犯行が及ぶと、市民のパニックと恐怖は頂点に達する。果たしてこの街の運命は――?  原題:The Midnight Assassin: The Hunt for America's First Serial Killer

著者・スキップ・ホランズワース(Skip・Hollandsworth)・・・1957年、ノースカロライナ州生まれ、テキサス州ダラス在住。ジャーナリスト、作家、編集者、脚本家。地方誌『テキサス・マンスリー』の記者でもあり、緻密な取材と冷静かつ簡潔な筆致による犯罪記事は高く評価されている。2010年にナショナルマガジンアワード賞受賞。
★2017.5.24(No.493) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『PC遠隔操作事件』
(光文社/単行本/神保哲生/2017.5)


事件の取材を重ねるうちに、この事件にはもう一つ重要なテーマが潜んでいることを痛感するようになった。それはこの事件の犯人であり、すべての騒動の原因を作った片山祐輔という青年が、なぜこのような事件を起こす必要があったのかという疑問に、何らかの形で答えることだった。仕事もプライベートも充実した、一見リア充に見える青年が、なぜ一文の得にもならないこのような事件を引き起こさなければならなかったのか。コンピュータ・セキュリティや刑事司法の問題も重要だが、この事件の「なぜ」に踏み込むことのないままこの事件を総括することはできないと、取材を重ねるうちに筆者は痛感するようになった。

著者・神保哲生(じんぼう・てつお)・・・ジャーナリスト/「ビデオニュース・ドットコム」代表。1961年、東京生まれ。国際基督教大学卒。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。AP通信などアメリカ報道機関の記者を経て1994年独立。以来、フリーのビデオジャーナリストとして日米を中心とする世界各国の放送局向けに映像リポートやドキュメンタリーを多数提供。2000年、日本初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を設立し代表に就任。著書に『ビデオジャーナリズム』(明石書店) / 『ツバル 地球温暖化に沈む国』(春秋社)など。
★2017.5.17(No.492) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『暴力を知らせる直感の力 悲劇を回避する15の知恵』
(パンローリング株式会社/単行本/ギャヴィン・ディー・ベッカー/2017.5)


アメリカの暴力犯罪分析の第一人者、ギャヴィン・ディー・ベッカーが、自身の長年にわたる経験と実績をもとに、暴力犯罪から身を守る知恵をまとめたもの。著者のギャヴィン・ディー・ベッカーは、暴力犯罪予測のスペシャリストとして、政治家や映画スター、ミュージシャン、スポーツ選手の警護を担うとともに、会社役員から学生まで、身の安全を心配して訪れる幅広い顧客の相談にのっている。自身、こども時代の大半を暴力のなかで過ごしてきたという著者は、「暴力と非暴力の世界の両方の言語に通じ」、そのため「多くの暴力犯罪者の考えていることがわかる」。そして、どんな人間にも暴力性はある(言いかえれば、場合によってはだれでも犯罪者になり得る)という視点が、暴力犯罪の予測には重要だと説く。「とてもそんな人には見えませんでした」というのは、何か世間を騒がせるような事件が起きたときに、犯人を知る人たちからよく聞かれるコメントだ。けれどその普通に見える人の直前の行動に、状況に、あるいはもっと前の行動に、危険信号は必ず灯っていると著者は言う。それを察知できるのはほかでもない、人間がだれでももっているはずの「直感」である。「直感」がうまく働かず、あるいは否定されて、なにが本当の危険かわからなければ、必要もないのに怯えて警戒したり、逆に差し迫った危険に気づかなかったり、といったことが起こる。本物の「恐怖」というのは、危険があるときにそれを知らせてくれる大事な危険信号で、直感の「下僕」だと著者は言う。では直感力を磨くにはどうしたらよいか。その方法を、著者は豊富な実例とともに、ときにユーモアを交え、わかりやすく教えてくれる。一口に暴力犯罪と言っても、ひったくりのような単純な犯罪からコンビニ強盗、見知らぬ人間によるつきまといや逆ギレ、恨みによる犯罪、DV、ストーキング、デート・レイプ……まで、その範囲は広い。だが危険から身を守る方法の基本には、共通するものがある.。
★2017.5.10(No.491) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『僕は、信号無視をしていない! 検察の理不尽な捜査と闘った、母の15年間の記録』
(BookWay/単行本/阿部智恵/2017.5)

平成13年10月16日、我が家に鳴り響いた1本の電話、それは、息子が交通事故で亡くなったという知らせでした。この日から私たち家族の人生は苦しみに変わりました。息子はまだ29歳、やりがいのある仕事に就き、結婚も間近に控えていたのに、どれほど無念だったことでしょう……。

「事故の原因は、対向車の強引なUターンです。バイクに乗っていた息子さん側の信号は『青』。息子さんは悪くありません」警察官は事故直後、確かにそう説明しました。ところがその後、信じられないことが起こります。事件が検察庁に送られるとなぜか事故状況が全く逆になり、何の証拠もないまま息子が信号無視をしたことになっていたのです。なぜこんなことが起こるのか? 司法とはいったい誰のためにあるのか? 私は息子の名誉を守るため、検察の理不尽な捜査と闘い続けました。しかし……。何年経っても消えることのない、遺族の無念、悔しさ。本書は、真実をひたすら求めて闘った母の、寂しく苦しい15年間の思いと裁判の記録です。

著者・阿部智恵(あべ・ちえ)・・・1947年1月、静岡県御前崎市に生まれる。現在藤枝市在住。幼い頃からスポーツが得意でマラソンでは常にトップの成績を収める。社会人バレーボールでは全国大会にも出場。運転免許は普通のほか、自動二輪、普通二種、大型を取得。結婚後は静岡市で青果業を営んでいたが、二男の交通事故死から体調を崩し閉店。2016年からは「いのちのメッセージ展」に参加している。趣味は家庭菜園、花を育てること。

★2017.5.3(No.490) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『生きたかった 相模原障害者殺傷事件が問いかけるもの』
(大月書店/単行本/藤井克徳ほか/2016.12)


重度障害者のみを狙った史上最悪の殺傷事件を私たちはどう受け止めるべきか。福祉・医療制度の盲点、自治体と国の責任、そして社会に根深く残る差別と優生思想。各分野の専門家と当事者・支援者たちの声を編んで緊急出版する。

相模原障害者殺傷事件・・・2016年(平成28年)7月26日午前2時45分ごろ、神奈川県相模原市緑区千木良の知的障害者施設「津久井やまゆり園」にナイフを持った男が侵入し、入所者らが刺されるなどし、男女19人が死亡、26人が重軽傷を負った事件。津久井署に出頭した元同施設職員で自称無職の植松聖(さとし/当時26歳)が殺人未遂と建造物侵入の容疑で逮捕された。植松は「ナイフで刺したことは間違いない」と容疑を認めており、「障害者なんていなくなればいい」という趣旨の供述をした。植松は2012年(平成24年)12月から津久井やまゆり園に非常勤職員として勤務し、2016年(平成28年)2月に退職している。

著者・・・
藤井/克徳・・・NPO法人日本障害者協議会(JD)代表、きょうされん専務理事。
池上/洋通・・・自治体問題研究所理事、日野市障害者関係団体連絡協議会監査。
石川/満・・・多摩住民自治研究所理事、元日本福祉大学教授。
井上/英夫・・・金沢大学名誉教授、佛教大学客員教授。生存権裁判を支援する全国連絡会会長。
★2017.4.26(No.489) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『ワタシはぜったい虐待しませんからね! 子どもを産んだ今だから宣誓!』
(主婦の友社/単行本/あらいぴろよ/2017.3)


幼少期にDVにあった子が親になったら・・・絶対に虐待しないと誓った母が育児に悩みながらも自分で答えを導き出す育児マンガ。

育児に悩み苦しむママたちにおくる、共感します! 笑いあり! 涙あり!の育児マンガ。
Pre-mo、Baby-moの公式サイト「Milly(ミリー)」で連載中のあらいぴろよさんの育児マンガ本。
わが子にキレそうになったら、どなってしまったら、手を挙げてしまったら・・・
そんな悩みをかかえるすべての母親のバイブル本的存在。
マンガのほか、医師による0〜22才までの月齢ごとのお悩み解決Q&Aも紹介。

著者・あらいぴろよ・・・プレモベビモ公式サイト「Milly」で育児マンガ「新米ママぴろよの部屋」を好評連載中。
★2017.4.19(No.488) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『偽装死で別の人生を生きる』
(文藝春秋/単行本/エリザベス・グリーンウッド/2017.5)


詐欺罪で懲役22年を言い渡され、刑務所に出頭することになっていた日にハドソン川に架かる橋から飛び降りた男。
フィリピンで賭博の最中にトラブルで刺殺されてしまった男。
自宅付近の浜からカヌーで海に出て戻らず、死亡を認められたイギリス人の男性。
彼らは皆、死亡を偽装し、その後も生きていた。はたしてそんなことが可能なのだろうか。
著者自ら、偽装死の実体験者や失踪請負人、偽装の摘発者たちを取材すると共に、自身の死亡証明書を手に入れるため、海外に飛んだ――。

目次

プロローグ
学資ローンの返済に困った私はある日、思いつきで「死亡偽装」をネットで検索してみた。監視カメラやGPS
機能付きの携帯電話などが当たり前となった21世紀の世の中で、単に姿を消すことがはたして可能なのだろうか。

1 失踪請負人
自分が誰か別の人間だったら、という空想は誰もがすること。それが究極的に人生を消去して別の者に生まれ変
わりたい願望に至る。顧客から料金を取って彼等の情報を隠蔽、攪乱し、そのアイデンティティを現実からもデ
ジタル世界からも消し去ることを生業とする者がいる。

2 偽装摘発請負人
死亡偽装の最もありふれた動機は保険金詐欺だ。とはいえ、うまくいくことはまずない。成功には大災害が必要
となる。9・11テロ直後、事実誤認も含め、実際の犠牲者数の倍以上の捜索願が出されたという。テロで死んだ
ことにして義援金や保険金を騙し取ろうとしたのだ。

3 カヌーマン
2002年3月、イギリス北東部在住のジョン・ダーウィンは自宅付近の浜からカヌーで海に出て、そのまま戻らな
かった。それからおよそ6年が経ち、記憶喪失だったと彼が警察に助けを求めると、メディアは奇跡の生還と大々
的に取り上げる。だが間もなく嘘が露見。真実は驚くべきものだった。

4 マイケル・ジャクソンとビリーバー
2009年に早世したキング・オブ・ポップ。その生存を信じるファンは、あれは彼が仕掛けた史上最大の悪ふざけ
だということを示す証拠が山ほどあると言う。マイケルはなぜ偽装死する必要があったのか。取材を進めていく
うちに、本人と匂わせる人物から携帯電話に連絡が入った。

5 家族が受ける二次的ダメージ
幼い頃にヘロインの過剰摂取で死んだと教えられた父親が後年まで生きていたことを知った娘。詐欺罪で捕まり
逃亡する父から死亡偽装計画を聞かされていた男子中学生。実の父親に脅され、保険金詐欺の共犯となった20代
の息子。関わり方に違いはあれども、3人とも犠牲者である。

6 死亡証明書を手に入れる
死亡偽装の現場を見たくて私はフィリピンに飛んだ。男二人の協力者と出会い、偽装遺体の購入こそあきらめた
ものの、彼らに依頼し、偽造した自らの死亡証明書を手に入れることになった。待たされた末、帰国予定日の前
日に国家警察本部前で手渡された封筒を開けてみると――。

エピローグ
取材対象者一人一人から個々の事情を聞いてみると、彼等の立場に立って考え、理解できることもあった。それ
以上に、彼等自身が語る物語、その語り口に私は興味を引かれた。そして自分自身が、自らの死亡証明書を手に
した時に感じたこととは。

謝辞
訳者あとがき
★2017.4.12(No.487) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『朴槿恵 心を操られた大統領』
(文藝春秋/単行本/金香清/2017.4)


新聞・テレビでは絶対にわからない青瓦台のプリンセス、洗脳の40年。

圧倒的な支持から弾劾罷免へ、前代未聞のスキャンダルに揺れる韓国青瓦台。
事件を起こした大統領の側近・崔順実は「親友」ではなく、親子二代にわたって朴槿恵を洗脳し続けた「黒幕」だった。現地報道と取材で読み解く、大統領洗脳の歴史。

大統領の異常事態
・崔順実は「親友」ではなく、親子二代目の「黒幕」
・朴正煕大統領暗殺犯の動機に「崔一家問題」
・「崔一家問題」を指摘した人に、次々と訪れる不幸
・官邸に閉じこもり、料理長も会えない大統領
・唯一の窓口「ドアノブ三人組」は、黒幕の指名した秘書
・バイアグラやプラセンタを、青瓦台が公費で大量購入
・他人の使ったトイレを拒否? 訪問先に交換強要
・セウォル号事件当日も、「独りの食事」に変更なし
・セウォル号事件「空白の7時間」に美容注射?
・サムスン世襲に公金投入で、黒幕親子の「財布」扱い
・敬愛する母と同じ髪形で40年間過ごす

著者・金香・・・『クーリエ・ジャポン』創刊号より朝鮮半島担当スタッフとして従事。退職後、韓国情報専門紙『TeSORO』(ソウル新聞社)副編集長を経て、現在はフリーランスのライター、翻訳者として活動。
★2017.4.5(No.486) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『警察手帳』
(新潮新書/古野まほろ/2017.3)

「警察」とはどんな組織なのか?
「警察官」とはどのような人びとなのか?
刑事ドラマでもなく、警察小説でもなく、「現実の警察」がおもしろい!!!
警察キャリア出身の作家だからこそ、ここまで書けた
“超絶リアル"な、超巨大機構の真実――。

警察とは、自衛隊に次ぐ、ニッポンで2番目の超巨大機構だ。全国に30万人にも警察職員を有している。
その「ニッポンの警察」について、元警察庁I種警察官の作家が、採用制度から警察学校、交番、警察署、警視庁などの警察本部、そして、警察を統括する警察庁など、豊富な経験にもとに、スリリングな筆致で、その真実を活写したのが、本書である。

・警察官に向いている人とは? ・警察官になるには? ・採用の基準や条件とは?
・「警察手帳」の中身とは? ・ドラマや小説と現実とちがいは何か?
・働きがいはあるのか? ・待遇、昇進の条件は? ・人事や異動は?
・警察学校ではどんな学校なのか? ・配属はどう決まるか? ・交番勤務の実態は?
・刑事になるには? ・「敏腕刑事」の必須条件とは? ・警察署での仕事は?
・捜査1課で活躍するには? ・現実の捜査の手法やその心得とは?
・捜査会議の現実とは? ・ほかにはどんな仕事や部署があるのか?
・なぜ未解決時間になってしまうのか?
・警察庁や警察本部とはどのような役割なのか?
・キャリアとノンキャリアの関係はどうなっているのか?
・警察から学べる組織管理法や警察官のコミュニケーション術とは?
・警察の掟や人間学とはどのようなものなのか?……

古野まほろ・・・東京大学法学部卒業。リヨン第三大学法学部修士課程修了。学位授与機構より学士(文学)。警察庁1種警察官として警察署、警察本部、海外、警察庁等で勤務し、警察大学校主任教授にて退官。警察官僚として法学書多数。
★2017.3.29(No.485) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『死刑捏造 松山事件・尊厳かけた戦いの末に』
(筑摩書房/単行本/藤原聡&宮野健男[共同通信社]/2017.3)


死刑囚が再審無罪となった松山事件。警察による証拠捏造の実態。冤罪を晴らすために闘った人々。元死刑囚、その後の人生を描く。

著者・・・

藤原聡・・・1959年、生まれ。早稲田大学卒。1982年、共同通信社に入社。社会部デスク、長崎支局長などを経て編集委員。仙台支社編集部デスク時代に、松山事件の国家賠償請求訴訟控訴審の取材を担当した。

宮野健男・・・1968年、生まれ。学習院大学卒。日刊工業新聞社を経て、1996年、共同通信社に入社。広島支局、原子力報道室デスクなどの後、経済部デスク。記者、デスク合わせて5年間、仙台支社編集部に勤務。

関連ページ・・・死刑確定後再審無罪事件
★2017.3.22(No.484) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『カナダ事件簿』
(彩流社/単行本/ウィルソン夏子/2017.3)

女性殺人犯が刑務所で学位取得!?
『赤毛のアン』の作者、死因は自死?
米で冤罪のボクサーを救ったカナダ人は誰?
著者の好奇心から開かれる、カナダで起きた事件の扉。
トロント発行の日本語新聞『日加タイムス』に掲載された記事を元に書かれたノンフィクション。
日本では知られていないカナダの一面を覗き見ることができるかもしれません……。
各章英語版ダイジェスト付き!
★2017.3.15(No.483) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『13歳、「私」をなくした私 性暴力と生きることのリアル』
(朝日新聞出版/単行本/山本潤/2017.2)


13歳から7年間、実の父親から性暴力を受けていた。
中学生だった当時から現在までの苦悩、
消えては現れるトラウマ症状、周りの人たちとの軋轢。
性暴力は一人の女性にどのような影響を残すのか。
約30年にわたる葛藤と再生の記録。

【目次】
●はじめに

●第1章 性暴力、が始まった
・幸せだった子ども時代
・記憶からぶっ飛んだ あの日
・解離――スプリッティング
・愛と侵略のあいだ
・終わりはある日、突然に

●第2章 刻印
・地雷の上に家を建てる
・母の驚愕
・記憶を無意識に沈める
・エラーサイン――退行と脅迫症状
・初めてのカウンセリング体験は大失敗
・被害って認められない
・なぜ逃げられなかった?
・「私」をなくした私

●第3章 アルコールに溺れる
・尿を飲みたい
・麻痺させなければ生きられない
・殺されたい衝動
・死にたい人たちとの出会い

●第4章 セックスが怖い、けど止められない
・私は老処女
・心はいらない
・恐怖を飛び越えたい
・関係のない関係
・崖から翔ぶ誘惑
・父の影
・自分のセクシャリティをつくる
・夫が示してくれたこと

●第5章 母と私の葛藤
・なぜ助けてくれなかったの?
・殺しかねない怒り
・身近な人も被害者
・母の答え
・その後
・心の再開

●第6章 加害者の心
・性的なモノとされた経験
・父も被害者だった
・性暴力は「関係性の病」
・あなたは私に何をした?
・性暴力加害を理解する
・出口の見えないトンネル
・「あなた」はもういらない

●第7章 「私」を取り戻す
・私を返せ
・回復を選択する
・転機
・なぜ被害者が責められるのだろう
・被害の跡を見抜く
・サバイバーとの出会い
・被害者中心主義という考え方
・スピークアウト
・それでも語る理由
・投影
・夫への告白
・つなぎ合わされた心

■性暴力被害者・サバイバーのためのガイド
1私は何をされたの?性暴力を理解する
2私はどうなっちゃったの・性暴力の影響とそのケア
3どうしてハマる?性暴力のトラウマと対処方法
4性的トラウマって何?
5なぜ理解されにくい?身近な人の苦しみと必要な支援
6なぜあんなことをしたの?性暴力加害と向き合う
7どうやったら回復できるの?健全さは自分の中にある

●エピローグ――あなたがやらない限り
・性暴力はどう裁かれる?
・誰も本当のところを知らない
・願い
★2017.3.8(No.482) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『犯罪・捜査・メディア 19世紀フランスの治安と文化』
(法政大学出版局/単行本/ドミニク・カリファ/2016.10)


秩序をおびやかす犯罪者たち、公権力を担う警察・司法組織、そして両者の近代的イメージを創り出した大量発行の新聞・出版ジャーナリズムは、民主主義社会の治安の危機をいかに映し出してきたか。犯罪文化史研究の第一人者が、連載小説や三面記事、警察官の回顧録などの膨大な資料をもとに、犯罪や監獄に関わる文学的表象や、〈社会防衛〉の言説史を多面的に分析した新しい社会史。

著者・ドミニク・カリファ(Dominique Kalifa)・・・・1957年、生まれ。1994年、ミシェル・ペローの指導のもとパリ第7大学修了。レンヌ第2大学准教授、教授を経て、2002年、アラン・コルバンの後任としてパリ第1大学教授に就任。2015年にはアンスティチュ・ユニヴェルシテール・ド・フランス会員に任命される。近代の犯罪と大衆文化が専門。

目次
日本の読者へ
はじめに
第一部 犯 罪
第1章 犯行現場──パリのトポグラフィーと社会的イマジネール
第2章 「アパシズム」の考古学── 一九世紀の野蛮人とアメリカ・インディアン
第3章 「危険階級」の終焉?──『ファントマ』シリーズにおける労働者と犯罪者
第4章 夜襲という恐怖
第二部 捜 査
第5章 警察官の回想録──ひとつのジャンルの出現?
第6章 捜査官ジャヴェール
第7章 二〇世紀初頭の「危険性」と「社会防衛」
第8章 処罰の危機?
第三部 メディア
第9章 一九世紀における三面記事と犯罪小説
第10章 監獄の光景
第11章 戦時中の三面記事(一八七〇─一九一四)
第12章 一九一四年から一九一八年にかけて──連載小説の終焉?
おわりに── 一九世紀と二〇世紀の犯罪と治安に関するひとつの見方
訳者あとがき
図版出典一覧
原 注
人名索引
★2017.3.1(No.481) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『会社はいつ道を踏み外すのか 経済事件10の深層』
(新潮新書/田中周紀/2016.11)


企業人必読の経済事件講座!

会社を舞台に行われた経済事件の数々。 不正経理、粉飾決算、総会屋利益供与、手形詐欺、脱税、インサイダー取引、証券取引法違反…… どこが犯罪なのか? その内幕を、徹底取材で、解説。 バイセル取引、のれん代、にぎり、飛ばし、特金、インサイダー取引などなど、 経済(犯罪)用語もわかりやすくご紹介。 自分の会社は大丈夫か、7つのチェックポイント付き。

著書・田中周紀 (ちかき) ・・・1961年、島根県生まれ。フリージャーナリスト。上智大学文学部史学科卒。共同通信社、テレビ朝日で、金融証券部、経済部、社会部などで記者として活躍。特に国税当局、証券取引等監視委員会を合計6年間取材。著書に『巨悪を許すな! 国税記者の事件簿』 / 『飛ばし』など。

目次
はじめに――経済事件は決して他人ごとではない

1、東芝「不正経理」問題(2015年)
歴代3社長はなぜ「チャレンジ」を求め続けたのか?

2、山一證券「飛ばし」事件(1997年)
老舗証券を破綻させた「エリート」の資質とは何か?

3、オリンパス巨額「粉飾決算」事件(2012年)
巨額損失は如何にして20年間も隠蔽され続けたのか?

4、NHK記者「インサイダー取引」問題(2008年)
NHK記者に良心の呵責は存在していなかったのか?

5、第一勧業銀行と大手証券4社「総会屋利益供与」事件(1997年)
大銀行はなぜ気鋭の総会屋に絡め取られたのか?

6、石橋産業「手形詐欺」事件(2000年)
稀代の詐欺師許永中の“人たらし"の手口とは?

7、早稲田大学・マネーゲーム愛好会の「相場操縦」事件(2009年)
仕手筋顔負けの早大生は如何にして転落したのか?

8、ニューハーフ美容家「脱税」事件(2010年)
ニューハーフ美容家は誰にカネを渡したかったのか?

9、クレディ・スイス証券元部長「脱税(無罪)」事件(2009年)
単なる勘違いの申告漏れがなぜ脱税に問われたのか?

10、ライブドア「粉飾決算」&村上ファンド「インサイダー取引」事件(2006年)
誰が無敵のホリエモンを潰したかったのか?

おわりに
★2017.2.22(No.480) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『私の中の三島由紀夫』
(柏艪舎/単行本/山本光伸/2017.3)


三島由紀夫に感謝を込めてーー 1970年11月25日。運命のあの日、 私は楯の会会員とともに警察署の取調室の中にいた。-----1970年11月25日、楯の会を率い、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で森田必勝とともに自決した三島由紀夫。 当時はもちろん今もなお、三島を“神"と崇める人もいれば、“狂人"と嘲る人もいる。 しかし、日本を震撼させたあの“事件"もいまでは確実に風化しつつあるようだ。 散る花と散らぬ花とを一身に兼ね備えなければならない“文武両道"。 一方が実態であれば、他方は虚妄であらざるを得ないこの二つの世界を同時に生き抜いた一人の天才は、 死後およそ50年という時の流れの中で、かつての若き著者にどのような試練をもたらしたのか……。 ーー三島事件とは何だったのか、死後50年を前にして改めて問う。

著者・山本光伸(みつのぶ)・・・1941年、東京生まれ。1967年、国際基督教大学歴史学科卒。河出書房に入社。1968年、プロの文芸翻訳家として独立。1995年、文芸翻訳家養成校・(有)インターカレッジ札幌開校。代表取締役就任。2001年、出版社・(株)柏艪舎設立、代表取締役就任。2011年、一般社団法人文芸翻訳検定協会設立、代表理事就任。ロバート・ラドラム『暗殺者』、アルフレッド・ランシング『エンデュアランス号漂流』(新潮社)、アーネスト・ヘミングウェイ『異郷』(柏艪舎)他、訳書多数。著書に、『誤訳も芸のうち』(柏艪舎)、『太宰ノオト』(三木学名義、柏艪舎)など。
★2017.2.15(No.479) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『騙されない技術 あなたの傍の嘘つきから身を守る方法』
(講談社/単行本/片田珠美/2017.2)


社会の犯罪にかかわる精神病理をウオッチングし続ける、今ひっぱりダコの精神科女医が、「人を陥れる嘘つき」の諸例と対処法を紹介。人間であれば嘘をついてしまうものではあるが、周りを振り回す迷惑な人や犯罪と紙一重の狡猾な嘘つきなどが、獲物を探している現代。嘘をつかない人はいない、騙されない人もいない、それでも「悪意の嘘」に自分を消されることがないように――。社会を広くながめながら諸例を語り、病理なのか性格なのか社会のせいなのかを分析し、大きく騙されることがないように対策(処し方)を紹介する一冊。

著者・片田 珠美・・・広島県生まれ。大阪大学医学部卒、京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。京都大学で博士(人間・環境学)取得後、フランス政府給費留学生としてパリ第八大学に留学。ラカン派の精神分析を学び、DEA(専門研究課程修了証書)取得。精神科医として臨床に携わり、その経験に基づいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析的視点から分析するなど、臨床経験を積みつつの著述を続けている。著書には『他人を攻撃せずにはいられない人』 / 『プライドが高くて迷惑な人』 (ともにPHP新書)ほか多数。
★2017.2.8(No.478) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『最新情報版 大学生が狙われる50の危険』
(青春出版社/新書/三菱総合研究所&全国学生協同連合会/2017.1)


自分は大丈夫! ──その心のスキを狙われる。

SNSやスマホのトラブル、飲酒のトラブル、ボランティア詐欺、大地震、ブラックバイト、ストーカー…
いまどきの大学生が実際に陥っているさまざまな危険と、その予防策・対応策を紹介。

大学生活を有意義に過ごすための、学生と親のための安全・安心マニュアル最新版!


著者・・・

(株)三菱総合研究所・・・1970年、三菱創業100周年記念事業として、三菱グループ27社の出資で設立されたシンクタンク。約650名の研究員を擁し、経済から教育、医療、環境、エネルギー、科学技術、ITソリューションなど幅広い専門分野をカバーしている。

全国大学生活協同組合連合会・・・全国に219ある大学生協が加入し、学生や教職員の生活の向上を図る連合会。特に学生が安心して大学で学び、生活が送れるよう、様々なサポートを行う。
★2017.2.1(No.477) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『実録 水漏れマンション殺人事件』
(新潮社/単行本/久川涼子/2017.1)


ごく普通のマンションで本当にあった小説よりも怖い話。ある日突然、マンションで起きた水漏れ事故。その原因は上階で起きた殺人事件だった!?  巨額の工事費、悪徳業者の水増し請求、保険会社の出し渋り、傷アリ物件の処理、裁判、法律の壁……突然の災難にもめげず、女一匹、財産と権利を守り抜いた奮闘の物語。ところで、あなたのマンション、大丈夫ですか?
★2017.1.25(No.476) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『死刑囚 永山則夫の花嫁 「奇跡」を生んだ461通の書簡』
(柏艪舎/単行本/嵯峨仁朗&柏艪舎[編]/2017.2)


「私は、殺人者のあなたをも受けいれています。殺した罪は許せない。悪い、悪い罪です。 なのに、なのに、あなた自身を愛せているミミです」ミミ 「ミミが初めてNに愛をおしえてくれた人なのです」ノリオ * * * * * * * * * * * * * * * * * * ミミ、25歳。 単身アメリカから日本へ渡り死刑囚 永山則夫と獄中結婚した。 永山の処刑から20年。 いま、初めて公開される二人の愛の往復書簡。 あなたは、こんなにも純粋に人を愛したことがありますか? * * * * * * * * * 1968年、全国を震撼させた連続射殺事件。 捕まったのは貧しく愛を知らずに育った19歳の少年、永山則夫だった。 1審は死刑。控訴審で死刑が確定されると思われていた12年後の1980年、 永山が獄中で書いたベストセラー『無知の涙』を読んで、 アメリカから1通のエアメールが届く。 それは一つの「奇跡」が始まる瞬間だった。 処刑から20年。いま初めて公開される夫妻の愛の往復書簡。

関連ページ・・・永山則夫連続射殺魔事件
★2017.1.18(No.475) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『電通事件 なぜ死ぬまで働かなければならないのか』
(旬報社/単行本/北健一/2016.1)


なぜ過労自殺は繰り返されたのか?
なぜ、電通では、長時間労働が是正されないのか?
『働き方』改革が唱えられているいま、真剣に考えなければならないところまで日本はきている。

「電通は変われるかという問いは、だから、日本の企業社会と、そこで働く私たちが変われるか、という問いかけでもある。過労死という異常をなくすために必要なことは何か。その答えを探して電通事件の闇に分け行っていきたい。」(はじめにより)

著者・北健一・・・ジャーナリスト。1965年、広島県生まれ。経済、社会問題について執筆。著書に『高利金融 貸金ビジネスの罠』(旬報社) / 『その印鑑、押してはいけない!』(朝日新聞社) など。

プロローグ
第1章 事件の急展開
労災から捜査へ/会社ぐるみの問題/体育会系体質
第2章 電通という会社
広告の巨人/電通社史と「鬼十則」/ネットの時代に
第3章 崩れるタブー
硬直した対応/武富士事件での役割/コントロールされるメディア/崩れ始めたタブー/なお残るもの
第4章 クライアント・ファーストの下で
口を塞がれた社員の代わりに/顧客サービス業につきまとう問題/自発的な働き過ぎ/長時間労働が「サービス」に
第5章 電通事件と「働き方改革」
すべては生産性のために/残業代ゼロ法案/残業代ゼロを先取りする職場/労働基準監督官たちの思い/労基法で守られない働き手
第6章 別のモデルを探して
模索する企業/過労死防止のとりくみ/労働組合の役割
インタビュー1佐々木司(大原記念上席主任研究員)
インタビュー2尾林芳匡(東京過労死弁護団幹事長)
エピローグ
★2017.1.11(No.474) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『マンガでわかる! 高齢者詐欺対策マニュアル』
(ディスカヴァー・トゥエンティワン/単行本/西田公昭/2016.12)


「振り込め詐欺」の被害があとを断ちません。よく何千万円もだましとられたというニュースを耳にしても、「これだけ騒がれているのに、まだ、だまされるなんて……」「高齢者はお金を持っているなあ」といった冷ややかな反応をするだけで、誰も自分がだまされるとは思っていないのです。むしろ、「私は大丈夫」「絶対だまされないわ」と思っているのではないでしょうか。お金をだましとられた被害者のその後については、ほとんど報道されることはありませんが、じつはとても苦しんでいる方が多いのです。プライドがズタズタに傷ついたうえに、家族から責められ、心身ともに追い詰められてうつになったり、最悪の場合、自殺してしまうこともあります。そうなると、今度は残された遺族が「どうして責めてしまったのだろう」と苦しむことになります。私は長年、「だましの手口」や「なぜ、人はカンタンにだまされてしまうのか」という視点から被害者の心理を研究してきました。このような胸が痛む現実を目の当たりにして、「どうすればお金をだましとられる犯罪をなくすことができるのか」と考え、本書を執筆しました。本書の執筆にあたっては、警察庁の特殊詐欺対策室長にご協力をいただきました。本書が詐欺被害者を少しでも減らすのに役立つことを願っております。 (「はじめに」より)

著者・西田公昭・・・1960年、徳島県生まれ。立正大学心理学部教授、博士(社会学)。1984年、関西大学社会学部卒業、1991年、静岡県立大学助手、1994年、スタンフォード大学客員研究員、2003年、静岡県立大学准教授を経て、現職。カルト宗教のマインド・コントロール研究や、詐欺・悪徳商法の心理学研究の第一人者として、新聞やテレビなどのマスメディアでも活躍。オウム真理教事件や統一教会などの多数の裁判で、鑑定人および法廷証人として召還される。主な著書に『マインド・コントロールとは何か』 / 『「信じるこころ」の科学』などがある。

目次

はじめに

プロローグ チャートでわかる! あなたがだまされやすいのは、ズバリこの手口

第1章 なぜ、人はカンタンにだまされてしまうのか?
CASE1 和子さん65歳の体験
1 「自分は大丈夫」がいちばん危ない!
2 「今日だけ」「限定○個」は詐欺の常套句
3 「お返ししなくちゃ」という思いがアダになる!
4 パニックに追い込み、判断力を低下させる!

第2章 ますますエスカレートするだましのテクニック
CASE2 一郎さん70歳の体験
5 巧妙な手口があなたをパニックに追い込む!
6 ニセ電話詐欺は被害額が大きい!
7 人生経験豊富な高齢者こそが狙われる
8 首謀者が捕まらなければ、詐欺犯罪はなくならない

第3章 「あやしい」と感じたら迷わず行動を!
CASE3 康子さん70歳の体験
9 「必ずもうかる」うまい話はありません
10 だましは「いつかくる」ではなく、「きっとくる」
11 だましのテクニックには一定のパターンがある
12 自分の弱点を知っておくためのチェックポイント
13 「おかしい」と思ったら、話を打ち切る勇気をもつ
14 詐欺は誰かに相談することで防げる

第4章 悪徳商法の汚い手口からどう身を守る?
CASE4 友子さん80歳の体験
15 そのリフォーム、本当に必要ですか?
16 健康に被害がありますよ、という誘い文句に注意!
17 昔は「押し売り」、いまは強引な「押し買い」が増えている
18 「家族が不幸になるぞ」と脅す「霊感商法」
19 甘い言葉で高額商品を購入させる「デート商法」
20 身に覚えのない商品にはお金を払ってはいけない!

第5章 だまされたときはどうすればいいの?
21 警察署に相談することを「おおげさ」とは考えない
22 お金を取りもどすためにできることがある
23 消費者の味方、クーリング・オフの上手な利用法
24 消費者ホットライン「188(いやや)」を覚えておきましょう
25 詐欺被害者の財産を守る新たな制度が登場

★2017.1.4(No.473) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『職場がヤバい! 不正に走る普通の人たち』
(日本経済新聞出版社/単行本/前田康二郎/2016.12)


粉飾・横領・詐欺――「まさか」はこうして始まる。フリーランスの経理部長が教える組織や人間関係などの内にある危険な兆候。

東芝事件はセンセーショナルなものではあったが、ここ数年ニュースになった不正・横領・着服・キックバック等の問題だけでも学校法人、郵便局、国営放送子会社、大手飲料メーカーなど多岐にわたり、果ては66歳の経理社員の総額6億円以上の横領が原因で当時の社長が資金繰りを苦に自殺するという事件まで起きている。不正をする会社や社員は、一見して外見も内面もろくでもない奴らだと思われがちだが、実際は違う。「まさかこの会社が」「この人が」と思えるような普通の会社や社員が不正をしたり、他者に不正を強要したりするので、なかなか表面化しないのだ。

著者・前田康二郎の他の著書・・・『スーパー経理部長が実戦する50の習慣』 / 『スピード経理で会社が儲かる』など。
★2016.12.28(No.472) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『相模原障害者殺傷事件 優生思想とヘイトクライム』
(青土社/単行本/立岩真也&杉田俊介/2016.12)


障害者殺しとそれへの抵抗の歴史を召喚し、いちはやく事件のフレームを示してみせた社会学の第一人者と若者たちの鬱屈の深層を見つめながら等身大の言葉で語りかける在野の批評家による緊急提言。

相模原障害者施設殺傷事件・・・2016年(平成28年)7月26日午前2時45分ごろ、神奈川県相模原市緑区千木良の知的障害者施設「津久井やまゆり園」にナイフを持った男が侵入し、入所者らが刺されるなどし、男女19人が死亡、26人が重軽傷を負った事件。津久井署に出頭した元同施設職員で自称無職の植松聖(さとし/当時26歳)が殺人未遂と建造物侵入の容疑で逮捕された。植松は「ナイフで刺したことは間違いない」と容疑を認めており、「障害者なんていなくなればいい」という趣旨の供述をした。植松は2012年(平成24年)12月から津久井やまゆり園に非常勤職員として勤務し、2016年(平成28年)2月に退職している。9月21日、横浜地検は植松聖の鑑定留置を開始したと発表した。期間は2017年(平成29年)1月23日までの約4ヶ月間。地検は精神鑑定の結果を基に刑事責任能力の有無を見極め、刑事処分を決める。


著者・・・

立岩真也・・・1960年生まれ。立命館大学大学院先端総合学術研究科教授。社会学専攻。著書に『私的所有論』(勁草書房/第2版:生活書院) / 『ALS 不動の身体と息する機械』(医学書院)など。

杉田俊介・・・1975年生まれ。批評家。著書に『フリーターにとって「自由」とは何か』(人文書院) / 『無能力批評』(大月書店)など。

【目次】
はじめに――立岩真也
T ――立岩真也
第1章 精神医療の方に行かない
第2章 障害者殺しと抵抗の系譜
第3章 道筋を何度も作ること
U ――杉田俊介
第1章 優生は誰を殺すのか
第2章 内なる優生思想/ヘイト/ジェノサイド
V ――立岩真也+杉田俊介
討議 生の線引きを拒絶し、暴力に線を引く
1 まず何を、誰に、どのように書いたか / 2 立ち返るべき場所、開いていく歴史
3 マジョリティでもマイノリティでもない者の鬱屈 / 4 さまざまな「言い方」の実践
5 施設、あるいは地域をどうするか / 6 この時代と人の不安を語ることの困難
7 解毒し、線を引くこと
おわりに――杉田俊介
文献表
★2016.12.21(No.471) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『なぜ、無実の医師が逮捕されたのか 医療事故裁判の歴史を変えた大野病院裁判』
(方丈社/単行本/安福譲二/2016.9)


裁判の支援に立ち上がった多くの医師の胸には、過酷な医療現場を支える使命と誇りがあった。彼が裁かれるなら、医療は崩壊! 無罪を勝ち取った産婦人科医の感動のドキュメント!

大野病院事件・・・2004年(平成16年)12月17日、福島県双葉郡大熊町の福島県立大野病院で帝王切開手術を受けた産婦が死亡した。2006年(平成18年)2月18日、手術を執刀した同院産婦人科の医師1人が業務上過失致死と医師法違反の容疑で逮捕、翌月に起訴された事件。2008年(平成20年)8月20日、福島地方裁判所は、被告人の医師を無罪とする判決を言い渡した。福島地検が控訴を断念。無罪が確定した。医師は休職中であったが同病院に復職した。

著者・安福謙二(やすふくけんじ)・・・1947年、生まれ、名古屋市出身。1972年、東京大学経済学部卒業。1975年、司法試験に合格。1978年、弁護士登録。1984年、安福法律会計事務所開設、1992年、南青山に事務所移転。一般民事・刑事事件のほか、医療問題に関するNPO活動に参加、医療事故に関する裁判(民事、刑事)、県立大野病院事件の弁護人を担当。


目次

プロローグ
T 逮捕
2月20日、午後 事件報道にミスという字が踊る
2月20日 医師を支えるには?
2月21日 すぐにも医学知識が欲しい
2月23日 「医師逮捕は理不尽」ネットに応援団
3月8日 起訴させまじ、最後の努力
3月12日 加藤医師に会う
3月18日 「ガリレオ裁判」

裁判
病理鑑定医が、とんでもなく、おかしい
4月23日 中山医師と会見
5月7日 弁護団会議、勝負の写真を読む
9月11日 中山鑑定が出る
公判で調書の供述を引っくり返した検察側証人医師
中山先生に教えを乞う 片道5時間の大阪行き
2008年8月20日判決 主文 被告人は無罪

V 大野病院裁判の意味
大野病院事件とは何であったのか
医療事故調査委員会の実相
東京女子医大事件では医師自らが調査報告
神奈川がんセンター事件
事故調査制度の問題は医療事故に限らない
逮捕されないためにはどうすればいいのですか
「究明」に基づく説明責任を果たす

鼎談 10年を経て、大野病院裁判を振り返る
中山雅弘(病理医)
加藤克彦(産婦人科医)
安lェ二(弁護士)

★2016.12.14(No.470) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『あなたなら泣いて終わりにしますか、それとも戦いますか。』
(幻冬舎/単行本/一善/2016.12)


息子が嫁に刺された――
そんなショッキングな一報をうけた母親の「私」は、現場へとかけつける。そこで待ち受けていたのは、想像を絶するような事態だった。周到な計画によって殺された息子、奪われた孫たちと持ち家、おかしな言動を繰り返す嫁の実家側、いわれのない「DV」疑惑……。暴力団の黒い影が見え隠れする中で、被害者の両親は必死で真実を探り、法廷で戦う。広島で実際に起きた事件をもとにした、迫真のドキュメンタリー小説。


著者・一善(いちぜん)・・・愛媛県松山市出身。飲食店・整体院経営。
★2016.12.7(No.469) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』
(KADOKAWA/単行本/大崎善生/2016.11)


小説家、ノンフィクション作家の顔を持つ著者でなければ書けなかった真実。

「闇サイト」で集まった凶漢3人の犯行により命を落とした一人の女性がいた。彼女はなぜ殺されなくてはならなかったのか。そして何を残したのか。被害女性の生涯に寄り添いながら事件に迫る長編ノンフィクション。

2007年8月24日、深夜。名古屋の高級住宅街の一角に、一台の車が停まった。車内にいた3人の男は、帰宅中の磯谷利恵に道を聞く素振りで近づき、拉致、監禁、そして殺害。非道を働いた男たちは3日前、携帯電話の闇サイト「闇の職業安定所」を介して顔を合わせたばかりだった。車内で脅され、体を震わせながらも悪に対して毅然とした態度を示した利恵。彼女は命を賭して何を守ろうとし、何を遺したのか。「2960」の意味とは。利恵の生涯に寄り添いながら事件に迫る、慟哭のノンフィクション。

著者・大崎善生(おおさき・よしお)・・・1957年、札幌市生まれ。2000年、デビュー作の『聖の青春』で新潮学芸賞を、2001年、『将棋の子』で講談社ノンフィクション賞を受賞。2002年には、初めての小説作品『パイロットフィッシュ』で吉川英治文学新人賞を受賞した。
★2016.11.30(No.468) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『処罰と近代社会 社会理論の研究』
(現代人文社/単行本/デービット・ガーランド/2016.11)


刑罰プロセスが社会・歴史的な文脈によってどのようにして現在の形をとるようになったのか、処罰が持つ社会的意味は何か。デュルケム、ルッシェとキルヒハイマー、パシュカーニスなど、処罰の歴史的基礎、社会で果たす役割、文化的意義を説明しようと試みてきた社会理論家や歴史家の研究を順に検討。著者は、刑罰が、犯罪統制の技術であるにとどまらず、権力、社会―経済構造、文化の感受性と相互作用し、その結果、複雑な社会制度になっているとの持論を展開。社会と歴史の理論への洞察が、現代社会の処罰、さらにはもっと広く一般の現代社会の特徴に影響を及ぼすこと、そして、それを統合することが、この複雑な社会制度を理解することにつながり、刑罰政策分野でもより現実的で適切なものへと発展し、政策決定者に寄与すると力説する。

著者・デービッド・ガーランド(David Garland)・・・1955年生まれ。スコットランドダンディーの出身。エディンバラ大学法学部、シェフィールド大学犯罪学修士課程を修了後、エディンバラ大学社会-法研究で1984年博士号を取得。1979年エディンバラ大学のロースクール講師を皮切りにプリンストン大学、カリフォルニア大学バークレー校等で教鞭をとり、現在、ニューヨーク大学ロースクール及び社会学教授。法社会学分野の第一人者で、雑誌「処罰と社会(Punishment and Society)」の創立編集者。アメリカ犯罪学会から、セリン・グリュック賞、サザランド賞を受けるなど受賞歴多数。現在、イギリス学士院、エディンバラ王立学院、アメリカ犯罪学会のフェロー。本書に加え、『処罰と福祉』(1985) / 『統制の文化:現代社会における犯罪と社会秩序』(2001)はガーランドの三部作と言われている。

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目 次
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第1章 処罰の社会学と今日の処罰
第2章 処罰と社会的連帯――エミール・デュルケムの著作
第3章 処罰と権威の構築――デュルケム的主題の再検討
第4章 処罰の政治経済――ルッシェとキルヒハイマー、およびマルクス主義的伝統
第5章 イデオロギーと階級統制としての処罰――マルクス主義的テーマの変種
第6章 処罰と権力技術――ミシェル・フーコーの著作
第7章 権力パースペクティヴを越えて――処罰に関するフーコーの批判
第8章 処罰の合理化――ウェーバーの命題と近代刑罰
第9章 処罰と文化――文化形態と刑罰実務
第10章 処罰と感受性――「文明化された」制裁の系譜学
第11章 文化的主体としての処罰――文化形成における刑罰の役割
第12章 社会制度としての処罰
★2016.11.23(No.467) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『もう時効だから、すべて話そうか 重大事件ここだけの話』
(小学館/単行本/一橋文哉/2016.11)


殺人、未解決事件や闇社会が絡んだ経済犯罪などをテーマにノンフィクション作品を次々と発表してきた一橋文哉氏が、これまで語ってこなかった事件の意外な真相や取材のとっておきエピソードを披露する本邦初の「事件エッセイ」。著者の原点となったグリコ森永事件の「かい人21面相」から、三億円強奪、連続少女誘拐、酒鬼薔薇聖斗、オウム真理教、和歌山毒カレー、尼崎連続変死、世田谷一家惨殺、福田和子、渋谷セレブ妻バラバラ殺人、餃子の王将社長射殺、そして清原和博覚せい剤、山口組分裂まで日本史上重大事件の独自ネタや警察・司法の体質など事件の背景、社会の闇など今だからこそ語れる話が次々とが明かされる。さらに、特ダネをとる取材方法や失敗エピソードは覆面を貫く「生涯一事件記者」・一橋文哉の正体も垣間見られて、これまでの著者の既刊にはない魅力が満載の一冊。

著者・一橋文哉・・・1954年生まれのジャーナリスト。本名・広野伊佐美(ひろの・いさみ)。ペンネームは元『毎日新聞』記者・『サンデー毎日』副編集長であったことから一ツ橋に本社がある毎日新聞社の記者→「一ツ橋のブン屋」→「一橋文哉」とした。昭和から平成の大事件に関する次のような著書がある。『闇に消えた怪人 グリコ・森永事件の真相』 / 『三億円事件』 / 『オウム帝国の正体』 / 『宮崎勤事件 塗り潰されたシナリオ』 / 『「赤報隊」の正体 朝日新聞阪神支局襲撃事件』 / 『餃子の王将社長射殺事件』 / 『人を、殺してみたかった 名古屋大学女子学生・殺人事件の真相』

目次
第1章 身勝手過ぎる凶悪犯罪に喝!
第2章 女心ほど不可解なものはない
第3章 未解決に陥るには理由がある
第4章 絶対正義をうたう司法の裏切り
第5章 グリコ森永事件こそ私の原点だ
第6章 スクープのコツはここにあり
第7章 アスリートと芸能人を支配する闇
第8章 少子高齢化社会は病んでいる
★2016.11.16(No.466) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『介護殺人 追いつめられた家族の告白』
(新潮社/単行本/毎日新聞大阪社会部取材班/2016.11)


あなたを殺したくて殺したわけではないの。
あなたを愛して愛してたのに、あの日はなぜか……
自分だけが生き残ってごめん。
(本文より)

なぜ彼らは最愛の人に手をかけたのか?
その時、彼らの何が壊れたのか?

夫婦・親子だから当然と始めた家庭での介護がやがて困難を極め、長期化する――
そして今、全国で後を絶たない介護苦による殺人事件。
家族の絆が悲劇に変わる「魔の瞬間」は避けられなかったのか?
「加害者」となってしまった家族本人の生の声を聞き、間近にいた関係者への取材を重ねて明らかになった、在宅介護の壮絶な現実と限界。

第1章 告白
真夜中のドライブの果て
検事さんには私の苦しみは分からん

第2章 先が見えない不安
長期介護という出口のないトンネル
母の愛が絶望に変わる瞬間

第3章 残った者の日々
「もう一度、母の子として生まれたい」
悲劇の連鎖
介護殺人が残す傷跡

第4章 事件は防げたのか
ケアマネジャーの告白
医師が感じていた兆候
「もう二度と孤独にはさせない」
現場の苦悩
介護で追いつめられる男たち

第5章 苦悩と絆
「いないとやっぱり寂しくて」
「ヤングケアラー」の苦悩と奮闘
家族を引き離した「多重介護」
とんがり帽子の屋根の家

第6章 介護家族の現実──支援の限界と急がれる見直し
介護家族アンケートから見えること
支援の現状と望まれる見直し
家族に介護が必要になった時
シリーズへの反響
★2016.11.9(No.465) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『あなたの知らない「東大安田講堂事件」 安田講堂事件現場統括指揮官「津田武コ」の記録』
(幻冬舎/単行本/津田武徳/2016.10)


ノンキャリアながらも、60年・70年安保闘争や東大安田講堂事件の警備責任者として手腕を発揮した津田武コが記した手記を1冊の自伝にまとめた。60年安保から学んだ教訓を元に、70年安保の前哨戦となった「東大安田講堂事件」の様子を詳しく記述。津田氏の手腕、現場の機動隊員たちの奮闘を克明に描かれたドキュメンタリー。
★2016.11.2 (No.464) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『ヤクザと憲法 「暴排条例」は何を守るのか』
(岩波書店/単行本/東海テレビ取材班/2016.10)


長期にわたり指定暴力団の事務所でカメラを回し、密着取材を重ねた、映画『ヤクザと憲法』。大きな反響を呼んだこの映画は、思いがけない人権意識、現代社会のありようを見事に浮き彫りにする。暴力団対策法、暴力団排除条例によって、本当に市民の安全は確保できるのか? 取材班の葛藤、初めて明かす裏話なども交え、制作過程を克明に綴る。
★2016.10.26 (No.463) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『唐牛伝 敗者の戦後漂流』
(小学館/単行本/佐野眞一/2016.7)


六〇年安保を闘った若者たちは、「祭り」が終わると社会に戻り、高度経済成長を享受した。だが、唐牛(かろうじ)健太郎だけはヨットスクール経営、居酒屋店主、漁師と職を変え、日本中を漂流した。なぜ彼は、何者かになることを拒否したのか。ノンフィクション作家・佐野眞一が北は紋別、南は沖縄まで足を運び、1984年に物故した全学連元委員長の心奥を描く。

著者・佐野眞一・・・1947年、東京生れ。出版社勤務を経てノンフィクション作家に。主著に、民俗学者・宮本常一と渋沢敬三の交流を描いた 『旅する巨人』(大宅賞) / エリートOLの夜の顔と外国人労働者の生活、裁判制度を追究した『東電OL殺人事件』 など多数。

内容紹介

革命なんて、しゃらくせえ!

「昭和の妖怪」岸信介と対峙し、
「聖女」樺美智子の十字架を背負い、
「三代目山口組組長」田岡一雄と
「最後の黒幕」田中清玄の寵愛を受け、
「思想界の巨人」吉本隆明と共闘し、
「不随の病院王」徳田虎雄の参謀になった
全学連元委員長、47年の軌跡。


〈 目次 〉
プロローグ
第一章 装甲車を乗り越えよ   
第二章 革命前夜
第三章 闇に蠢く
第四章 逃避行
第五章 闘士たちのその後
第六章 与論・紋別・喜界島
第七章 名もなき死
あとがき
★2016.10.19 (No.462) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『罪と罰の彼岸【新版】 打ち負かされた者の克服の試み』
(みすず書房/単行本/ジャン・アメリー/2016.10)


著者・ジャン・アメリー(Jean Amery)・・・1912年ユダヤ人の両親のもとウィーンで生まれた。文学・哲学を学ぶ。1938年、ナチズムをのがれてベルギーに亡命。レジスタンスに参加、1943年、逮捕され、アウシュヴィッツ、ブーヘンヴァルト、ベルゲン=ベルゼン強制収容所に送られる。1945年の解放後ブリュッセルに住み作家・批評家として活発に活動した。ロマン・エッセイという独特のスタイルにより機知と明晰をもって書き、<現代ヨーロッパにおける最も興味深い思索者の一人>と見なされていた。1978年、ザルツブルグで自死。他の著書に『さまざまな場所 死の影の都市をめぐる』 / 『ルフー、あるいは取り壊し』 など。

目次

初版(1966年)はしがき
新版(1977年)はしがき

精神の限界
拷問
人はいくつ故里を必要とするのか
ルサンチマン
ユダヤ人であることの強制、
 ならびにその不可能性について

ジャン・アメリー年譜
解説
訳者あとがき

★2016.10.12 (No.461) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『不可視の性暴力 性風俗従事者と被害の序列』
(大月書店/単行本/田中麻子/2016.9)


性暴力は他の犯罪に比べて被害申告率が低く、支援を求められない被害者が多く存在する。なかでも不可視化されているのが「性風俗従事者」に対する被害である。本書はその理由と実態を詳らかにし、状況改善のための糸口を探る。

著者・田中麻子・・・一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。2009年、米国カリフォルニア州レイプクライシスセンター研修修了。NPO法人レイプクライシスセンターTSUBOMI理事(2012〜2016年)。Center for HEART/HEARTカウンセリングセンター事務局長。ポータルサイトSurvivors Resource共同代表。論文「日本の性暴力サバイバー支援の課題と今後」で2011年度日本女性学習財団奨励賞受賞。

目次

序章 性暴力はなぜ語られにくいのか
第1章 性暴力被害者の苦悩
第2章 性暴力被害者の差異と序列
第3章 性風俗における性暴力
第4章 性風俗従事者に対する性暴力の不可視化
第5章 性暴力を可視化する
終章 性暴力のありか
★2016.10.5 (No.460) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『われ、大統領を撃てり 在日韓国人青年・文世光と朴正煕狙撃事件』
(花伝社/単行本/高祐二/2016.10)


「母よ、息子よ、騙された私が馬鹿だった」
そう言い残して在日青年は、刑場の露と消えた。

第18代韓国大統領・朴槿恵(パク・クネ)の父親・朴正煕(パク・チョンヒ/第5〜9代韓国大統領)は、1974年8月15日の光復節祝賀行事において、一人の在日韓国人青年に狙撃される。在日社会のタブーとして顧みられることのなかった狙撃犯・文世光(ムン・セグァン/日本通名・南条世光[なんじょう・せいこう]/当時22歳)の人間像にスポットを当て、歴史の闇に呑み込まれようとする世紀の大事件の真相に迫った本格ノンフィクション!

文世光事件(朴正煕暗殺未遂事件)・・・1974年8月15日、日本からの解放記念日である光復節の祝賀行事がソウルの国立劇場であり、韓国の朴正煕大統領夫妻がその行事に出席していたが、在日韓国人の文世光によって大統領夫人・陸英修が射殺された事件。 同時に朴大統領に迫る文世光に対し応戦した大統領警護室のセキュリティポリスが撃った流れ弾が式典に合唱団の一員として参加していた女子高生・張峰華(17歳)に当たり、事故死した。結局、文世光は朴大統領の暗殺に失敗し、韓国警察に現行犯逮捕された。韓国での裁判で、10月19日、1審で死刑判決。11月20日、2審でも死刑。12月17日の最高裁でも死刑となり、わずか2ヶ月の裁判で確定した。3日後の12月20日、ソウル拘置所で絞首刑が執行された。22歳だった。

著者・高 祐二(コ・ウイ)・・・1966年生まれ。甲南大学経済学部卒。兵庫県在住。在日韓国学生同盟兵庫県本部副委員長、在日韓国青年同盟兵庫県本部委員長を歴任。兵庫朝鮮研究会会員。理学療法士、病院勤務。著作に『韓流ブームの源流』(社会評論社) / 『在日コリアンの戦後史』(明石書店)などがある。

関連ページ・・・You Tube 文世光事件(朴正煕暗殺未遂事件)
★2016.9.28 (No.459) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『犯罪心理鑑定の技術』
(金剛出版/単行本/橋本和明/2016.7)


司法専門職ではない裁判員が重大事件を裁判官とともに審議・判断する裁判員裁判制度が2009年(平成21年)に始まり、「なぜ彼/彼女は罪を犯したのか」という根本を問うことの重要性はかつてなく高まりつつある。裁判を受ける被告人の心理や犯行メカニズムを見定める手法「犯罪心理鑑定」は情状鑑定とも呼ばれ、専門家=鑑定人の法廷証言において、被告人のパーソナリティ、家庭環境,成育史を調査、犯罪との関係を解説するだけでなく、被告人の更生の可能性やその方法について見解を述べ、裁判員が被告人の全体像をとらえた判断を下すための条件を整えていく。

第1部「技術としての心理鑑定」、第2部「情状鑑定としての心理鑑定、第3部「心理鑑定の臨床的意義」、第4部「心理鑑定の今後の展望」から構成される本書では、方法としての犯罪心理鑑定を,精神鑑定との対比や司法領域におけるポジションから幅広く論じる。さらに少年事、非行、発達障害、いじめ、虐待の犯罪心理鑑定ケーススタディ、被告人の変容と更生を目指す臨床面接、民事事件における意義、供述分析鑑定を取り上げ、未だ十分に彫琢されていない犯罪心理鑑定の基礎構造の確立を目指す。心理鑑定専門家たちの経験を結集して実務に資する高い技術を育むための「犯罪心理鑑定マニュアル」。

第1部−技術としての心理鑑定
1−犯罪心理鑑定の意義と技術/橋本和明
2−裁判員制度時代の精神鑑定/井原 裕
3−法律家が求める心理鑑定/廣瀬健二

第2部−情状鑑定としての心理鑑定
4−少年事件における心理鑑定/村尾泰弘
5−発達障害と心理鑑定――[論考]人を殺してみたかった/小栗正幸
6−虐待事件における心理鑑定/西澤 哲

第3部−心理鑑定の臨床的意義
7−心理鑑定における臨床面接の意義/須藤 明
8−被告人の変容と更生に資する――情状鑑定の意義/山田麻紗子
9−心理の専門家の民事事件への関わり/横山 巌
10−供述分析としての鑑定/仲真紀子

第4部−心理鑑定の今後の展望
11−「裁判員裁判のための対人援助専門職ネットワーク」の活動と意義/藤原正範
★2016.9.21 (No.458) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『黒い司法 黒人死刑大国アメリカの冤罪と闘う』
(亜紀書房/単行本/ブライアン・スティーヴンソン/2016.9)


白人の人妻と関係を持った黒人・・・それだけで犯してもいない殺人の罪で死刑を宣告されたウォルター・マクミリアン。彼の冤罪を証明するべく人権弁護士ブライアンは奔走する。仕組まれた証言、公判前の死刑囚監房への収監、大半が白人の陪審員、証人や弁護士たちへの脅迫……。数々の差別と不正を乗り越え、マクミリアンとブライアンは無罪を勝ち取ることができるのか。黒人が不当に差別されてきた米国司法の驚愕の事実を踏まえつつ展開される衝撃のドキュメント。

著者・ブライアン・スティーヴンソン( Bryan Stevenson)・・・アラバマ州モンゴメリーを拠点とするイコール・ジャスティス・イニシアチヴ(司法の公正構想)の事務局長。ニューヨーク大学ロースクールで法学教授として教鞭を執る。何十人という死刑囚の救済措置を勝ち取り、連邦最高裁判所では5度にわたって弁論をおこなった。
★2016.9.14 (No.457) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『サバイバー 池袋の路上から生還した人身取引被害者』
(ころから/単行本/マルセーラ・ロアイサ/2016.8)


日本でセックスワークを強要されたコロンビア人女性の手記『ヤクザに囚われた女 人身取引被害者の物語』を日本語訳。

著者・マルセーラ・ロアイサ・・・1978年、コロンビア生まれ。1999年に来日し、セックスワークを強要される。2001年に帰国し、2009年に日本滞在中の出来事をまとめた手記(原題「『ヤクザに囚われた女 人身取引被害者の物語』=本書)が大ヒットし、2011年に続編(『過去の私、いまの私』」=未訳)を刊行。その後、米国に移住し、人身取引撲滅のためのNPO Fundacion Marcela Loaizaの代表として活動する。
★2016.9.7 (No.456) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『ミズーラ 名門大学を揺るがしたレイプ事件と司法制度』
(亜紀書房/単行本/ジョン・クラカワー/2016.9)


モンタナ州第2の都市、ミズーラ。この町のシンボルは、1万5000人の学生が通い、800人以上の教員が勤めるモンタナ大学である。同大学のアメフトチーム「グリズリーズ」は、市民たちの誇りでもあった。だが、2010年から2012年にかけてグリズリーズの選手たちが引き起こした複数のレイプ事件が明るみに出ると、静かな大学町の空気は一変する。被害者への誹謗中傷、理解を示さない警察、事件を不起訴にする検察、加害者の特権意識、世間の偏見……なぜ加害者は町ぐるみで守られるのか。なぜ被害者たちが、捜査と裁判の過程でセカンドレイプに苦しまねばならないのか。詳細なインタビューと丹念な取材を通して、レイプスキャンダルの真相と司法制度の矛盾に斬り込む、全米ベストセラーノンフィクション。

著者・ジョン・クラカワー・・・1954年生まれ。ジャーナリスト、作家、登山家。当事者のひとりとして1996年のエベレスト大量遭難事件を描いた『空へ』、ショーン・ペン監督により映画化された『荒野へ』 (2007年映画化、邦題『イントゥ・ザ・ワイルド』 )など山や過酷な自然環境を舞台に自らの体験を織り交ぜた作品を発表していたが、『信仰が人を殺すとき』以降は宗教や戦争など幅広いテーマを取り上げている。
★2016.8.31 (No.455) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『通州事件 目撃者の証言』
(自由社/単行本/藤岡信勝[編著]/2016.8)


1937年(昭和12年)7月、通州で支那人の保安隊と学生による日本人居留民大虐殺があった。 事件の翌日、居留区に入った日本軍は二百数十名の遺体を目にし、絶句した。切断された四肢や頭部、えぐり取られた局部や目、剥がされた頭皮、割かれた妊婦の腹…およそ人倫に外れた、凄惨な暴虐の限りを尽くした痕跡の数々――。 日本では戦後、通州事件は長い間隠蔽され、忘れ去られた出来事となってきた。その「惨殺」がどのように行われたのか、詳細な事実は殆ど知らされてこなかった。犠牲者は亡くなっているし、脱出者は凶行の現場を見ていないからである。 ところが、支那人の男性と結婚し、支那人を装って通州に暮らしていた一人の日本人女性が、群衆に紛れて、蛮行の一部始終を見ていたのである。 学生の青竜刀で斬られた老婆は女性に「かたきをとって」「なんまんだぶ」と、念仏をとなえて息をひきとった。老婆のいまわの念仏が心から離れなかった女性は支那人と離婚して帰国後、ある寺の住職と出会い、五十年間黙してきた体験談をつぶさに語り出した…。 女性の実名を明かしての目撃談は、その場にいた者にしか語れない迫真のリアリティに満ちている。まさに「天網恢々疎にして漏らさず」、支那人の悪逆非道な蛮行が、白日のもとに曝されることになった。女性は真に貴重な歴史の証人になったのである。 本書は、その目撃証言の全文である。

著者・藤岡信勝・・・1943年、北海道生まれ。日本の教育学者。専門は社会科教育学。新しい歴史教科書をつくる会理事(前会長)、自由主義史観研究会代表。拓殖大学客員教授。元東京大学教授。元日本共産党員。主な著書・・・『教科書が教えない歴史』 / 『国難の日本史』など多数。
★2016.8.24 (No.454) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『革命の地図 戦後左翼事件史』
(イースト・プレス/単行本/山野車輪/2016.8)


在日、日本共産党、新左翼、しばき隊、SEALDsの戦闘記録
戦後史を揺るがした21の「テロルの現場」をマンガで検証!

革命戦士たちの“夢の跡"へトツゲキ調査!
〈彼ら〉が日本を変えられなかった理由(わけ)を総括す!!

〈理想郷(ユートピア)〉をつくる夢は、なぜ敗れ去ったのか?

【目次】マッカーサーを戦慄させた「阪神教育事件」-神戸
講和条約発効の隙を狙う「血のメーデー事件」-皇居前広場
岸信介首相のクビを取った「60年安保騒動」-永田町
新左翼運動の手法が確立した「羽田事件」-羽田空港
首都圏の交通を麻痺させた「新宿騒擾事件」-新宿駅
学生と国家権力の対立「東大安田講堂事件」-本郷
警察幹部の妻を爆殺した「土田邸小包爆弾事件」-雑司が谷
革命戦士12名をリンチ殺害した「山岳ベース事件」-榛名山
“闘争"の実態を生中継された「あさま山荘事件」-軽井沢
成田農民の不満に乗じた「三里塚闘争」-成田空港
互いに殺し合った「内ゲバ」の時代-市ヶ谷
一般人384人を殺傷した「三菱重工爆破事件」-丸の内
日本と日本人にテロの牙を剥く「連続企業爆破事件」-東京各地
皇太子夫妻に火炎瓶を放つ「ひめゆりの塔事件」-糸満
昭和天皇の葬列を狙う「中央自動車道切り通し爆破事件」-調布
都心部に殺人ガスを散布した「地下鉄サリン事件」-富士河口湖町
新左翼と在日が共闘した「杉並区歴史教科書採択騒動」-阿佐ヶ谷
親韓右派が標的にされた「フジテレビデモ騒動」-お台場
「在日特権」を巡るデモと暴力の応酬「在特会vs.しばき隊」-新大久保
「辛淑玉文書」が暴く在日の内ゲバ「Mさんリンチ事件」-北新地
挫折した老左翼の夢が集う「SEALDs街頭運動」-永田町


関連ページ・・・ 連合赤軍あさま山荘事件 / 日本赤軍と東アジア反日武装戦線 / 東大闘争と日大闘争 / オウム真理教
★2016.8.17 (No.453) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち』
(新潮社/単行本/石井光太/2016.8)


死んだ犬を捨てた荒川に、次男も捨てた……
虐待家庭の「核」に迫る戦慄のルポ!
子供たちは、こうして殺されていく。

次男をウサギ用ケージに監禁、窒息死させ、次女は首輪で拘束した夫婦。電気も水も止まった一室で餓死させた父親。奔放な性生活の末に嬰児2人を殺し、遺体は屋根裏へ隠す母親。「愛していたのに殺した」という親たち、その3代前まで生育歴をさかのぼることで見えて来た真実とは? 家庭という密室で殺される子供たちを追う。

著者・石井光太・・・1977年、東京生まれ。国内外を舞台にしたノンフィクションを中心に児童書、小説など幅広く執筆活動を行っている。主な著書に『物乞う仏陀』 / 『神の棄てた裸体』などがある。

Case1 厚木市幼児餓死白骨化事件
地獄絵図と化したアパート
親子三人
夫婦喧嘩
妻の失踪
監禁生活
なぜ救出されなかったのか
愛欲、そして死
判決の後
産んではいけない夫婦
風俗嬢として
箱根の老舗旅館

Case2 下田市嬰児連続殺害事件
伊豆半島の南
母子一族
結婚
夜の仕事
再婚という悲劇
二〇一五年、下田
怪物の子
「天井裏の子」
「太っただけ! 」
「押入れの子」
二〇一五年、沼津

Case3 足立区ウサギ用ケージ監禁虐待死事件
荒川
裁判──二〇一四年
家族の肖像
モンスターの子
夫婦の関係
再逮捕
裁判──二〇一六年
判決
もう一人のモンスター
★2016.8.10 (No.452) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『プリズン・ブック・クラブ コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年』
(紀伊国屋書店/単行本/アン・ウォームズリー/2016.8)


「刑務所は受刑者同士が孤立している場所だというのに、 この読書会でなら、人種や民族や暴力団の派閥の壁をやすやすと越えられるんだ」 『怒りの葡萄』『かくも長き旅』『またの名をグレイス』…… 刑務所内での本をかこんでのやりとりを通して囚人たちは自らの喪失感や怒り、孤独、贖罪について吐露し、読書の楽しみを知り、異なる意見の持ち主の話にも耳を傾けるようになった。 ――― 1年間ボランティアとして読書会運営に関わったジャーナリストが見た、囚人たちの変化とは。読書の効用、犯罪者の更生についても考えさせられる、胸に迫るノンフィクション。

著者・アン・ウォームズリー(Ann Walmsley)・・・カナダ在住。「グローブ・アンド・メール」紙などに寄稿するジャーナリスト。過去にカナダの「ナショナル・マガジン・アワード」、「カナダ・ビジネス・ジャーナリズム賞」などを受賞。読書会歴は9歳の時から。
★2016.8.3 (No.451) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『状況認識力UPがあなたを守る』
(パンローリング/単行本/ジェイソン・ハンソン/2016.7)


七つのルールと自己防衛術の数々が、詐欺、強盗、監禁、拉致、誘拐を遠ざける。知って得する自己防衛。

目次

サバイバル・インテリジェンス 生き抜くためのスパイ術
状況認識力 CIAで学んだ最も重要なたった一つのこと
スパイ直伝「逃避&脱出用キット」 大小の惨事を生き抜くために必要な道具と情報
脱出の達人になろう 縄や手錠、結束バンド、粘着テープの簡単な脱出法
侵入不可能な家にする 家に泥棒を呼び込まない方法
安全に旅する 飛行機、タクシー、そしてホテルで安全に過ごすには
犯罪者の監視から逃れる プロ捜査員が使う、犯罪者の監視対象にならない テクニック
ソーシャル・エンジニアリングの秘密 どのように人の心は操つられてしまうか
人間嘘発見器になる 嘘を見破り、騙されない
痕跡を残さず社会から姿を消す 危険から逃れる最後の手段
サバイバル・ドライビング 非常時に生き残るための運転技術
自分を守る 武器と基本的な護身テクニック
★2016.7.27 (No.450) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『冲方丁のこち留 こちら渋谷警察署留置場』
(集英社インターナショナル/単行本/冲方丁/2016.8)


冲方丁逮捕――。2015年8月、各マスコミがいっせいに報じた人気作家、まさかの「DV逮捕劇」。9日間にわたって東京・渋谷警察署の留置場に閉じ込められたのちに釈放され、その約2ヶ月後に不起訴処分が下された。冲方氏がこの体験からなにより衝撃を受け、失望を禁じえなかったのが、警察、検察、裁判所の複雑怪奇な実態だ。「容疑を認めさせようとありえないストーリーを持ちだす取り調べの刑事」、「体力を奪って被疑者を屈服させる前近代的な留置場のありよう」、「被疑者の言いぶんに聞く耳を持たず不起訴確定に時間をかける検事」、「勾留請求にただハンコを押すだけの裁判官」など…。そこで目の当たりにしたのは世間の常識などいっさい通用しない法律ゲームの世界であり、誤認逮捕や冤罪を生み出しかねない日本の刑事司法の「不条理な現実」だった!  これを「悲劇」ととらえれば何も変わらない。自由を奪われた9日間で見た想像を絶する警察、検察、裁判所の実態をあえて「喜劇」として笑い飛ばせ!  『週刊プレイボーイ』の好評連載から大幅に加筆。150万部ベストセラー『天地明察』の作家がつづる前代未聞の留置場体験記!! 痴漢冤罪事件をテーマに、刑事司法の問題点を浮かび上がらせた映画『それでもボクはやってない』の周防正行監督との対談、担当弁護士のQ&Aも収録!

著者・冲方丁(うぶかた・とう)・・・1977年生まれ、岐阜県出身。小説家、アニメ脚本家。1996年に『黒い季節』で第1回スニーカー大賞金賞を受賞し、デビュー。2003年に『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞を受賞。2010年に『天地明察』で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞、第4回舟橋聖一文学賞、第7回北東文芸賞を受賞。2012年に『光圀伝』で第3回山田風太郎賞を受賞。ほかの著作に『テスタメントシュピーゲル』 / 『もらい泣き』など。

○目次
はじめに この「手記」を喜劇としてつづる理由
序章 冲方丁逮捕!
第1章 留置場生活のはじまり
第2章 ハズレの検事
第3章 セルフ身代金
第4章 裁判官はハンコ屋
第5章 最悪の事態
第6章 悪魔の証明
第7章 2度目の検察庁
第8章 釈放決定
第9章 監禁から軟禁へ
第10章 不起訴処分
第11章 社会復帰
終章 この事件が意味するもの
対談 周防正行×冲方 丁 日本の刑事司法、諸悪の根源は?
おわりに 「馬鹿じゃないのか」と笑うこと

★2016.7.20 (No.449) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『事件学 危険認知の社会科学』
(青山社/単行本/岡宏信/2016.4)


「事件学」は[概要―核心―考証] を通して加害者/被害者になってしまう危険の認知と回避を考察するための学問です。既存の多くの学問が原因・結果の因果関係分析に始終し、危険に対応する方向性を示すことに消極的でしたが、今日の複雑な現代社会では、学問に於いても積極的に未来の危険に備える方向性が求められます。「事件学」は12の犯罪事例の反省・研究を通して多角的な思考・行動の訓練をする場を提供しています。
★2016.7.13 (No.448) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『名張毒ぶどう酒事件 自白の罠を解く』
(岩波書店/単行本/浜田寿美男/2016.6)

1961年、三重県名張市の小さな村の懇親会でぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡した。無罪と死刑を分けたのは「自白の信用性」判断。なぜこれほど異なったのか。袴田事件、東住吉事件、布川事件他でも鑑定した供述鑑定の第一人者の問題提起! 「無知の暴露」「供述の起源」「渦中の立場」など心理学の視点から鑑定する。

著者・浜田寿美男・・・1947年生まれ。奈良女子大学名誉教授。立命館大学特別招聘教授。専門は発達心理学、法心理学。花園大学教授、奈良女子大学教授を務め、その後、「川西市子どもの人権オンブズパーソン」代表オンブズパーソンに就任。子どもの発達理論や心の読み取り方を研究する一方、多くの冤罪事件で、うその自白をする過程を分析してきた。『もうひとつの「帝銀事件」 二十回目の再審請求「鑑定書」』 / 『自白の研究 取調べる者と取調べられる者の心的構図』など著書多数。

目次

プロローグ
序章 無罪からの逆転死刑
第1章 事件と自白と証拠 供述分析の視点から捉え直す
第2章 自白への転落過程(三月二九日〜四月三日) 勝はどのようにして自白に落ち、自白調書を取られたのか
第3章 自白の展開過程(四月三日〜二三日) 勝は自白のなかで犯行の動機、計画、準備、実行をどのように語ったのか
第4章 補強証拠の破綻 勝の自白は補強証拠によってほんとうに補強されたのか
第5章 自白撤回後の弁明(四月二四日〜) 勝は自らの自白をどのように弁明したのか
エピローグ 「ことばの迷宮」のなかから 自白の罠はなぜ解かれなかったのか


関連ページ・・・名張毒ぶどう酒事件
★2016.7.6 (No.447) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『九州の事件五十年 一九六四‐二〇一四年』
(海鳴社/単行本/読売新聞西部本社/2016.4)


事件は時代をうつす「貌」である。佐世保小六女児殺害事件、長崎ストーカー殺人事件、美容師バラバラ殺人事件など九州・山口の過去50年間の事件、事故、災害を振り返り、社会の変化を捉え直す。

目次

事件―心にひそむ闇
災害・気象―自然の猛威
事故―くり返される悲劇
沖縄・安保―抑圧する力との闘い
行政―おごりと迷走
教育―歪んだ大学教育


関連ページ・・・佐世保小6同級生殺人事件 / 福岡美容師バラバラ殺人事件
★2016.6.29 (No.446) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『万引き老人』
(双葉社/単行本/伊東ゆう/2016.5)


老後貧困、貧困老人といった言葉が流布する現代社会。高齢者世代の「困窮」は、万引きの現場に目を移すとその輪郭をハッキリと現す。万引きに走る原因は収入、貯蓄の不足、無収入といった金銭的な困窮はもちろんだが、孤独感や疎遠な家族関係といった心の寂しさ、肉体的な病気や心の病などの苦しみから物を盗む老人が急増している。捕まえて話を聞くと、それぞれが抱える身の上話に思わず同情することもあれば、あまりの身勝手さに怒りに打ち震えることも。凄腕万引きGメンが明かす老人万引き「現代ニッポン孤独な心」の現場リポート。他の著書に『万引きGメンは見た!』がある。

著者・伊東ゆう・・・1971年生まれ。フリーライター、万引き対策コンサルタント、万引きGメン。およそ16年にわたり「万引きGメン(保安員)」と呼ばれる仕事に従事し、4000人以上の万引き犯を捕捉してきた経験を持つ現役保安員。香川大学教育学部特別講師、香川県万引き対策協議会メンバー、岩手県万引き防止対策協議会講師、北海道万引き防止ウィーブネットワーク講師、全国万引犯罪防止機構シンポジスト、全国警備保障株式会社顧問、ジーワンセキュリティサービス株式会社代表取締役。
★2016.6.22 (No.445) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『歌舞伎町はなぜ<ぼったくり>がなくならないのか』
(イースト新書/武岡暢/2016.6)


風俗店や飲食店が密集する日本一の歓楽街、新宿区歌舞伎町。時に社会問題としてクローズアップされる、この街のいかがわしさを象徴する存在が、客引き≒ぼったくりである。ぼったくり防止条例や風適法で規制されているにもかかわらず、なぜぼったくり行為はなくならないのか。法律や警察の取り締まりの効果が期待できない構造を解明すると、そこには店舗がいくら入れ替わっても歌舞伎町が歌舞伎町として再生産される構造が浮かび上がってくる。若き社会学者による、はじめての「歌舞伎町学」入門。

著者・武岡暢(とおる)・・・1984年、東京都新宿区生まれ。東京大学文学部社会学専修課程卒業、東京大学大学院人文社会系研究科社会学専攻博士課程修了。博士(社会学)。歌舞伎町でのフィールドワークに基づいた歓楽街の都市社会学を研究。日本学術振興会特別研究員DC1、同PDを経て、現在、首都大学東京都市環境学部特任助教。本書が初めての単著となる。

第1章 ぼったくりの法環境――条文・立法・法執行
第2章 歌舞伎町という「地域社会」
第3章 世界の中の不透明な歌舞伎町
第4章 職業としての客引き
第5章 結論--歌舞伎町とぼったくりの構造
★2016.6.15 (No.444) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『精神鑑定への誘い 精神鑑定を行う人のために、精神鑑定を学びたい人のために』
(星和書店/単行本/安藤久美子/2016.6)


精神鑑定は他人事だと思っている精神科医に、ある日、依頼の電話がかかってくるかもしれない。

精神鑑定が行われる件数は、毎年増加し続けているため、これまで精神鑑定に携わってこなかった医師たちにも精神鑑定の依頼が来る時代になってきた。本書には、精神鑑定の依頼の受け方から鑑定面接の仕方、鑑定書の書き方まで、精神鑑定を行うための必要十分な知識が分かりやすく解説されている。精神鑑定をこれから行う医師にとって心強いガイドブックである。また、内容も面白く、やさしい記述で、精神鑑定がどのようなものであるかを小説を読むかのように楽しく理解することが出来る。

著者・安藤久美子・・・精神科医、医学博士。専門は司法精神医学,児童精神医学。国立精神・神経センター精神保健研究所 司法精神医学研究部 精神鑑定研究室長。東京医科歯科大学大学院卒業後、東京医科歯科大学難治疾患研究所 犯罪精神医学教室に勤務する傍ら、児童精神医学、少年犯罪を学ぶ。Queen's University:Forensic Psychiatry留学。帰国後、関東医療少年院で矯正教育に携わった後、医療観察法施行開始時より国立精神・神経センター病院医療観察法病棟勤務。その後、東京医科歯科大学犯罪精神医学教室特任准教授を併任。平成20年より国立精神・神経センター精神保健研究所司法精神医学研究部専門医療・社会復帰研究室長を経て、平成25年より現職。


Contents
第1章 過去も未来も真実を見つけるのは難しい
第2章 思い込みは冷静な判断を鈍らせる
第3章 精神鑑定を始める前に
第4章 精神鑑定を始める
第5章 精神鑑定の実施方法
T.情報収集/U.鑑定書の作成とまとめ
第6章 鑑定人は何をみているか
第7章 精神鑑定書:作成の実際
第8章 裁判員制度における鑑定人の役割
第9章 ワークショップ
「犯行」前の記憶をたどる/「犯行」までの精神状態を聞き出す
第10章 被害者鑑定における面接
第11章 被鑑定人から学ぶ──被告人たちとの対話
【付録】 精神鑑定書 参考見本
★2016.6.8 (No.443) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『もうひとつの「帝銀事件」 二十回目の再審請求「鑑定書」』
(講談社選書メチエ/単行本/浜田寿美男/2016.5)


2015年(平成27年)11月24日、帝銀事件の20回目となる再審請求にあたって提出された鑑定書「帝銀事件における目撃供述および自白供述の心理学的分析」の「鑑定本文」を再編集し、書籍化したもの。

著者・浜田寿美男・・・1947年生まれ。奈良女子大学名誉教授。立命館大学特別招聘教授。専門は発達心理学、法心理学。花園大学教授、奈良女子大学教授を務め、その後、「川西市子どもの人権オンブズパーソン」代表オンブズパーソンに就任。子どもの発達理論や心の読み取り方を研究する一方、多くの冤罪事件で、うその自白をする過程を分析してきた。『名張毒ぶどう酒事件 自白の罠を解く』 / 『自白の研究 取調べる者と取調べられる者の心的構図』など著書多数。

序 章 犯罪と冤罪──ひとつの事件がふたつになるとき

   1 事件の不幸と冤罪の不幸
   2「証拠なき確信」は自己成就する
   3 禍いの連鎖

  第一章 「帝銀事件」と「平沢貞通事件」

   1「帝銀事件」とは、どのような事件だったのか
   2 ある画家の半生──囚われるまで
   3 ただひとつの糸口──「松井名刺」からはじまって

  第二章 判決の論理と心理学の検証

   1「証拠」に潜むこれだけの問題
   2 裁判所における事実認定の論理
   3 有罪仮説と無実仮説

  第三章 目撃者たち

   1 四十八名の証言
   2 心理学の視点からあらためて問う
   3 事件が終わってから語るということ

  第四章 平沢は事件のなにを語ったのか
   1 自白の心理メカニズム
   2 否認から転落へ
   3 辻褄が合はないので困ります

  第五章 再否認に転じた過程と精神鑑定
   1 犯人に「なりきる」まで
   2「催眠術」の謎
   3 内村・吉益鑑定の四つのまちがいが示すこと

「あとがき」にかえて


関連ページ・・・帝銀事件
★2016.6.1 (No.442) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『ビギナーズ 犯罪学』
(成文堂/単行本/守山正&小林寿一/2016.5)


犯罪学の初学者向けテキスト。

著者・守山正・・・拓殖大学政経学部教授/小林寿一・・・科学警察研究所犯罪行動科学部長。

■内容紹介
目   次
 はしがき
 凡 例
第1講★犯罪学の意義……1
第2講★犯罪学の歴史……15
第3講★犯罪学の動向……31
 T アメリカ……31
 U イギリス……38  
 V 北欧の犯罪学……47
 W 日 本……53 
第4講★伝統的な犯罪学……65
第5講★近年の犯罪学の展開……107
 T 再統合的羞恥理論……107  
 U コントロール理論……113 
 V 発達犯罪学とライフ・コース理論……126 
 W ラベリング理論……142 
第6講★環境犯罪学……153
 T 環境犯罪学の意義……153 
 U 再被害化……173 
第7講★犯罪学調査の方法……187
 T 量的研究……187  
 U 評価研究……201  
第8講★捜査支援技法……225
 T 犯罪者プロファイリング……225
 U 捜査面接その他……236 
第9講★犯罪からの離脱……251 
第10講★被害者……275 
第11講★少年非行……299
第12講★犯罪現象・犯罪統計……323
第13講★各種犯罪の分析……341
 T 殺  人……341  
 U 性犯罪……352 
 V 家庭内・近親者犯罪……366 
 W 侵入盗……377 
 X 女性犯罪……389 
第14講★地域社会の安全……399
 T 住まいの安全……399 
 U 子どもの安全……409
 V 安全・安心のまちづくり……424
 W 犯罪不安感……434 
事項索引……449
★2016.5.25 (No.441) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『〈獄中〉の文学史 夢想する近代日本文学』
(笠間書院/単行本/副田賢二/2016.5)

〈獄中〉のことばが社会と文学のなかで特権的な意味を持ち続けてきたのはなぜか。過剰な言葉あふれる〈獄中〉。そのダイナミックな営みの歴史的記憶を明治期からたどる書。様々な意味やコンテクスト、そして同時代的な欲望が多様に交錯し、化合することによって生み出されてきた、イメージと記号が重なり合う入れ子型の空間であった〈獄中〉。その中で育まれた近代日本文学の想像力は、現代日本の言説空間にも、いまだ影響力を与え続けている。一体そこでは何が起こっていたのか。明治期から平成にいたるまで、検証していく。

著者・副田賢二(そえだ・けんじ) ・・・1969年、佐賀県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科国文学専攻博士課程単位取得満期退学。博士(文学)。現在、防衛大学校人文社会科学群人間文化学科准教授。論文に、「芥川龍之介「疑惑」論 「語ること」をめぐる転換」(『国語と国文学』第75巻 1998.7)/「「蟹工船」の「言葉」 その「団結」と闘争をめぐって」(『昭和文学研究』第44集 2002.3)/「「浅草紅団」をめぐって 「復興の東京」と「女」たち」(『昭和文学研究』第48集 2004.3)/「「従軍」言説と〈戦争〉の身体 「支那事変」から太平洋戦争開戦時までの言説を中心に」(『近代文学合同研究会論集』第5号 2008.12)/「〈前線〉に授与される〈文学〉と大衆文化 昭和戦時下における〈文学リテラシー〉の機能拡張」(『日本近代文学』第92集 2015.5)などがある。

【目次】

●口絵
1 近代日本の監獄/2 イメージとしての「監獄」/3 トピックスとしての〈獄中〉/4 〈獄中〉からの言葉

序 論 〈獄中〉と文学的想像力

なぜ〈獄中〉なのか/監獄制度と「近代」/本書での「〈獄中〉言説」「〈獄中〉表象」/「書くこと」の想像力と歴史的に結びつく〈獄中〉/近代日本の〈獄中〉表象の展開/近代日本文学の〈獄中〉表象の特異性とは何か/普遍的イメージ空間としての〈獄中〉をどう捉えるか/本書での〈獄中〉言説のカテゴリーを定義する

第一章 明治期 〈獄中〉の主題化とその表象の展開

1 〈獄中〉言説の定義とその表象の系譜
明治維新期の〈獄中〉言説/前田愛の「〈牢獄〉文学」研究/「牢獄」から「監獄」へ
2 近代監獄制度の成立と浮上する〈獄中〉言説
近代監獄制度と〈獄中〉言説/明治初期の新聞メディアと言論統制/「監獄」への柳北のまなざし/出版メディアの相関構造/自由民権運動と〈獄中〉表象/政治小説における〈獄中〉/〈獄中〉表象の複合化
3 北村透谷の「牢獄」 孤立する〈獄中〉表象
宮崎夢柳と北村透谷/「楚囚之詩」の位相/「我牢獄」と〈獄中〉の観念化/翻訳小説と「暗黒」の〈獄中〉/趣向の場としての〈獄中〉/「鍛錬」の場としての〈獄中〉
4 「社会主義者」たちによる〈獄中〉言説の構造化
「監獄法」と監獄制度の近代化/『平民新聞』における〈獄中〉/「社会主義者」たちと〈獄中〉
第一章・注

第二章 大正期1 メディア空間で記号化される「言葉」と「獄中記」

1 「大正的」言説の構造的特性をめぐって
「大正的」言説と雑誌メディア空間
2 メディア空間としての『中央公論』 雑多な記号の交錯と流通
『中央公論』での記号の流通と「問題」化/『青鞜』と自己記号性のゆくえ
3 松崎天民の流通と終焉 記号の駆使者として
『中央公論』「説苑」欄と松崎天民/再構成される〈獄中〉言説/「書くこと」をめぐる転換
4 大杉栄『獄中記』の誕生 規範的ジャンルとしての「獄中記」
「社会主義者」という自己記号性/「獄中記」の誕生
5 〈獄中〉の想像力のゆくえ こぼれ落ちる言葉/堕胎される身体
〈獄中〉のフェミニニティ
第二章・注

第三章 大正期2 内的な自己超越のトポスに変貌する〈獄中〉

1 近代出版メディアと山中峯太郎(一) 変貌する自己記号性とその流通
山中峯太郎の記号的「漂流」/〈獄中〉と自己変革のコンテクスト
2 近代出版メディアと山中峯太郎(二) 〈獄中〉者と宗教者の融合
自己記号性をめぐる融合と展開
3 〈獄中〉に投影される内的変革のドラマ
「冥想」の場としての〈獄中〉/尾崎士郎「獄中より」の意義
4 ジャンル化される〈獄中〉言説/制度化される想像力
反転するユートピア/赤瀾会をめぐるメディア報道
第三章・注

第四章 大正期3〜昭和期1 文学的トポスとしての〈獄中〉と「闘争」のロマンティシズム

1 プロレタリア文学の〈獄中〉と「闘争」をめぐる表象
プロレタリア文学の〈獄中〉と「闘争」/葉山嘉樹の固有性
2 芥川龍之介と「獄中の俳人」和田久太郎
芥川龍之介と「社会主義者」/ロマン化される〈獄中〉
3 暴力性のゆくえと治安維持法
「赭土に芽ぐむもの」と「外地」の〈獄中〉
4 『新青年』における〈獄中〉表象の消費
『新青年』の〈獄中〉表象
第四章・注

第五章 昭和期2 プロレタリア文学から一九三〇年代の言説空間へ

1 昭和初期の〈獄中〉言説 メタ視線とニヒリズムの浮上
一九二〇年代後半の〈獄中〉言説の様相/〈獄中〉をめぐる記号消費
2 〈獄中〉文学者・林房雄(一) 「文学」をめぐる発信と受信
林房雄と「文学」概念の再編成/歴史性としての〈獄中〉の再生/林房雄ブームの同時代的位相
3 〈獄中〉文学者・林房雄(二) 氾濫するエクリチュール
「独房の筆」と「書くこと」の欲望/「書くこと」のフェティシズム/拡張する〈獄中〉空間
4 「歴史」と「文学」の接合と〈獄中〉表象
相関概念としての「歴史」と「文学」/「青年」での〈獄中〉表象
5 空白としての「言葉」の消費 一九三〇年代から戦時下へ
亀井勝一郎における〈獄中〉/島木健作のリアリズム/システムとしての〈獄中〉表象消費
第五章・注

第六章 昭和期3〜平成期 戦後日本のメディア空間と消費される〈獄中〉

1 敗戦後の〈獄中〉表象をめぐる転換と連続
『愛情はふる星のごとく』の問題
2 他者性と実存の空間 椎名麟三の〈獄中〉表象
実存空間としての〈獄中〉
3 政治性からの分離と「塀の中」のトピックス消費
埴谷雄高の「文学性」と〈獄中〉/政治的〈獄中〉言説の浮上/〈獄中〉のサブカルチャー的消費へ
4 見沢知廉における〈獄中〉者の系譜とその断絶
〈獄中〉の歴史性と見沢知廉/『調律の帝国』の連続と断絶
第六章・注

終 章 〈獄中〉の想像力と「文学」のゆくえ

「監獄法」の終焉と〈獄中〉言説の歴史性/後藤慶二と中野重治の「監獄」/「文学」のゆくえと〈獄中〉の想像力/現代日本の文化消費における〈獄中〉

あとがき
付録○〈獄中〉言説年表(明治期〜一九九〇年代まで)
索引(人名/書名・作品名・記事名・絵画名)

★2016.5.18 (No.440) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『三島由紀夫 幻の皇居突入計画』
(彩流社/単行本/鈴木宏三/2016.5)


「三島事件」は昭和史における大きな謎のひとつである。この謎を解明するには「檄文」の読解が重要なのである。兄・鈴木邦男(一水会顧問)の影響で、三島事件への関心を持ち続けてきたという著者。「三島」を政治的にではなく文学的に、特に西欧的な知の枠組みのなかで理解することが必要と考える。憲法改正を訴えて自決した三島だったが、その主張は一貫したものではなかった。昭和44年10月21日、自衛隊の治安出動の可能性が消え、同時にそれまで彼が築き上げてきた決起計画がすべて水泡に帰した。皇居突入計画は、小説「英霊の聲」における昭和天皇への呪詛と関係する。当初の計画では、行動の世界のクライマックスは文学と密接にかかわるはずのものだった。その皇居突入計画が市ヶ谷の自衛隊乱入へと切り換えられたため、行動の世界が彼の文学の世界とは接点を持たないままに終わってしまったのであった。

著者・鈴木宏三(こうぞう)・・・1945年、仙台市生まれ。山形大学名誉教授。1968年、東北大学大学院文学研究科修士課程(英文学専攻)修了。山形大学教養部、人文学部教授。2004年、退職。専門は17世紀英文学(ジョン・ダン研究)。

目次

【内容】
(1)「三島事件」は計画変更の結果だった
(2)事件の1年前まで三島は憲法改正を主張していなかった
(3)文学作品創作と同じ方法論で行動計画は練りあげられた
(4)楯の会を作るために祖国防衛隊を構想しそれを壊した
(5)昭和44年10月21日、決起計画はすべて紙屑になった
(6)挫折を乗り越えて自衛隊乱入
(7)本来の計画は皇居突入だった
(8)皇居突入と絶対者への侵犯
(9)三島由紀夫を相対化するために
★2016.5.11 (No.439) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『なぜ母親は娘を手にかけたのか 居住貧困と銚子市母子心中事件』
(旬報社/単行本/井上英夫&山口一秀&荒井新二[編]/2016.5)


安心して住み続けられる住居を追われたとき、あなたならどうしますか?  離婚して年頃の中学生の娘を抱えた母親が、日々の生活苦から家賃を滞納、県から公営住居を追われるという窮状に直面してしまい、自殺を考えながら、ついには愛する娘を手にかけてしまった。この悲惨な事件はなぜ起こったのか。社会全体に格差・不平等が広がり、貧困が拡大・深化する中で、誰にでも起こりえる一つの象徴的な事件。その具体的な局面や背景を明らかにし、このような事件が起こらない社会の在り方と仕組みづくりを提言する。

千葉県営住宅追い出し母子心中事件・・・2014年(平成26年)9月24日午前9時ころ、千葉県銚子市内の県営住宅で生活に困窮して家賃の滞納のために強制退去となったその日、母親・M(当時43歳)が無理心中を決意し、中学2年の長女(13歳)を殺害した事件。月1万2800円の家賃の滞納が約2年間続いたため、県が住宅明け渡し訴訟で勝訴していた。午前11時10分ころ、鍵を開けて立ち入った地裁の執行官らが、布団の上でうつぶせになった長女の遺体を見つけた。Mは放心状態で座り込み、長女の頭をなでながら4日前に撮ったビデオを見ていた。体育祭で赤い鉢巻きをして走る娘の姿が映し出されていた。「これは私の子。この鉢巻きで首を絞めちゃった。ビデオを見終わったら自分も死ぬ」と話したという。会社員の夫は結婚当時から数百万円の借金を抱えていた。その返済や生活のためにM名義でも消費者金融から金を借りた。2002年(平成14年)に離婚し、2006年(平成18年)から学校給食のパートをしながら返済を続けてきたが、2012年(平成24年)5月から家賃を払えなくなった。長女の中学入学直前の2013年(平成25年)春、制服や体操着を買うためにヤミ金から7万円を借り、少なくとも5業者から違法な高金利で返済を強いられた。国民健康保険料も滞納した。パートの時給は850円、月給は4万〜8万円。ただ、事件を起こした2014年(平成26年)9月は夏休み明けだったためゼロだった。事件当日の所持金は2717円で、M名義と長女名義の預金口座の残高の合計は1963円だった。Mは被告人質問で「市が雇っているので掛け持ちのアルバイトは無理と言われていた」と説明した。実家の土地を無断で借金の担保にしたため両親とは絶縁状態だった。友人からも借金を重ねたが、事情は話せなかった。生活保護の相談で銚子市役所を訪れたが、「仕事をしているなどという理由で断られ、頼ることができなかった」という。困窮した親子を救う手立てはなかったのか。市社会福祉課は取材に「制度の説明を聞きに来ただけだったので、詳しい事情の聞き取りはしなかった」と説明した。立ち退きを求めた県住宅課も「被告の生活状況は把握していなかった」という。「本当は私が死ぬはずだった。娘に本当に申し訳ない」。Mは法廷で涙を流した。自分の腹を切るため、台所のテーブルの上に一番切れる包丁を用意したとも明かした。量刑以外に争いはなく、検察側は「被害者に責任は全くなく、犯行は身勝手だ」と懲役14年を求刑した。2015年(平成27年)6月12日、千葉地裁での裁判員裁判でMに対し懲役7年を言い渡した。Mは控訴したが、2016年(平成28年)1月27日、東京高裁で控訴棄却。懲役7年が確定した。

編集者・・・

井上英夫・・・金沢大学名誉教授、佛教大学客員教授、「千葉県銚子市・県営住宅追い出し母子心中事件現地調査団」団長。
山口一秀・・・中央社会保障推進協議会事務局長。
荒井新二・・・弁護士・自由法曹団団長。

はじめに

T 千葉県銚子市・県営住宅追い出し母子心中事件が問うもの
1 事件の経過
2 刑事裁判の経緯
3 本事件に対する千葉県の責
4 本事件に対する銚子市の責任
5 国の責任

U 取り組みと成果
国に対する取り組みと成果
1 国土交通省に対する取り組みの成果
2 厚生労働省の本件に対する認識―「未然に防ぐことができた」「どこの地域でも起こりうる」
 県に対する取り組みと成果
1 調査から浮かび上がった三つの問題
2 再発させないために

V 事件の根幹を問う―生命、人権の侵害・剥奪として
 居住貧困と住み続ける権利
1 どうしたら、母娘を救えたか。
2 住み続ける権利の意義と構造
3 居住福祉の権利
4 人権保障の意義
 女性の人権保障の視角から銚子市母子心中事件を問う
1 経済困窮の出発点としての結婚
2 制度が構築する困難―労働と養育の狭間
3 裁かれる「母」
現代の貧困と生命権侵害―殺人、焼身自死を問う
1 貧困がもたらした生命権侵害
2 生命権保障
現代の貧困と社会保障・社会福祉・生活保護政策
1 今、社会保障、社会福祉をどうとらえるか
2 岩盤としての生活保護
3 今こそ人権としての社会保障、社会福祉を

W 事件を契機に考える―参加者の声
現場での十分な配慮、行政は想像力を持ってほしい(自由法曹団)
「生活相談」活動をもっと地域に、住民から見える活動へ(中央社会保障推進協議会)
地域に生活と健康を守る会づくりを(全国生活と健康を守る会連合会)
住宅政策の不在と居住貧困の解決に向けて(住まいの貧困に取り組むネットワーク)
この母の叫びに応えていたら(千葉県生活と健康を守る会連合会)

おわりに
銚子市母子心中事件関係資料

関連サイト・・・千葉県銚子市・県営住宅追い出し母子心中事件 調査報告書
★2016.5.4 (No.438) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『犯罪被害者の司法参加と量刑』
(東京大学出版会/単行本/佐伯昌彦/2016.4)


被害者の司法プロセスへの参加は裁判で下される判決に影響を及ぼすのか。あるいは及ぼさないのか。本書は法社会学および心理学の知見をふまえ、被害者にかかわるどのような要素が量刑判断を左右するのか、実証的に分析する。従来の研究に見直しを迫る「法と心理学」の到達点。

著者・佐伯昌彦・・・千葉大学法政経学部准教授。

主要目次

第1部 被害者による刑事司法への参加をめぐる状況と量刑への影響

第1章 日本
第2章 アメリカ
第3章 オーストラリア,イギリス
第4章 模擬裁判研究
第5章 先行研究の知見とその含意

第2部 理論的検討

第6章 心理学の視点から
第7章 裁判官の量刑判断と数値換算――その心理学的考察
第8章 知見の総括とその含意

第3部 実証研究

第9章 被害者参加による影響のメカニズム
第10章 制度利用と量刑
第11章 被害者感情と量刑
第12章 自動車事故事件の記録調査
第13章 まとめ
★2016.4.27 (No.437) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『JFK暗殺は日本の謀略だった オズワルドの陰で蠢く日本の巨悪三人組』
(角川書店/単行本/グレン・D・デイビス/2016.5)


二十年にわたって、私はケネディ暗殺に日本が関与していた可能性を集中的に調査してきた。そして、リー・ハーベイ・オズワルドをはじめとする、この二十世紀最悪の犯罪の登場人物たちに、日本人および日本の組織が密接に関わっている痕跡があると確信したのだった。これまでその痕跡を追って日本やニューオーリンズやダラスで取材してきた。その目的は、誰がケネディを殺したのかという謎を解くことではなく、そこに登場する謎の日本人たちが何者で、どんな役割を演じていたのかに目を向けることだった。その痕跡ははるか遠く、日本の厚木にまで続いていた。冷戦の緊張がピークに達していた時代のアジアにあって最高機密を扱う厚木海軍基地で、オズワルドはレーダー操作担当の若き海兵隊員だった。それゆえ厚木海軍基地が本書の出発点となる。(「はじめに」より)

著者・グレン・D・デイビス・・・1946年、アメリカ・テキサス州生まれ。学生、講師、ジャーナリストとして40年間を日本で過ごした。そのうち25年間は日本外国特派員協会で、アメリカや日本の出版物に記事を書いた。東京ジャーナルの編集者、在日米国商工会議所機関紙The Journalの編集長、UPI通信社の東京支局長を歴任。著書に『軍隊なき占領 ウォール街が「戦後」を演出した』(共著/新潮社)など。2006年に帰国し、ヒューストンのライス大学、カレッジステーションのテキサスA&M大などで講義をしている。
★2016.4.20 (No.436) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『闇に葬られた「怪死」の真相』
(宝島社/単行本/別冊宝島編集部/2016.4)


飯島愛、上原美優、尾崎豊、岡田有希子ら芸能人の謎に包まれた死、ライブドア事件の野口英昭氏、新井将敬代議士ら政財界のキーマンたちの不審な死など、昭和・平成を代表する“疑惑の死"を徹底取材、都市伝説的に語られる有名人たちの“怪死"の真相に迫る。鈴木宗男氏が語る「中川一郎代議士縊死事件」の真相、今は亡き三浦和義氏が語った「ロス疑惑」捜査と報道の全顛末……当事者、関係者たちがあの事件の真相を明かす!
★2016.4.13 (No.435) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『関係性の社会病理』
(学文社/単行本/日本社会病理学会[監]/高原正興&矢島正見[編]/2016.4)


日本社会病理学会が刊行した、社会病理学講座の第3巻、『病める関係性』(2004)を、改版したものである。旧第3巻で取り上げたテーマに加え、この10年間に新たにマスメディアや世論の関心を高めたトピカルな現象を追加し、社会病理現象(または問題行動)を10章にわけて展開。不登校、少年非行、児童虐待、自殺、ストーカー、DV、過労などのテーマに新たな現象として、高齢者犯罪、非正規雇用、ホームレスを追加した。さまざまな社会病理現象を考えるためにかかせない1冊。

目次

はしがき 

序章  現代の社会病理の見方
第1章 不登校           
第2章 いじめ  
第3章 少年非行
第4章 高齢者犯罪 
第5章 ストーカー 
第6章 ドメスティック・バイオレンス
第7章 児童虐待 
第8章 過労
第9章 非正規雇用 
第10章 自殺 
終章  時代の社会病理から関係の社会病理への基本認識
★2016.4.6 (No.434) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『イギリス風殺人事件の愉しみ方』
(NTT出版/単行本/ルーシー・ワースリー/2015.12)


古今東西、残酷な殺人事件や処刑に興味を引かれるのはなぜか? 特にイギリス人はその傾向が強い。ヴィクトリア朝から現代に至る殺人事件や犯人像を紹介しながら、一般読者の反応、小説、映画などの想像世界の豊饒さが生み出されてくる過程をつぶさに検討していく。

著者・ルーシー・ワースリー・・・ロンドン塔、ケンジントン宮殿、ハンプトン・コート宮殿など、主要な王宮を監督管理するヒストリック・ロイヤル・パレスの主席学芸員、歴史家。数多くの歴史教養番組を監修・主演し、もっとも声望に富むパーソナリティでもある。オックスフォード大学で歴史学を専攻、サセックス大学より博士号(美術史)を授与される。著書に『暮らしのイギリス史 王侯から庶民まで』(NTT出版/2013)がある。


目次



第T部 殺人の愉しみ方
第1章 趣味としての殺人
第2章 ラトクリフ街道殺人事件
第3章 夜警
第4章 殺人現場見学ツアー
第5章 蝋人形館
第6章 戦慄を伝える媒体
第7章 チャールズ・ディケンズ 犯罪小説家
第8章 マリア・マーティンのバラッド
第9章 恐怖の舞台
第10章 バーモンジー殺人事件

第U部 探偵、登場す
第11章 ミドルクラスの殺人者と医師
第12章 良き妻
第13章 探偵登場 ロード・ヒル・ハウス殺人事件
第14章 センセーション小説149
第15章 メアリ・エリザベス・ブラッドン
第16章 切り裂きジャック
第17章 法医学 シャーロック・ホームズ登場
第18章 女探偵登場

第V部 黄金時代
第19章 大戦間の時代
第20章 アガサ・クリスティ
第21章 ドロシー・L・セイヤーズ
第22章 探偵倶楽部
第23章 黄金時代の終焉
第24章 レイモンド・チャンドラーとアルフレッド・ヒッチコック
★2016.3.30 (No.433) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『ストーカー加害者 私から、逃げてください』
(河出書房新社/単行本/田淵俊彦&NNNドキュメント取材班/2016.3)


なぜ彼らはストーカー加害者にならなければならなかったのか。
実際に加害者たちを取材し、その心に迫った渾身ののノンフィクション!

著者・田淵俊彦・・・1964年、兵庫県生まれ。ジャーナリスト、映像作家、演出家、プロデューサー。慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、テレビ東京に入社。20年以上に亘り、主に海外をフィールドにしたドキュメンタリーを手掛け、訪れた国は90ヶ国を越える。文教大学、宝塚大学、和洋女子大学で非常勤講師を務める。 制作会社・プロテックスのディレクターとして、NNN ドキュメントの取材を担当。これまでの作品は、「狂気の正体 元連合赤軍兵士 41年目の証言」「あなたは、なぜやったのですか? 増え続ける高齢初犯」「迷路の出口を探してI ストーカーの心の奥底を覗く」「迷路の出口を探してII ストーカー 最新治療70日間」。著書に『チベット 聖なる七つの智慧』(大和出版) / 『秘境に学ぶ幸せのかたち』(講談社) などがある。
★2016.3.24 (No.432) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『殺意の内景 精神鑑定の現場から』
(無明舎/単行本/苗村育郎/2016.3)


精神鑑定医として約1千例の事例に関わった経験を集成。
人の心の極限、そこにうごめく衝動を現実の事件にそって解読する。
犯罪精神医学の実情と、その限界も提示する現場からのレポート。


著者・苗村育郎・・・昭和25年、兵庫県高砂市にて生まれる。昭和44年、京都大学入学。昭和46年、京都大学中退(文学部)。昭和52年、神戸大学医学部卒業。東京大学医学部精神科研修医。昭和57年、厚生労働省国立精神・神経センター研究員。昭和60年、米国NIH留学。昭和62年、秋田大学精神科助手。平成3年、秋田大学保健管理センター講師。平成10年、同センター教授・所長。他の著書に『自殺の内景 若者の心と人生』(無明舎出版/2015)がある。

目次

第一章 精神鑑定と人間学
第二章 人間の見方 「人格構造論」
第三章 統合失調症
第四章 躁うつ病
第五章 神経症圏の犯罪
第六章 基礎に発達障害がある犯罪
第七章 知能の低い者(精神発達遅滞)の犯罪
第八章 アルコール依存と酩酊犯罪
第九章 覚醒剤・シンナー中毒など
第十章 嫉妬妄想と殺人
第十一章 殺人衝動と淫楽殺人
第十二章 窃盗癖・放火癖・その他の衝動犯罪
第十三章 好訴訟
第十四章 乳幼児・児童虐待
第十五章 詐欺犯
第十六章 高齢者の犯罪
第十七章 福島原発事故後に起きた自殺について
★2016.3.16 (No.431) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『母さんごめん、もう無理だ』
(幻冬舎/単行本/毎日新聞社会部/2016.3)


生涯の愛を誓った夫の浮気を知って。老老介護の果てに。思い通りにいかぬ育児に悩んで…。裁判所の傍聴席で日々取材をする記者が、強く心に残った事件の裁判の模様を綴る朝日新聞デジタルの連載「きょうも傍聴席にいます」。 「泣けた」「他人事ではない」と毎回多くの反響が寄せられる人気連載が待望の書籍化。 連載開始の2013年5月から2015年末までに掲載された全29編を収録。法廷は人生と世相の縮図。一線を越えてしまった人たちの 生(なま)の言葉と息づかいが深く心を揺さぶる。
★2016.3.9 (No.430) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『監察医が泣いた死体の再鑑定 2度は殺させない』
(東京書籍/単行本/上野正彦/2016.3)


元東京都監察医務院長を務めた監察医である著者は、長年にわたり、変死体がなぜ死にいたったか、検死・解剖を行ってきた。それをまとめた著書『死体は語る』は、65万部を超えるベストセラーになったが、今回、初めて「死体の再鑑定」についてまとめた本を書き下ろす。著者の元には、警察、保険会社、および遺族から再鑑定の依頼が数多く寄せられる。引き受けた著者は、なぜ最初の鑑定が間違っていたかを紐解いていく。「溺死ではない、殺しだ。事故死ではない、病死だ。病死ではない、暴行死だ」。最初の鑑定の嘘を暴いていく様は、上質なミステリーを読んでいるようにドラマチックだ。ときには裁判所で、証人として最初の鑑定人と対峙したり、再鑑定の再々鑑定を提出したりと……事件は二転三転。

著者・上野正彦・・・1929年、茨城県生まれ。医学博士・元東京都監察医務院長。東邦医科大学卒業後、日本大学医学部法医学教室に入る。1959年、東京都監察医務院監察医となり、1984年、同院長になる。1989年退官後に出版した『死体は語る』は65万部を超える大ベストセラーになった。現在は法医学評論家としてテレビ・雑誌などで活躍中。元日本被害者学会理事、現杉並精神作業所アゲイン運営委員長。主な著書に『死体は切なく語る』(東京書籍) / 『「藪の中」の死体』(新潮社) など多数。

コンテンツ

1.顔から消された痕跡
2.見逃された証拠品
3.誰が嘘をついたか
4.執念の再鑑定
5.疑惑の踏切
6.海外で起きた謎
7.小さな溢血点
8.溺れたのか殺されたのか
9.兄の涙
★2016.3.2 (No.429) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『法廷通訳人 裁判所で日本語と韓国語のあいだを行き来する』
(港の人/単行本/丁海玉/2015.12)


今日、社会がグロバール化するにつれて、裁判所で日本語が通じない外国人のために通訳する法廷通訳の仕事が注目されてきている。在日韓国人二世の著者、丁海玉(チョン・ヘオク)は二十数年にわたって韓国語の法廷通訳を務めてきた。被告人が話す言葉(韓国語)を、また裁判官、弁護人などの言葉(日本語)を通訳する。本書では、法廷で通訳するとはどういうことか、その仕事の内容、悩み、実際の裁判の風景などを、著者の長年の体験にもとづいて詳細に語った。在日韓国人二世の法廷通訳人が見た法廷ドキュメント。

著者・丁海玉(チョン・ヘオク)・・・1960年、神奈川県川崎市生まれ。在日韓国人二世。幼少期を北海道旭川市で過ごす。1984年、ソウル大学校人文大学国史学科卒業。1992年、大阪高等裁判所通訳人候補者名簿登録。大阪、広島、名古屋、高松各高等裁判所管内にて法廷通訳研修講師(韓国語)を務める。2002年に発表した「違和感への誘い 法廷通訳の現場から」(『樹林』448号)は、第22回大阪文学学校賞(エッセイ・評論・ノンフィクション部門)を受賞。 / 詩誌『space』同人。著書に、詩集『こくごのきまり』(土曜美術社出版販売/2010)がある。

目次

法廷通訳という仕事(法廷通訳人になる)
そこに立たされる人生(わたし、通訳いりません
だれがそれを、きめたんだ
アナタ、モウ、イイ
父と子の母語
もどかしさの衣
五〇二号法廷にて
クロッスムニダ)
日本語と韓国語のあいだを行き来する(判決重うなったんは、あんたのせいや
名前を何といいますか
ハスリします
うごくなまえたち
ルビのかけひき
揺れるポニーテール
バーの向こう)
裁判員裁判の法廷にて(初めての裁判員裁判
ありがとう(エピローグ)
★2016.2.24 (No.428) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『フューチャー・クライム サイバー犯罪からの完全防衛マニュアル』
(青土社/単行本/マーク・グッドマン/2016.2)


テクノロジーは犯罪の現場で最も早く実用化される。オンライン口座から資産が奪われ、ドローンが危険ドラッグを宅配し、自動小銃が3Dプリンターで作られる…。ネット犯罪の権威が描く犯罪の新時代の幕開けとその対処法。全米ベストセラー待望の翻訳。

目次
第1部 立ちこめる暗雲(接続し、依存し、無防備
システムクラッシュ
ムーアの無法者
お客様ではなく、製品
監視救済
ビッグデータ、ビッグリスク
家のIT電話
画面を信用する
画面が増えれば問題が増える)
第2部 犯罪の未来(クライム・インク
デジタル地下世界の中
すべての物がハッキング可能になるとき
ハッキングされた我が家
人をハッキングする
機械の台頭―サイバー犯罪が3Dになる
次世代セキュリティの脅威―サイバーは始まりにすぎないわけ)
第3部 生き残るための進歩(生き残るための進歩
活路)
付録 すべてが接続され、誰もが弱点だらけ―そこでそれについてできること
★2016.2.17 (No.427) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『犯罪者プロファイリング研究 住居対象侵入窃盗事件の分析』
(北大路書房/単行本/萩野谷俊平/2016.2)


4つの独自の窃盗犯罪に関するプロファイリング研究と開発された捜査支援プログラムの紹介が本書の中心となる。ここ最近に発表された国内外の研究も体系的に整理してまとめられており、プロファイリングの実態や現状が理解できる。また、現場への応用を強く意識した本書は,捜査活動・支援に携わるプロの期待にも応える。

著者・萩野谷俊平(はぎのや・しゅんぺい)・・・1985年、兵庫県に生まれる。2015年、法政大学大学院人文科学研究科心理学専攻博士後期課程修了。現在、栃木県警察本部刑事部科学捜査研究所研究員(心理学博士)。

はしがき

序章

第1章 犯罪者プロファイリング研究の概要と課題
 第1節 犯罪者プロファイリングの歴史
 第2節 分析手法の概要と理論的背景
 第3節 窃盗事件に対する犯罪者プロファイリング
 第4節 第1章のまとめ

第2章 実証的研究
 第1節 事件リンク分析の交差文化的妥当性(調査研究1)
 第2節 犯罪手口による犯人像推定(調査研究2)
 第3節 拠点推定モデルの実用性向上に関する研究(調査研究3)
 第4節 第2章のまとめ

第3章 研究成果の実装:居住地推定支援プログラム(ORPP)の開発
 第1節 ORPPの概要
 第2節 ORPPによる居住地推定の妥当性
 第3節 第3章のまとめ

第4章 総括と展望
 第1節 本論文の総括
 第2節 犯罪者プロファイリングの心理学による理解
 第3節 今後の課題と展望
 第4節 捜査支援のさらなる発展を目指して

補 章 研究に使用した統計手法の解説

文 献
索 引
謝 辞
★2016.2.10 (No.426) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『アメリカ凶悪犯罪の専門家が明かす無差別殺人犯の正体 連続殺人・大量殺人が起こる本当の理由』
(学文社/単行本/阿部憲仁/2016.2)


教育学者である筆者が、「教育」という「人を育てる」立場から、どのような「家庭環境」や「社会環境」がこうした反社会性へとつながってしまうのかを探った。実際にどのような環境が連続殺人犯や大量殺人犯を生み出してしまうのかといったテーマに真正面から取り組む。人間が犯しうる究極の非人道的行為を可能にする原因を解明し、その撲滅を社会に訴える。

著者・阿部憲仁(けんじん)・・・1964年生まれ。茨城大学教育学部英文科卒業。在学中にアリゾナ州立大学に留学。大手予備校で英語講師をしながら、留学を繰り返し、サンフランシスコ大学教育学部で修士課程、博士課程修了。学位取得後、短期間、北カリフォルニア大学助教授、マリン地域短期大学講師を始め、様々な教壇でESL(移民英語教育)を指導する。現在、桐蔭横浜大学准教授(教育学博士。専門は「政治・社会のあり方と教育」及び「第二言語取得論」)。また、教育コンサルタントとして様々な学校で学校運営、受験英語、英会話の指導を行ないながら、「自然、命、情」を大切にする教育の普及に取り組んでいる。著書・・・ 『教育問題の答 アメリカの実践と日本の現実』(論創社/2007)など。
★2016.2.3 (No.425) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『重要事件で振り返る戦後日本史 日本を揺るがしたあの事件の真相』
(SB新書/佐々淳行/2016.1)

数多の大事件は、歴史の流れの中の「大見出し」だ。今の自分は、なぜここに存在するのか、日本はなぜ今の形で存在するのか―歴史を学ぶ意義がここにある。日本の方向を命がけで決断し、そのために汗を流した無数の先人たち。一度ばかりか二度までも、世の中の危険な流れを変えた著者が、戦後日本の大事件に自分史を重ねる。「国家危機管理」に半生を捧げた波瀾万丈のドキュメント。

著者・佐々淳行・・・1930年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、国家地方警察本部(現・警察庁)に入庁。「東大安田講堂事件」「連合赤軍あさま山荘事件」等に警備幕僚長として危機管理に携わる。1986年より初代内閣安全保障室長をつとめ、1989年昭和天皇大喪の礼警備を最後に退官。2000年、第四十八回菊池寛賞を受賞。2001年、勲二等旭日重光章受章。著書に文藝春秋読者賞を受賞した『東大落城 安田講堂攻防七十二時間』 / 『連合赤軍「あさま山荘」事件』(ともに文春文庫)など。

◆構成

第1章 現代に影響を与え続ける重大事件
第2章 占領下日本の世相があらわれた大事件
第3章 戦後「政治の季節」日本に襲来した嵐
第4章 高度経済成長の裏面史
第5章 国民の信頼を裏切った政界・官界スキャンダル
終章 社会を不安に陥れる事件の変容

関連ページ・・・連合赤軍あさま山荘事件 / 東大闘争と日大闘争
★2016.1.27 (No.424) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『[ドキュメント] 死刑に直面する人たち 肉声から見た実態』
(岩波書店/単行本/佐藤大介/2016.1)


実態の見えない日本の死刑制度。実際に「死刑」という現実に正面から向き合わざるを得ない人びとのあいだで日々営まれていることとは何なのか。死刑囚へアンケート調査を行い、加害者と被害者の家族、刑務官、弁護士、法務官僚など死刑にかかわる人たちの声に耳を傾けることで、死刑がはらむ問題の核心と周辺を生々しく可視化する。
★2016.1.20 (No.423) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『塀の中の少年たち 世間を騒がせた未成年犯罪者たちのその後』
(洋泉社/単行本/斎藤充功/2016.1)


神戸児童連続殺傷事件の犯人・少年Aこと酒鬼薔薇聖斗が上梓した手記『絶歌 神戸連続児童殺傷事件』(太田出版/2015)によって再び議論となった少年法。元犯罪者たちの少年は獄中で何を考え、そして、その後はいかなる人生と辿ったのか。知られざる獄中の真実と少年犯罪者たちのその後を追ったドキュメント・ルポルタージュ。

著者・斎藤充功・・・1941年、東京生まれ。東北大学工学部中退。国際機械振動研究所に勤務。1973年退職、フリーに。近現代史、犯罪者、刑務所事情といったテーマを中心に取材・執筆を行う。著書・・・『「フルベッキ写真」の暗号』(学研パブリッシング/2014) / 『小野田寛郎は29年間、ルバング島で何をしていたのか』(学研パブリッシング/2015)など多数。
 ★2016.1.13 (No.422) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『物理学者が解き明かす重大事件の真相』
(ビジネス社/単行本/下條竜夫/2016.1)


気鋭の物理学者が、批判的思考(クリティカル・シンキング)で事件、事故の「謎」に迫る。

著者・下條竜夫(げじょう・たつお)・・・1964年、生まれ。1988年、早稲田大学理工学部応用物理学科卒業。1989年、東京工業大学大学院総合理工学研究科修士課程修了。1994年3月、総合研究大学院大学数物科学研究科博士課程修了(理学博士) 。同年6月 チューリッヒ大学物理化学研究所博士研究員。1995年、 分子科学研究所フェロー。1996年、分子科学研究所助手。2003年、兵庫県立姫路工業大学助教授。2007年、兵庫県立大准教授。

第1章 理科系の目から見た福島第一原発事故(1)
~福島第一原発事故の放射性物質放出量の過大評価とそのねらい~
第2章 理科系の目から見た福島第一原発事故(2)
~マスコミが伝えない原発事故の真実~
第3章 福知山線脱線(尼崎JR脱線)事故は車両の軽量化が原因である
~理系の目から事件の真相を解明する~
第4章 STAP細胞と小保方晴子氏について
~緑色に光る小さな細胞は本当に存在する~
第5章 和歌山毒カレー事件の犯人を林眞須美被告と特定した証拠は本物か?
~理科系の「科学的に証明された」ということばが、いつも正しいとは限らない~
第6章 排出権取引に利用された地球温暖化問題
~科学では地球の未来はわからない~
第7章 現代物理学は本当に正しいのか?
~正しさの判定基準は、物理学の体系との整合性にある~
第8章 仁科芳雄こそが「日本物理学の父」である
~政治的に葬られた日本の物理学の英雄をここに復活させる~
★2016.1.6 (No.421) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『尼崎事件 支配・服従の心理分析』
(現代人文社/単行本/村山満明&大倉得史[編著]/2016.1)


多くの被告人が主犯の角田美代子に支配され、服従することで虐待や殺人に関与した。本書が対象とする被告人もその一人である。なぜそのように支配され、犯行するにいたったのか。被告人への聞き取りなどから、角田美代子との出会いから犯行まで、その心理過程を解明する。

尼崎事件・・・1970年から2011年までの40年間に渡って、角田美代子がいくつもの家族を取り込み、金銭的に搾取し、崩壊させていった事件。その過程で、少なくとも9人の人が殺されている。

編著・村山満明・・・1959年、生まれ。広島大学教育学部心理学科を経て、1985年、広島大学大学院教育学研究科博士課程前期(教育心理学専攻)修了。1986年、広島県立保育専門学校教諭、1995年、広島女子大学子ども文化研究センター講師、2000年、県立広島女子大学子ども文化研究センター助教授。2004年、県立広島女子大学生活科学部助教授。2005年、県立広島女子大学保健福祉学部助教授。2006年、大阪経済大学人間科学部教授、現在に至る。臨床心理士。研究領域・テーマは、臨床心理学、法心理学。主な著作に『目撃供述・識別手続に関するガイドライン』(分担執筆/現代人文社/2005) などがある。

編著・大倉得史(とくし)・・・1974年、生まれ。京都大学総合人間学部を経て、2003年、京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。京都大学博士(人間・環境学)。臨床心理士。九州国際大学講師、准教授を経て、2009年、京都大学大学院人間・環境学研究科講師、2010年、京都大学准教授、現在に至る。研究領域・テーマは、発達心理学、自己の形成、アイデンティティ、保育、供述分析、現場心理学。主な著作に『「語り合い」のアイデンティティ心理学』(京都大学学術出版会/2011) などがある。

<目次>

プロローグ
尼崎事件人物相関図
第1章 事件の概要
第2章 巻き込まれた男
第3章 分析のための心理学的基礎
第4章 状況の力──本件の心理学的分析
第5章 テキストを掘る──コンピュータによるテキスト解析
第6章 心理検査等からみた岡島のパーソナリティ
第7章 情状鑑定結論
第8章 裁判と判決
エピローグ
1.取り込み・支配型犯罪としての尼崎事件
2.情状鑑定の意義

関連書籍・・・
『モンスター 尼崎連続殺人事件の真実』(講談社/一橋文哉/2014)

『家族喰い 尼崎連続変死事件の真相』(太田出版/小野一光/2013)
★2015.12.30 (No.420) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『拳銃伝説 昭和史を撃ち抜いた一丁のモーゼルを追って』
(共栄書房/単行本/大橋義輝/2016.1)


ある拳銃が狂言回しとなって語り始めた、驚愕の昭和史

首相・濱口雄幸を狙撃したモーゼルは、「男装の麗人」川島芳子の所有物だった。
一丁の拳銃がたぐりよせる歴史の糸。731部隊と奇行の天才学者、暗躍する大陸浪人たち、
文豪の理想郷と狙撃犯の縁、そして昭和史最大の謎・帝銀事件の真犯人――

息を飲む昭和史ノンフィクション!

著者・大橋義輝(よしてる)・・・ルポルタージュ作家。東京・小岩で生まれ育つ。明治大学(文芸学科)、米国サンノゼ州立大学(ジャーナリズム学科)、中国アモイ大学(中国語)、二松学舎大学(国文学科)等で学ぶ。元フジテレビ記者・プロデューサー。元『週刊サンケイ』記者。黒澤映画のエッセイ「私の黒澤明」で最優秀賞(夕刊フジ)受賞。他の著書に『消えた神父を追え! BOACスチュワーデス殺人事件の謎を解く』(共栄書房) / 『毒婦伝説 高橋お伝とエリート軍医たち』(共栄書房)など。

主な目次

プロローグ
第1章 総理狙撃
第2章 遺体鑑定人、表と裏の顔
第3章 昭和史最大の謎に迫る
第4章 「男装の麗人」川島芳子
第5章 流浪する拳銃
第6章 武者小路実篤と狙撃犯
最終章 拳銃の終焉
エピローグ

関連ページ・・・帝銀事件
★2015.12.23 (No.419) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『米兵犯罪と日米密約 「ジラード事件」の隠された真実』
(明石書店/単行本/山本英政/2015.7)


1957年、群馬県の相馬ヶ原で「弾拾い」をしていた日本人女性が射殺された。まるで雀を射つように銃撃した米兵に「重罰」を科さないとの日米密約が交わされ、日本の司法は執行猶予の判決を下す。なにを裁き、なにを裁かなかったのか? 米兵犯罪のうらにある真の罪科をいま、鋭く検証する。

著者・山本英政・・・1953年生まれ。独協大学国際教養言語文化学科教授。アメリカ移民史、戦後史、歴史研究専攻。著者の他の著書・・・『ハワイの日本人移民』(明石書店/2005)

目次

 まえがき

第一章 米兵ジラードの犯罪
 一 薬キョウによる殺害
 二 意外な情報源
 三 相馬ヶ原
 四 弾を拾う

第二章 米兵を立件する
 一 社会党の追及
 二 困難な米兵の立件に挑む
 三 裁判権をめぐる係争

第三章 「ジラード事件」と昏迷するアメリカ
 一 裁判権で迷走するアメリカ政府
 二 ジラード側、政府を訴える
 三 新聞と世論
 四 紛糾する議会

第四章 下された判決と日米の密約
 一 裁判権の行方と密約の存在
 二 公判はじまる
 三 判決とその評価

 あとがき


関連ページ・・・ジラード事件
★2015.12.16 (No.418) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『犯罪の世間学 なぜ日本では略奪も暴動もおきないのか』
(青弓社/単行本/佐藤直樹/2015.12)


略奪や暴動をおこさず、おきたとしてもそれに厳しい目を向ける日本人―その感性を作り出す独特の秩序である「世間」。歴史学者・阿部謹也が提唱した世間論の骨子を、「空気を読む」「既読スルー」などを例に紹介し、「個人の消去」「贈与・互酬の関係」「高い同調圧力」といった「世間」の特徴を解説する。それをふまえて、排除と包摂という相反する性質をもつ「世間」で排他性がますます強まっていることを、1990年代末以降に台頭する犯罪の厳罰化を導きの糸として明らかにする。そして、排除志向を強めた「世間」が、人々の息苦しさを加速させて犯罪を生み出す仕組みを2000年代以降の犯罪・事件を例に読み解いていく。ニッポン礼賛があふれファシズムにも似た「空気」が覆う日本の現状に、「世間」という視点から鋭く迫る時代診断の書。

著者・佐藤直樹・・・1951年、仙台市生まれ。九州大学大学院博士課程修了。専攻は刑事法学、現象学、世間学。現在、九州工業大学情報工学部教授。1999年、「日本世間学会」創立に初代代表幹事として参画。著書に『「世間」の現象学』 / 『なぜ日本人はとりあえず謝るのか 』 など。サイト・・・http://www.satonaoki.com

目次

はじめに

第1章 犯罪を抑止する「世間」
 1 世間論素描
 2 日本型権力としての「世間」
 3 日本の犯罪率が低いのはなぜか

第2章 犯罪/処罰を取り巻く「世間」
 1 「処罰福祉主義」をめぐって
 2 一九九〇年代末の排除=厳罰化はなぜおきたのか
 3 「世間」の「復活」と「新しいファシズム」

第3章 犯罪を生み出す「世間」
 1 二〇〇八年:秋葉原無差別殺傷事件
 2 二〇一二―一三年:『黒子のバスケ』脅迫事件
 3 二〇一四年:佐世保高一女子同級生殺害事件

おわりに
★2015.12.9 (No.417) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『世田谷一家殺人事件 15年目の新事実』
(角川書店/単行本/一橋文哉/2015.12)


犯人の指紋を著者自ら採取! 2000年12月31日午前11時半前、東京都世田谷区上祖師谷3丁目で発覚した一家4人惨殺事件。沢山の証拠が残されていながら、発生から15年経った現在でも犯人は捕まっておらず、捜査は未だに続行されている。この事件をライフワークとして追い続ける著者が、海外まで追ってついに遭遇した犯人の姿とは? 犯人は今どこで何をしているのか、驚きの真相が明かされる。

著者・
一橋文哉・・・1954年生まれのジャーナリスト。本名・広野伊佐美(ひろの・いさみ)。ペンネームは元『毎日新聞』記者・『サンデー毎日』副編集長であったことから一ツ橋に本社がある毎日新聞社の記者→「一ツ橋のブン屋」→「一橋文哉」とした。昭和から平成の大事件に関する次のような著書がある。『闇に消えた怪人 グリコ・森永事件の真相』 / 『三億円事件』 / 『オウム帝国の正体』 / 『宮崎勤事件 塗り潰されたシナリオ』 / 『「赤報隊」の正体 朝日新聞阪神支局襲撃事件』(共に新潮社) / 『餃子の王将社長射殺事件』 / 『人を、殺してみたかった 名古屋大学女子学生・殺人事件の真相』(共に角川書店)

関連ページ・・・世田谷一家惨殺事件
★2015.12.2 (No.416) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『元報道記者が見た昭和事件史 歴史から抹殺された惨劇の記録』
(洋泉社/単行本/石川清/2015.11)


新聞の片隅に載った地方の小さな事件から世間を震撼させた事件の数々――。著者は、数十年の歳月を経た事件現場を訪れ、隠された真実、封印された真実を掘り起こす。そこには、人間の狂気、因習、信仰などの数々の知られざるタブーが眠っていた。なぜ、人間はかくも残酷になれるのか。なぜ、人間はかくも恐ろしい存在なのか……。奇奇怪怪にして、絶望と狂気に彩られた、惨劇の記録をひも解く。

著者・石川清・・・1964年、埼玉県生まれ。上智大学卒業後、NHK記者を経てフリーに。時代の隙間に埋もれた奇妙な事件やエピソードの発掘が得意。主な著書・・・『津山三十人殺し 最後の真相』(ミリオン出版/2011) / 『あぶないカギ屋の事件ファイル 扉の向こうの驚愕事実』(三才ブックス/1999)
★2015.11.25 (No.415) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『新・犯罪論  「犯罪減少社会」でこれからすべきこと』
(現代人文社/単行本/荻上チキ&浜井浩一/2015.10)


犯罪は増えてもいないし、凶悪化してもいない。しかし、なくなってもいない。感情的に厳罰化を叫んでも仕方ない。必要なのは冷静なデータ分析と有効な施策だ。そして、犯罪を犯さなくても済む社会であること。犯罪統計の読み方、メディアリテラシーなど、気鋭の犯罪学者と若手の論客が語る、目からうろこの「犯罪論」。

著者・荻上チキ(おぎうえ・ちき)・・・シノドス編集長、評論家・編集者。1981年生まれ。著書に『ネットいじめ』(PHP新書) / 『社会的な身体 振る舞い・運動・お笑い・ゲーム』(講談社現代新書)など。

著者・浜井浩一(はまい・こういち)・・・龍谷大学法務研究科(法科大学院)教授。1960年生まれ。著書に『犯罪統計入門 第2版 犯罪を科学する方法』(日本評論社) / 『刑務所の風景 社会を見つめる刑務所モノグラフ』(日本評論社) など。

1.犯罪統計は誤解されている
2.エビデンスとグランドセオリーなき政策の弊害
3.厳罰化しない犯罪対策の行方
4.日本の罪と罰をめぐって何をどう変えるか
★2015.11.18 (No.414) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『殺人犯との対話』
(文藝春秋/単行本/小野一光/2015.11)


人が人を殺す「その理由」を直接取材しつづけた、傑作ノンフィクション。

『週刊文春』連載で話題。21世紀の10大殺人の深い闇に事件現場と拘置所の面会室で迫る!


著者・小野一光・・・1966年生まれ。福岡県北九州市出身。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーライターに。「戦場から風俗まで」をテーマに北九州監禁殺人事件、アフガニスタン内戦、東日本大震災などを取材し、週刊誌や月刊誌を中心に執筆。 主な著書・・・完全犯罪捜査マニュアル 』(太田出版/1995) / 『風俗ライター、戦場へ行く』(講談社文庫/2010) / 『家族喰い 尼崎連続変死事件の真相』(太田出版/2013)

CASE 1 北村孝紘 【大牟田連続4人殺人事件】
CASE 2 松永太 【北九州監禁連続殺人事件】
CASE 3 畠山鈴香 【秋田児童連続殺人事件】
CASE 4 鈴木泰徳 【福岡3女性連続強盗殺人事件】
CASE 5 宇野ひとみ【高槻養子縁組保険金殺人事件】
CASE 6 下村早苗 【大阪2児虐待死事件】
CASE 7 山地悠紀夫【大阪姉妹殺人事件】
CASE 8 魏巍 【福岡一家4人殺人事件】
CASE 9 高橋裕子 【中州スナックママ連続保険金殺人事件】
CASE 10 角田美代子【尼崎連続変死事件】
 ★2015.11.11 (No.413) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『前略、殺人者たち 週刊誌事件記者の取材ノート』
(ミリオン出版/単行本/小林俊之/2015.11)


殺人現場を東へ西へ
事件一筋30余年のベテラン記者が掴んだもうひとつの事件の真相。
報道の裏で見た、あの凶悪犯の素顔をいま明かす!

大阪教育大附属池田小事件:宅間守
秋葉原通り魔事件:加藤智大
松山ホステス殺人事件:福田和子
東京・埼玉連続幼女殺人事件:宮崎勤
奈良小1女児殺害事件:小林薫
本庄保険金殺人事件:八木茂
愛知・新城JC資産家殺害事件:五味真之(仮名)
首都圏連続不審死事件:木嶋佳苗
熊谷男女4人拉致殺傷事件:尾形英紀 少女A
帝銀事件:平沢貞通
奈良母姉殺傷事件:畑山俊彦(仮名)


関連ページ・・・大阪池田小児童殺傷事件 / 宮崎勤幼女連続殺人事件 / 奈良児童誘拐殺人事件 / 首都圏連続不審死事件 / 帝銀事件
★2015.11.4 (No.412) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『映画になった戦慄の実話 Vol.4』
(鉄人社/単行本/鉄人ノンフィクション編集部/2015.10)


映画ファン、犯罪マニアにおくる戦慄の実話シリーズ最新・第4弾 !

映画と史実はどこが違うのか。劇中では描かれない犯行の詳細、本当の動機、事件関係者のその後。事件が映画に、映画が事件に及ぼした予期せぬ影響。本書は、いわゆる実録映画≠フ題材やモチーフになった、実際の事件の顛末を辿った1冊である。

contents

アメリカン・スナイパー:劇中では描かれなかった米軍最強スナイパー殺害の真実
フォックスキャッチャー:史実とは異なる殺人犯デュポンと金メダリスト兄弟の実像
ゴーン・ガール:映画の元ネタになったスコット・ピーターソン事件とは ?
13デイズ:核戦争勃発寸前! キューバ危機はこうして回避された
戦慄の絆:双子の産婦人科医 マーカス兄弟怪死事件
ソウォン/願い:8才の少女が鬼畜の餌食に チョ・ドゥスン児童強姦事件
絞殺:家庭内暴力の果ての悲劇・開成高校殺人事件
ヒルサイド・ストラングラー丘の上の絞殺魔:女性12人を殺害した従兄弟同士
戦後猟奇犯罪史:紅白出場歌手 克美しげる愛人殺害事件
怪人プチオを密かな愉しみ:ユダヤ人63人を殺害した“死神博士"マルセル・プチオ事件
コレクター:娼婦を監禁して大家族を夢見た殺人鬼 ゲイリー・ハイドニック事件
明日に向って撃て ! :悪名高き強盗 ブッチ&サンダンスの映画とは違う死に様
ハイネケン誘拐の代償:史上最高額の身代金を手にした男たちの運命
帝銀事件 死刑囚:行員12人を毒殺したのは誰だ ?
etc.


関連ページ・・・海外の事件 / 帝銀事件


関連書籍・・・
『映画になった戦慄の実話』(鉄人社/単行本/鉄人ノンフィクション編集部/2011)

『映画になった戦慄の実話 Vol.2』(鉄人社/単行本/鉄人ノンフィクション編集部/2012)

『映画になった戦慄の実話 Vol.3』(鉄人社/単行本/鉄人ノンフィクション編集部/2014)
★2015.10.28 (No.411) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『シリアルキラーズ プロファイリングがあきらかにする異常殺人者たちの真実』
(青土社/単行本/ピーター・ヴロンスキー/2015.10)


吸血鬼として伝説となった650人あまりを自らの城で殺害したバートリ・エルジェーベト、分かっているだけでも30人以上もの若い女性を言葉巧みに車へと誘い込んで惨殺し「シリアルキラー」という言葉ができるきっかけにもなったテッド・バンディ、6人を無差別に殺害しニューヨークを恐怖のどん底におとしいれた「サムの息子」ことデヴィッド・ボーコウィッツ、大統領夫人をエスコートしながら自宅で被害者の遺体と寝起きしていた「殺人ピエロ」ジョン・ウェイン・ゲイシー、悪魔崇拝的な犯行でカリフォルニア州全土をパニックに陥らせたリチャード・ラミレス・・・・。

連続殺人犯(シリアルキラー)の歴史を詳細に描き、シリアルキラーの犯行を羅列するだけではない。なぜそのような行為に走ったのか、さまざまな見地から彼らの心理に迫る連続殺人ファイルの決定版。

関連ページ・・・海外の事件
 ★2015.10.21 (No.410) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『三島由紀夫が生きた時代 楯の会と森田必勝』
(青林堂/単行本/村田春樹/2015.10)


当時「楯の会」最年少会員であった村田春樹が会員時代の貴重な写真を交えながら語る三島由紀夫、そして楯の会と森田必勝の秘められた真実。

〈目次〉

序文 西村幸祐

第一章 ナンパ系全学連が楯の会へ

学生運動激化の年に/左右の学生運動が盛り上がった早稲田大学/森田必勝、早稲田大学で大活躍/三島由紀夫という巨人/楯の会の結成/ナンパ系全学連/楯の会と自衛隊の接近/治安出動の意味/蹶起への助走/森田必勝との出会い/三島由紀夫と入会面接

第二章 楯の会第六期生

富士教導団普通科教導連隊第四中隊/だれよりも楽しんでいた森田必勝/訓練の日々/楯の会へ入会/一度は退会を申し出る/「尚史会」に入会/リフレッシャー訓練/蹶起の五ヶ月前の肉声/俺は右翼なのかな/着々と進む蹶起への道

第三章 昭和四十五年十一月二十五日

市ヶ谷会館にて/何も知らされていなかった/森田必勝自決の意味/遺された者へのメッセージ/楯の会、解散

第四章 取り残された者たち

右翼兼自堕落学生/裁判はじまる/ロックと女子大生と吉田松陰が同居/裁判終わる/阿部勉氏との出会い/福田俊作氏に受けた影響/自己変革の旅/一周忌/福田氏との旅/就職試験

第五章 三島・森田蹶起と日本の運命

森田必勝という人/行動の人/辞世の意味/自衛隊を信じ裏切られた/あの罵声は予想していた/楯の会出身の自衛官/魂の叫びは四十五年の時を超えて/自衛隊とクーデター/政体を守るのか国体を守るのか エピローグ その後の楯の会
経団連襲撃事件/瑤子夫人とのこと

資料 「檄」
★2015.10.14 (No.409) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『だまし犯罪百科 巧妙な話術と手口の全貌』
(さくら舎/単行本/間川清/2015.10)


「私は大丈夫」と思う人を簡単にだますテクニックとは!

2015年8月7日の日経新聞に「物干しざおトラブル急増」の記事があり、移動販売で支払った額の平均は約46000円。最高額は90万円とのこと。本書は、このような悪徳商法から、資産運用や保険・相続、ネットのだまし犯罪まで、実際にだまし被害解決にあたっている弁護士が、その巧妙な話術や手口を明かし、古典的なだましから、新種のだましまで、その全貌が見えてくる!

著者・間川清(まがわ・きよし)・・・弁護士。1978年生まれ。25歳で司法試験に合格し、現在では自らが代表として、弁護士法人ポート川越中央法律事務所を経営している。弁護士業務を開始して以来、相続事件、離婚家事事件、損害賠償事件、刑事被告人弁護など、年間200件以上の弁護士業務を担当。殺人事件の被害者遺族への謝罪、性犯罪被害者への謝罪・示談交渉、悪質クレーマーへの対応、DV、ストーカーなど、人の生死や一生にかかわるハードな状況における謝罪・交渉の現場に身を置き、その謝罪術を確立した。他の著書・・・『妻は最高の投資物件である。』(自由国民社/2015) / 『気づかれずに相手を操る交渉の寝技』(WAVE出版/2012)など。
★2015.10.7 (No.408) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『死刑冤罪 戦後6事件をたどる』
(インパクト出版会/単行本/里見繁/2015.9)


雪冤・出獄後も続く無実の死刑囚の波乱の人生をたどり、無実を証明する前に処刑された飯塚事件を徹底検証する。

著者・里見繁・・・1951年生まれ。東京都立大学法学部卒業。民間放送のテレビ報道記者を経て、30歳からテレビドキュメンタリー一筋。2010年から関西大学社会学部教授。主な作品:映像90「ガンを生きる」(95年民間放送連盟賞教養番組部門・最優秀賞)、映像01「出所した男」(02年芸術祭テレビドキュメンタリー部門・優秀賞、民間放送連盟賞報道番組部門・最優秀賞)。他に、日本ジャーナリスト会議賞、地方の時代賞、ギャラクシー賞など。

目次

第1章 雪冤は果たしたけれど 免田栄さんの場合
第2章 たった一人の反乱 財田川事件と矢野伊吉元裁判官
第3章 家族離散 松山事件と斎藤幸夫さん
第4章 冤罪警察の罠 赤堀政夫さんと大野萌子さん
第5章 再審開始へ向けて 無実のプロボクサー袴田巌さん
第6章 DNA鑑定の呪縛 飯塚事件と足利事件


関連ページ・・・死刑確定後再審無罪事件 / 袴田事件
★2015.9.30 (No.407) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『「絶対ダマされない人」ほどダマされる』
(講談社+α新書/多田文明/2015.9)


発覚しているだけで年間400億円、1万人以上が優にダマされる「特殊詐欺」被害。電話によるキャッチセールスや押しつけの訪問販売も、単なる「オレオレ詐欺」からどんどん巧妙化が進み、「自分は絶対に引っかからない」とタカをくくっている人ほど落とし穴にハマってしまうリスクがある。急速に進化する最新の詐欺テクニックを、体当たり取材が定評の著者がモデルケースを示して詳細に解説する。

著者・多田文明・・・詐欺・悪徳商法評論家。ルポライター。1965年、北海道生まれ。日本大学法学部卒。詐欺・悪徳商法、洗脳集団、カルト宗教への潜入取材にも定評がある。潜入取材の回数は百数十回。テレビ出演、講演も多数手がける。著書に『ついていったら、こうなった』(彩図社/文庫/2005) / 『クリックしたら、こうなった』(メディアファクトリー/2009)などがある。
★2015.9.23 (No.406) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『人質460日 なぜ生きることを諦めなかったのか
亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ II-4』
(亜紀書房/単行本/アマンダ・リンドハウト&サラ・コーベット/2015.9)


女性ジャーナリスト・アマンダは、ソマリアで武装勢力に拉致監禁され、レイプや拷問の恐るべき虐待を受ける。 なぜ危険を承知で紛争地帯に入ったのか。 地獄のような試練を耐え抜いた彼女を支えたものとは。紛争・戦時下にある女性がこうむる暴力から目をそらさずに語られる、魂をゆさぶる衝撃の告白!
★2015.9.16 (No.405) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『人を、殺してみたかった 名古屋大学女子学生・殺人事件の真相』
(角川書店/単行本/一橋文哉/2015.9)


「宮城の酒鬼薔薇になる!」と彼女は言った・・・
大学に入学後、長年の宿願の殺人を実行し、その興奮をツイッターに記した名古屋大学の女子学生。これは計画殺人なのかそれとも心の病なのか? 関係者への取材からその謎を明らかにする。

名古屋大学女子学生殺人事件・・・2015年(平成27年)1月27日、名古屋市昭和区のアパート室内に女性の遺体があるのを警察官が発見。この部屋に住む名古屋大の女子学生(当時19歳)が斧で殴るなどして殺害したと認めたため、同日、殺人容疑で逮捕された。女子学生は「子供のころから人を殺してみたかった」と供述した。遺体は2014年(平成26年)12月7日に家族から行方不明者届が出ていた名古屋市千種区春里町、無職の森外茂子(もり・ともこ/77歳)と判明。森は宗教の勧誘で女子学生と知り合い、事件当日の12月7日も2人で宗教団体の集会に参加していた。2015年(平成27年)2〜5月の3ヶ月間にわたり、 名古屋地検が精神状態を調べるため鑑定留置を請求し、精神鑑定を実施した。2015年(平成27年)5月15日、女子学生が高校2年生だった3年前(2012年)、同級生の男子学生ら2人に劇物の硫酸タリウムを飲ませ殺害しようとした疑いで再逮捕された。被害に遭った男子学生は「(視力は)両目とも0.01から0.02くらい。白くもやがかかったような見え方で、色とかも、あまりはっきりしていない。人の顔の表情は普通の距離だとわからない。感覚を頼りにして歩いている」と語った。捜査関係者によると、女子学生は名古屋地検が請求した精神鑑定で発達障害の一種のアスペルガー症候群と診断を受けたが、名古屋地検は刑事責任能力が問えると判断。5月15日、殺人容疑の処分を保留した。6月5日、名古屋で女性を殺害した翌日[2014年(平成26年)12月8日]、女子学生は実家のある仙台に帰省していたが、その際、実家近くの家に放火をした疑いが強まったとして、放火と殺人未遂の疑いで再逮捕された。女子学生は「焼死体が見たかった」などと話した。6月16日、名古屋地検は女子学生を、検察官送致(逆送)を求める「刑事処分相当」の意見を付け、殺人や殺人未遂などの疑いで一括して家裁送致した。名古屋家裁は同日、2週間の観護措置を決めた。7月3日、名古屋家裁は女子学生の精神鑑定を再び実施すると決め、鑑定留置したと明らかにした。期間は8月31日までの約2ヶ月間。名古屋家裁は鑑定留置に伴い、7月13日までだった観護措置を取り消した。8月31日、名古屋家裁は女子学生の精神鑑定を終え、9月9日までの観護措置を決めた。鑑定結果は明らかにしていない。9月15日、名古屋家裁は9月23日までの観護措置をさらに2週間延長し、10月7日までと決めた。延長は3度目で、少年法は観護措置の期間を2週間ずつ最長8週間と定めており、今回が最後の延長となる。9月29日、名古屋家裁(岩井隆義裁判長)は少年審判を開き、女子学生について、検察官送致(逆送)とする決定をした。10月8日、名古屋地検は殺人と殺人未遂などの罪で女子学生を起訴した。公開の法廷で裁判員裁判となる見通し。

著者・
一橋文哉・・・1954年生まれのジャーナリスト。本名・広野伊佐美(ひろの・いさみ)。ペンネームは元『毎日新聞』記者・『サンデー毎日』副編集長であったことから一ツ橋に本社がある毎日新聞社の記者→「一ツ橋のブン屋」→「一橋文哉」とした。昭和から平成の大事件に関する次のような著書がある。『闇に消えた怪人 グリコ・森永事件の真相』 / 『三億円事件』 / 『オウム帝国の正体』 / 『宮崎勤事件 塗り潰されたシナリオ』 / 『「赤報隊」の正体 朝日新聞阪神支局襲撃事件』 (共に新潮社) / 『餃子の王将社長射殺事件』(角川書店)
★2015.9.9 (No.404) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『山の不可思議事件簿』
(山と渓谷社/単行本/上村信太郎/2015.9)


山には、不思議な現象や奇妙な伝承や奇跡的な実話に満ちている。山と登山にまつわる怪現象・不思議・謎・奇跡・魔の山・神秘と伝説・怪談・怪物などのうち、定番といえるテーマを多数ご紹介。

著者・上村(かみむら)信太郎・・・ライター。1945年、群馬県生まれ。20歳から山登りを始める。1976年に山岳会を創立。ヒマラヤ、ノルウェー、ギアナ高地等の山に遠征して初登攀記録もある。富士山は20回ほど登頂。日本山岳会会員。日本山書の会会員。著書・・・『知られざる富士山 秘話 逸話 不思議な話』(山と渓谷社/2013) / 『エベレストで何が起きているか 世界最高峰のいままでと未来』(山と渓谷社/1993)など。

もくじ
第1章 奇妙な現象
◎山の怪現象 マッターホルンで目撃された幻影/消えた4階建て宿舎の怪/テントに近づいてくる謎の靴音/知らないうちに移動した山小屋/ブロッケンの妖怪とセントエルモの火/山奥から響いてくる奇怪な音
◎山の不思議 女神の山で女神になったアメリカ人女性/頂上をめざす動物たちの怪/朝日連峰の不可思議な遭難/リングワンデルングの恐怖/ヒマラヤに消えた記憶/ニカ国語を理解した名登山犬◎山の謎 富士山初登頂の謎/大雪山に残されたSOS文字の謎/ヒマラヤ登山史上最大の謎/エベレストで遭難した旧ソ連隊の謎/身元不明の遺体の謎
◎山の奇跡 人肉を食べて生還したアンデスの遭難者/エベレストから転落して生還した男/雪崩に埋まり13日間生き抜いた青年/ヒマラヤで宙吊りから救出された日本人/アルプスの氷壁から滑落して助かった日本人/国内の奇跡の生還者たち

第2章 恐怖と神秘
◎魔の山 殺人峰アイガー北壁/人喰い山ナンガ・パルバット/犠牲者世界一の谷川岳/死を呼ぶ山ミニヤ・コンカ
◎神秘と伝説の山ノアの箱舟の山アララト/アリストテレスが予言した山/エベレストよりも高い山/ギアナ高地に実在したロストワールドの山/崑崙の謎の山ウルグ・ムスターグ

第3章 伝説と怪談
◎山の伝説伝承 猫又伝説の謎/埋蔵金伝説の謎/ヒダル神の伝説
◎山の怪談 吹雪の避難小屋の亡霊/真夜中にともる消したはずのローソクの灯/深夜ひとりでに開いた山小屋の扉/テントの中に押し入った幻影/ウペペサンケ山の怪異

第4章 謎の生きもの
◎山の怪物 中国の秘境に生息する謎の大脚怪/ギアナ高地で遭遇した怪鳥/まぼろしのツチノコを探す/黒部峡谷の正体不明の足跡と奇妙な声/カナダの獣人サスカッチ/中国で頻繁に目撃される野人/コーカサス山脈の謎の獣人カプタル
◎謎の雪男 雪男の足跡写真を発表した登山家/雪男を近くで観察したポーランド陸軍中尉/雪男を間近に目撃した日本の登山家/奇抜な作戦の日本の雪男探検/鈴木紀夫さんがつかんだ雪男の正体/日本の登山隊が持ち帰った雪男の体毛とフン
◎絶滅動物の謎 ニホンオオカミは発見されていた/九州のツキノワグマは絶滅していない/カッパの正体はニホンカワウソか
★2015.9.2 (No.403) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『昭和史の10大事件』
(東京書籍/単行本/半藤一利&宮部みゆき/2015.8)

日本のそして私の運命を変えた昭和の10大事件とは何か。


著者・半藤一利・・・昭和5年、東京生まれ。作家。東京大学文学部卒。文藝春秋で「文藝春秋」編集長などを務めた。著書に『漱石先生ぞな、もし』(新田次郎文学賞) / 『ノモンハンの夏』(山本七平賞) など多数。

著者・宮部みゆき・・・昭和35年、東京生まれ。作家。著書に『我らが隣人の犯罪』(オール讀物推理小説新人賞) / 『龍は眠る』(日本推理作家協会賞長編部門賞)など多数。

目次

1 昭和金融恐慌
2 二・二六事件
3 大政翼賛会と三国同盟
4 東京裁判と戦後改革
5 憲法第九条
6 日本初のヌードショー
7 金閣寺焼失とヘルシンキ・オリンピック挑戦
8 第五福竜丸事件と『ゴジラ』
9 高度経済成長と事件 公害問題・安保騒動・新幹線開業
10 東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(宮崎勤事件)
★2015.8.26 (No.402) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『殺人鬼ゾディアック 犯罪史上最悪の猟奇事件、その隠された真実』
(亜紀書房/単行本/ゲーリー・L・スチュアートほか/2015.8)


1960年代末に全米を震え上がらせた正体不明の猟奇殺人犯“ゾディアック”。あらゆる捜査をかいくぐり、迷宮入りした殺人事件の“真相”がついに明らかに!?  全米騒然の話題のノンフィクションがついに翻訳!

関連ページ・・・海外の事件
★2015.8.19 (No.401) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『元少年Aの殺意は消えたのか 神戸連続児童殺傷事件 手記に見る「贖罪教育」の現実』
(イースト・プレス/単行本/草薙厚子/2015.8)


私はすぐに本[ 『絶歌 神戸連続児童殺傷事件』(太田出版/少年A/2015)]を手に入れると一気に読み始めた。当時の取材内容を思い出しながら、冷静に、かつ慎重に読み進めていったのだが、しばらくたっても自分のなかに残っている疑問符が句読点に変わることはなかった。最も国民が知りたがっている、矯正教育を終えて社会に出てからの「空白の11年間」を埋めるものが、どこにも見当たらなかったのだ。止まっていた私の時計の針が突然、動き出した。(「はじめに」より)

著者・草薙厚子・・・元法務省東京少年鑑別所法務教官。地方局アナウンサーを経て、通信社ブルームバーグL.P.に入社。テレビ部門でアンカー、ファイナンシャル・ニュース・デスクを務める。その後、フリーランスとして独立。現在は、ジャーナリスト、ノンフィクション作家として執筆するほか、講演活動やテレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。著者の他の著書・・・ 『僕はパパを殺すことに決めた 奈良エリート少年自宅放火事件の真実』(講談社/2007) / 『少年A 矯正2500日全記録』(文藝春秋/2004)

【目次】
第一章 元少年Aが「矯正教育」を描かなかった理由
第二章 元少年Aの「贖罪意識」と「自己肯定」
第三章 元少年Aの「性的サディズム」は矯正されたのか
第四章 元少年Aの「広汎性発達障害」が見落とされた理由
第五章 『絶歌』をめぐる議論を検証する

関連ページ・・・神戸須磨児童連続殺傷事件

関連書籍・・・
『絶歌 神戸連続児童殺傷事件』(太田出版/少年A/2015)
『少年A 矯正2500日全記録』(文藝春秋/草薙厚子/2004)

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