《これより「神世七代」》
伊邪那岐神・妹伊邪那美神
イザナキノカミ・イモイザナミノカミ
A列62 雷山小過 B列24 地雷復 C列24 地雷復 D列12 天地否
B列24 地雷復は、冬至を通過することを意味する卦である。
易は六十四卦の中から、十二の卦を選び出し、図16のように、陰陽の記号の増減をもって並べ、これを旧暦の1年12ヶ月に配し、十二消長卦と呼んでいる。

十二消長卦には、次のような意味がある。
陰 は静、陽 は動という基本的な意味があるので、陰 の記号が増えるときは静観期、陽 の記号が増えるときは活動期とする。
したがって、陽 の記号が増える(日が長くなる)冬至から夏至の期間は活動期、陰 の記号が増える(日が短くなる)夏至から冬至までは静観期とする。
その静観期の終わりで、いったん全て陰 となった後に、最下に一陽 が来復した形が、B列の24 地雷復である。だから冬至を指して一陽来復という。
その冬至を通過する月を、旧暦では11月としている。その結果、新年の1月を迎える頃には立春となるので、正月を新春と呼ぶのである。
しかし、明治6年改暦後の新暦では、知ってのとおり12月21日頃が冬至となるので、その十日後には正月となってしまう。まだこれから小寒大寒となる時期である。真冬のただ中である。こんな時期に新春と言われても、違和感を拭えない。
が、そのことは、ここではあまり関係ないので、これ以上に深入りはしない。大事なのは、この24 地雷復がその十二消長の中心的な卦であって、夏至から冬至まで七ヶ月、冬至から夏至までも七ヶ月だから、七番目に至って活動開始、七番目に至って活動停止、という意味を持つことである。
七番目に至って活動開始という点が、神世七代の構造と合致しているのである。
神世七代は、初代から六代まではただ神名が記載されているのみで、七代目のこの伊邪那岐神・妹伊邪那美神に至って、初めて物語らしい物語=国生み神話が始まる。
とすると、神世七代は、この24 地雷復を中心とした十二消長卦の法則に合致していることになる。
そこで、確認するために、その十二消長卦を神世七代と、念のため別天神五柱にまで配列した。それがC列である。
なお、伊邪那岐・伊邪那美という神名は、A〜D列の何れにも、直接の対応はないが、24 地雷復の活動開始という意味から、「誘う」という言葉を想定してのことだろう。
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於母陀流神・妹阿夜訶志古泥神
オモダルノカミ・イモアヤカシコネノカミ
A列61 風沢中孚 B列23 山地剥 C列2 坤為地 D列11 地天泰
於母陀流という音の響きは、何やらゆったりとした流れを連想させるが、とすれば空気の流れである風すなわち 巽(風)の表現と受け取れ、訶志古泥は「堅固な土」とすれば、それを易では 兌(だ)で表現するから(最上の一陰 を、大地の表面にひびが入った様子とするので、水気がなくなった堅固な土のイメージとなる)、於母陀流・訶志古泥でA列61 風沢中孚となる。
残る阿夜は、文のこととすれば、 坤(地)の持つ意味となる。 坤(地)は八卦の中で最も細かく分かれた図形であることから文=文模様を意味するのである。そして、同じ八卦を重ねた形は八卦の意味を兼ねる。したがって、C列2 坤為地が示すところとなる。
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意富斗能地神・妹大斗乃辨神
オホトノヂノカミ・イモオホトノベノカミ
A列60 水沢節 B列22 山火賁 C列23 山地剥 D列10 天沢履
大斗乃辨の辨の字には「切り分ける」という意味があるから、「大斗で切り分けよ」との指示と受け取れる。
大斗は意富斗と読みが共通する〜大(おほ)を万葉仮名で書くと意富となる。
そこで、意富斗能地を意富斗と能地に切り分ける。切り分けて、まずは前半の意富斗を見る。
意富は大のことだから同じ事象を指し、大は陽だから(小が陰)その極みの 乾(天)、斗は柄杓すなわち水を量り分ける道具だから 兌(沢)となる。
したがって、大斗と意富斗は、共にD列10 天沢履を示していることになる。
残る後半の能地は、能は熊を意味する文字でもあり、熊は山に居て人の行く手を阻み止める動物として 艮(山)とすれば、地は 坤(地)だから、能地と合わせてC列23 山地剥を示していることになる。
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角杙神・妹活杙神
ツノクヒノカミ・イモイクグヒノカミ
A列59 風水渙 B列21 火雷噬嗑 C列20 風地観 D列9 風天小畜
この二神は角、活、杙の三文字で、次のように、B列21 火雷噬嗑の卦の形の表現となる。
角は頭上にある堅い物だから、最上が陽 であることを意味する。例えば、35 火地晋の最上の記号の位置の意義を説明する文章には、「晋のとき、其の角なり」、44 天風姤には「姤のとき、其の角なり」などとある。
活は水が勢いよく流れる様子を意味する文字だから水を示す 坎(水)となる。
杙(杭)は地面に垂直に建てる棒だから陽 の上に陰 を重ねた という形を連想させる。下の陽 が地面、上の陰 の真ん中の切れ目がその地面に建つ垂直な棒のイメージである。
これらを順にならべると、図17のようにB列21 火雷噬嗑となるのである。
また、この卦はもともと「噛み砕いて食べる」という意味があるわけだが、杙と読む時の響きには、「食ひ」という言葉に相通じるものもある。

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宇比地邇神・妹須比智邇神
ウヒヂニノカミ・イモスヒヂニノカミ
A列58 兌為沢 B列20 風地観 C列12 天地否 D列8 水地比
この二神の神名は、漢字の意味ではなく音だけを拾って並べたいわゆる万葉仮名だから、別の意味のある漢字に置き換えながら考える。
まず、双方の頭の宇と須を合わせると宇須になるが、これを臼のこととすれば、餅をつく臼は上に窪みがあることから、易ではこれを 兌(沢)とするので、その 兌(沢)を二つ重ねたA列58 兌為沢を示していることになる。
続く比の字は、D列8 水地比の卦名の「比」そのものである。と同時に、下の地邇と智邇を合わせると、邇は邇邇藝命のときと同様に 乾(天)、智は地の音の借用として地と共に 坤(地)の表現とすれば、比地邇、比智邇は共に比地天となる。そして、この神名は万葉仮名風の文字の使い方なので、11垂仁天皇の国風諡号のときと同様に、これを「本来の漢文を想定して文字の順を逆にせよ」という指示と受け取り、この比地天の順を逆にして天地比とした上で、9開化天皇の国風諡号の大毘毘の時のように、比を否の音の借用とすれば、C列12 天地否となる。
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豊雲野神
トヨクモノノカミ
A列57 巽為風 B列19 地沢臨 C列33 天山遯 D列7 地水師
この神名は「野に浮かぶ豊かな雲」を連想させるが、雲は風が運ぶものだから 巽(風)の表現となる。
A列57 巽為風は、この 巽(風)が二つ重なった形、C列33 天山遯は、六本の記号を二本で一本と見なせば、これも 巽(風)である。
国之常立神
クニノトコタチノカミ
A列56 火山旅 B列18 山風蠱 C列44 天風姤 D列6 天水訟
この神名は、A〜D列の何れにも対応しない。
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《これより「別天神五柱」》
天之常立神
アメノトコタチノカミ
A列55 雷火豊 B列17 沢雷随 C列1 乾為天 D列5 水天需
頭に天之とあるが、天は 乾(天)である。C列1 乾為天は、その 乾(天)だけを二つ重ねた形である。
残る常立は対応しない。
宇摩志阿斯訶備比古遅神
ウマシアシカビヒコヂノカミ
A列54 雷沢帰妹 B列16 雷地予 C列43 沢天夬 D列4 山水蒙
この神は、本文に葦牙のようなものによって生まれたとあるので、阿斯訶備は葦牙=葦の芽吹きの様子の神格化とすれば、芽吹き=生まれたて=幼い=童蒙と連想できるので、D列4 山水蒙と繋がる。
しかし、他の部分は対応しない。
神産巣日神
カミムスヒノカミ
A列53 風山漸 B列15 地山謙 C列34 雷天大壮 D列3 水雷屯
この神名はA〜D列までの何れにも対応しない。
高御産巣日神
タカミムスヒノカミ
A列52 艮為山 B列14 火天大有 C列11 地天泰 D列2 坤為地
産の字は生産を意味するから、C列11 地天泰の万物生成の意味と合うが、他の部分は対応しない。
天之御中主神
アメノミナカヌシノカミ
A列51 震為雷 B列13 天火同人 C列19 地沢臨 D列1 乾為天
天之常立神と同様に、天は 乾(天)とすれば、D列1 乾為天を連想させる。
と同時に、5孝昭天皇のときと同様に、御を数の3のこととすれば、3は 離(火)だから、天と御でB列13 天火同人を示していることになる。
残る部分は対応しない。
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別天神五柱は、神世七代に比べて、あっさりとした関係がちょっとあるだけではあるが、それでもこのような関係があるからには、ここまでのすべてが、A〜D列にしたがって数を揃えたものだとしか言えない。
しかし、なぜ、そこまでこだわったのだろうか?
その答えは、このA〜D列までを図にしてみて、なるほど!と思い当たった。
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