A隠された女帝達
架空の天皇を除外したら、次は何をすればよいのか。それを教えるのがA列B列と対応しなかった1神武、12景行、14仲哀、17仁徳、21安康の5人の天皇の『記』年齢のうちの、残る17仁徳天皇の83歳だった。
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83を易の卦に置き換えると36 地火明夷となる。
この卦は 坤(地)を大地、C 離(火)を女性とすれば、「大地の下(墓の中)に女性が眠る」と解釈出来る。
仁徳天皇と言えば、大阪の堺にあるあの大きな仁徳天皇陵を思い出すところだが、暗号は「墓に女性が眠る」と読める……とすると……、
そうか!「仁徳天皇は、実は女性だった」と暗号は示しているに違いない!
そして仁徳溢れる最も男らしい天皇の一人として描かれている仁徳天皇が女性ならば、他の男性として登場する多くの天皇も実は女性であると示唆していることにもなる。
これはとんでもないことだ!そんなことがあってよいのだろうか!
一瞬そんな衝撃に襲われもしたが、とにかくジグソーパズル組み立ての第二段階は、架空の人物とする暗号が見当たらない残る33人の天皇の、男女を識別することだった。
しかし、このままつらつらと文章だけで話しては、混乱も起きそうである。そこで、この辺でそのジグソーパズルの組み立てを図で示すことにする。それが、
図26 41ピースのジグソーパズル(別窓で開きます)、
である。
ここからはこの図26や、組み立ての基本情報がある最初の「表T 古代天皇と易六十四卦の序次」を見ながら話を進めることにするが、その男女の識別は、次のように判断するものだった。
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4懿徳天皇・6孝安天皇・12景行天皇・13成務天皇
まずは、容易に識別出来る4懿徳天皇である。
元年の皇紀151年を易の卦に置き換えると、1は 乾(天)・五は 巽(風)だから、百位の1と十位の5で44 天風姤を示し、残る下一位の1は、この卦の一番下を指していることになる。
この卦は41持統天皇のA列であると共に、最下の陰 の記号の位置は、誰もその勢いを止められない程の力を持っている陰 (女性)を意味するので、「4懿徳天皇は絶大なる力を持った女帝である」と教えているのに他ならないのである。
そして懿徳という漢風諡号は、6孝安天皇のA列9 風天小畜の意義を説明する『易経』の文章中の「君子もって文徳を懿よくす(君子以懿文徳 )」にある文字だから、4懿徳天皇と6孝安天皇は同じ性質を共有していることになる。
したがって4懿徳天皇が女帝ならば6孝安天皇も女帝となる。
その6孝安天皇の国風諡号は大倭帯日子国押人だが、このうちの帯日子を共有する天皇は他にもいる。12景行天皇=大帯日子淤斯呂和気と13成務天皇=若帯日子である。
根子を共有する7孝霊、8孝元、9開化、23清寧の4人の天皇は架空の人物という要素を共有していた。とするとこの帯日子を共有する6孝安天皇、12景行天皇、13成務天皇も共通の要素があるはずであって、孝安天皇が女帝ならば景行天皇と成務天皇も同じく女帝でなければならないことになる。
なお、若と大の違いは、若は一人、大は複数を示すと考えるのが最も素直だから、大倭帯日子(6孝安)と大帯日子(12景行)の位置には、本来複数の女帝がいたのを、国之常立神から持統天皇に至る円周を成立させるために、それぞれ一人にまとめたのだ、と考えるのが順当である。
これで4人が女帝だと判明したわけだが、さらに検証して行くと、約2/3が女帝だった上に、22雄略天皇と26武烈天皇(男性)、34推古天皇と35舒明天皇(女性)は、それぞれ同一人物だとも暗号は示していた。
実際の解読作業では、まさにジグソーパズルのように、あっちこっち飛び飛びに少しずつ判明していったのだが、それをそのまま書いたのでは、あらぬ混乱を引き起こし兼ねない。そこで、整理しつつ、なるべく皇統譜の順に沿って話すことにする。
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1神武天皇・2綏靖天皇
この二人には女帝だとする暗号は見当たらないので、表向きと同じく男性となる。
3安寧天皇
国風諡号の師木津日(日継師)の部分が4懿徳天皇との繋がりを見せるので、3安寧天皇と4懿徳天皇は共通の要素を備えていなければならず、4懿徳天皇はすでに話したように女帝なのだから、この3安寧天皇も女帝となる。
5孝昭天皇・10崇神天皇
5孝昭天皇の『記』93歳を易の卦に置き換えると、9は 乾(天)・3は 離(火)だから、10崇神天皇のA列の序次13 天火同人を示す。これは5孝昭天皇が10崇神天皇と同じ要素を備えていることを示している。
10崇神天皇はA列との対応関係で国風諡号の御真木入日子印恵を「13 天火同人の裏卦7 地水師を見よ」と解釈したが、その7 地水師は4懿徳天皇のA列だから、4懿徳天皇ともこの卦で結ばれていることになる。
とすると、この二人は共通の要素を備えていなければいけないので、4懿徳天皇が女帝である以上、10崇神天皇も女帝となる。
したがって10崇神天皇と同じ要素を備えている5孝昭天皇も女帝となる。
11垂仁天皇
A列の序次14 火天大有は、下から五番目の君位の一陰 の女性が、他の五本の陽の男性を従え所有している形であるとともに、八卦単位で見ると、 乾(天)の男性の上に 離(火)の女性が君臨している形でもある。したがってこの卦は女帝を意味する。
しかしA列との対応関係で話したように、国風諡号の伊久米伊理毘古は、この卦を直接的に表現するのを避けていた。とすると、この国風諡号の態度は女帝であることの打ち消しと受け取れる。したがってこの天皇は、表向きと同じく男性となる。
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16応神天皇
元年の930年と『記』130歳が、共に10崇神天皇のA列13 天火同人を示すので、崇神天皇が女帝である以上、この天皇も女帝となる(1と9は 乾(天)、3は 離(火))。
18履中天皇・19反正天皇
18履中天皇は国風諡号の頭の大江と元年の1060年を易の卦に置き換えると、大と1は 乾(天)・江と6は 坎(水)だから、共に3安寧天皇のA列である序次6 天水訟となる。
一方の19反正天皇は、『記』60歳を易の卦に置き換えると、6は 坎(水)・0(十)は 坤(地)だから、5孝昭天皇のA列8 水地比となる。
したがって、3安寧天皇と5孝昭天皇が共に女帝である以上、この二人も女帝となる。
20允恭天皇
この天皇には女帝だとする暗号は見当たらないので、表向きと同じく男性となる。
22雄略天皇・26武烈天皇
この二人も允恭天皇同様に、女帝だとする暗号は見当たらないので男性だと言える。しかしちょっと気になることがある。
この両者の国風諡号は長谷若の三文字が共通している。共通していないのは大建(大長谷若建=雄略)と小雀(小長谷若雀=武烈)である。
この共通しない部分を易の卦に置き換えると、大建は序次25 天雷无妄(雄略天皇のA列との対応関係参照)、小雀は序次46 地風升(小は陰だからその極みの 坤(地)、雀は風に乗って空を行くことから 巽(風))だから、表裏の関係となる。表裏とは 陰 陽が入れ替わった関係を指す。
表裏の関係だけならば親子ということも考えられるが、長谷若という共通要素もあるので、親子より深い関係すなわち同じ人物を裏側から捉えているのだとしたほうがシックリ来る。
したがって、この二人は同一人物ということになる。
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24顕宗天皇・25仁賢天皇・27継体天皇・32用明天皇
24顕宗天皇と25仁賢天皇は、国風諡号とA列との関係で深く繋がっている。
24顕宗天皇の国風諡号の袁祁之石巣別と27継体天皇の国風諡号の袁本杼は袁の字を共有する。
24顕宗天皇の『記』38歳は32用明天皇のA列35 火地晋(3は 離(火)・8は 坤(地))を示す。
したがって、この4人は同じ要素を備えていることになる。
そこで32用明天皇だが、国風諡号の橘之豊日の豊日は、以下のように解釈出来る。
豊は序次55 雷火豊のこととすれば、この卦は 震(雷)の男性が 離(火)の女性の上で振動している形だから、性交とその結果としての妊娠を暗示し(妊婦の腹は大きく豊かになる)、日は 離(火)を通じて女性を示すので、豊日と合わせれば「妊娠する女性」という意味になる。
とすると32用明天皇は女性なのであって、この人物が女性なら、あとの三人も女性でなければいけない。
28安閑天皇
国風諡号の広国押建金日のうち、A列と対応しない金日の二文字は、易の卦に置き換えれば、金は 乾(天)・日は 離(火)だから、合わせて10崇神天皇のA列の13 天火同人となる。したがって、10崇神天皇が女帝である以上、この天皇も女帝となる。
30欽明天皇
A列との対応関係確認作業では、国風諡号の天国押波流岐広庭のうちの国押を 巽(風)としたが(A列との対応関係参照)、これを踏まえて冒頭三文字の天国押で易の卦に置き換えれば、41持統天皇のA列であるとともに女帝を意味する44 天風姤だからこの天皇も女帝となる。
学校の日本史の授業でも出て来る天皇を、このように簡単に女帝だと言ってしまうのは私自身甚だしく違和感を覚えるが、暗号はこのように女帝だと示しているのだから仕方ない。
31敏達天皇・33崇峻天皇
この二人には女帝だとする暗号は見当たらないので、表向きと同じく男性となる。
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34推古天皇・35舒明天皇
34推古天皇の『紀』36年崩を易の卦に置き換えると、3は 離(火)・6は 坎(水)だから、35舒明天皇のB列64 火水未済になる。
その35舒明天皇の国風諡号の息長足日広額は、頭の息長の二文字は、神功皇后の息長帯比売のときと同様(「1.暗号発見までの経緯」参照)、共に 巽(風)の示す事象だから、この部分で57 巽為風となる。この卦は風が繰り返し吹く様子のイメージであることから「同じことの繰り返し」という意味を持つ。
そこで、続く足日広額を合わせて言葉を補いつつ解釈すると、
「額という字が付く人物を別人として繰り返し即位させることで、歴史を広げ、皇統譜の円周を成立させるために天皇の数を加え足した姫(日)」
と解釈出来る。
推古天皇の幼名は額田部皇女だったと『紀』に記載されている。
したがって、35舒明天皇は34推古天皇と同一人物なのであって、推古天皇は女帝である。
また、推古天皇の国風諡号は豊御食炊屋姫だから、二人の名前を合わせると、32用明天皇を女帝だとする暗号の豊日の二文字を備えることになる。
これも二人が同一人物の女帝であることを告げているのである。
36皇極天皇・38斉明天皇
表向きの物語では、36皇極天皇は大化改新に際し一旦退位し、十年後に38斉明天皇として重祚したことになっているが、国風諡号の天豊財重日足姫は
「皇位を重ねることで皇統譜の円周が成立するように数を足した、妊娠する女性である姫」
という意味に読める。
したがって、表向き同様女帝には違いないものの、38斉明天皇としての重祚はなかったことになる。
37孝徳天皇
この天皇の国風諡号の天萬豊日には豊日の二文字があるから、用明天皇同様女帝だ、と言いたいところだが、上の天萬を易の卦に置き換えると、天は 乾(天)・萬は 坤(地)だから、序次12 天地否で「女帝であることを否定する」という意味になる。
したがって、表向き同様、男性である。
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39天智天皇・40天武天皇・41持統天皇
この三人については、性別変更の暗号はないので、表向き同様に、39天智天皇と40天武天皇は男性、41持統天皇は女帝のままとなる。
これで全天皇の男女の識別は完了したことになるのだが、ここで架空の人物、男性、女性をそれぞれまとめておこう。
架空の天皇 7孝霊。8孝元。9開化。14仲哀。15神功。21安康。23清寧。29宣化。
男 性 1神武。2綏靖。11垂仁。20允恭。22雄略(26武烈)。31敏達。33崇峻。
37孝徳。39天智。40天武。
女 性 3安寧。4懿徳。5孝昭。6孝安。10崇神。12景行。13成務。16応神。
17仁徳。18履中。19反正。24顕宗。25仁賢。27継体。28安閑。30欽明。
31用明。34推古(35舒明)。36皇極(38斉明)。41持統。
表向きの物語と親しんで来た身には、何やら信じ難い面もあるが、ともあれこの男女の別は、『古事記』序文の言葉の使い分けとも一致しているのである。
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