海風通信 after season...

R&P 〜兎と鳩と鍋と蕪のコト



◆「ヨコハマ買い出し紀行」連載10周年記念企画として発表された、フルカラー短編の『R&P』。(コミックス旧版12巻・新版9巻参照のこと。)
 今更ながらで恐縮なのですが、このR&PってRabbit&SilverPigeonの略だったのですねー。作中でのアルファとマルコのそれぞれのバイクの愛称が「ウサギ一号」「はと丸」だったことから、それだけで単純に納得してしまい、まさかモデルとなった機体の名称までもがRabbitとPigeonだったとは思いもしませんでした。(※長年バイク乗りの私ですが、知識や興味に関しては本当に疎く、アルファさんと同程度かそれ以下なのです。)
 そんなワケで、このサイトにしてはホントに珍しく(!?)バイクにまつわるテーマでお送りします。(ニワカなので細かいツッコミはしないように!)
 
 R&Pに登場したバイク(スクーター)は、前述したように富士産業のラビットと新三菱重工のシルバーピジョンでしょう。
 これらを詳細に見ていくと、モデルとなった機体の型式はラビットがS-301B、シルバーピジョンはC-135のようです。お互いにほぼ同時期に活躍していた型式で、大人気となったラビットS-301系の対抗馬として開発されたのがシルバーピジョンC-135でした。このようなライバル関係にあった背景も、『R&P』ではアルファ VS マルコとして物語に反映させているのかもしれないですね。今現在でも『鉄スクーター』というカテゴリでファンも多いという機体ですから、きっと未来のヨコハマ世界でも大事に外観保存されていて、8馬力級電動バイクとして生まれ変わっているのでしょう。
 あと、これは不確定要素かつ蛇足かも知れませんが、『R&P』には1977年に発売された本田技研工業のR&Pという原付バイクの意味合いも含ませているのかも知れませんね。R&Pという機体名はRide & Playの略で、「乗って楽しみ 創造するこころ」を意味しているのだそう。なんとなくアルファやココネたちのバイクの楽しみ方に通じるものがあるような気がしませんか?
 表題の写真は、実物のラビットやシルバーピジョンの撮影ができなかったので、2006年に発売された『ピンキー with ラビットスクーター』を使用して素材としました。シルバーピジョンC-135のミニチュアモデルは残念ながら無いようなので、代わりに「あのキャラ?」が特別参戦してます。

 と、ここでバイクのネタが出たついでに、アルファとココネのバイクについても書き留めておきましょう。(←けっこう質問されるので。)
 アルファのバイクはヤマハのタウニィ(あるいはリトルホンダ)、ココネのバイクはホンダのスーパーカブです。
 これは月刊アフタヌーン巻末誌上記事「アメイジングゾーン」にて、公式で言及されています。
(アルファとココネのバイクのモデルは?)という質問に答えて:
アルファはタウニィ(ナベサダのCMのです)とかリトルホンダ、ココネのはカブです。
おしりのまるいのは、なんとなくイタ車だけど、イタ車マニアの人はおこるかもしれない…。
月刊アフタヌーン1996年12月号「アメイジングゾーン」より
 ナベサダのCMって何?と思われた方は、動画サイトで検索を。
 当時の私はまだまだバイクに乗れる年齢ではなかったことから、「ふ〜ん…。」くらいにしか思ってませんでしたが、それでもこのCMの記憶が残っているということは、やっぱり心の中では「いいなぁ、あれ」と感じていたのかも知れません。
 それからイタ車は痛車ではなく、イタリア車のことです。(←「イタ飯」がもう通用しないことに、つい最近痛感させられました。)

フラッシャーの形状から、S-301Bがモデルと思われます。 ▲しかしこれ、我ながらよく所持していたなぁ……。

【追記】:草稿の段階で、「コーミイシ先生のバイクは?」と知り合いに指摘されてしまったので、あぁ、そ-言えば!と思い急遽追加しました。
 子海石先生のバイクって、これまた今更ながらに気付きましたが、登場年代によって車種が違ってるんですね。一つは第15話「砂の道」の大学勤務時代の使用バイクと、もう一方は第53話「先生のマーク」での女子高生時代に乗っていたバイク。(←気付くのがあまりにも遅ぇーよ!と思われるかも知れませんが、車種とかにも特に興味が無かったのと、なんか「砂の道」の時のバイクがイメージとして固着してしまっていたため、不思議と気付くことも出来ずにスルーしてしまっていたのです。見た目も全く違っていたバイクだったのに、先入観とは恐ろしいですね…。)
 子海石先生の女子高生時代のバイクは、なんと!これがまさにヤマハのタウニィそのものですよ!アルファのバイクは「タウニィをモデルにしています」と言われても、「え〜〜〜?なんとなく、そう見えなくもないけど…」というカンジですが、こちらはほぼそのまんま。雑誌連載当時、なんでこのことが話題にならなかったのかが不思議でなりません。(というか、知ってる人にとってはあまりにも当たり前過ぎたから?)
 当時の私が気付いていたら、絶対に「いいなぁ、コレ」とかってやってたでしょうね。(断言)
 そして大学勤務時代のバイクは、「こんなフツーのバイク、分かんねーよ!」と思いつつも、よく見たらマフラーの配管具合が独特の形状をしていることがわかります。これはセンターアップ・マフラー(ミドルアップ・マフラー)と呼ばれ、悪路でマフラーを損傷しないように上部へと配管した、主にオフ車に見られるスタイルだということ。オンロードバイクにこの傾向がみられるのは珍しいので調べて見ると、それは『スクランブラー・モデル』と呼ばれるタイプのバイクらしいです。これらをもとに検索を掛けてみると、ホンダのCLシリーズシルクロードに辿り着きました。
 「えっ!?ホンダの『シルクロード』って、『芦奈野通信』(*1)にもたびたび出てきた、センセイお気に入りのバイクでは?」
 画像はどこかのサイトで見ていただくとして、見比べてみると確かによく似ています。ただ、タンクの形状やエキパイ(エキゾースト・パイプ)の配管がリアのショックアブソーバーの内側になっていたりなど、若干の相違点も見られました。このあたりは同じ系列の流れを汲むCL(主にCL72)のパーツを組み合わせて、オリジナルのスタイルを描き出しているのかも知れません。
 そう言えば、このバイクが登場したエピソード『砂の道』を強引に解釈してみると、砂に埋もれた湘南海岸→砂漠→『シルクロード』へと掛けてあったりするのではないでしょうか?スクランブラー・バイクというのはオンオフ兼用車ということで、今で言う『デュアルパーパス・モデル』の先駆けとなったバイクであったということから、一見オンロードタイプに見えたあのバイクが、砂浜をある程度走ることが出来た、というのも納得できます。
 うーーん、芦奈野センセイはここまで考えて描き上げているのか…。奥が深い。
 ちなみに若年じじい(おじさん)のバイクも下部にマフラーの配管が確認できないことから、子海石センパイに倣ってスクランブラー・バイクなのであろうと思われます。確認できる資料が乏しいので詳細は解りませんが、まさかトライアンフじゃないよね……?

(*1)月刊アフタヌーン雑誌掲載時に枠外に設けられていた、作者のひと言コメント欄のこと。
(2025年10月29日撮影)