川越ことば・方言


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思わず人に話したくなる 埼玉学」 県民学研究会編 歴史新書 2013年 ★★
第1章 自慢したい埼玉県の風土
 3 埼玉にもお国なまり(方言)があった

「川越大事典」 川越大事典編纂会編 国書刊行会 1988年 ★★★
方言 
【川越ことば】
 東京に近く人の出入りも激しい川越では、文化的交流がたいへん盛んである。言語の上でもこの土地固有の訛りや方言は急速に消えていった。しかも最近のラジオ、テレビの普及が、全国的に言語の平均化に果した役割は甚大である。川越ことばは、地方方言としてその音韻・語法の点から見ても、関東地方全般に類似したものが多く、かならずしも川越だけにかぎったものではない。また言語自体生きている以上、矯正されたり、長く使わずにいて自然に消えていったものもある。昔使われた農具や家具、あるいは年中行事などに表現されたことばの類(たぐい)のように、時代の推移によってすでに失われた方言も多いが、それらも含めて、古老の口からもれたものは、一応の目安として総覧147川越ことば一覧に収録した。   (斎藤)
【だんべえとべらんめえ】
 今でこそ、東京では川越の甘藷のみが名を残しているが、太田道灌が築城した頃は、江戸に職人がいないので、川越からその供給を仰ぎ、僅々100日の間に江戸城を築きあげた。道灌が入城したのちも、川越は地方文化の中心で、風俗・言語すべて川越をまねるのがハイカラだったから、江戸人は川越に対して頭が上がらない。それに山王様も築城と同時に川越の星野山無量寿寺から輸入した。無量寿寺の開山慈覚大師が、比叡山から分霊して境内に祀っておいた山王権現を、「これは手頃だ」といって江戸城内紅葉山へ持ってきて、江戸城の産土神(うぶすながみ)と崇めた。山王様はその後貝塚(半蔵門外の総称)に移され、明暦の大火に焼けたのちは、溜池の築山といった今の所へ遷座した。家康入城後は山王権現を徳川家の産土神に定め、武蔵の総社たる神田明神とともに深く尊信した。6月15日を山王祭り、9月15日を明神祭りと称し、これを天下祭りと称した。以上は矢田挿雲の大著「江戸から東京へ」に明記しているところである。また川越商人は、江戸の大都市化とともに、そこを取引の大きな対象にし、城下周辺の物資の集散よりも、むしろ江戸を相手にする取引に重点を置き始めた。江戸は元禄年間(1688〜1704)頃すでに人口100万に達し、その半数の50万は純然たる消費層である武家人口であった。それに目をつけたのである。江戸と川越を結ぶ輸送路である新河岸川の舟運をおおいに利用し、しだいに城下町商業は発達していった。川越―大江戸間の直結の成果は、嘉永年間(1848〜1854)頃の「全国御城地繁花鑑」を見てもわかる。東前頭12位、武州川越の名が光っている。その頃の問屋商人はしだいに資本を蓄積して豪商となり、あるいは領内物資の取扱いにより領主と密接な関係を持つ御用商人として台頭した。中でも穀類商人は、大坂堂島の米相場を左右するほどの力を持っていたといわれている。城下町の商工業の区域は、上五カ町が商人町で、下五カ町は職人町と、分けられていた。さて、そこでの会話には、商人あていねいな江戸弁、職人、特に鳶や棟梁たちは歯切れのよいべらんめえを使った。粋で威勢のよい言動が、開城前の江戸人には大変な魅力で、さっそくまねが流行(はや)ったのである。こういうわけで川越っ子が江戸弁を使ったという表現は正確でない。川越弁を江戸っ子が使い出し、いつのまにかこれが江戸ことばに化けてしまい、本家・分家が逆になってしまったのである。一方「だんべえ」は、江戸者にいわせると、ずっと奥の山家の者たちの日常語ということになる。川越では近郷はすべて、また北の熊谷、西の秩父方面、南はずっと東京の農村部まで、それに神奈川の北部・西部も「だんべえウクライナ」といえた。しかし最近は、この地帯も首都圏とあって標準語に侵蝕されてしまっている。戯作者十返舎一九の「江戸見物」には「花のお江戸のまん中、馬喰町、小伝馬町は他国の人のための旅籠屋が多く、大江戸の気性そなわり、難渋する旅人をすくひ、金銭にかかわらず、世話をなして、万事親切にするを商売の冥加と考へるがゆへに、日ましに繁盛しにぎわひける。かの山家の二人づれ、はなげののびたか、ここに逗留し、名所名所を見物と出かけける」――さてこの二人「お江戸は、がいに(非常に)にぎやかなこんだァ、この人どをりを見なさろ、うらァうったまで申した」「あ(な)るほど、人のよんこ(しこたま)あるところだァ、この人さあが毎朝小便(しょんべん)するだんべいが、一人(ふとり)で一合づつしても、でかいこんであんべい。うらが国さあの肥(こやし)にしてへもんだァ」「やうやうと馬喰町へきた。そふぞよい髱(たぼ)(遊女の意)のある家へとまりたいものだ」――と投宿するまでを描いている。今は、こういう形でしか「正調だんべえ」は残っていない。川越市西部の霞ヶ関地区で、昭和11年から18年までに集録した地方語を挙げる総覧147は川越市文化財調査委員矢島健三が現地で集録したものの主要な一部であるが、市街地でも、かなり通用していた。現在は人口流入と都市化が進み、方言は死語化が著しい。   (東郷)

「コンサイス日本人名事典改訂版 三省堂編修所 三省堂 1990年
 矢田挿雲(やだ そううん)
1882〜1961(明治15〜昭和36)大正・昭和期の小説家・俳人。
(生)石川県。(名)本名義勝。(学)早大。

総覧147.川越ことば一覧
※下線の付いたものは、「小江戸川越検定認定問題集」から追加。

【あ】
あいつ(彼)
あかっこ(赤子)
あかっぱじ(恥)
あかんこ、あかんばや(たなご)
あかんべえ(嫌(いや)
あくてえ(悪口)
あげもん(天婦羅)
あしいれ(樽入れ:公家の婚前結婚、花嫁の家に男が一晩泊る。足入れ婚のこと)
あしっこ、あとっこ(足)
あったけえ(温(ぬく)い)
あなっこ、あなぼこ(穴)
あに(何)
あにこく、あにこきゃがる(何をいう)
あばらっばね(肋骨)
あんだべ、あんだべえ(なんだろう)
あんちゅうこと(なんということ)
あんも(餅)
あんよ(足)
【い】
いいだんべ(よろしい)
いくべえ(行こう)
いしあたま(堅物(かたぶつ)
いしっころ(石)
いっかど(ひとかど)
いどころね(居眠り)
いぬっころ(犬)
いのちしらず(むこうみず)
インギン(隠元豆)
【う】
うっくるけえる(転倒)
うっちゃあすれる(忘れる)
うっちゃける(つぶれる)
うっちゃる(捨てる)
うっちんだ(死ぬ)
うまのべろ(木蓮)
うんこ、うんち(糞)
【え】
えぐべえや(行こう)
えっかど(ひとかど)
えっくくる(くくる)
えっける(乗せる)
えっつける(くくりつける)
【お】
おかちめんこ(みにくい顔)
おかぶ(陸稲)
おがみや(先達(だつ)
おくり(奥の方)
おけら(一文無し)
おこわくった(参った)
おちゃおけ(茶受け)
おっことす(落す)
おっちばる(縛る)
おっちんだ(死ぬ)
おっつぶれる(つぶれる)
おっぱさむ(挟む)
おっぱしる(走る)
おっぱずす(外す?)
おっぺしょる(圧し折る)
おっぺす(押す)
おてて(手)
おとうか(狐)
おとと(魚)
おにっぱ(犬歯)
おめえ(お前)
おもる(奢る)
おんべっかつぎ(御幣担ぎ)
 
【か】
かあながれ(水死体)
蚊いぶし(蚊遣(や)り)
かえりんぼ(先祖帰り)
かかあでんか(嬶あ)
かくねっこと(隠れんぼ)
かくねざとう、かくれざとう(神隠し)
がしゃがしゃ(クツワムシ)
かぜばば(風)
かたいれ(あしいれ、婚前結婚)
かたっきん(インポ)
かち(拍子木)
がっかり、がっから(落胆)
かつぎや(御幣担ぎ)
かったるい(疲労)
かっぽ(足袋)
かどっこ(角)
からきし(ぜんぜん)
からっけつ(一文無し)
かんぐ(嗅ぐ)
かんご(籠)
かんじゅうする(数える)
【き】
きそっぱ(紫蘇)
きどころね(居眠り)
きぬう、きにゅう、きんにゅう(昨日)
きびしょう(急須)
きゃあるか(帰ろう)
きゅうすなう(気絶する)
きれっこ(布切れ)
【く】
食うべえ(食べよう)
くさわけ(発起人)
くず(落葉)
くぜる(鳥の鳴声、くどい)
くそっぱじ(恥)
くつける、くっつける(つける)
くっちゃく、くっつぶす(かみつぶす)
くでえ(くどい)
くびくくり、くびっこ(首吊り)
【け】
げえぶん(外聞)
けえりんぼ(先祖帰り)
けえるべえ、けえんべえ(帰ろう)
けなりい、けなるい(うらやましい)
けぶい、けぶたい、けぶってえ(煙い)
【こ】
こえたんご(肥桶)
こじい(行け)
こすい(狡い)
こっぱ(木片)
こっぱんざる(小笊)
ごまっかす(狡い)
こんこんさま(狐)
こんぼう、こんぼうず(蕾(つぼみ)
 
【さ】
ささらほうさら(目茶苦茶)
さっぽる(捨てる)
さびい、さぶい、さみい(寒い)
【し】
しかめっつら(顔)
しっちゃかむんちゃか(支離滅裂)
しとっぽい(湿っぽい)
しび(藁)
しめえっこ(末子)
しゃつら(顔)
しょうぎ(小笊)
しんだんべ(死体)
しんどい(疲労)
じんばら(大腸)
【す】
すいっちょ、すいっちょん(馬追い)
すえて(仲間に入れて)
すっからかん、すっかんぴん(一文無し)
すっぽる(捨てる)
すりがね(早鐘)
するべえ(やろう)
【せ】
せえ(茶漬け、おかず)
せえめし(混飯)
せともん(瀬戸焼)
せなだめ(肥壺)
ぜに、ぜね、せね(銭)
せんみ、せんめ(蝉)
せんみつ(嘘つき)
【そ】
 
【た】
たかみ(高所)
たっぽ(足袋)
だぶ、だぶせえ、だぶすかし(馬鹿)
たまっこ、たまっころ、たまんころ(玉)
【ち】
ちっとんばい(少し)
ちにる、ちにくる(つねる)
ちびてえ(冷たい)
ちゃおけ(三時休み)
ちゃぞっぺ(茶漬け)
ちょんぎん(切る)
ちんころ(犬)
ちんば(跛者)
【つ】
つぎ(布切れ)
つけあげ(天婦羅)
つっけえす(突返す)
つっけんどん(邪慳(じゃけん)
つっつく(突く)
つっぴゃある(水に落ちる)
つぶあし、つぶっこ(素足)
つましくする(節約する)
つら(顔)
つんだす(突出す)
つんもす(燃やす)
【て】
でえく、でゃあく(大工)
でえこ、でやこ(大根)
できもん(腫物)
でっかい、でっけえ(大きい)
てて(手)
てばたき(拍手)
でほうでえ(出まかせ)
てめえ(お前)
てやぁ(手合い)
てんぐっぱ、てんごっぱ(八ツ手)
でんぐりけえる(転倒)
てんご(天狗)
てんぬき(時どき)
でんべそ(出べそ)
【と】
とうし(始終)
ときたま(時どき)
どくそ、どんぐそ(糞)
ところまんだら(所どころ)
どざえもん(水死体)
とっつぁばく、とっつえる(裁く)
とっつかまえる、とっつかめる(捉まえる)
とっとかめる(掴まえる)
とっぱしる(走る)
とっぱずす(外す)
とと(魚)
とんかち(金鎚)
とんかちあたま、とんかちやろう(堅物)
とんちゃんさあぎ(大騒ぎ)
とんとん(等しい)
とんび(鳶)
どんぶり(腹掛け)
 
【な】
なっぱ(菜)
なめらっくじら(なめくじ)
ならび(等しい)
なりてん(南天)
【に】
にいやか(賑やか)
にごい、にゅうい(匂い)
【ぬ】
ぬ(の)くとい(温い)
【ね】
ねぶい、ねぶたい、ねぶってえ(眠い)
ねぶき(いびき)
ねるべえ、ねるべえや(寝よう)
ねんじん(人参)
【の】
のしこみ(うどん)
のす(急ぐ)
のっける(乗せる)
のて、のてっぱち(むこうみず)
のめっこい(滑らか)
のんのさま(神様・お月様・仏様)
 
【は】
はいつくばい(はらばい)
はかがいく(はかどる)
はかせえ、ばかすかし(馬鹿)
ばかっつぁぎ(大騒ぎ)
ばくちうち、ばくちぶち(博徒)
はし、はじ、はじっこ、はじっばた(端)
はずれ(不作)
はなぐるま(いびき)
はなたれこぞう、はなったらし(鼻垂れ)
はばきき(顔役)
はらぺこ(空腹)
はんとっこ(未熟児)
ばんばん(はらばう)
【ひ】
ひかげもん(罪人)
ひくみ(低所)
ひだりい、ひだるい(空腹)
ひっくくる(くくる)
ひっくじく(圧し折る)
ひっくりけえる(転倒)
びっこ(跛者)
ひっこぬく(引抜く)
ひっつねる、ひねくる(つねる)
ひっぱる(引く)
ひっぱれ(遠縁)
ひぼか、ひもかあ(煮込みうどん)
ひゃあもねえ(一文無し)
ひゃある(はいる)
ひゃくひろ(大腸)
百万だら(くどい)
ひゃっこい(冷たい)
ひょっこ(雛)
ひよわい(病弱)
ひんにくる(つねる)
ひんぬく(引抜く)
ひんまくる、ひんめくる(引きめくる)
ひんまげる(引曲げる)
【ふ】
ぶきっちょ(不器用)
ふたがっこ(双子)
ぶっちゃける、ぶっつぶれる(つぶれる)
ぶっつく(触れる)
ふんじばる(縛る)
ぶんず(エンドウ)
ぶんまあし(分度器)
ぶんまわす(回す)
【へ】
へえてえ(軍人)
へえてえふく(軍服)
へそまがり(変人)
へんくつ、へんぼうれ(変人)
【ほ】
ほそっぴい(やせる)
ぼっころす(打殺す)
ほっぽ(穂)
ほねがらみ(梅毒)
ほらふき(嘘つき)
 
【ま】
まがりっかど(角)
まっしき(ぜんぜん)
まっさら、まっつあら(真新しい)
まねっこと(まねごと)
まやかされる(化かされる)
まるっきり(ぜんぜん)
まんみつ(嘘つき)
【み】
みじこく(みじめ)
みそっぱ(虫歯)
みたび(隠元豆)
みはぐる、みはぐった(見落とす)
【む】
むしき(虫封じ)
むてっぽ(むこうみず)
【め】
毎日、毎年等…毎のつくことばはほとんど「めえ」と発音する
めっける(みつける)
めったやたら(目茶苦茶)
めどっこ(穴)
めのたま、めんたま(目玉)
めめず(ミミズ)
めをつぶる、めをくっつぶす(目を瞑る)
めんめん(うどん)
【も】
 
【や】
やせっこける、やせっぽち(やせる)
やつ(彼)
やっぱ、やっぱり(やはり)
やめべえ(止そう)
やるべえ(やろう)
【よ】
よかんべ(よろしい)
よすべえ(止そう)
【ら】
らんぐいば(虫歯)
らんちきさあぎ(大騒ぎ)
【り】
りんりん(鈴虫)
【わ】
わらしび(藁)
わるさ(いたずら)


【ん】
んまのしたべろ(木蓮)

「川越市史民俗編」 川越市総務部市史編纂室編 川越市 1968年 ★★★
第十節 方 言
 方言は「地方の言語現象であってその音韻法には各地方の特色が見られるものである。したがって「なまり」や「なになに弁」も当然方言であることはいうまでもない。
 ここでは、当地におけるそれらの主なるものを言語学の資料として採集した。番号は東条操の簡約方言手帖によった。

1 太 陽 オヒサマ おてんとーさま おてんとさん
2 参 星 ミツボシ みつぼしさま
3 入道雲 ニュードーグモ おにぐも ゆーだちぐも
4 雷   カミナリ らいさま かみなりさま
5 梅 雨 ツユ にゅーばい
6 氷   コーリ
7 氷 柱 ツララ あめんぼー ごろんぼー
8 霜 柱 シモバシラ たっぺ
9 霙   ミゾレ かざはな あられ
10 旋 風 ツムジカゼ たつまき つもじかぜ つむじ

11 昨 夜 ユーべ ゆんべ きのーのばん
12 一昨夜 オトトイノバン きのーのばん おとてーのばん
13 明々後日 シアサッテ やのあさって
14 明々々後日 ヤノアサッテ しあさって やなあさって
15 夜 明 ヨアケ あけがた
16 朝   アサ あさっぱら
17 夕暮れ ユーガタ くれがた
18 夜   ヨル よろ ばんげ
  夜 業 ヨナベ おなべ
19 終 日 イチニチジュー いちんちじゅー
20 終 夜 ヨドージ よっぴて ひとばんじゅー

21 峰   ミネ
22 山 頂 サンチョー てっぺん ちょーじょー
23 峠   トーゲ
24 坂   サカ
25 崖   ガケ がけっと
26 洞   ホラ ほらあな
27 谷   タニ やつ
28 湿 地 シッチ しけち
29 石 地 イシジ じやりち
  叢   クサムラ くさばっこ ぼさっか くさっぱ やぶさっか がさっか
31 急 流 キュウーリュー
32 淀   ヨド おんまーし
33 河 岸 カシ かわっぱた かわっぺり 物洗場 かわだな せんたくば
34 砂   スナハマ すなっぱら
  暗 礁 アンショー
36 浪   ナミ
37 粘 土 ネバツチ ひなつち へなつち ねばどろ あかつち
38 石 油 セキュ せきゅー
39 洪 水 オーミズ でみず
40 地 震 ジシン

41 犬   イヌ わんわん(児)
42 鼬   イタチ むじな
43 鼠   ネズミ おじょろ

44 梟   フクロー ぼーつく みみずく めめずく ほーすっぽ おーすっぽ ほーほーどり ほーこー おくっぽ てんきどり ごんべ
  木 兎 ミミズク みみつく ほうすけ
45 燕   ツバメ つばくろ つばくら
16 杜 韻 ホトトギス ほっちょ
  郭 公 カッコー かっこん かっこどり
47 啄木鳥 キツツキ きったたき
48 鶺 鴒 セキレイ けつふりおかめ へっかた
49 魚 狗 カワセミ しょーびん
50 ? ?(辟に鳥と虎に鳥) カイツブリ もぐりっちょー かいつむり
51 部葦鳥 ヨシキリ けしけし きりきり けいけいし
52 五位鷺 ゴイサギ ごいっつさぎ
53 鷦 鷯 ミソサザイ ちやっちゃ みそぬすっと

54 比目魚 ヒラメ へらめ
55 鮪   マグロ
56 鯔   イナ ぼら
57 鰤   ブリ
58 鯉   コイ
59 鰻   ウナギ
60 鼈   スッポン
61 沙 魚 ハゼ だぼっちょ
62 杜父魚 カジカ かじっか
63 丁班魚 メダカ めたか めだかっこ
64 ?(魚に與) タナゴ

65 蛇   ヘビ へーび ひーび ながむし
66 蝮 蛇 マムシ どくへび
67 蜥 蜴 トカゲ ちょろちょろへび かがっちょ かまぎっちょ はがみっちょ かまきり
68 蛙   カエル かえろ がえる げーろ かいる かえるんぼ かわず
69 蟾 蜍 ヒキガエル おひきげーろ おーひきおしき がま えぼがえる おーさまがえる いぼた
70 蝸 牛 カタツムリ でんでんむし まいまいず でんろ でんでんだいろ
  蛞 蝓 ナメクジ なめくじら なめっくじ なめらっくじ

71 蝶   チョー ちょうちょう ちょうちょうばっこ
  毛 虫 ケムシ けんむし けんむ
72 蚕   カイコ おこさま おかいこ おこ
  蚕 蛾 が ちょうちょう
73 蜻 蛉 トンボ とんぶ どんぶ どんぼ
74 蝗   イナゴ なご
  バッタ きちきちばった はたおりむし
75 蟷 螂 カマキリ おがみむし おがみっちょ はらたちごんべ はいとりばばあ おまんばかばか かまぎっちょ とかげ おまんぱく
76 砂?子(てへんに妥) アリジゴク おしっこかっこ かっこありっくい あとざりおしっこ あとしやりごっこ
77 水 黽 アメンボー すまんば かはこし かねたたき
  鼓 虫 ミズスマシ しーとめ すーとめ すいとめ くるまひき
78 蟻   アリ ありんど ありご

79 水 虎 カッパ かわたろー
80 化 物 バケモノ おばけ ばけもん

81 無果花 イチジク
82 団 栗 ドングリ ぎんたんぼ じんたんぼー かしのみ かんかんぼー
83 松 毬 マツボクリ まつぼっくり まつこぶし まつっかさ まつぼーぐり まつのみ まつこごれ まつだんご まつたま
84 椿の実 ツバキノミ
85 桑の実 クワノミ とどめ
86 柚 実 ユヅ
87 蕗 薹 フキノトー ふきんぼ ふきのと ふきのめ
88 土 筆 ツクシ つくしんぼー つぎな おとかのちんぼー
89 木 槿 ムクゲ もくげ むくれんず むくれん もくれん
90 樒   シキミ しびき
91 玉蜀黍 トーモロコシ とんもろこし
92 馬鈴薯 ジャガイモ じゃがたら さんどいも なついも
93 甘 藷 サツマイモ おさつ さつま
94 南 瓜 トーナス かぼちゃ
95 蕃 椒 トーガラシ とんがらし
96 蚕 豆 ソラマメ おたふく
97 春 菊 シュンギク
98 葱   ネギ にぎ
99 茄 子 ナス
100 蕈   キノコ
101 菫   スミレ すもーとりぐさ すもーとりばな
102 白頭翁 オキナグサ
103 酸奨草 カタバミ おちちのき すいものぐさ しょっぱぐさ とんぼぐさ
104 虎 杖 イタドリ いったんどり すっぱんこ
105 石 蒜 マンジュシャケ ひがんばな どくぐさ しぶとばな 
106 露 草 ツユクサ ぼーしばな あおはな つきくさ
107 施 花 ヒルガヲ あめふりばな あめふりあさがお のらあさがお
108 鳳仙花 ホーセンカ こーせんか ほーせんかん
109 蒲公英 タンポポ たんぽ
110 鼠麹草 ハハコグサ はーこぐさ

111 父   チチ おとーちゃん とっつあん おやじ とー
113 母   ハハ かーちゃん おっかやん おっかー おふくろ
114 欠
115 伯叔父 オジ おっつあん おじさん おじご
116 伯叔母 オバ おばちゃん おばやん おばご
117 兄   アニ あんちゃん にいせな あんやん あにき
118 姉   アネ ねーちゃん あんね ねいやん
119 嫡 子 アトトリ あとつぎ そーりょー あとめ
120 末 子 スエコ しまいっこ すえっこ ねこのしっぽ
121 主 人 シュジン しじん たいしょー おやだま
122 主 婦 シュフ おくさん ごしんぞ おかみさん
123 息 子 ムスコ むすっこ せがれ やろーぼー
124 娘   ムスメ むすめっこ じょー あま
125 後 妻 ゴサイ ままおっか にどめ
126 本 家 ホンケ おーや ほんたく
127 分 家 ブンケ しんや しんたく
128 親 類 シンルイ おやこ みうち
129 血 統 ケットー ちすじ すじ けーず
130 内證金 ホマチ へそくり
131 乳 児 アカンボ あかんぼー あかっこ
132 子 供 コドモ やろっこ がき
133 青 年 ワカモノ わかいし あんちゃん
134 大 人 オトナ
135 老 人 トシヨリ としよーり
136 下 男 ゲナン おとこ
137 下 女 ゲジョ おんな おさんどん ねーやん
138 食 客 イソーロー くっつぶし かかりっと

139 欠
140 欠
141 馬 鹿 バカ あまちゃん ばかすかし はんま のろま ぬけさく あほー とんま しょーなし
142 怠惰者 ナマケモノ なまけもん ぐーたら ろくでなし ごくっつぶし
143 臆病者 オクビョーモノ いくじなし おっかながり へっぽこ よわむし
144 意気地無 イクジナシ ぐず へっぽこ
145 朝寝坊 アサネボー ねぼすけ
146 寒がり坊 サム さむがりんぼー
147 虚言者 ウソツキ うすつき うそっこき そらっぺ ほらふき
   虚 言 ウソ うそっぱち うすへだら
148 饒舌家 オシャベリ おちゃっぴー べんし からくち
149 お世辞 オベッカ おてんたら おべんちゃら おじょーず
150 お転婆 オテンバ おきゃん あばれ おはねのて
151 吝嗇者 ケチンボー しみったれ しゃんぼ ひっつかみ しぶっかき
   倹約する こすい たまか つましい しまつ
152 財産家 カネモチ だいじん
153 道楽者 ドーラクモノ やくざもん ろくでなし
154 欠
155 酔 漢 ヨッパライ さけっくらい よいどれ のんべい のんだくれ

156 神 官 カンヌシ かんのし せんだつ
157 市 子 イチコ くちよせ いちっこ
158 賣ト者 ウラナイ はっけみ せんだつ
159 仲 買 ナカガイ かいつぎ
160 丁 稚 コゾー でっち
161 行商人 ギョーショー かつぎあきない たびあきんど しょいあきんど
162 桶 屋 オケヤ
163 土 方 ドカタ かしら
164 猟 師 カリウード てっぽーぶち りょーし
165 魚 屋 サカナヤ
166 漁 師 リョーシ
167 欠
168 乞 食 コジキ もらいにん ものもらい おこも こも
169 掏 摸 スリ かっぱらい
170 強 盗 ゴートー ぬすっと どろぼー やとー きりこみ

171 頭   アタマ おつむ おてんてん
172 旋 毛 ツムジ つもじ
173 突 額 オデコ でびたい
174 眉 毛 マイゲ まみげ まゆげ まみや
175 唇   クチビル くちべろ くちべる
176 歯   ハ
177 唾   ツバ つばき
178 痰   タン たんころ
179 咳   セキ
180 腹   ハラ おなか
181 指   ユビ いび
   小 指 コユビ しこいび
182 膝 頭 ヒザ ひさっこぞー ひざっこぶ へざ
183 踵   カカト
184〜187
188 黒 子 ホクロ ほころ
189 痣   アザ しみ
190 腫 物 デキモノ おでき できもん

191 感 冒 カゼ かぜっぴき
192 赤 痢 セキリ
193 癲 癇 テンカン あわふき
194 梅 毒 バイドク かさっかき
195 痘 痕 アバタ もっかさ じゃんか
196 腋 臭 ワキガ わくさ
197 吃   ドモリ どんもり どもくり
198 唖   オシ うしんぼ おーしんぼ おっち
199 片 目 メッカチ がんち
200 火 傷 ヤケド やけどー

201 着 物 キモノ きもん べーこ
202 晴れ着 ヨソユキ よそいき いいきもん いっちょーらい とっとき
203 仕事着 シゴトギ のらぎ
204 寝間着 ネマキ おねま
205 筒 袖 ツツソデ つつっぽ
206 袖 無 ソデナシ ちゃんちゃんこ
207 胴 着 ドーギ
208 肌 着 ハダギ じばん じばんこ
209 半 天 ハンテン はっぴ
210 褞 袍 ドテラ かいまき たんぜん
211 股 引 モモヒキ ももしき
   尻端折 シリハシヲリ しりっぱしょい
212 腰 紐 コシヒモ したじめ したひぼ しごき

213 欠
214 洋 傘 コーモリガサ
215 足 駄 アシダ ごすんば たかば たかげた
   下駄の歯 げたっぱ
216 駒下駄 コマゲタ
217 木綿糸 モメンイト ぬいそ
218 綿   ワタ
219 裁 縫 サイホー おはり はりしごと
   仕立直し ぬいなおし ぬいかえし
220 洗 濯 センタク あらいもん

221 食 事 あさめし おひる よーめし こじはん (間食)おちゃおけ
222 副食物 オカズ かて おさい そーざい あせ あせもん
223 糅 飯 ゴモクメシ ごもく まぜごはん かてめし おすしのまんま
224 雑 炊 オジヤ ごっためし
225 味噌汁 オツケ おみおつけ おしる おしー
226 酒の肴 サケノサカナ
227 刺 身 サシミ
228 蒲 鉾 カマボコ いた
229 口取り クチトリ よせもの しんかん
230 糠味噌漬 ヌカミソヅケ ぬかづけ どぶづけ
231 菓 子 クワシ かし
232 供 餅 オソナエ おそねー
233 飴   アメ
234 炒   コガシ こーせん
235 酢   ス

236 草屋根 わらぶきやね くさぶきやね むぎっからやね
237 棟   ムネ ぐし
   棟上祝い たてまえ
238 庇   ヒサシ のき ふさし
239 物置二階 モノオキニカイ たなぎ
240 柱   ハシラ
241 部 屋 ヘヤ でー まがり なんど
242 爐   イロリ かまどん
243 台 所 ダイドコロ かって
244 竈   カマド へっつい かまどん
245 井 戸 イド えど
246 小 屋 コヤ ものき
247 便 所 ベンジョ はばかり ちょーずば ごふじょー
248 湯 殿 ユドノ ふろば ゆば すいほろ
249 下 水 ゲスイ とぶ ため
250 屋敷林 うらやま やま
251 押し入れ オシイレ とだな ふすま
252 窓   マド
253 雨 戸 アマド と
254 庭   ニワ つぼにわ
255 土 間 ドマ だいどころ
256 上り口 あがりはな

257 燃 料 タキツケ もしつけ そだ
258 マッチ まち
   付 木 ツケギ はやつけぎ つけげ
259 松 葉 マツバ まつっぱ
260 塵 芥 ゴミ
261 陶 器 セトモノ せともん
262 椀   ワン わんこ おひら
263 箸   ハシ
264 飯杓子 シャモジ しゃくし おしゃも
265 米 櫃 コメビツ おひつ
266 擂 鉢 スリバチ あたりばち
267 擂粉木 スリコギ あたりぼー すりんぼー
268 俎 板 マナイタ まねーた きりばん
269 包 丁 ホーチョー
270 小 刀 コガタナ きりだし こがたん こごたな
271 徳 利 トクリ とっくり
272 長火鉢 ナガヒバチ
273 五 徳 ゴトク さんとく
274 十 能 ジューノー じゅーの
275 七 輪 シチリン こんろ
276 釜   カマ
   茶 釜 ちゃがま
277 笊   ザル しょーぎ
278 束 子 タワシ たーし
279 水 甕 ミズガメ かめ
280 桶   オケ ておけ
281 踏み台 フミダイ ふみつぎ
282 拂 塵 ハタキ さいはい たたき
283 箒   ホーキ
284 熊 手 クマデ くもで
285 槌   ツチ とんかち かなづち さいづち
286 鋸   ノコギリ
287 盥   タライ
   箍   タガ たんが
288 秤   ハカリ ちぎり
289 天秤棒 テンビンボー かつぎぼー
290 半 紙 ハンシ はんしっかみ

291 欠
292 岩田帯 イワタオビ はらおび
293 忌 屋 イミヤ
294 産 婆 サンバ とりあげばーさん ことり
295 出産祝い さんみまい おさんいわい
296 産 衣 ウブギ おぼぎ おぶぎ はつぎ
297 襁 褓 オシメ おむつ おしみ しみし
298 宮参り ミヤマイリ みやめーり おびあげ
299 乳母車 おばぐるま
300 おしゃぶり おしゃべり ちちっくび

301 紙 鳶 タコ
302 独 楽 コマ べーごま きごま かねごま
303 お手玉 オテダマ おしと なっこ なんご およっこ おいっこ ざっき おぶーつ
304 竹 馬 タケンマ たかんま
305 飯 事 ママゴト まんまやごと まんまっこと おきゃくやごと おふるまいっこ まんまさんごと
306 片足飛び チンチンモガモガ あしけんけん びっこんこん しっこんこん しここんひここん すけこん ちんちん いしきり いしけん
307 石 拳 ジャンケン ちっけん じゃんけんぽん ちいりさいけん けんちっか けんちょー ちっこいちーよ ちっちっち あいこん
308 鬼 事 オニゴッコ おこっこ おにさん おにやっこ おっかけっこ
309 根木打 ネッキ ねっくい にっき
310 人 形 ニンギョー ねんぎょー ねんねっこ にんぎょっこ

311 許 嫁 イイナヅケ
312 見合い ミアイ みやい
313 媒酌人 ナコード なこど なこーぞ せわにん
314 結 納 ユイノー いいのー
315 婚 礼 コンレイ ごしゅーぎ
316 花 嫁 ハナヨメ よめっこ よめさま
317 里帰り サトガエリ さとげーり
318 欠
319 離 縁 エンキリ
320 寡 婦 ヤモメ ごけ
321 病 気 ビョーキ
322 怪 我 ケガ

323 葬 儀 ソーシキ とむらい ともらい
324 葬 送 ノベオクリ かいそー みをくり
325 骨拾い コツアゲ ほねひろい こつひろい
326 墓 地 ボチ おはか はかば らんとば
327 穴掘り人 アナホリ とこばん とこほり あなばん あなっぽり
328 形見分け カタミワケ ゆずり ゆずりわけ
329 一周忌 イッシューキ いっついき いちねんき
330 忌 服 ぶく

331 祭り前夜 ヨミヤ よいまつり よまち
332 祭 り マツリ ほんまつり
333 祭り翌日 あとかんじょー かんじょーび
334 山 車 ダシ やたい
335 饗 應 チソー ごっそー
336 會 飲 ダシアイ わりまえ よりあい うまかたかんじょー
337 土 産 ミヤゲ
338 祝 儀 シューギ おいわい
339 返 礼 ヘンレイ おかえし かいしもの
340 釣り銭 ツリセン おつり

341 嫉 妬 ヤキモチ やきもちやき やっかん
342 悪 口 ワルクチ あくたい
   私 語 ないしょばなし こそこそばなし
343 喧 嘩 ケンカ けんか いさかい
344 絶 交 ゼッコー なかたがえ
345 仲間外れ なかまっぱずれ のけもの
346 共 有 モヤイ もあい
347 頼母子講 タノモシ むじん
348 心配ごと シンパイゴト くろー しんぺーごと
349 縁 起 エンギ いんぎ
350 運   ウン うんせい ま
351 避病院 ヒビョーイン
352 鳥打帽 トリウチボー ぶっとばし はっとばし くいにげしゃっぽ
353 左利き ヒダリキキ ひだりぎっちょ ぎっちょ ひだりしき ひだりこき
354 倒   サカサマ さかさ ひっくりけっちょ
355 私の家 おらがうち あたいんち おらーち おれんち

356 一頭(獣) いっぴき
   一尾(魚) いっぴき
357 一 返
358 二合五勺 ニゴーゴシャク
   五 合 ゴゴー ごんごー
359 一 升 イッショー
360 三分ノ一 サンブンノイチ みつわり さんがいち

361 驚 く オドロク たまげる びっくらする
362 怒 る オコル はらをたてる ふくれる しかる いぶくる
363 呻 る ウナル うめく
364 泣 く ナク ほえる
365 叫 ぶ サケブ どなる よばる
366 叱 る シカル おこる しょーきする
367 困 る コマル へこたれる まいる よわる
368 睨 む ニラム にらめる にらみつける
369 目が覚める メガサメル めがあく
370 嗅 ぐ カグ
371 歩 く アルク のす
372 倒れる タヲレル おっころばる ぶったをれる ひっくりかえる ぶっけーる
373 正坐す スワル そはる
374 胡坐す アグラヲカク あぐらをかく
375 安座す ラクニイル
376 負 う オンブスル ニナウ おぶー ぶっちゃる しょー しっちょー
377 抱 く ダク だっこ かかえる 持ち上げる もちやげる
378 弄   イジル いじくる さわる わるさする
379 打擲す ウツ ぶつ たたく なぐる ひっぱたく ぶっこくる ぶっくらす どやす
380 破壊す コワス ぶっこわす ぼっこす
381 戯れる フザケル わにっけーる かまう ふだける ひょーげる
382 虐める イジメル いじをつっつく
383 嘲弄す カラカウ かまう おちゃらかす
384 威 す オドス おどかす たまげらかす
385 羞 む ハニカム はずかしがる はがむ
386 始める ハジメル おっぱじめる やりだす
387 寄越す ヨコス
388 なさる する
389 下さる くれる
390 死 ぬ なくなる くたばる のびる おっちぬ きえる
391 孵 る カエル はやける
392 成長する でっかくなる のびる そだつ
393 腐 る クサル すえる
394 落ちる おっこちる
395 失なう ナクナル めっからなくなる
396 下りる
397 整理する カタヅケル かたす しまつする とんのける かたよせる ちゃんとする
398 出来る やれる
399 居 る イル
400 堪えぬ やりきれぬ かなーない
401 善 い ヨイ いい
   善くない よかない よくねー
   善いけれども いいけんども
   善ければ いいんなら よけりゃ
402 賢 い はしっこい りこー
403 可愛い カアイイ かわいい
404 可愛相だ
405 醜 い ミニクイ みっともない きたない
   変 な へんてこな おかしな へんちくりんな けったいな
406 汚 い キタナイ きたならしい こきたない うざったい よごれる きびがわりい
407 恐ろしい コワイ おっそろしい おっかない
408 淋しい サビシイ さみしい さむしい
409 くすぐったい くつぐったい もぐったい
410 じれったい いまいましい くやしったい
411 大きい オーキイ でっかい
   太 い ふてー いっかい
412 小さい チーサイ ちっちゃい ちびっこい
   細かい ちっこい こまっこい
413 柔らかい ヤワラカイ やーらかい やっこい
414 暖かい アタタカイ あったかい ぬくとい
415 眩しい マブシイ まじっぽい
416 不味い マズイ まじい
417 焦げ臭い コゲクサイ きなくさい
418 丈夫だ たっしゃだ まめだ
419 持ちがよい かんじょーだ
420 粗末だ そそーだ やぼくさい ぞんざい やすぽい
421 五月蝿い ウルサイ うるせー やかましい
422 面倒くさい メンドークサイ やっかい せわがやける めんどくさい しちめんどう
423 忙しい セワシイ いそがしい せわしない
424 苦しい クルシイ せつない ほねがおれる
425 大儀だ タイギ くげん おっくう ごくろー かったるい
426 ひだるい へだるい おなかがすく
427 惜しい オシイ もったいない
428 羨しい ウラヤマシイ けなるい やきもちやく
429 恥しい ハズカシイ おかしい きまりがわるい
430 気の毒だ キノドクダ すまない かわいそーだ
431 そんなに すんなに
432 常 に イツモ しじゅー しょっちゅうー ふだん ねんじゅー
433 度 々 タビタビ いくども ちょくちょく
434 先 刻 サッキ いましがた さきほど せん
435 後 刻 ノチホド あとで すこしたって
436 直ちに スグニ じきに
437 一 寸 チョット ちっとんべー ちょっくら
438 久しく ヒサシク ずいぶん しばらく さんざん
439 不意に フイニ ひょいっと だしぬけに
440 何 故 ナゼ なんで どうして
441 沢 山 タクサン たんと どっさり うんと いら ふんだん しこたま
442 甚 だ たいへん めっそー とても たんと
443 悉 く コトゴトク すっかり みんな
444 全 く 少しも ねこそぎ ちっとも
445 是 非 ゼヒ どーか きっと どしても なんでもかでも
446 屹 度 キット ほんと
447 態 々 ワザワザ
448 反って カエッテ けーって
449 生 憎 アイニク
450 好都合に イイアンバイニ ちょーどよく いいぐあいに
451 漸 く ヨーヤク やっとこすっとこ やっと ようやっと
452 丁 度 チョード ちょっきり んまく
453 一 番 いっと
454 其れ故 ソレダカラ そんだから
455 けれども けんど だけんど
456 はい(答) うん はあ なに あい あいよ
   (承諾) ええ はー そうです うん
457 そうですよ そうだよ そうそう
458 いいえ ううん まさか
   嫌 だ やだ
459 もしもし おいおい ちょっとちょっと
460 おやおや あらまあ おやまあ まあまあ あらあら あれまあ てーまあ

461 朝の挨拶 オハヨーゴザイマス おはよー はよーす はよござい
462 日中の挨拶 コンニチハ こんちわ ちわー いいあんばいです
463 夜の挨拶 コンバンワ こんばん おばんでございます
464 就寝前の挨拶 オヤスミナサイマシ おさきごめんなさい おやすみなさい
465 訪問の応答 (客)ゴメンクダサイ (主)イラッシャイマセ (客)こんちは ごめんなしましょ (主)おいでなさいまして
466 辞去の挨拶 (客)オヂャマイタシマシタ (主)オソソーイタシマシタ (主)(ママ)おせわさまでした ごっそうさんでした しつれーいたしました おやかましゅーございました (主)どういたしまして おかまいいたしません
467 別 辞 サヨナラ ゴキゲンヨウ さいなら おだいじに ごめんなさい
   贈り物の礼 どうもすいません おそれいります けっこーなものすみません ありがとうございました
468 欠
469 出入の挨拶 いってまいります いってまいりました
470 吉凶の挨拶 オメデトーゴザイマス トンダコトデシタ およろこびもうしあげます ごしゅーしょーさまです おきのどくさまでした
(資料採集者 野本米吉ほか150名)

※川越の方言に関して、掲示板に投稿がありましたのでご紹介します。

川越ことば   No: 192
投稿者:シドニーの川越人  04/04/20 Tue 15:45:49
先祖代々川越人で、私1人がどう言う訳かオーストラリアのシドニー嫁ぎ住んでいます。2児の母となり、里帰りをする度に両親との会話が川越弁になり、今では主人と娘達にも川越語を教えています。一覧の中には両親が今でも使う”あくせぇこく(呆れてものが言えない)”と言うのがなかったので、ちょっと寂しくなり投稿しました。”他にもよぉ、まっとあっけど、今日んとこは、こんくらいにしとっかんね。”
※これについて、方言辞典で調べてみました。

川越ことば    No: 213
投稿者:シドニーの川越人  04/06/14 Mon 15:26:09
川越原人様
先日は”あくせぇこく”についてお調べ頂いて有難うございました。
幾つか頭に浮かぶものが有りましたので、お言葉に甘えて書かせて頂きました。これらはもしかしたら埼玉語であって川越語でないかもしれませんが、ご参考まで、
いっとう(一番)、いら(沢山)、おっぴしょく(折る)、おっぴらぃる(あふれる)、かんます(掻き回す)、きない(来ない)、けむ(煙り)、 こば(端)、しめぇ(最後)、そらっぺ(嘘)、〜したばい(〜したばかり)、とばくち(入り口)、べっちょ(泣き顔)、やっこい(柔らかい)
※これについても、全部ではありませんが、同じ方言辞典で調べてみました。

「埼玉県方言辞典」 井上史雄監修 手島良編著 桜楓社 1989年 ★★
アクサイスル(動) あきれかえる。730。830c。837d。
アクセースル(動) あきれかえる。082-7。730。767。830c。
イット 一番。868b。
イットー 先頭。一番。177c。838b。S
イラ(副) たいそう。甚だ。たくさん。「こんなに――貰っちゃすんません」「――ごやっかいになりました」 328。364。375。578。730。830c。837d。838b。868b。982。
オッピショル(動) @折る。082-3,4,6,7,8,9。437。533b。635。636。730。732n。736a。736f。767。769。780。830a。830c。837d。 A砕く。082-4,6,7,9。769。
カンマス(動) かきまわす。082-1,2,3,4,5,6,7,9。364。533b。730。830c。
カンマース(動) かきまわす。「風呂を――」082-1,2,3,4,6,8,9。142。375。533b。767。830c。831a。878。981。982。t
キナイ(動) 来ない。082-1,2,4,5,6,7,9。233。375。
ケム 煙。767。831a。982。t,S〔俗〕
コバ @材木の端口。375。 A端。831a。982。
シチフリ 様子。風采。いたずら。「つまらねえ――するな」162。
シメー しまい。終わり。375。831a。
ソラッペ @嘘。261。375。533b。730。733。767。830c。982。 A嘘つき。838b。868b
ソラッペー 嘘「――いう」134。156a。162。177a。364。437。708。730。732n。736a。736f。769。780。830a。837d。878。981。982。
トバックチ @入口。078。364。533b。981。982。 A始まり。878。 B入口に近い所。767。982。 C突き当たり。981。982。
ベッチョ 泣き顔。泣きべそ。「――かく」708。767。769。
ヤッコイ(形) @柔らかい。134。136b。156a。162。375。536。578。635。732n。736a。736f。767。831a。837d。838b。868b。 Aおとなしい。578。 

@秩 父 郡
 162 S37 市教育委員会 『秩父の伝説と方言』
F北 足 立 郡
 730 S5 池ノ内好次郎 『埼玉県入間郡宗岡村言語集』昭和5年版
 767 S40〜42 『小針小学校をとりまく言語的環境調査(中間報告)』第1〜第3冊 小針小学校、小針小学校母の会共編
G入 間 郡
 830a S5.5 宮本明 『方言訛語の研究』(大井小学校)
 830c S5 杉山正世編 『埼玉県川越市近傍言語集稿』
 831a S6 高麗川尋常高等学校編 『国語読本に現れたる標準語と郷土の方言・訛言』
 837d S12.2 池ノ内好次郎 『埼玉県入間郡方言集稿』方言
 838b S13 野本米吉 「川越地方の方言調査」
 868b S43 川越市 『川越市史民俗編』第10節 方言
 878 S53 坂戸市教育委員会『坂戸の方言』

※また、インターネットで検索したところ、「消滅寸前博多弁事典」につぎのような記事を見つけました。
アクセイウツ
【困り果てる】
『ていしゅの ばくちぐせにゃ いいかげん あくせいうっとります』
「主人の賭け事好きにはいいかげん困り果てています」
 アクサイウツの転。アクサイは厄災のおこるという悪歳か。また、あくせくすることの転意か。

これを含めて、別の方言辞典で調べてみました。

「日本方言大辞典 上巻 あ〜そ」 尚学図書編集 小学館 1989年  ★
あくせー ⇒ あくさい
あくさい
 @悪口。陰口。新潟県東蒲原郡 西頸城郡 徳島県
 A飽き飽きして嫌になること。三重県志摩郡 《あくせー》長野県佐久「あくせーした」
 B手に負えず持て余すこと。あきれかえること。埼玉県川越「この子の着もんよごすにもあくさいする」 入間郡「いくら足運んでも埒(らち)があかねーであくさいする」 熊本県
 C迷惑なさま。困ったさま。《あくしゃー》熊本県「あくしゃあな日和いいち成ったなあ」 「あくしゃあなもん」 《あくしゃ》長崎県五島 熊本県玉名郡「あくしゃな奴」
 D風雨のある嫌な天気の形容にいう。《あくせー》長野県上田
あくさい うつ
 @飽き飽きして嫌になる。筑前 福岡市 長崎県対馬「重ね重ね仕事を夥しう持ち懸けられてあくすぇえうった」 《あくさいつく》愛媛県松山「もうこんな事はあくさいついてしもた」
 A持て余す。困り果てる。久留米 福岡市 大分県 《あくしゃうつ》長崎県 熊本県南部 「あくしゃうたれた(迷惑がられた)」 《あくせうつ》長崎市 《あくさいがつく》島根県出雲「あの男にゃーあくさいがちーた」 《あくさいつく》愛媛県 《あくせつく》三重県北牟婁郡 《あくさいが尽(つ)きる》新潟県東蒲原郡「あの人にはあくさいがつきた」
 B嫌な気になる。長崎県北松浦郡「いやなこと言われてあくさいうった」
あくさい〔形〕
 @ばからしい。つまらない。奈良県南大和
 A飽き飽きして嫌な気持ちだ。長野県北佐久郡 《あくしー》島根県美濃郡「何と今日の天気はあくしいのう」
 
この分布の仕方も、方言周圏論で説明できるのでしょうか。

おっぴしょーる/おっぴしょる ⇒ おっぺしょる
おっぺしょる 【押圧折】 〔動〕折る。へし折る。茨城県西茨城郡 稲敷郡 栃木県足利市 群馬県吾妻郡 佐波郡 埼玉県 千葉県長生郡 君津郡 新潟県 山梨県 南巨摩郡 長野県 《おっぺしょーる》埼玉県秩父郡 東京都八王子 神奈川県津久井郡 《おっぴしょる》群馬県佐波郡 埼玉県 千葉県東葛飾郡
かんます ⇒ かきまわす
かきまわす 【掻回】 〔動〕@かき混ぜる。かき回す。 (中略) 《かんまーす》福島県東白川郡 北会津郡 茨城県 群馬県佐波郡 埼玉県北葛飾郡 神奈川県津久井郡 長野県諏訪 佐久 《かんます》岩手県 宮城県 秋田県南秋田郡「人のものをあんまりかんますな」 山形県 福島県 茨城県稲敷郡 栃木県 群馬県 埼玉県川越 北葛飾郡「ばけつんなかへ手を入れてかんます」 千葉県 新潟県蒲原郡 長岡市 長野県 (後略)
しちふり ⇒ したぶり
したぶり 【―振】
 @よけいな世話を焼くこと。また、そのさま。差し出がましいこと。宮城県栗原郡「したぶりするな」 加美郡 《したぷり》岩手県気仙郡 宮城県石巻 《したっぷり》宮城県石巻 《ひちっぷり》埼玉県入間郡「ひちっぷりな事するな」
 Aこしゃくなこと。こ生意気なこと。仙台 《したぷり》仙台 岩手県気仙郡 宮城県石巻 《したっぷり》宮城県石巻
 Bつまらないこと。《ひちふり》群馬県碓氷郡 埼玉県秩父郡
 C悪さ。いたずら。《しちふり・ひちふり》埼玉県秩父郡「つまらねえしちふりをするな」
 D様子。かっこう。風采(ふうさい)。《しちふり》埼玉県秩父郡 長野県佐久郡 《ひちふり》群馬県多野郡(異様なふり) 埼玉県秩父郡
 E身なりだけ飾ること。《ひちふり》長野県佐久
そらっぺ ⇒ そら
そら 【空】 Q虚言。うそ。栃木県芳賀郡 埼玉県川越 入間郡 長野県上田 佐久 《そらっぺ》栃木県安蘇郡「それはそらっぺだ」 群馬県 埼玉県 神奈川県 長野県佐久 《そらっぺー》栃木県 群馬県 埼玉県秩父郡 入間郡 《そらっぺす》長野県佐久 《さら》長野県上田 《さらっぺ》長野県上田 佐久 《さらっぺー》長野県佐久 《さらっぺす》長野県上田 《そらっこ》長野県上水内郡 《そらっぽ》茨城県久慈郡 《そらっぱ》新潟県西頚城郡 《そらっぱち》群馬県 長野県佐久 《ぞろ》新潟県佐渡 《すら》山梨県南巨摩郡・西八代郡「すらをこく」 静岡県「すら吐く」 山口県阿武郡 豊浦郡「すらをいふ」 長崎市「すらやる(とぼける)」 鹿児島県喜界島 《すーら》大分県北海部郡 《すろ》鹿児島県奄美大島・加計呂麻島

「日本方言大辞典 下巻 た〜ん」 尚学図書編集 小学館 1989年  ★
べっちょ ⇒ べそ かける
べそ かける 泣きっ面をする。茨城県真壁郡 《べそつくる》庄内 山形県鶴岡 長崎県対馬 《べそをかける》神奈川県 《べぞをつくる》仙台 《べっちょつぐる》岩手県和賀郡 《べっそーかく・べっそーつくる》福岡市 《べっそしかぶる》熊本県 《べっそつくる》長崎県北松浦郡 対馬 《べっそをつくる》鹿児島県 《べっそをひっつく》鹿児島県 《べっちょーつぐる》岩手県気仙郡 《べっちょつくる》栃木県足利市 埼玉県入間郡 《べっつぉーかける》栃木県 《べんぞーかく》長野県長野市・上水内郡 《べんぞーつくる》千葉県香取郡 《べんぞかく》福島県東白川郡 《べんぞつくる》山形県 《べんぞひっかける》福島県東白川郡 茨城県久慈郡 《べんぞをかく・べんぞをつくる》仙台
やっこい ⇒ やわい
やわい 【柔】 @柔らかい。 (中略) 《やっけー》福島県岩瀬郡 石川郡 茨城県新治郡 稲敷郡 栃木県那須郡・安蘇郡 群馬県 埼玉県秩父郡 千葉県安房 長生郡 神奈川県 山梨県北都留郡 長野県 静岡県 《やっこい》盛岡 仙台 庄内 常陸 甲斐 青森県津軽 南部 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県 茨城県真壁郡 稲敷郡 栃木県 群馬県 埼玉県入間郡 千葉県 新潟県「やっこいご飯」 山梨県 長野県 岐阜県飛騨 静岡県 三重県志摩郡 (後略)

「川越歴史小話」 岡村一郎 川越地方史研究会 1973年 ★★★
 10.「なから」という方言
 埼玉県入間郡地方には「なから」という方言がある。「どうだ、おめえの方はもう田植は終ったかよ」「うん、まあなからちう所だんべ」てな具合で、大半とか殆んどという意味に使われる。「全国方言辞典」によると、この方言は上州、秋田県鹿角郡、新潟、長野、群馬県山田郡などに分布している。別に静岡県田方郡、兵庫県揖保郡、高知県安芸郡、長崎県佐世保、鹿児島県などでも使っているが、この方は同じなからでも少し違って半分、なかばの意に用いているようである。
 このなからという言葉は非常に古い言葉で、すでに万葉集にその用例がみられる。すなわち巻十六の作者不詳の歌に
 法師らが髭の剃杭(そぐい)馬つなぎいたくな引きそ法師なからむ
という僧侶をからかった歌がある。剃杭はいい加減に延びた無精髭のことで、そのくいに馬をつないでも、ひどく引っぱるなよ、法師が半分になってしまうだろう、という意味である。これに応えた歌が、
 檀越(だんおち)や然もな云ひそ里長(さとおさ)らが課役(えつき)(はた)らば汝もなからむ
で、やはり半かむを使っている。檀那よ、そう威張りなさんな、もし村長さんがきて、税金や労役のことで攻め立てるなら、あなたも半分になってしまいましょう、という位のわけである。万葉集中にはこの二例だけだが、ほかに枕草子には「坂のなからばかり歩みしかば、巳の時になりにけり」、宇治拾遺物語には「舟の内なる者ども、これがしわざを見るに、なからは死に入りぬ」という用例があって、いずれにしてもかなり古く使われた言葉だということが分る。
 それが江戸時代になるともう色々渉ってみても、この言葉は出てこないようで、わずかにこれを転用した「なから半尺」という語がでてくるくらいのものである。これも中途半端というほどの意味に用いられ、川柳に勾当内侍を得た義貞を
 なから半尺で義貞づるけ出し
京都で横暴を極めた義仲を
 なから半尺で仕廻ったは義仲
などとやゆしたものがある。面白いのはこの「なから半尺」ともう一つ「なからなまじ」という使い方が、やはり方言として東北六県に現在でもその命脈をつないでいることである。
 ところで柳田国男のとなえた学説に方言周圏論がある。全国における数百のカタツムリの方言をデデムシ系、マイマイツブロ系、カタツムリ系など、六系統に整理してその分布を調べてみたところ、方言はおおよそ近畿をぶんまわしの中心として段々に幾つかの円を描いた。いいかえると池の中に投げられた石の波紋がしだいに広がってゆく有様とよく似ている。したがって日本のような細長い列島では、南海の島々と奥羽の端とに同じような方言が分布することがみれらるというのである。これは全国を幾つかの方言区に機械的に分割しようとするゆき方に鋭い批判を浴びせたものである。
 あれこれ考えてみると、このなからという方言もやはりこの学説の正しさを立証しているようである。いにしえの奈良の都に始まって、少なくとも平安、鎌倉時代までは中央の標準語として使われていたものが、追々に都を離れた地方に波及し、千余年の長い歳月を経た今日では、この国の東西の果てに方言としてその名残りを留めるにいたった。しかしその用法も東の方に流れたものが、だいたい、ほとんどを現わし、西の方に落ちていったものが、半分、半ばというぐあいに、よい対照をなしているのも興味をひくところである。お百姓さんたちが日常無造作に使っている言葉のなかにも案外な秘密が隠されている実例として挙げておきたい。

「殿様と鼠小僧 老侯・松浦静山の世界 氏家幹人 中公新書 1991年 ★
本所下屋敷の人々
 相撲部屋がある屋敷
   (前略)
また「予が角力」というだけで四股名のはっきりしないお抱え力士の一人は、「諸国を周行すること常なり」という相撲取りの特権を利用して収集した諸国売女方言一覧≠静山に提供してくれた。売女(売春を業とする女性)のことを武州川越では「這込(はいこみ)」と呼び、上州高崎では「おしくら」、越後出雲崎では「鍋」、そして佐渡では「水銀(みずがね)」と呼ぶ等々……全国41の事例を挙げた貴重な風俗言語資料が、居ながらにして静山の手元にもたらされたのである。    (後略)

「全国アホ・バカ分布考」 松本修 新潮文庫 1996年
 大阪はアホ。東京はバカ。境界線はどこ? 人気TV番組に寄せられた小さな疑問が全ての発端だった。調査を経るうち、境界という問題を越え、全国のアホ・バカ表現の分布調査という壮大な試みへと発展。各市町村へのローラー作戦。古辞書類の渉猟、そして思索。ホンズナス、ホウケ、ダラ、ダボ……。それらの分布は一体何を意味するのか。知的興奮に満ちた傑作ノンフィクション。

  アホ・バカ方言全国語彙一覧
関東地方の語彙
 関東七都県は、基本的に「バカ系語」の文化圏に属す。しかし北関東・千葉など東京を囲む地域で独自の言語圏を有している。
 特徴的なのは「ゴジャ(ッペ)」と「デレ(スケ)」、そして「コケ(虚仮)」の分布である。「ゴジャ(ッペ)」「デレ(スケ)」は江戸の流行語と考えられるが、いずれも「コケ」と同じく元来は京都の言葉である。また同じように古く東漸してきたと思われる「タワケ」は、今も神奈川・埼玉・群馬の一部に残っている。
 関東には他に「マヌケ系」「ボケ系」「アンポンタン」「オタンコナス」「トンマ」「ポンツク」「ホイト(陪堂)系」「サンタロウ」「ノッポ」などが、各地に分布する。阿部次郎『三太郎の日記』、サトウサンペイ『フジ三太郎』は、この「サンタロウ」からきているのだろう。

埼玉県
1=県下で広く回答された言葉
バカ系――バカ・バッカ・バカスカシ・バカチョン・バカヤロウ・バッカヤロウ・バッキャロー・ウスバカ・ウスバカヤロウ・コバカ・オオバカ・オオバカヤロウ・バカチクショー・カラバカ
2=一部地域で回答された言葉
タワケ系――タワケ・タワケヤロー
マヌケ系――マヌケ・マヌケヤローヌケサク
デレ・デレスケ/コケ(虚仮)/ウスヌケ・ウスヌケヤロー/ナンケ・ナンケヤロー/ドジ/ダブ・ダブセー/メッタメッタ/ナスアタマ(茄子頭)
アホ系――アホー・アホ・アホンダラ
オタンコナス/タンサイ/カボチャヤロウ/タゴサク
【幸手市:『幸手の言葉』(上野勇著)】
アンピッチョ(お多福の意)/アンピッツラ/イケロノマ/ウダリ/オーカンドーラク(往還道楽)/ゲタッペラシ(下駄減らし)/カスッタカリ/イヌクタバリ/オークタバリ/オケラ/オテンタラ/ガキ/クソジジー/クソババー/クソッタレ/ケツマガリ/ゴーツクバリ/ゴクッツブシ/シブッカキ/スケジー/スケバー/スベタ/チャラッポコ/ドンビャクショー/バカチクショー/ベタッカス/ホーロクダマ(←表六玉)/他
【所沢市市史編纂室:木村氏による地元四人のご年配者聞き取り調査結果】
バカ・ウスバカ・オオバカ・デレスケ・ベラボウ(メ)・チキショウ・アンチキショウ・コンチキショウ・マヌケヤロウ・ノロマ・テメエ・アンポンタン・バカスカシ
 大正二年生まれの男性(所沢市日比田)の証言――
「『バカ野郎』というのが多かった。次に多かったのは『バカスカシ』だった。大人が子供を叱りつける時に多い。他に子供を叱りつける時には『大バカ野郎』と言った。子供同士では『チキショウ』とか『コンチキショウ』なども使った。『うすバカ野郎』なども言った。また怒った時とかに『アンポンタン』などと言うこともあった。(中略)『アホ』という言葉は、私が16、7歳のころ(昭和4、5年)、初めて耳にした。ちょうど東京へリヤカーを引っ張っていって、リヤカーを置いたところで言い争いがあった。そのとき一方の人が『このアホー』と言っていた。使われ方が『バカ』というのと同じだと思ったので、そういう言葉があることを知った」

 方言辞典・辞書・用語のリンク集

とってもためになる?博多弁講座
 ◆◇ あくせいうつ ◇◆
「手を焼く、ほとほと困る」の意。
「あくせい」は「悪相」(あくそう)不吉な兆し、恐ろしい顔つきのなまりか?
困り果てると、みんなそんな顔になる。
「打つ」は「する、行なう」を言う。

「消滅寸前博多弁事典」
アクセイウツ
【困り果てる】
『ていしゅの ばくちぐせにゃ いいかげん あくせいうっとります』
「主人の賭け事好きにはいいかげん困り果てています」
 アクサイウツの転。アクサイは厄災のおこるという悪歳か。また、あくせくすることの転意か。

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作成:川越原人  更新:2020/11/02