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このページは日本のワインに興味をもっている際には、知っておいたほうがよい基本的な用語や葡萄品種について紹介してあります。中にはそうでないものも含まれていますが・・・(^_^;
逐次追加していきますが、関係する職業に従事する専門家なわけではないので誤っている部分もあるかもしれません。明らかに勘違いしている事がある際にはメール等にてご連絡下さい。
また、本ページには常連である、Y/Nさんにご協力いただいております。

あ行

浅井昭吾------(人物)
日本ワイン業界に多大な功績を残した人物。
というと身も蓋もないのですが、メルシャンの製造課長時代に長野における葡萄栽培でメルローを導入し、見事成功させ、これがかの「桔梗ヶ原メルロー」を産み出すことにつながりました。細かい事は割愛しますが、それ以外にも山梨のワイナリーの技術指導にあたるなど日本のワインの発展に大きな影響を与えています。
ペンネーム麻井宇介で書かれた著書「ワインづくりの思想」(中公新書)は、ワイナリーファンなら必読書。特に、「銘醸地は人が作るものである」という信念は、温暖湿潤な気候、酸性土壌など重度のハンデに悩む日本のワイナリーの思想的バックボーンであるといっても言い過ぎではないでしょう。
非常に残念なことに2002年に逝去されました。

アサンブラージュ------(醸造)
品種が異なったり区画が異なるワインを混ぜ合わせる処理で、瓶詰め前に行われます。簡単にいうとブレンドです。
また異なる品種ばかりでなく、同じ年の同じ種類のワインといえど、醸造するとワインは差異があらわれるので、品質を均一にするために異なる樽のワイン混ぜ合わせます。
フランスのボルドーの多くのシャトーが異なる品種(メルロー、カベルネ等)でアサンブラージュを行います。

アジロンダック------(葡萄品種)
生食用の早生の赤葡萄で耐病性があり、栽培は容易。ヴィティス・ラブレスカに属する品種で非常に強い香りが特徴で、一房で部屋中を満たすほどだとも言われ、完熟したものは畑から近くの道まで香るほどです。小沢善平によって明治初期に持ち込まれた葡萄の一つ。
熟すと実が落ちやすいという欠点があり完全な房の状態では出荷しづらいために、現在ではあまり栽培されていません。しかし山梨の勝沼での栽培の歴史は古く、少数の畑で現在も栽培が続けられています。現在も山梨ワイン醸造や原茂ワイン、大泉葡萄酒などのワイナリーで醸造が行われている品種です。ワインにすると、鮮烈な甘い香りのするワインになります。

アマローネ製法------(醸造)
イタリアで行なわれている甘口ワインや濃縮感のあるワインを醸造するための伝統的手法です。収穫した葡萄を3ヶ月〜6ヶ月間陰干しにし、水分が減り糖度の高まったところで圧搾、ワインを醸造します。
日本では大和葡萄酒がこの方法でワインを醸造しています。

暗渠------(栽培)
上部を開放しない水路。市街地での小河川で水路の上を道路や公園に利用しているところもあります。水はけをよくするために、畑に埋め込んでいるワイナリーもあります。

一文字短梢栽培------(栽培)
通常の甲州は棚の上に縦横無人に茂りますが、一文字短梢栽培は棚の木枝に主木を一文字にのばして、そこから新梢を直角に伸ばす栽培方法です。この方法だと実のなる新梢が減るため当然収穫量は減少しますが、変わりに果実への日照量と糖度は大きく向上し、果汁の質を高めることができます。甲州葡萄は枝の伸びる勢いがヨーロッパ葡萄の品種と比べて強いために垣根仕立てに向かないのでこのような栽培方法が編み出されました。
ワイン用の甲州の栽培時に使用する方法の一つで、中央葡萄酒と旭洋酒がこの栽培で有名。

ヴィオニエ------(葡萄品種)
ワイン用白葡萄。主にフランスで栽培されており、桃のような香りになるといわれています。近年、かなり評価が高くなっている品種です。
国内でこの葡萄を栽培・醸造しているワイナリーは極めて少なく、山形県のタケダワイナリーがもっとも有名です。

ヴィティス・ヴィニフェラ
ヨーロッパ系葡萄の総称です。植物学的にいうと、クロウメモドキ目ブドウ科ヨーロッパ系葡萄群となります。ワインの醸造に非常に適しているブドウが多く、ほとんどのワインはこの群に属するブドウより醸造が行われます。総じて皮が厚く酸味がありすぎるために生で食べるのに向かないものが多い傾向があります。ただし、マスカットなどはこの群に属していますが生食用としても有名です。
日本の甲州もこのヨーロッパ系葡萄に属する葡萄です。

ヴィティス・ラブレスカ
アメリカ系葡萄の総称です。植物学的にいうと、クロウメモドキ目ブドウ科アメリカ系葡萄群となります。総じて生食向きの葡萄が多く、酸味が少なく皮が薄い傾向があります。しかし、ワインにすると独特の香りがつき、長期保存すると品質が悪化しやすいため醸造には向かないものがほとんどです。ただし、醸造や栽培方法によってってはなかなか面白いワインを造ることが可能です。
この群の葡萄としてはデラウェアコンコードなどが有名です。なお、ヴィニフェラとラブレスカを交配させた葡萄はどちらの群でもない品種となります。

大井上康(おおいのうえ やすし)------(人物)
明治25年生まれ。農学者で、作物が必要な時期に必要な栄養素を最低限与える「栄養周期栽培法」を提唱。しかし、この理論は当時の学会では完全に異端視されたため、大井上康は農学会を去り、伊豆に居をかまえて品種の交配の研究などを行いました。
1937年、その過程で生まれたのが生食葡萄の傑作中の傑作ともいうべ巨峰です。が、戦時中であったこともあり、この葡萄が世に知れ渡るにはこれより20年以上も後のことになってしまいます。本人はまったくその功績が認められないまま死去しましたが、安易に多くの肥料を与える有機農法を厳しく戒めるなど、その理論は現代においても通用するものでした。
生前の評価は不遇であったものの、その教えを受けた弟子たちや親交のあった人物が、その栽培品種が後に日本の葡萄栽培の歴史に計り知れない影響を与えており、日本の葡萄栽培を語る上で外すことはできません。
若い時には神谷葡萄園に就職しており、意外なところで醸造と縁を持ってます


オーディナリー ワイン(ordinary wine)
大量に安価で、安定品質で提供されるワインの総称です。テーブルワインとも同異議語ともいえるのでしょうが、このあたりは諸説あるので言葉の定義そのものはやや曖昧なところもあるようです。
オーディナリーワインは樽熟成の際にまず入れられ、新樽の香りをとるために使われたりすることもあります。香りをほどよくとってから、本命のワインを入れて熟成させるのです。
対語 →クオリティ ワイン(quality wine)


ワインを醸造する際に沈殿する酵母の死骸、皮等の総称です。目で見ると、黒く小さなゴミのように見えます。出荷される前には必ず一度澱引きが行われるので出荷して1年程度のワインに澱があることは通常ありえません。
しかし、濾過していないワインや濾過を少なめにしたワインによっては熟成が進むごとに澱がでてきます。特に高級ワインや、酒質の濃いワインには澱がでやすくなっています。
なお、澱は熟成が進めば出ることがあるものですから、澱があるからといって間違えても輸入業者やワイナリーに抗議してはいけません。むしろ酒質が濃く、熟成が進んでいる証のようなものですから喜んだほうがいいでしょう。ただ、澱ごと飲むとおいしくないので静かにグラスにワインを注ぐことを忘れずに。

か行

甲斐路------(葡萄品種)
フレーム・トーケーにネオ・マスカットを交配させて育成した生食用の大粒型葡萄。ヴィティス・ヴィニフェラに属する品種。やや病気に弱いという欠点があり、栽培には一定以上の専門性が要求されます。色は明るい鮮紅色で美しく、果肉には独特の歯ごたえがあります。「赤いマスカット」とも呼ばれ、生食葡萄としては巨峰群を猛追する人気品種です。
糖度は18〜23度と高く、ワインはほとんどが甘口の爽やかなワインとして各地で醸造されています。
蛇足ですが、赤嶺という品種はこの甲斐路の枝変わり(新梢の変異)で、成熟時期が早いことから早生甲斐路ともいうそうです。

甲斐ノワール------(葡萄品種)
山梨県果樹試験所が、川上種であるブラッククイーンと、カベルネソーヴィニヨンを配合して作ったワイン用葡萄。ワインにすると色は赤黒く、酸味はかなり強くなりますがタンニンは弱め。香りはカベルネソ−ヴィニヨンに近い、杉のような香りでかなりスパイシーで個性的なワインになりやすいため、少しワインに飲みなれた人向けです。
山梨県を中心に徐々にですが醸造するワイナリーが増えている品種です。

甲斐ブラン------(葡萄品種)
山梨県果樹試験所が、甲州とピノ・ブランを配合して作ったワイン用葡萄。耐病性が高く、栽培は容易です。ワインにすると香りもよく、酸もしっかりしたものができます。
ただ、これを使用したワインはそれほど多くありません。

果汁凍結法(果汁凍結仕込み)------(醸造)
果実から果汁を圧搾した後に、凍結させて濃縮させる方法です。果汁を凍結させると、先に水分だけが凍りだすためにある程度凍ったところで残った果汁を取り出すと濃厚な糖度の高い果汁を得ることができます。クリオ・エクストラシオンと似ていますが、あちらは果実をシャーベット状に凍結させてから圧搾する方法なので若干異なります。
日本ではこの果汁凍結法を使っている会社はいくつかあり、有名なのは国際コンクール銀賞の勝沼醸造の「勝沼甲州樽発酵」。メルシャンの「甲州鳥井平」も同じく有名です。

勝沼ワイナリークラブ
勝沼にある有志のワイナリーが、勝沼産の甲州を100%使用したワイン造りを目標に立ち上げたのが始まりです。
認証ボトルというボトル自体に刻印が入ったものが、この会の規準に沿った判定で合格したワインとなります。
参加しているのは、
「錦城葡萄酒」「白百合醸造」「蒼龍葡萄酒」「ダイヤモンド酒造」「中央葡萄酒」「原茂ワイン」「丸藤葡萄酒工業」「山梨ワイン醸造」(あいうえお順)
の8社です。
現在もワインの製造・研究は続けられており、加えて都心への販売の拡大などといった営業面でも意欲的な活動を行っています。


カベルネソーヴィニヨン------(葡萄品種)
黒葡萄で、ワイン用品種。非常にタンニンの強い濃厚な赤ワインを造ることができ、長期熟成にもよく耐え男性的といわれるほど力強いワインがを作ることができます。香りは杉のようだと表現されることもあります。
栽培地をさほど選ばないうえ病気への耐性が高いため、日本でも多くの葡萄畑で栽培されています。

果帽------(醸造)
赤ワインを醸造する際には発酵中に皮や身が液面に浮かび上がってきます。これを果帽と呼びます。
これを放置しておくとかびや雑菌などが繁殖してしまうために何らかの方法で液中に沈める必要があります。静めるには以下のような方法があります。

パンチダウン――― 上面開放型のタンクで行われる方法で、上から櫂などの棒で果帽をついて下に沈めるという昔ながらの方法です。果帽は発酵が終了するまでに何度となく浮かんでくるので、一日に何度も沈める必要があり労力を要します。あまり大きくないワイナリーや、伝統的な醸造を重視するワイナリーで使われています。ピジャージュともいいます。

ポンピングオーバー ―――葡萄果汁を下からポンプで吸い上げ、上からかけることにより有害な微生物の繁殖を抑える方法です。この作業が完全に自動化されているところもありますが、人が上からかける方法もあります。ルモンタージュとも言います。

他に密閉タンクそのものを回転させて果帽を液中に静めるといった方法もあります。

カベルネ・フランー------(葡萄品種)
ヴィティス・ヴィフィニラに属するワイン用赤葡萄。カベルネ・ソーヴィニヨンと比べると軽く、酸味とタンニンも少なく葉野菜のような香りを持っています。主に赤ワインの醸造する際の補助品種として使われますが、少量ながらカベルネ・フランだけを使用したワインも醸造されます。
日本国内でも栽培されており、同じく補助品種として使われることが多いようです。中には、シャトー・シャルマンやルミエールなどのようにカベルネ・フランのみのワインを醸造しているワイナリーもあります。


鴨宮かのや酒店
管理人の行きつけの店にして、色々な意味で優良酒販店。店主は利酒師の資格を有しているうえに、サントリーソムリエスクール卒業という経歴の持ち主。その酒類に対する知識と情熱は生半可ではありません。入荷するワインや日本酒はほぼ全てテイスティング済というのですからそのプロ精神には頭が下がります。
店の奥にある高級ワインのワインセラーの保存状態は温度、湿度、光ともにほぼ完璧なので劣化の心配はありません。唯一、薄暗い中に大量にワインがあるために目的のワインを探しづらいのが最大の欠点。中には埋没してしまい店主以外には見つけられないワインもあるということなので、探すよりも素直に聞いたほうがよいでしょう。
ワインとは別に神奈川県の川西屋酒造という日本酒の酒造の銘柄の充実ぶりが半端ではないので日本酒好きなら一度は行って試飲する価値があります。有名ではありませんが各地の銘酒にも劣らない出来栄えです。
HPページも持っており、当ページのトップページにリンクを貼らせてもらっています。通販も行っているので遠方の方はそちらから注文なさるとよいでしょう。

川上善兵衛------(人物)
日本ワインの父とも呼ばれる人。明治元年生まれ。日本のワインの歴史を語る場合に外して語ることはできない人物で、新潟で1万を超える品種を配合しマスカットベリーAなどを作り上げました。ただあまりに先駆的すぎた事業であったことと、経営に関しては能力が無かったために、岩の原葡萄園も事実上廃園になってしまいます。しかし日本の土壌に向いたワイン用葡萄品種を開発し、さらにそのノウハウを著書により全国に伝播させるなど不朽の功績を残しています。
現在、岩の原葡萄園はサントリー社の傘下で経営が行われています。

きき酒師
日本酒のサービスを行う能力があると認定する資格。試験にさえ受かれば異業種の人間でも取得でき、かくいう筆者も取得しています。
飲んだワインの評価を自信をもって書きたいところなのですが、ワインとほとんど関係ない資格です。ついでにいうと取得には非常に、というか異常にお金がかかります。

桔梗ヶ原メルロー------(銘柄)
メルシャン社の銘柄の一つで、リュブリアーナの国際コンクールで2度の大金賞、一度の金賞をもぎ取るなど数ある日本産ワインでも屈指の実績を誇っています。名前の通りメルロー100%のワインで、契約栽培している農家から選りすぐりの葡萄を集めて作られます。
日本ワインのファンならずとも一度は飲んでみたいワインですが、値段以前に生産量が少ないためなかなかお目にかかることはできません。メルシャン勝沼ワイナリーに行けば有料のグラス売りが行われています。
ちなみにこの桔梗ヶ原メルローという名前はもともとは、山梨県の林農園が考えだしたもの。後にメルシャンに譲渡し、メルシャンはこの銘柄名を他社が使うことを原則自由としたために、いくつかのワイナリーから同名のワインが発売され、それぞれの味を競っています。

キャンベルアーリー------(葡萄品種)
欧米雑種の黒葡萄で、生食用、加工用品種。耐病性が非常に高く、デラウェアと並んで栽培しやすい葡萄。粒が大きく皮が黒いため、一見巨峰に間違われることもあります。甘味は中程度、酸味も中程度で、その栽培のしやすさなどから、一時は日本国内の葡萄で栽培面積2位となったことがあります。
現在では生食用として出荷されることはあまりなく、九州や東北・北海道などでワインの原料として使用されています。ワインにすると非常に個性的な香りのする面白いワインになります。

巨峰------(葡萄品種)
キャンベルの突然変異種の石原早生(葡萄の名前です)とセンテルニアをかけあわせて作った四倍体の生食用葡萄。この葡萄を知らない人はほとんどいないというほど広くその存在が認知されています。香り、糖度ともに良好で生食用葡萄としては極めて完成度が高い品種です。
現在ではデラウェアを抜き日本国内で最大の栽培面積を誇ります。また巨峰と他の葡萄をかけあわせた生食用品種は非常に多く(ピオーネ、藤稔など)、様々な面で日本の生食葡萄産業の牽引役といっても過言ではないでしょう。粒つきが悪いなどの欠点がありますが、耐病性があり比較的作りやすい品種です。
日本国内ではワインにもよく使われていますが、ワインにすると生食の味とはまったく別の味になってしまうため、マンズワインなどを含めて研究が行われています。九州の株式会社巨峰ワインなどはこの品種を専門にしてワインを作っています。

クオリティ ワイン(quality wine)
高品質を目指した個性あるワインの総称です。総じて高価な傾向があります。
いわゆるフラグシップワインと呼ばれるワインがそうですが、何をもってクオリティワインかそうでないかを厳密に区別するのは難しいものがあります。
対語 →オーディナリー ワイン(ordinary wine)

クリオ・エクストラシオン------(醸造)
ドイツのアイスヴァインを模した甘口ワインの製法。果実をシャーベット状に凍結させてから圧搾することにより、高い糖度の果汁を得てそれを醸造します。しかしこの製法で醸造したワインは、天然のアイスヴァインに及ばないと評価されています。

ケルナー------(葡萄品種)
現代ドイツの交配葡萄の大傑作と称されるワイン用白ブドウ。多産・大粒の品種で、親の片方がリースリングであることもあって華やかなで個性的な香りをもち、「ケルナー香」という言葉があるほどです。ただ、酸味は弱く、やや酒質も弱いという評価も耳にします。
もともと寒冷地の品種なので耐寒性が高く、日本国内でも栽培しているのは新潟、北海道などの寒冷地が主になります。

酵母------(醸造)
ワインの糖分をアルコールと炭酸ガスに分解する菌です。葡萄の皮についていますが、これを使った醸造は安定せず難しいため、普通外から純粋培養した酵母を加えます。このときに加える酵母の種類によってワインの香りや味わいに与える影響が異なります。

甲州------(葡萄品種)
日本固有種の生食兼白ワイン用の赤葡萄。薄紫の美しい葡萄で、皮が厚いうえ雨に強く、日本の風土に適しており比較的栽培は容易です。ただし、国内で栽培されている葡萄の中でも非常に樹勢(枝の伸びる速度)が強い品種であるため、垣根仕立てのような枝の少ない栽培方法を嫌います。
甲州はヨーロッパ系葡萄の系統ヴィティス・ヴィニフェラで、なぜ日本の山奥にこの葡萄があったのかは完全には解明されていません。その歴史は古く、少なくとも800年前には既に栽培が行われていたといわれます。
ワインにした場合、ウイスキーに似た独特の穀物臭が発生する場合があり、やや酒質が弱く味が平坦になりやすいため高品質のワインを造るのは難しいといわれます。しかし、山梨の勝沼にあるワイナリーを筆頭に数々のワイナリーが高品質のワインを造るべく切磋琢磨しており、現在の品質はかなりのレベルに達しています。
甲州で作られたワインは、『美味しんぼ 日本全県味巡り 山梨編』(80巻)で生の魚介類などとぶつからない世界唯一のワインと絶賛されています。世界唯一かどうかはわかりませんが、実体験でも確かにメジャーなワイン用ブドウと異なり、刺身などの生臭さを強調しない珍しいワインであるといえます。
生食用としては巨峰やピオーネなどにかなり押され、栽培面積は減少中。

国内産ワイン
国内で醸造されたワインのことです。あくまで醸造されたのが国内であるということなので原料となる葡萄の産地に関係なくこの表記を行うことができます。
しかし、だからといって低品質とは限らず、特に大手の国内産ワインはコストパフォーマンスが高く、日常気軽に飲むには適しています。
ただこういうややこしいは表記を改めて欲しいものです。

国産ワイン
国産の葡萄を50%以上使用するとこう表記することができます。逆にいうと100%国産のブドウを使わなくてもこの表記ができることを意味します。裏のラベルの原料を見ると、輸入ワイン・国産ワインとたいがい書いてあります。といっても別に品質が低品質だとは限りません。
国内産ワインと同じく非常にややこしい表記です。ちなみにマンズワインの輸入ワイン・国産ワインのブレンドワインは、どの国のワインを混ぜたのかが表記されており良心的であるといえます。

コンコード------(葡萄品種)
ヴィティス・ラブレスカに属するアメリカ産の生食・ジュース用の葡萄です。
実が非常に濃い赤色であるうえ、香りも糖度も良好なのでブドウジュースとしては優良品種の一つです。
耐寒性が極めて高く、マイナス20℃の厳寒でも耐えることができます。このため長野県でさかんに栽培されていました。現在でも全盛期ほどではありませんが栽培されており、無添加ワインなどにおいてはよく使用されています。また、原産国アメリカでもこれを使ったワインが生産されています。

さ行

サントリー
超大手の酒造会社で意外にも起業当時からのワイン会社です。登美の丘ワイナリーは日本でも最大級の自社畑を誇ります。また、フランスの畑「シャトー・ラグランジュ」を所持していることでも有名です。

ジエチレングリコール事件
1985年に起きたワイン史上でも屈指の大スキャンダル。
ことの発端はオーストリアの科学者が合成ワインの研究の過程で、自動車の不凍液に使われるジエチレングリコールをワインに添加すると貴腐ワインに近い味になることを発見したことから始まります。このジエチレングリコールは有毒性は低いものの大量に摂取すると死亡する毒物で、どう言い訳しても食品に加えるなどあってはならない物質です。
ところがこれに目を付けたグリルとオットー・ナラスキイという悪徳ワイン業者が、ジエチレングリコールを安ワインに混入して味を上級のワインに似せ、高値で売りさばくということを始めます。この方法は密かにワイン業者間で売買され、いくつかの業者がこの違法ワインの製造を行ったといわれます。ところが、想像力の足らない人間がいるもので、ある男があろうことかこのジエルチレングリコールを売った業者に付加価値税(日本の消費税)を要求したことからことが明るみにでます。公になった付加価値税の金額から推測されるジエルチレングリコールの販売量が、本来の目的の使用量を遥かに越えていることを不信に思った税務署が調査を開始、不正が発覚しました。
この結果、このワインを輸入・ブレンドしていたドイツや、それを輸入して同じくブレンドしていた日本のワインは「有毒ワイン」と騒がれて売上、信用ともに大打撃を被りました。ことマンズワイン社は大きな損害を受けたといわれます(本当にごく一部に混入してしまっていただけだったらしいのですが)。ついでに名前が似ているということで何故か”オーストラリア”のワインまで販売量が減少したりと、関係ない業者にまで多大な損害を与えてました。なお、オーストリアのワインの販売量はその年は昨年の約20%になってしまったそうです。

老舗
歴史のある企業・店舗のこと。
山梨県の半数近いワイナリーが該当。ほとんどが戦前からワイン造りを行い、なかには100年以上続くワイナリーも複数存在します。他、埼玉の秩父ワイン、新潟の岩の原葡萄園、山形のタケダワイナリー、長野の林農園、大阪の柏原ワイナリーなどがかなりの歴史を持つワイナリーです。
各ワイナリーとも驚異的な息の長さですが、ワイン醸造は生き残りやすい製造業ではけしてありません。日本ワイン黎明期に出来た多くのワイナリーや研究機関は大半が壊滅していることを考慮にいれると、現存しているワイナリーは激動の時代を生き残った猛者ばかりといえるでしょう。

ジャパンワインチャレンジ(Japan Wine Challenge)
1984年にイギリスで始まり、以後毎年同国で開催されている世界最大規模の国際ワインコンクール「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」の日本版として、1998年にスタートしました。
出品するワインは市場で販売する目的のワインで、基本的に生産可能容量が極端に少ないワインは参加できません。ラベルには産地もしくはそれに伴う名称及び収穫に使われたぶどうの収穫年を明記する必要があります。また国産ワインだけでなく、日本に輸入されているワインも審査対象となるために、世界各国のワインがコンクールに出品されています。
かなりハイレベルなコンクールであるために国産ワインで銀賞以上を取るものは極めてわずかです。


シャルドネ
------(葡萄品種)
ワイン用の白葡萄。世界の広範な地域で作られており、一般に酸味の効いた辛口の白ワインになります。日本でも数多くのワイナリーや葡萄農家が栽培しており、よい品質のものも作られています。日本において特筆すべきは林農園においてシャルドネで貴腐ワインの製造に成功したことでしょう。ほとんど白ワインの代名詞のようになったシャルドネですが、意外にも四半世紀前まではむしろマイナーな葡萄品種でした。

重度のハンデ
ワイン作りを行う際の日本の環境のこと。具体的にいうと
・酸性土壌であること。ワイン用葡萄はアルカリ性土壌のほうが向いている。
・高温多湿。しかも収穫期の9月によく降る。
・同じ栽培面積の畑を運営するなら生食用葡萄を売った方が経済的メリットが多い。
・人件費・原料の生産量などの関係上から値段が高め。同値段の外国産のワインと比べると割高感がある。
などのハンデがあります。しかし、だからといって良いワインが作れないわけではありません。

シュール・リー
------(醸造)
フランス語で「澱の上」という意味。フランスのミュスカデ地方で行われている醸造方法のひとつで、発酵が終わったワインからすぐに滓引きをせずにおき、澱の風味などを移す製法です。日本では甲州によく使用されます。

スキン・コンタクト------(醸造)
マセラシオン・ペリキュレールともいう白ワインの醸造方法です。葡萄は皮と果肉の間に香気成分が多く含まれているので、それを抽出するために葡萄を除梗・破砕した後に、低温でしばらく(時間はだいたい数時間)果皮と果肉を接触させつづけて成分を果汁にうつします。その後に圧搾を行いワインを醸造すると、通常の白ワインよりずっと個性の強いワインを造ることができます。
白ワイン用とかきましたが赤ワイン用葡萄にも使用されることもあり、その場合にはロゼのような色合いになります。

スチューベン------(葡萄品種)
アメリカで交配された生食用黒葡萄。日持ち、耐病性もよく、豊産という優れた品種ですが耐寒性に劣るために寒冷地での栽培には凍害対策が必要となります。
熟期は8月下旬、糖度は極めて高く18〜23度に達しますが、酸が少ない傾向があります。ミルズに近い香りがあるともいわれます。
栽培地はほぼ日本全国ですが、特に九州と青森でこの葡萄によるワインを醸造しています

ズースレゼルブ------(醸造)
近年になってドイツで開発された醸造技術。通常のワインを醸造した後に一定量の葡萄果汁を加えることにより、フレッシュ&フルーティーなワインを作り出す方法です。ビン内で発酵しないように加える果汁には殺菌処理が加えられます。ドイツでは格付けQbA以下のワインに許されており、最高位の格付けQmp(カビネットやシュペトレーゼ)のワインには認められていません。
日本国内でもこの技術は使われています。山形県の浜田ワインにはこれとまったく同名の銘柄のワインがあります。

セイベル9110------(葡萄品種)
交配雑種の白葡萄。ホワイトアーリーやベルデレットという呼び名もあります。セイベルとはフランスにおいて多くの交配雑種を示す総称で、他の番号のセイベルも存在します。
耐寒・耐病性に優れた頑健な品種で、果皮が薄く皮ごと食べられる葡萄です。糖度は高く18〜20度とワイン醸造には充分な糖度が得られる葡萄ですが、香りが少ないのが難点。北海道や西日本で多く栽培されています。長野の林農園や京都の天橋立ワイナリーなどが100%セイベル9110のワインを生産しています。

セイベル13053------(葡萄品種)
フランスで交配によって作り出された交配雑種の赤ワイン用の葡萄。寒冷地向きの多産な葡萄で、酸味が強い傾向があります。タンニンが少なく、香りが少ないため、主にロゼやライトな赤ワインの原料として使用されます。
日本国内では北海道で多く栽培されており、十勝ワインの清見の親にあたる品種としても有名。

セニエ------(醸造)
フランスのブルゴーニュで使用されている醸造方法の一つで、発酵している途中の赤ワインから果汁を適量引き抜く方法です。こうすることにより、相対的に皮と果汁のバランスが変わるので出来る赤ワインはセニエを行わなかったものより、色とタンニンが強くなります。ただし、セニエは葡萄が不作で色付きが悪い時などに行われることが多い、本来は緊急回避手段的な意味合いの強い醸造方法です。

セミヨン------(葡萄品種)
ヴィティス・ヴィフィニラに属するワイン用の白葡萄。フランスのソーテルヌ地方の貴腐ワインの原料として有名です。多産の品種でやや酸味と香りに乏しいところがあるため、ソーヴィニヨン・ブランなどとブレンドするのが一般的で、普通に醸造した場合は辛口の白ワインになります。
残念なことにここ半世紀の間に世の中が辛口志向へと移り変わっていってしまったために、貴腐ワインは減産の道を辿っており存在感が薄くなっています。
日本において現在ではあまり多くは栽培されていませんが、マンズワインなどからセミヨン100%のワインが発売されています。

善行寺------(葡萄品種)
ヴィティス・ヴィフィニラに属するワイン用葡萄。
マンズワイン社長茂木七左衛門が長野市の湯福神社近くでこの葡萄を見つけて、ヨーロッパのワイン用葡萄と起源が確かめられた葡萄です。中国渡来の葡萄「竜眼」の選別品種であるといわれます。
ほとんど絶滅寸前だったこの葡萄を甦らせ、日本ワインの原料にするためにマンズワインで育成が始められ、現在ではマンズワイン以外でも長野県の各ワイナリーでも醸造が行われています。味は甲州に似ているところがあります。

ソムリエ
ワインのサービスを行う職業従事者のうち、試験に合格したものだけに与えられる資格。一定期間以上の関連業種への従事が必要であるため、そもそも酒販業界にいない人間(筆者含む)には無縁の資格。
ちなみに本来はレストラン等でサービスやワインの仕入れなどを担当するのがソムリエですが、ワイナリーのソムリエは少々事情が異なります。もちろんそういった基本業務があるのですが、栽培や醸造を手伝っている方も数多くいます。確認したなかでは、安心院葡萄酒工房(三和酒類)、勝沼醸造、伊豆ワイナリーに原料造りからサービスまでを行う、ある意味で究極のワイン通ともいうべきソムリエがいます。


ソーヴィニヨン・ブラン------(葡萄品種)
ヴィティス・ヴィフィニラに属するワイン用白葡萄。もともとはボルドー地方のおいてセミヨンとブレンドする補助品種でしたが、その特徴ある青草のような香りなどを評価されてフランスだけでなくオーストラリアなどのニューワールドで多く栽培されるようになっています。
国内でも栽培が行われており、一部でかなりのワインもできつつあります。

た行

第三セクター
地方自治体が出資しているものが第一セクター、民間企業が第二セクターで、両方が共同出資しているのが第三セクターです。
ワイナリーにも一部に第三セクターの経営形態の会社があります。代表的なワイナリーとしては兵庫県の神戸ワインと、島根県の島根ワイナリーがあります。

------(醸造)
フレンチオーク、アメリカンオーク、近年ではロシアオークの樽があり、それぞれの木の産地ごとに樽の種類があります。歴史的にみればワインの輸送用にも使用していたのですが、現在では輸送用の意味はほとんどなくなり樽香をつけたり、赤ワインの醸造のために樽内でワインを発酵、貯蔵します。樽に貯蔵すると木の香りや、焦げの香り、そして樽に由来する味がつきます。樽の内部には火で焼きを入れており、この焼き加減によってワインにつく香りが異なります。焼きが甘ければ木に由来する香りが強くなり、しっかり焼いてあればあるほど木の香りは少なくなりかわってトースト臭が強くなっていきます。一般に新樽(未使用の樽)が良いとされます。
樽は高価であるため、樽を使用するとワインの市場価格が上昇する傾向があります。

樽貯蔵(樽熟成)------(醸造)
発酵が終わったワインを、木製の樽で熟成させること。こうして樽にいれることにより独特の樽香がワインにつきます。普通は赤ワインは樽で熟成を行います。白ワインはワイナリーの方針により、樽に入れる場合も入れない場合もあります。
白ワインなどは過剰に長くいれておくとワインの味わいを壊してしまうおそれがあります。

樽発酵------(醸造)
木製の樽で葡萄を発酵させ、醸造すること。海外の高級ワインなどは樽で発酵を行うます。しかし、ステンレスタンクと比べると衛生面・温度面での管理が難しいため多くのワインはこれを行うことはありません。樽発酵だけを行うと樽香は鼻で嗅ぐ分にはあまり感じられず、口に含んだ時にはっきり感じられる傾向があります。

タンニン
赤ワインに多く含まれている成分で、ぶどうの皮から流出します。これが多いとより渋さを強く感じます。

駐車場
いうまでもなく車を停める場所です。
経験上ですが駐車場の広さは、そのワイナリーの資本力だけでなく新旧にもよっている傾向があります。ミニワイナリーでも最近出来たワイナリーはかなり広い駐車場をもっていることが多く、反対に戦前に設立されたワイナリーは狭い傾向があります。かのメルシャン勝沼ワイナリーもあまり駐車場は広くなく、逆に最近出来たシャトレーゼ勝沼ワイナリーは規模のわりには広い駐車場があります。
老婆心ながら勝沼でも飲酒運転が厳しく取り締まれらているので、車で行くなら要注意です。話によると同乗者責任を取らされて1台5人で合計120万の罰金を課された人たちもいるそうです。

ツヴァイゲルト・レーベ------(葡萄品種)
オ-ストリアのツヴァイゲルト博士によって交配育成された赤ワイン用葡萄。耐寒性が非常に高い品種です。ワインは、穏やかで上品な香りとソフトな口当たりのライトボディのワインになります。
日本国内では新潟などの寒冷地、特に北海道で大規模な栽培が行われています。

デラウェア------(葡萄品種)
アメリカ原産の生食用の白ブドウでデラウェアが故郷です。たぶん見たことも食べたこともないという人はほとんどいないであろうというほど、日本国内で普及しているブドウです。
耐病性・耐寒性が高く、栽培が容易であるため最近まで日本において最大の栽培面積を誇っていました。皮が薄くほどよく甘味があり、生食葡萄の中では値段も手頃です。「青デラ」と呼ばれる完熟していないデラウェアを使用することにより、酸味が強くまたラブレスカ種特有の香りがほとんどないワインを醸造可能です。なお、ジベレリン処理を行わない種あり状態だと熟した状態でも同じく酸味がしっかりした個性的なワインになります。

な行

ナイアガラ
------(葡萄品種)
ヴィティス・ラブレスカに属する生食用の葡萄。黄緑色の葡萄で耐寒性が高く、寒冷地での栽培に適しています。
狐臭(こしゅう)といわれる独特のかなり強い香りをもっており、ワインに醸造した際にもこの香りが現れます。
日本では低価格ワインや無添加ワインの原料としてもよく使用されています。

は行

ハイパー・オキシダシオン
------(醸造)
白葡萄の果汁を圧搾した後に、過剰な酸素を送り込み雑味のもととなる成分を沈殿させて除去し、すっきりした味のワインを作る醸造方法です。日本においてはデラウェアなどのようにワイン向きでない白ブドウからワインを醸造する際に使用されます。

バッカス
------(葡萄品種)
ドイツで1970年代初等に開発された白ワイン用葡萄。シルヴァーナーとリースリングの交配にさらにミュラー・トウルガウを交配させた品種で、古代ローマの酒神バッカスに因み名づけられました。栽培困難な土壌条件の土地でも育ちます。ワインはフル‐テイーでマスカット香があり、柔らかさと余韻の長さが特徴です。
国内では、北海道のワイナリーが何箇所か栽培を行なっています。

火入れ------
(醸造)
醸造過程で行われる工程で、パスツリゼーションともいいます。ビン詰する前、あるいは詰めた後に低温で熱を加え、残留酵母と他の雑菌を殺し酒質が劣化するのを防ぐ意味があります。
ただしワインは火入れを行わない場合が国外ではほとんどです。これは火入れを行うことによりワイン特有の果実に由来するフルーティーな風味が失われやすいため。

ピオーネ
------(葡萄品種)
生食用の大型粒の品種。巨峰とカノホールマスカットを交配させて作られた比較的新しい葡萄です。大粒で種なし、皮ばなれがよく糖度も高いので生食用としてかなり完成されています。日本国内でわずかながら、これを使用したワインが醸造されています。

ピノ・ノワール------
(葡萄品種)
ヴィティス・ヴィフィニラに属する、フランスのブルゴーニュ地方の赤ワイン用の主力葡萄。フランスの赤ワイン用の葡萄としてはカベルネ・ソーヴィニヨンと双璧を成す重要な葡萄としてあまりに有名です。ワインにした際には非常に鮮やかな透明度の高い赤色になり、香りは野イチゴやラズベリーのような果実香を発します。味、タンニンの濃度、喉越しなども優れています。
ただし、非常に栽培が難しい葡萄であるため、ブルゴーニュ以外ではカルフォルニアの一部地域ぐらいしか大規模な栽培の成功例はありません。日本国内でも現在試行錯誤が続けられていますが、まだ発展途上の状態です。
余談ですがドイツの「シュペート・ブルグンダー」という葡萄品種は、このピノ・ノワールのドイツ名です。

ピノ・ブラン
------(葡萄品種)
ヴィティス・ヴィフィニラに属する、ピノ・ノワールの突然変異種ともいわれるワイン用白葡萄。シャルドネとよく似た特徴があり、フルーツ風味で香りも豊かですが、酸味などはおとなしめになります。
国内でもそこそこ栽培されており、国内コンクール「Japan Wine Competition」において山形県の高畠ワイナリーがこの葡萄で入賞をはたしています。

フィロキセラ
------(栽培)
世界中のワイナリーに未曾有の大被害を及ぼした有名な害虫です。もともとはアメリカ在来のダニの一種で、幼虫時に地中に住み葡萄の根から養分を吸い取ります。吸われた根の部分は瘤上に変化して栄養を吸収できなくなっていくため、木が枯れてしまいます。
あまり知られていませんが、明治時代の日本では愛知県や兵庫県、大阪府など、今ではあまり葡萄栽培のイメージが湧かない場所でフランスから輸入したワイン用葡萄の栽培や研究を行っていました。しかし、フィロキセラによってこれらの県の葡萄はほぼ全滅し、近代日本の黎明期におけるワイン醸造の夢は消え去りました。このときに甲州葡萄酒本舗(シャンモリ)の親会社である「ねのひ酒造」も愛知県で葡萄栽培を行っていたため、大損害を受けています。
最終的にアメリカの台木に接木することによりその害から逃れることができたため、現在のメジャーなブドウはほとんどこのアメリカの台木に接木したものです。

プチ・ヴェルドー------(葡萄品種)
ヴィティス・ヴィフィニラに属するワイン用赤葡萄。色は赤黒く、タンニンが強い品種です。主にフランスのメドック地方の赤ワインの醸造の際に補助品種として少量がブレンドされて使われています。完全に補助品種として扱われており、これ単体でのワイン醸造はあまり聞きません。例外中の例外として山梨県勝沼の丸藤葡萄酒工業が100%プチ・ヴェルドーのワインを少量生産しています。また、同じく山梨のマルサン葡萄酒はプチ・ヴェルドーの比率が40%近い赤ワインを生産しています。
日本国内でもわりに栽培されており、同じく補助品種として使われています。

ブラッククイーン
------(葡萄品種)
川上善兵衛が交配により作り上げたワイン用黒葡萄で、生食には適しません。日本の多雨多湿の気候に適しており、大きな房になり収穫量も多くなります。熟しても酸が多くの残り、色素が多いため濃い黒紫色の赤ワインになります。マスカットベリーAの色づけ用の補助品種として作られた葡萄であるともいわれます。
マスカットベリーAと比べると現在では栽培している畑は少なくなっていますが、山梨の塩山洋酒、機山洋酒工業などいくつかのワイナリーが100%ブラッククイーンのワインを作っています。

フリーラン
------(醸造)
ワインを醸造する工程において、破砕した果実を通常は圧搾機にかけて果汁を絞りとります(これをプレスランと呼びます)。
フリーランは圧力を加える前に自然に流れ出してくる果汁のことで、これだけを集めると、種や皮の成分があまり含まれていない清澄な果汁を入手できます。この果汁を醸造すると雑味の少ないすっきりとしたワインが出来やすくなります。

ベリー・アリカントA
------(葡萄品種)
川上善兵衛が交配した赤ワイン用品種。マスカットベリーA、ブラッククイーンに次ぐ第三の川上品種です。耐病性が高く、栽培は比較的容易です。もともとは着色用品種で、果肉も真赤な葡萄。ブレンドで使用されることが多いのですが、塩山洋酒醸造やアサヤワイナリーが100%ベリーアリカントAのワインを醸造しています。
ちなみにベリーAにもついている”A”とは、もとはB以降の名前が振られた品種があったことを意味しています。マスカットベリーBという品種は数十年前には確かにあったのですが、そちらは栽培されなりました。こうして後番号の品種がなくなってしまったため、門外漢には謎の”A”が残っているのです。

保存

ワインは一般に温度15℃、湿度75%程度で保管するのがもっともよいと言われます。また、冷蔵庫にしまっておけば劣化することはありませんから、高いワインはとりあえず新聞紙でくるんだあとにさらにビニール袋にいれて口を閉じてから冷蔵庫にいれておいたほうがよいでしょう。ワイン専用の冷蔵庫で開け閉めが頻繁でなければなおよいです。ただし、冷蔵庫は湿度が低いのであまりに長期いれすぎるとコルクが固くなってしまい空気が入って劣化を招くので注意が必要ですが。
私見ですがワインは味が劣化しやすいという認識が一般的ですが、蒸留酒を除いた酒類では比較的丈夫だと思います。参考にいうと日本酒は丈夫な純米酒でない限り、常温で置いておくと劣化しますし、蛍光灯を長時間あてると香りが破壊されます。

補糖
シャプタリザシオンともいわれ、天候不良などにより葡萄の糖度が上がらない際などに糖分を葡萄果汁に加えることにより、発酵を正常に行わせる技術です。ブルゴーニュでは年ごとの出来・不出来が激しいためにこの技術を厳しい制限のもとに行っています。逆に温暖でほとんど毎年、充分に成熟した葡萄が得られる地域・国では補糖そのものが禁止されている場合もあります。規制がない時代はこの技術が悪用され、砂糖水でワインを増量しようとする悪徳業者が後を絶たなかったともいわれます。
糖というとどうしても「甘味」を想像しがちですが基本の目的は発酵促進。
日本においても、ヨーロッパ品種は糖度が極めて高くなるので補糖はあまり行いませんが、甲州やラブレスカに属する葡萄の一部は天候不順だと充分な糖度を得られないために補糖を行うこともあります。

ま行

マスカット------(葡萄品種)
ヨーロッパ葡萄品種ヴィティス・ヴィニフェラに属する生食兼ワイン用の白葡萄。生で食べた時と、ワインにしたときの香りや味にあまり差がない非常に珍しい葡萄です。甘く豊かな香りをもつために、実際にはさほど残糖度がなくても甘口に感じられることが多く、ワインを飲みなれていない人でも抵抗なく飲めるワインになります。種類がいくつかありますが、以下の二つが国内でよく栽培されています。

マスカット・オブ・アレキサンドリア―――エジプト原産の欧州種で2000年以上の歴史を持つマスカットです。果粒は大きく、果皮は淡黄色。日本ではほとんどを岡山県で栽培しています。「ぶどうの女王」ともいわれます。
栽培には高度の専門性が要求されます。

ネオ・マスカット―――大正12年にマスカット・オブ・アレキサンドリアと甲州三尺を交配してつくられた、比較的新しい品種です。果色は乳黄白色。ネオマスカットの方が酸味が強くなります。 新品種に押されて、深刻なほど栽培面積が減少しており、それに比例してこのワインも滅多に見られないものになりつつあります。

マスカットは日本でも多く生産されていますが、国産ワインにはそれほど多くは使用されていません。とはいえ、サッポロ岡山ワイナリーなどがマスカットによるワインを行っています。

マスカットベリーA------(葡萄品種)
日本ワインの父、川上善兵衛が交配により生み出したワイン用の黒葡萄ですが、生食用として出荷されることもあります。若いワインの色はルビー色で非常に美しく、タンニンは少なく味は軽めで酸味はあまり強くない傾向があります。日本の赤ワインの主力品種ですが長期熟成向きではないといわれており、現在は若飲みが主流です。
蛇足ですがこの品種の開祖たる岩の原葡萄園の「深雪花」の赤は、マスカットベリーAで作られたワインとしては過去飲んだ中で最高のワインでした。

マセラシオン・カルボニーク------(醸造)
ボジョレー・ヌーヴォーを作るときに用いられることで有名な醸造方法。密閉したタンクに葡萄を房ごといれると、葡萄の重みで下にある果実が潰れて少しづつ発酵がはじまります。こうなるとタンク内に炭酸ガスが充満し、果皮細胞の分解が促進され色素が溶け出しやすくなります。ここで圧搾を行い、ワインを醸造するとフレッシュ&フルーティーで色鮮やかなワインを醸造することができます。最近では自然派(ビオディナミ)の醸造方法としても有名。



マロラクティック発酵------(醸造)
MLFとも記述するワインの醸造方法です。樽熟成を語るさいには必ずついてまわる言葉で、一般的な赤ワインではほとんど必須の醸造方法です。ワインは醸造したばかりだと酸のほとんどは酒石酸とリンゴ酸になるのですが、このうち適度の酸素と触れることにより乳酸菌が増殖し、リンゴ酸を乳酸と二酸化炭素に変えていきます。これがMLFです。これを正常に行うには樽による熟成が不可欠といってよく、MLFを行うことにより刺激的なリンゴ酸が減少してワインの味がよりまろやかになります。ただし、フレッシュな酸味のあるワインを目指している場合には逆にこれを起こさないようにする必要があります。ドイツワインの多くは、MLFを起こさないように醸造されています。
また、ステンレスタンクでMLFを起こす場合は乳酸菌を入れることによりマロラクティック発酵を起こします。

マンズワイン
メルシャン、サントリーに次ぐ、日本屈指のワイン会社として有名です。親会社は醤油などの発酵業の大手キッコーマン。
善光寺などの変わった国内品種に目を付け、これらの栽培を行ったりと大手ながらも個性あるワイン作りに熱心です。
酵母の開発や新品種の開発にも力を注いでおり、特にワイン用優良酵母の開発に関しては国内でも有数の実績を持っています。
山梨県の勝沼と長野県の小諸にワイナリーがあります。

ミュラー・トゥルガウ------(葡萄品種)
リースリングとシルヴァナー(グートエーデルという説もあります)を親に持つワイン用白葡萄。多産な品種で、香り・味ともにリースリングに酷似していますが、酸味はやや少なめになります。一時機はドイツでもっとも栽培されている品種でしたが、現在はリースリングに王座を奪回されています。また、リースリングに似ているとはいえ、味の深みと複雑味にかけるという評価が多く、「廉価版リースリング」というイメージを払拭できずにいます。もっとも、丁寧に作られればその品質はリースリングに見劣りするものではありません。
寒冷地葡萄であるため国内では新潟や北海道で主に栽培されています。

ミルズ------(葡萄品種)
マスカットハンブルグとクレベリングを交配してつくられた交雑品種。25%ほどラブレスカの血統であるためか、生食にも向いています。
かつては山梨県を中心に赤ワイン向けの醸造用ブドウとして広く栽培されていました。しかし、栽培がやや難しいことから現在では他の葡萄と比べると重視されていません。
醸造するとバラの香り、あるいはサツマイモの香りなど、かなり個性的で複雑な香りのワインになります。
現在、国内でこの葡萄栽培しているワイナリーは山梨県のルミエールなど数軒のみです。また、塩山市の奥野田葡萄酒工業ではミルズの白ワインを醸造しています。

無添加ワイン------(醸造)
ワインは酸化による劣化を防ぐ、及び殺菌のために通常は亜硫酸を加えます(必ずビンのどこかに記述があります)。これを行わないのが無添加ワインとよばれるものですが、一般に売っている無添加ワインはどちらかというと健康志向の人々の商品でその品質には疑問があります。
が、浅井昭吾氏によるとニュージーランドや昔ながらのワイン作りを行っているワイナリーの一部は無添加ワインでありながら名醸地に勝るとも劣らない素晴らしいワインを作り出しているため、必ずしも「無添加=低品質」とは決め付けられません。考えてみれば亜硫酸添加技術が開発される前にも絶賛されるワインがあるのですから当たり前ですね。

メルシャン
日本最大のワイン会社。サントリーより国内生産のワインに力を注いでいる傾向があります。有名なのは長野の農家にコンコードからメルローの転換を行わせたこと、他にも甲州のシュール・リー製法の確立など日本ワイン業界に大きな影響力を持ちます。高品質国産ワインの醸造の本拠地は山梨県の勝沼ワイナリーになります。

メルロー------(葡萄品種)
ワイン用の黒葡萄。カベルネソーヴィニヨンと並んで多くの地域で生産されています。メルローのワインはソフトで、カシスやイチゴの香りを感じさせます。タンニンはさほど強くはなく、おおむねミディアムボディ程度のワインになります。なめらかな口当たりと柔らかさに定評があります。
日本のメルロー栽培で有名なのは長野県の林農園で、栽培の先駆者だけあってかなり良い赤ワインを作っています。他にも多くのワイナリーで栽培が行われています。

モリオ・マスカット------(葡萄品種)
1928年にシルバーナーとヴァイス・ブルグンダー(ピノ・ブラン)の交配によって生まれた白ワイン用葡萄。マスカットと名前にはありますが、マスカット種とは品種的にはまったく関係がありません。多産な品種で収穫量が多く、重く強いマスカットの香りを持つワインになります。
日本国内では北海道の数箇所のワイナリーで栽培が行なわれています。


や行
山ソーヴィニヨン------(葡萄品種)
山梨大学の山川教授がヤマブドウとカベルネソーヴィニヨンを交配させて作ったワイン用黒葡萄。酸味が強い傾向があります。
主に山梨県内で栽培されていますが、他の県でも一部栽培している地域があります。


ら行
リースリング------(葡萄品種)
ヴィティス・ヴィフィニラに属するドイツの最高級品種と評される白ワイン用葡萄。ワインの香りは極めて複雑で、主に果実や花を思わせる香りになります。特徴的な苦味があり、極甘口から辛口まで幅広く醸造されているのも特色の一つといえるでしょう。
栽培するだけならば比較的容易な葡萄ですが、ドイツ以外で栽培するとドイツワインとはまったく異なる個性を持ったワインになってしまいます。ドイツ以外ではオーストラリア、フランスのアルザス地方でも栽培されています。
日本においても数社が栽培しており、特に神戸ワインが有名です。

ルカチテリー------(葡萄品種)
グルジア原産の白葡萄。あまり有名ではありませんが、東欧や中国で多く栽培されている、知られざる大品種です。
耐寒性が高いため、日本国内では長野県塩尻市で主に栽培されています。ワインにすると独特の香りがあり、酸が強くなる傾向があります。
林農園、井筒ワインなど数社がこの葡萄を使用したワインを醸造しています。

レインカット------(栽培)
マンズワインが開発した栽培用具。葡萄の実は熟し始める頃に雨にあたると、そこから病気が発生したりしやすくなります。これを防ぐためにビニールの覆いを雨の日に木にかけて実を保護するのがレインカットです。ただ、ビニールをかけっぱなしにすると水蒸気が上方こもってしまうこと、そして値段が張るのが欠点といわれます。
かなり多くのワイナリーが導入しているので、ワイン用葡萄の畑にいけば実物を見るのは容易です。


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