メルシャン勝沼ワイナリー
〜国産ワインのフラグシップ!〜
外観
勝沼でもっともワイナリーが集まっている通りにある、「メルシャン」と書かれた黒い看板。そこにあるのが、日本最大手のワイン会社メルシャンです。向かいには広い駐車場もあり、係員が誘導を行っています。
敷地内には洋風の木造の建物が2軒、さらにイベント用の広場もあります。またあちこちに熟成用の樽がオブジェとして置かれており、ワイナリーであることが実感できます。
しかし、実はこのワイナリーの凄さはそういったところではありません。詳細はツアーの項に書きますが、実は地下に日本最大のワインセラーが広がっています。さらにその歴史たるや・・・。
文字通り奥深いワイナリーなのです。

 
歴史
先に申し上げます。メルシャンの歴史について詳しく書いたらとても書ききれません。それほど奥深く複雑な歴史を持つワイナリーです。
概略を申しますと原型となったのは日清製油から分かれた「日清醸造株式会社」、「三楽」、「オーシャン」という三つの会社でそのうち二つが勝沼とは縁が深い会社です。
「日清醸造所」は醸造の技術研究に熱心な会社で優良な酵母の製造などで実績があった会社です。そのワインの銘柄の一つが「メルシャン」、これが現在の社名となります。この会社は地元重視という傾向がもともと強く、酵母の培養方法なども公開するなど利潤のみを追い求める企業とは少し異なった社風を持った会社でした。この伝統はそのままメルシャンに引き継がれており、シュール・リーの技術の公開などがその一例となっています。
もう片方の「オーシャン」は源流にいくとなんと日本初の民間ワイン会社である「大黒葡萄酒」にまで辿り付いてしまう歴史ある会社。
これら二つの会社を吸収合併したのが「三楽」で、1990年に「メルシャン」と社名を改めて現在にいたります。
その経緯上からも、もう一方の大手ワイン会社サントリーよりも国産ワイン重視の傾向があり、輸入ワインの販売に関しては一歩遅れをとるものの、バルクワインとのブレンドワインを含めた国産ワインの製造・販売においては日本一。
また、日本ワイン関係者で知らないという人はいない故浅井昭吾(ペンネーム:浅井宇介)氏もメルシャンの社員でした。

その生産拠点たる勝沼ワイナリーではメルシャンの持つ純国産ワインの最大にして唯一の生産拠点として古くからワイン醸造を手がけています。この工場における年間の生産数は80万本と、最大手としては少ないような数字ですが、日本産の葡萄だけを使用しているという点に注目(※)。ただ、名実ともに日本最大手ワイナリーの一つですが、従業員は勝沼ワイナリーで20人と中小クラスの人数です。
原料は山梨・長野の他、各地の契約栽培農家、農協、自社畑から供給されています。ことこのなかでも長野の桔梗が原で収穫されたメルローを使用した「桔梗が原メルロー」は日本ワイン史上に燦然と輝くワインとしてあまりに有名です。
技術面でも山梨・長野のワイナリーの牽引役を担っており、数多くの技術がメルシャンから他の会社へと伝播されています。
その実力は、自社の奥深い歴史にまったく恥ないものであるといえるでしょう。

※1 なお、輸入ワインとのブレンドワインのボトリングは神奈川県藤沢市の工場で行われています。

施設の概略

稼動中の工場ですので、醸造施設やセラーなども完備されています。これらの施設についてはツアーの部分を参照して下さい。見学は可能です。
ただ、実際に醸造施設だけをみるとそれほど「巨大」という雰囲気はなく、中規模レベルの醸造所という印象を受けます。

観光用の建物は二つ。一つはお土産の売店、もう一つはグラス売りのワインコーナーです。
通常の売店では、お土産品やメルシャンの元工場長の浅井昭吾氏や、同じくメルシャンの元工場長の関根彰氏の著書、そして自社ワインが販売されています。またここでは無料でワインの試飲も可能(ただし、値段の高いワインは含まれていません)。また、売っているワインはあまり市場で見ないものが揃っています。
もっとも観光シーズンにいくとこの売店は人でごったがえしていますので、試飲するのも一苦労だったりしますが。
他にツアーの受付けもこの売店の窓口で行われています。

そしてもう一つ、売店の向かい側にあるのが有料の試飲用のワイン・サロン「ラ・ヴィーニュ」です。営業は基本的に土曜日だけですが、中には椅子やテーブルがありゆっくりとワインを楽しむことができます。

ここで飲めるワインはグラス売りで全て有料ですがラインナップが凄まじいの一語につきます。詳細はテイスティングの項に譲りますが、ワイン好きな人でメルシャンに来てここに行かないのは宝の山を前にして帰るようなものです。まあ、私たちが行った時には外が混んでいたわりにここは社員の方以外誰もいなかったので、未だ真価を認められていない宝の山のようですが(^_^;。
もちろん同じ施設内で自社製高級ワインの販売も行われています。

銘柄: 甲州鳥井平 1999
生産元: メルシャン
価格: 5000円
使用品種: 甲州葡萄
備考 色は緑がかった薄い黄金色。樽のヴァニラ香とシェリーのような香り、そしてわずかに岩清水を思わせるような清涼なミネラル香を感じました。
味はドイツの上級のアウスレーゼを思わせる品の良いすっきりとした甘味。酸味とのバランスもよく、極甘口ながらくどさがないバランスの良いワインで、余韻には蜂蜜のような香りが残ります。

日本初の国内ワインコンクールのJapan Wine Competition「甲州 白ワイン」部門において見事に第一位「優秀カテゴリー銀賞」を獲得しています。
※このテイスティングコメントはグラスワインで飲んだ際のものです。
飲んだ日: 2003年10月11日


外観  歴史  施設の概略  葡萄畑  ツアー  テイスティング  購入方法  アクセス  管理人のワイン記録 
葡萄畑
良質の甲州の産地で有名な鳥井平畑、メルシャン初の自社畑「城の平」は遠すぎることもあって見学にいくことはできません。ツアーで行く畑は残念ながら見学専用の畑で、実際にそこの葡萄を使っているわけではありません。

ツアー
要予約のツアーは土曜日の10時半から約90分。一週間に一度しか行わないツアーであるため、こちらの日程を合わせる必要があります。申し込む際には、電話またはFAXで前日までに予約して下さい。詳細はメルシャン勝沼ワイナリーの公式ホームページをにありますが、定員制なので葡萄狩りのシーズン中の予約は定員オーバーになる可能性があります。料金は1000円です。

ツアー内容はまず、ワイン歴史館で日本ワインの歴史を聞くことから始まります。続いて葡萄栽培の畑、醸造施設見学と続きますが、栽培畑はあくまで観光用のもので実際にはそこから収穫した葡萄を商品に使っているわけではないようです。
実物の醸造機具をみながら、ビデオで基本的な醸造方法の説明があります。
それが終わると地下セラーの見学ですが、何とこの地下セラー、最大で300万本のワインが所蔵可能!リットルに直すと225万リットル!
ほとんど想像不能な数値ですが、いかにメルシャンが巨大な会社であるかはこれでよくわかります。セラーには記念的な意味で自社ワインの古いものや、1800年代のフランスの一級ワインなども保管されています。
最後にセラーにてグラスを渡され、自社ワインのテイスティングを行います(テイスティングの項参照)。
この時に使うテイスティンググラスも記念に貰えます。グラスの縁の部分も薄く形もなかなかよいグラスです。
他にワイナリーに行ってその場で申し込める簡易ツアーもあります(有料)。

醸造施設について解説してくれるツアーはあまり多くないので、機材などに興味があるならこのツアーはかなりお勧めです。
歴史から始まってワインの基礎を全て紹介してくれるまさにフルコースツアーなので、年季の入ったワインファンばかりでなく初心者の方こそ積極的に参加したほうがよいかもしれません。
テイスティング
ツアーの最後に樽から直接取出したワインをテイスティングさせてもらうことができます。私が飲んだときは品種はシャルドネとメルローでした。色はなにしろ地下の薄暗いセラーなのでさっぱりわかりませんでした(^-^;

シャルドネ(銘柄は不明):グラスに鼻を近づけると新樽の上品な樽香ばかりでなく、濃厚なシャルドネのトロピカルフルーツの様な香りとわずかにクリームのような香りが立ち昇ってきます。
既に飲むまえからかなり期待できる香りでしたが、いざ口に含むとアタックは刺激が少なく口いっぱいに樽とフレッシュな香りが広がります。一応辛口に分類されるのでしょうが、辛いという感じは受けず、若いながらも濃厚でバランスのよいワインでした。いったい買ったらいくらになるのか不安になるほどの味です。

メルロー(銘柄は不明):上記と同じく新樽の上品な樽香と、メルローの柔らかいカシスの香りが明確に感じられます。
アタックは刺激が少なく柔らかい当たりで、まさにフレッシュ&フルーティーという言葉がよく似合う芳醇な果実味がしました。当たり前のことながらまだ熟成が進んでいないため、味に少し荒々しいところがありました。瓶詰めして市場に出荷する頃にはもっとおいしくなると予感させる味です。

またワイナリー内では有料・無料のテイスティングも可能です
有料のテイスティングは、国際コンクール入賞の常連クラスのものが居並ぶ壮観なものです。
「城の平カベルネソーヴィニヨン」(定価10000円以上、グラス1200円)、「桔梗ガ原メルロー」(定価8000〜10000円、グラス1000円)、「甲州 鳥居平(定価5000、グラス500円)など国内コンクール、国際コンクールともに数々の栄誉を勝ち取っている日本国内超1級のワインです(値段もですが)。特に桔梗が原メルローは知り合いの酒販店の店主曰く「フランスの4、5級のシャトーをも凌ぐ」と評していました。
各テイスティングの結果に関しては一番下のページの管理人のワイン記録を参照してください。

無料の試飲ではジェイフィーヌシリーズの他にセミヨンやコンコードなど時期によって色々な銘柄があります。ワイナリー内でしか販売されていないワインなども数多く、その種類はかなりのもの。
ここで売られているコンコードのワインは、醸造技術が優れているためか、あまり雑味のないすっきりした味わいになっており、ジュース気分で飲めるワインです。食中酒向きではないかもしれませんが、お金を払って飲むに値する品質でした。
メルシャン勝沼ワイナリーのもっともスタンダードなジェイ・フィーヌシリーズは、「え、これが1500円でいいの!?」と、驚かされます。うち2本を紹介致します。

メルロー&マスカットベリーA 2000:価格は1575円。「リュブリアーナ国際コンクール」にてなんと金賞をとった恐るべきワインです。ベリーAの入ったワインが国際コンクールで受賞というのも興味深いですが、この低価格で金賞というのが驚きです。いざ飲むと、樽香と土や根菜といった香りもあり、とても複雑で高級感があります。味わいも同様に複雑で、同価格の海外のものでもこれに太刀打ちできるワインは少ないかもしれません。はっきりいって反則じみた品質。

シャルドネ&甲州 2002:価格は1575円。このワインは「余ったヨーロッパ品種に増量用に国産品種を入れたワイン」という印象を抱いてしまいがちです。が、やはりワインはラベルで飲むものではないと実感できます。香りはクリーミーで、少しフルーティーさがありますが全体におとなしい印象。味わいにミネラル感があり清涼で優しい味です。樽香や旨味と酸味があるので爽やかなだけの薄いワインとは一線を画したワインで、白身魚などの料理とあわせたい味わいです。

有料試飲はあらかじめメルシャンのグラスをもっていると一回につき100円安くなります。予約ツアーに参加すれば貰うことができるので、その意味でもツアーに申込みすることをお勧めします。ちなみに売店で買うと600円と割高です。

総論
恥ずかしながら、メルシャンに対して私はどうもコンビニやスーパーで売っているブレンドワインの会社というイメージを持っていました。ですが、直接触れたその実力はまさに日本ワイン業界の牽引役という言葉がふさわしいものでした。
プライベートリザーブ、ディストリクト、ジェイ・フィーヌと名づけられたシリーズから失望させられることはありません。特にジェイ・フィーヌシリーズはほとんどが1500円と高いコストパフォーマンスを誇り、良いヴィンテージのものなどはラベルを貼り間違えたのではないかとを疑うほど高品質です。もちろん、それより高いランクのシリーズであっても金額相応の価値は充分です。

また山梨の他ワイナリーの発展に心を砕く、あまり大会社らしからぬ方針を守っているというのも興味深いところ。無償の技術供与など、自社だけでなく日本ワイン界全体の発展を考慮した方針が、どれほど他のワイナリーに影響を与えたのかは計り知れません。名実共に日本ワイン界の「旗艦」であることに異論は少ないでしょう。
調べれば、社史だけでも紆余曲折のいろいろなエピソードがありそれだけでも楽しめます。
もちろん、関根彰氏や故浅井昭吾氏の著作を読みその慧眼に触れた人ならば、行く義務があるといって過言ではありません。また、ワインを取り扱う職業の方やワインに興味がある方は、日本ワインに関してはまずはメルシャンの純国産ワインから始めてみることをおすすめします。

ツアーでその歴史に触れ、樽出しのワインを飲み、ワイン・サロンでグラスを傾ければ、きっと日本ワインの息吹を感じ取れるでしょう。

購入方法 
ワインの販売はワイナリー内の販売店と、全国の酒販店などで行われています。公式ホームページからの通販も可能です。

ワイナリーアクセス
アクセスに関してはメルシャン勝沼ワイナリーの公式ホームページに詳しく説明されているのでそちらを御参照下さい。
見学用の畑で植えてあるのはカベルネソーヴィニヨン等。さすがに剪定(ギュイヨ・サンプル式)はきちんとされています。
発酵中のタンク。中にはメルローがたくさんつまっています。実はかなり発酵臭が凄い場所です
銘柄: 桔梗ガ原メルロー 1999
生産元: メルシャン
価格: 10000円
使用品種: メルロー
備考 リュブリアーナ国際コンクールで、金賞・大金賞を獲得し日本にワインあり、と世界に知らしめたことで有名な銘柄です。収穫されたメルローは棚栽培がほとんどのため、ヨーロッパの醸造家の常識を覆す「ミステリアスなワイン」と評されることもあります。
色は紫がかった赤。香りは新樽とカシスの香りでしたが、あまり強くはありません。
ところが、味は極めて複雑で芳醇。ファーストアタックは弱いですが、甘い果実の味、樽の香り、生き生きとした酸味があります。全体のバランスがよく、喉越しは柔らかくまろやか。余韻は長く、果実の香りがしばらく残ります。
正直、味の要素が複雑で私では表現はなかなか難しいです。
蛇足ですが、個人的には城の平カベルネ・ソーヴィニヨンよりも好きなワインです。
※このテイスティングコメントはグラスワインで飲んだ際のものです。
飲んだ日: 2003年10月11日
社名 メルシャン勝沼ワイナリー
住所 山梨県東山梨郡勝沼町下岩崎1425-1
電話番号 0553-44-1011
取寄せ オンラインショッピングあり HP http://www.chateaumercian.com/cm/winery/
自社畑あり、契約栽培畑あり ツアー等 あり(有料 コース複数有り)
テイスティング可(有料・無料)
栽培品種 メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、甲州、他 営業日 12〜7月は火曜定休
営業時間 9:00〜17:00
★訪問日 2003年10月11日、2004年12月5日
備考:国産ブドウのみ使用(勝沼ワイナリー醸造に限る)、ワイン歴史館併設、国産ワイン生産量トップ、
    国際コンクール受賞多数、
山本博『日本のワイン』に特記
トップページに戻る
銘柄: 甲州シュール=リー 2002
生産元: メルシャン
価格: 1586円
使用品種: 甲州
備考 色はほぼ透明。香りは白い花や、うりのような青い香り。少しスモーキーなところもあります。また、シュール=リー特有のアミノ酸の香りが上立香、含み香の双方に感じ取れます。
クリアーでドライなワインですが、味わいには厚みがあり、ほどほどの酸味が全体をしっかりと支えており、ワインにだらしないところがありません。アミノ酸の甘味と旨味は充分にありながらも味キレが良く、軽い苦味もアクセントとして心地よく感じます。

さすが甲州におけるシュール=リー製法の開祖たるメルシャンだけあり、甲州シュール=リーのワインとしてはトップクラスのワインと思えます。
※このテイスティングコメントはグラスワインで飲んだ際のものです。
飲んだ日: 2004年12月5日
銘柄: 甲州古式仕込み 2002
生産元: メルシャン
価格: 3156円
使用品種: 甲州
備考 昔ながらの圧搾方法や樽発酵により造りあげた甲州です。
色はほぼ透明。甘味やクリームを連想させる香りと、わずかな果実香がありますが全体におとなしい香りです。
濃縮感にはいささか欠けますが、なめらかな味わい。アフターはしっかりとした酸味で締めており、柔らかい樽の甘い香りが鼻腔を抜けます。
厚みやインパクトという言葉とは無縁のワインなので、刺激的なワインが好みの人にはあまりおすすめできません。
自己主張の少ない上品なワインが好みの方向きであるといえるでしょう。
飲んだ日: 2004年12月5日