奥野田葡萄酒醸造
〜ラベルも中身も個性ある、本格派ワイナリー〜
外観

鉄骨で組み上げられた2階建ての醸造所に、外に置かれた圧搾機をみればここがすぐに醸造所であることはわかります。そのすぐ側には樽に座っている木製の大きな猫の置物があり、その猫がもっている看板に「奥野田葡萄酒」の文字。それに導かれて2階に上がってみると、下からは見えなかった可愛いログハウスが建っています。
無骨な鉄骨の上に建つ可愛いログハウスという意外性はかなりのもので、思わず我が目を疑ったことは言うまでもありません。
歴史

社員は代表の中村雅量氏と奥様、そして従業員一人と小さい会社です。中村氏は、勝沼の中央葡萄酒に勤めていましたが一念発起して、独立を決意。塩山市に新たに自分が経営するワイナリーを作りました。
自社畑を持つために合わせて有限会社夢卿葡萄研究所を設立し1990年から本格的に事業を開始しています。

原料は地元の葡萄にこだわりながら年間約5万本を生産するなど、ミニ・ワイナリーながら量の面でも頑張っています。
ただ、そこまで余裕をもって経営できているというほどでもないため、本来はもう少し熟成させたいワインを早くリリースしなければならないといった悩みも抱えています。
テイスティング
基本的に訪問自体が要予約のワイナリーなので、前日までに連絡をしておく必要があります。と、書いてますが実は私たちはそれを知らずに普通に行ってしまい、たまたま同じ時間に予約していた方がいらっしゃったので、それに便乗してテイスティングをさせて頂きました。しかし、本来は奥野田の方々に迷惑なので必ず予約していってください(説得力がまったくありませんが)。そもそもそうでないと、誰もおらずに無駄足になる可能性があります。
予約しておけば、中村氏から各ワインの詳細な説明を受けながらテイスティングすることができます。時間は30分程度を見ておいた方がよいでしょう。

下記にテイスティングさせて頂いたワインの簡単な感想を書きます。参考程度に読んでください。

'90 甲州シュール・リー:長期熟成の甲州で酸味と味わいのバランスがよく、干しエビやしいたけに近い香りがあるワインです。こういった香りというのは、日本酒の古酒に時折見られる熟成香なのですが、甲州にもこのような熟成香がつくというのは初めて知りました。熟成したワインが好きな方以外に、日本酒の大古酒が好きな方などにお奨めです。
値段は3108円と熟成期間を考えると相応の値段です。

'99 夢卿奥野田 白:甲州によるワインで、奥野田におけるテーブルワイン的な位置付けのワインです。甲州は糖度があまりあがらないので、アルコール度数を高くするには通常はある程度の補糖が必要になるのですが、このワインはそれを抑えてすっきりした軽い味わいのものを目指しているそうです。爽やかな酸味と少し杏の香りのワインで、私的には目指す酒質に近いものになっていると思います。中村氏は「甲州の感動は、家に帰った時のようなほっとする感動だと思う」と、甲州ワインにはヨーロッパ品種による高級ワインの鮮烈さとは異なる、独自の魅力があると考えています。なお、きゅうりと相性がいいとのことです。
甲州ワインのわりには値段が2058円とやや高いのが難点。

@ ' 01 夢郷奥野田 赤
メルロが約90%、カベルネが10%とかなりメルローの比率が高いワインです。ファーストアタックはやや強く、タンニンがしっかり出ています。ミディアム程度のボディで、厚みのある酸や香りのバランスが良いワインです。このワインを2ヶ月ほどまえに飲んだ際には、正直なところ値段ほどには・・・と思いましたが中村氏曰く「ワインのおいしさには波がある」というように、二回目は生まれ変わったように鮮烈で味わいのあるワインになっていました。同じヴィンテージで少し飲む時間が経っただけで驚くほど違う、やはりワインは奥が深いです。
値段は2058円。

'02 桜沢 シャルドネ オーク樽発酵:かなり明確にシャルドネのパイナップル香があり、南国のシャルドネのニュアンスがあります。味わいは香りの濃厚さに反して、爽やかな酸味と軽い飲み口のワインです。樽香と葡萄由来の香りと味のバランスがよく、そのあたりのバランスの取り方はさすがと思わせます。値段は2530円。

個人的には少し高いかなと思う銘柄がいくつかある気もしますが、規模が小さいなかで本格ワインを熱心に醸造していることは疑いありません。ワイナリーは経営規模と品質は必ずしも比例しない好例といえるでしょう。
特に赤は山梨県の中では良いものを出しています。


奥野田ワイナリーでは販売していませんが、セブンイレブン販売の専用のかわいいミニボトルもあります。当初はセブンイレブンでフルボトルで売るという話もあったそうなのですが、わずか5万本しか生産していないワイナリーが日本最大のコンビニチェーンに商品を置いたらワイナリーで売るものがなくなってしまうこともあり、新規の商品としてこのミニボトルが誕生しました。

フルボトルは量が多すぎて気軽に買えないし開けられないという人が日本では大半であるため、こういったミニボトルが新たなワイン消費層を拡大させるものと期待されます。山梨の日本酒造における名門たる萬屋醸造店(よろずや)の春鶯囀も同じくミニボトルの吟醸酒の販売を手掛けており、今後こういった一人用をターゲットとした商品開発が加速する動きがあります。
飲んだ感想は以下のとおり。

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外観  歴史  施設の概略  葡萄畑  テイスティング  購入方法  アクセス  管理人のワイン記録 
樽熟甲州:辛口とは書いてありますが、色は黄色でやや辛口〜中口程度の糖度が残っている印象。香りはローストしていない新樽(樽貯蔵のセラーの香り)、わずかにニスとレモンのような柑橘系の香りも混じっています。さらりとした甘味と酸味があり、飲みやすく、余韻には樽の香りが残ります。

メルロー:色はやや薄めの紅色。イチゴとピーマンのようなフレッシュな香りがあります。ワイナリーで販売している赤ワインと比べるとやや薄い感じですが、それもしっかりタンニンと酸味が出ています。食事と楽しみたい味です。

ミルズ:珍しいミルズを使用した白ワイン。さつまいもとリンゴの上立香があり、飲むとさらっとした甘口で、フレッシュなリンゴのジュースのような香りを感じます。余韻には少しぶどうの種のような香りがあります。
購入方法 
ワイナリーの販売所から直接購入、ホームページからの注文を受付けています。他、山梨県内にも一部で流通しています。
これとは別にセブンイレブンにて、専用のミニボトルによる販売が行なわれています。こちらは山梨県内のセブンイレブンならば入手可能な商品です。

ワイナリーアクセス

公式ホームページに詳細な地図が載っているのでそちらを参照してください。

総論
お土産屋的なワイナリーとは真逆に位置しているといっていいため、ワインにそれなりに造詣がある人向きのワイナリーといえます。予約して訪問すれば自社ワインについてもちろん丁寧に解説していただけますが、やはりある程度の知識がないと理解が難しい部分もあります。こういう言い方をすると奥野田の方に怒られるかもしれませんが、何箇所か他のワイナリーのツアーなどに行き、「甲州はこんなワインになる」「シャルドネの特徴といえば・・・」といったことを知ってから行く方がより楽しいといえます。
逆にいうと、それなりに日本ワインについて詳しい人ならば奥野田のワインとワイナリーが他社のワインと比べて個性豊かなものであることがわかるでしょう。
他、個人的にはテイスティングの際に頂けるワインリストや自社のホームページには、各ワインの事細かな出自が書かれているのには好感が持てます。複数の品種をブレンドした葡萄の場合、その使用比率はもちろんのこと、葡萄がどの畑で収穫されたのか、契約栽培なら栽培者名までが記述されています。現在、加工品はその原料や出自を提出することを求められている時代だけに、こういった記述を怠らないことは消費者との信頼関係を築くのに重要なことであると言えるでしょう。

ラベルも個性的なのでラベルコレクターの方にはお奨めなのはちろんですが、とにかく前向きであることが伝わってくる、今後の進展が楽しみなワイナリーの一つです。
銘柄: 夢郷 奥野田
生産元: 奥野田葡萄酒
価格:  円
使用品種: メルロー・カベルネ・ソーヴィニヨン
備考 ブレンド比率は色々な畑で獲れたメルロー(2001)が主体。少し黒みがかった赤色ですが、健康で若々しい色合いです。
香りにはししとうのような青い香りに、きのこや土のような熟成香があります。
きめ細かいミディアムレベルのタンニンと、しっかりとした果実香。まろやかな味わいですが、酸味は強め。飲んだ後の余韻は短いですが、特徴的な酸味の味が下に残ります。
奥野田ではもっとも低価格の赤ワインですが、香りと味のバランスがとても良く、奥野田に行ったならおすすめしたい一本です。
飲んだ日: 2004年11月10日
下の写真がワインのラベルのデザイン原画の一つで、ワイナリーの中に飾ってあります。非常に目を引くデザインです。
社名 奥野田葡萄酒醸造(株) / 夢郷奥野田
住所 山梨県塩山市牛奥2529-3
電話番号 0553-33-9988
取寄せ オンラインショッピングあり HP http://www.okunota.com/
自社畑あり 契約栽培畑あり ツアー等 訪問可(無料・要予約)
テイスティング可(無料)
栽培品種 甲州、シャルドネ、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、ミルズ、他 営業日 年末年始、毎月7、17、27日休業
★訪問日 2003年12月29日、2004年3月12日
備考:山梨産葡萄のみ使用
また中村氏は、地元の甲州葡萄の潜在的価値を高いものであると評価しているだけに、すでに生産量が全盛期の40%以下にまで落ち込んでいるこの葡萄の行く末に心を砕いています。
同時に「鳥居平地区以外でも、それぞれの異なった個性をもつ甲州が収穫できる」と、あまりに1地区ばかりが甲州の栽培地として注目されていることに対しても同意しかねるところがあるようです。

ワインのラベルにもこだわっており、山梨県のデザイナーが描いたラベルは他のワイナリーのシンプルなものとは一線を画す特徴的なものです。オーストラリアなどのニューワールドではこういった芸術的なラベルが結構あるのですが、日本ではここまでラベルにこだわっているのは少数派です。
他にもセブンイレブンとの提携により、山梨県内のセブンイレブン専用のミニボトルのワインの販売(詳細はテイスティングの項参照)を行なうなど従来とはまったく異なる販売方式を構築しており、まさに新進気鋭という言葉にふさわしいワイナリーです。
コンビに販売限定の三本。もちろん純国産の原料で、値段も300円前後と安価です。
葡萄畑
自社畑は約1.5ヘクタール。メルロー、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨンなどを栽培しています。
畑の見学はワイナリーの社員の方の都合がつけば案内してもらえます。このなかでもシャルドネはかなりやせた場所のきつい斜面で栽培されており、ワイン用葡萄の栽培環境は豊かな香りのワインのイメージとはまったく真逆であることを実感できます。
レインカットは設備投資に資金がかかり、ワインの値段をあげることになってしまうことから行っていません。
面白いのは契約栽培の葡萄の中にミルズ(用語辞典参照)があること。これは昔は多く栽培され赤ワインが造られていたにも関わらず、現在はほとんど栽培されなくなってしまったという珍しい品種です。さらに面白いことに奥野田ではこの葡萄から甘口”白ワイン”を醸造しています。

他に奥野田では「援農」というシステムがあります。これは、簡単にいうと我々のような普通の人間が奥野田の葡萄畑の作業を手伝いにいき、作業をしながら葡萄について学ぶというものです。「援農」の詳細に関して奥野田葡萄酒にメール等で問い合わせてみたほうがよいと思います。
施設の概略
社員の方は畑に行っていることが多いため訪問は前日までにメールやFAXなどによる予約が必要です。
ログハウスの中は外見どうりに狭く、最大でも5人程度しかテーブルにつくことができません。その狭い部屋にはいたるところに装飾品や自社ワインのラベルのデザイン画などが飾られて非常ににぎやかで、家庭的な香りがあります。
一階には普通に醸造器具が置かれているので、見学の申し込みどうの以前に、通りがかればその一部をみることが可能です。
駐車場はありますが2台しか停められませんし、前述のように建物自体が大きくないので大人数で行くのは難しいかもしれません。
長くつづく奥野田の畑。選定は主にギュイヨ式。ここではカベルネやメルローが栽培されています。
銘柄: '02 桜沢 シャルドネ オーク樽発酵
生産元: 奥野田葡萄酒
価格: 2530円
使用品種: シャルドネ
備考 ※詳細なコメントはもうしばらくお待ち下さい。
飲んだ日: 2004年 月 日