山梨ワイン醸造
〜甘い葡萄の香り漂う日本家屋〜
外観

えっ、ここがワイナリー!?
と誰もが思わずにいられないのが、この山梨ワイン醸造です。
外観はどこをどう見てもワインなどという言葉とは程遠い古き良き日本の家です。
庭も落ち着いた立派な日本庭園で、私たちが遠い昔に置き忘れてしまった日本の風景を今も残しています。
また、広大な敷地内には昔の圧搾機がおいてあったりと、ワイナリーの刻んだ歴史を感じさせるものが随所にあります。
中の販売所は最近まではオーナーが実際に住んでいたものを、完全にワイナリー用に開放したものとのことで、年季の入った机や畳などには情緒があふれています。
歴史

大正2年から、約90年以上続いている老舗ワイナリーで、詳細は山梨ワイン醸造の公式ホームページを参照してください。山梨ワイン醸造の基本方針を含めて詳細な記述があります。広大な土地を有しているので、戦前からかなりの豪農であったようです。
銘柄に甘口ワインが半分を占めているのことについてもきちんと説明があり、「その方が受けがいいから」などという安易な発想ではないことがわかります。甘口にこだわるワイナリーだけあって、お土産ものまがいの甘口ワインとは一線を画した品質を保持しています。
3代目の野沢貞彦氏(現社長)は甘口ワインの醸造に力を注いでいましたが、フランスに留学していた4代目の野沢尊彦氏が甘口だけでなく甲州やカベルネ・ソーヴィニヨンを使用した辛口・フルボディタイプのワインの醸造を行うようになり、バラエティに富んだワイン作りが行われています。

施設の概略
築100年というお屋敷のなかに販売所兼試飲を兼ねたカウンターがあり、自社製品のほとんどをテイスティングできます。
また、すぐそばにはオーナーの収集した昔のワイン醸造に関する道具などが展示されており、中にはそのまま博物館に行きになりそうな、古い打栓機や、圧搾機も置いてあります。面白いところでは一斗ビン(一升瓶の10倍の容量)のように、日本酒の酒造で本来使うような道具もあるところ。昔のワイン醸造が日本酒の道具を一部利用していたことをうかがわせる意味で興味深いものがあります。
他に築170年という地下セラーもあり、そこには自社ワインだけでなくオーナーワインシステム(一人50本を最低にワインを保管するシステム)によって保管されているワインも所狭しとおかれています。ここに行く場合には社員の方に案内してもらう必要があります。
醸造施設はすぐ近くにありますが工場見学などはないようです。
また余談ですがNHKのドラマ「夢見る葡萄」の舞台として、このワイナリーが使われています。


葡萄畑
山梨ワイン醸造のすぐ近くの坂の上に自社畑があります。「山梨ワイン農場」とかかれているのですぐわかります。
手前のほうがしっかりと垣根仕立てになっており、そこでシャルドネとカベルネ・ソーヴィニヨンが栽培されています。さらに奥にも棚仕立ての畑があるので、そこで甲州などを栽培しているのではないかと思われます(さすがに勝手に畑に入るわけにはいかないので推測ですが)。「七俵地」とある銘柄の葡萄はこの畑からとれているのでその銘柄のワインを買ったなら、「この畑からこのワインが生まれたんだ」という実感を得るために見に行くのもよいでしょう。
ヨーロッパ品種ばかりでなく、ピオーネやナイアガラなどの生食用として有名な葡萄も自社畑で栽培されています。全て醸造用に使用するもので、栽培方法は生食用とは異なり房の形などは無視し、一つ一つの粒をむしろ小さくするような栽培が行われています。
ツアーや見学コースがあるわけではないので、ワイナリーの方に場所をうかがって自分で探しにいく必要があります。といってもかなり近いので迷うことはないと思いますが。
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テイスティング
販売所にいる社員の方に頼めば販売所内で無料でテイスティング可能です。発売されているほとんどのワインを試飲することができます。
銘柄の半分が甘口という異例のラインナップですが、オーナーがこだわっているだけあって総じて雑味が少なく葡萄の甘さがよくでたワインになっています。種類に関していえばラブレスカ系の甘口ワインはほぼ全品種が網羅されていると言っていいほどに銘柄が充実しています。
そのなかでも自家葡萄園甲州は、頭一つでている感のある(値段もですが)優れた甘口ワインといえます。公式ホームページで「人気No.1のこだわりの甘口ワイン」と紹介されていますが、すっきりとした甘味と甲州らしからぬ栗の薄皮のような香りをもった個性あるワインです。(詳細は後日記述)
珍しい品種のアジロンダックは辛口〜甘口までありますが、狐臭といわれるものとはまったく異なる濃厚で甘い香りが強いワインです。テイスティングルームで妙に甘い香りがすることがあるかもしれませんがその時は、香りの正体はこのワインです。香りがありすぎるので食事に合わせるのは難しいかもしれませんが、雑味はなくしっかりと造られています(詳細は管理人のワイン記録参照)。

これとは別に辛口の主力は甲州とヨーロッパ品種になります。以下にテイスティングしたものの簡単なコメントを記載します。

甲州樽貯蔵:色はほのかな黄色で、樽香の甘い香りがほどよく付いており他に柔らかな梨に似た香りがあります。味はミネラル香も感じますが、樽の香りもそれほどなく、酸味はやや弱めで後味に少し苦味を感じますが全体におとなしい繊細なワインです。

原産地認証甲州:色はほぼ無色。フレッシュな酸味とミネラル香、他にかすかに梨に似た香りがあります。酸味は多くなく、繊細な味わいをもつワインです。

他、自社畑産のカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネを使用したワインもありますが、専門誌なので非常に高い評価を得ています。特に七俵地カベルネ・ソーヴィニヨンは、勝沼町原産の赤ワインの中では特筆ものの品質です。

山梨ワイン醸造のワインは総じて雑味がなく、すっきりとした味わいになっている傾向があります。「ハズレ」にあたる銘柄はあまり見受けられません。生食用葡萄を使用したワインも高品質で、1年経ったデラウェアのワインを試飲させてもらいましたが驚いたことに狐臭はほとんどなく、まろやかな酸味のある良いワインでした。おそらくは醸造の段階で健全な房だけを使用するといった人並み以上の努力があるのでしょう。
ただ、強いて批判的なことを言わせてもらうなら、販売している銘柄が少々多すぎる気がすること。日本のワイナリーはどこもその傾向がありますが個人的にはもう少し整理してほしいかなと思わないでもありません。
展示されている昔の道具類。写真にはありませんが、コルクスクリューはかなりユニークなものが収集されています。
外観  歴史  施設の概略  葡萄畑  テイスティング  購入方法  アクセス  管理人のワイン記録 
自社畑の七俵地畑の垣根栽培。カベルネ・ソーヴィニヨンとシャルドネが栽培されています。
購入方法 
ワインの販売はワイナリー内の試飲・販売店と、公式ホームページからの通販で行われています。公式ホームぺージで見ると、通販で買ったほうが値引きしてもらえる感じがしますが、直接ワイナリーにいっても値引かれた値段で販売されていたので直接行くならばわざわざ通販で頼む必要はないでしょう。

ワイナリーアクセス
アクセスに関しては山梨ワイン醸造の公式ホームページに詳しく説明されているのでそちらを御参照下さい。

総論
山梨ワイン醸造はワインもさることながらその雰囲気で、他のワイナリーとはまったく異なる個性を持っています。時間を遡ってしまったような不思議な郷愁を感じるワイナリーというのはなかなか無いでしょう。
ワインも国内ではほとんど栽培されていないアジロンダックを使用したワインなど、個性的なものが揃っています。甘口ワインが多いのですが、例え生食用の葡萄でも自社畑で醸造用の栽培を行い、高品質なワインを造ることに余念がありません。ラブレスカ葡萄によるワイン造りに限定するなら日本国内でもトップクラスの品質といっても過言ではないでしょう。
では辛口ワインが全然駄目かというとそんなことはありません。当初私たちが訪れた時は「う〜ん、凄くいいとは・・・」と思っていましたがそれから2年経ったころには全体に辛口銘柄もよくなってきました。ヨーロッパ品種やマスカットベリーAの赤ワインが「七俵地カベルネ」を除いて全て輸入ワインとのブレンドとなっているのは「純国産応援派」の日本ワインファンには残念な事実ですが、こちらもブレンドが上手なのでおいしいワインを求めるなら遠慮なく買ってみると面白いです。特に低価格1000円未満の勝沼ルージュは、純粋によくできており「ブレンドは・・・」などといわずに飲んでみてよい銘柄。
純国産の辛口では高いですが自社畑の「七俵地カベルネ」と甲州の「Four Seasons」がやはりおすすめ。他にある甲州の辛口は、悪くはないと思うのですがややコクにとぼしいのと、苦味が強くでているところがあるので苦い白ワインが好きでない人は食事と一緒でないとあまり楽しめないかもしれません。

建物、ワインの内容、総合的に考えれば訪問はいかなる人でもおすすめできる、というのが山梨ワイン醸造の素晴らしいところ。観光がしたい人、珍しいワインが飲みたい人、甘口ワインが好きな人、その他もろもろの目的も含めて足を運ぶ価値は充分にあるワイナリーです。
他にワインを入れる麻袋なども販売されています。加えてワインセラー(!)も販売しています。詳細は公式HPを。
銘柄: あじろん やや辛口’02
生産元: 山梨ワイン醸造
価格: 1470円
使用品種: アジロンダック
備考 濃いガーネットのような紅色。香りは複雑で非常に強く、コンコードのグレープジュースに近い甘く濃厚な香りのなかに、どことなくポートワインに似たような少し刺激的な香りがあります。タンニンはわずかで、酸味もごく薄くしか感じられません。辛口とあるように糖度はほとんどないのですが、香りのために甘い味わいに感じられます。味には複雑性がなく、香りと反対にすっきりとした爽やかな味わいです。余韻はなく、後口も意外にすっきりしています。
ラブレスカの葡萄によくある狐臭はほとんどなく、私見ですがラブレスカの品種で醸造したワインとしてはかなり良いものではないかと思います。
飲んだ日: 2003年11月24日
道路沿いの駐車場に昔の圧搾機がおていあるのでそれが目印になります。
銘柄: ピオーネ 新酒 2003
生産元: 山梨ワイン醸造
価格: 1320円
使用品種: ピオーネ
備考 生食用の高級葡萄であるピオーネを自社畑で醸造用に栽培したワインです。
ピンクが少し強いサーモンのような美しい色合い。香りはパイナップルとシロップ、少し桃が入ったような甘く濃厚な香りです。味わいは甘口ですが、少し酸味があるので爽やかで口中に甘さが残るような感じはありません。飲んだ時の含み香にもパイナップルのような香りがでています。
デザート用の甘口ワインとして、生食用葡萄うんぬんの偏見を持たずに飲んでみることをお奨めします。
また、講談社発刊の「世界の銘酒事典 2004」にもこのワインが紹介されています。
飲んだ日: 2003年11月24日
社名 (有) 山梨ワイン醸造
住所 山梨県東山梨郡勝沼町下岩崎835
電話番号 0553-44-0111
取寄せ オンラインショッピングあり HP http://www.yamanashiwine.co.jp/
自社畑あり 契約栽培畑あり ツアー等 訪問自由
テイスティング可(無料)
栽培品種 カベルネ・ソーヴィニヨン、甲州、マスカットベリーA、アジロンダック、ピオーネ、他 営業日 元旦以外は年中無休
営業時間:8:30〜17:30
★訪問日 2003年10月11日、2003年11月23日  
備考:甘口ワインの銘柄多数、日本家屋
銘柄: Four seasons 2002
生産元: 山梨ワイン醸造
価格: 1845円
使用品種: 甲州
備考 色は淡いが、少しだけ黄色みがある。洋梨、ミネラル、白い花、わずかに樽由来とおぼしきクリーム香(開封時間が経つと樽由来の香りがより強くなってきました)。
飲むと優しい味わいとともに豊かな洋梨の果実の香やおとなしめながらもバランスの良いヴァニラ香が口中に広がります。味わいもヴィンテージによるものかコクがとてもしっかりしており、さらにきちんとした酸味が味を引き締めておりとてもバランスがよい印象。
バランスのよさの要因の一つは葡萄もしっかりしたものを使っていることにあるのでしょうが、樽香の付け方も絶妙でセンスの素晴らしさに感心させられました。
価格は少々高めですが、バランスや飲み頃の状態を考えればこの価格でまったく問題ない、というよりはお買い得な銘柄と思います。
飲んだ日: 2006年2月15日