盛田甲州ワイナリー
〜100年の時を越え、再び〜
外観

メルシャンやその他のワイナリーが居並ぶ通りでもっとも目立つ赤い屋根の建築物と広大な敷地。それがシャンモリこと、甲州葡萄酒本舗です。
教会に似た洋風の上品な建物が二軒(片方はセラー、片方は工場兼販売所)、さらに醸造場と大きなフランス料理店。となりにある日本最大手のワイナリーのメルシャンが霞むほどの威容を誇っています。
中もやはり綺麗に整えられていますが、工場案内の順路には人もおらずやや閑散とした印象がありました。
とはいっても、全国の日本酒造の中でも常に生産量で30位以内に入ってくる「ねのひ酒造」の底力と、全体的なセンスのよさを感じる外観であることは間違いありません。
歴史
資本は名古屋で最大の日本酒の酒造「ねのひ酒造」。ソニーの会長であったあの故盛田氏の実家でもあります。
詳しくはシャンモリの公式ホームページに記述があるのでそちらを参照してほしいのですが、概略的なことを少し書きます。
盛田家はもともとは日本酒、味噌、醤油造りを生業として栄えていた家ですが、11代目盛田久左衛門が山梨で栽培していた葡萄とワインの醸造に目を付けて地元の愛知県小鈴谷村の官有林を借り、1880年にそこで葡萄の栽培を始めました。ところがあと一歩で本格的な醸造というところで悪名高きフィロキセラに襲われて畑は全滅。久左衛門の夢は潰えました。
しかし、14代目久左衛門(11代目とは別人)の次男の盛田和昭は再びワイン造りの事業を開始します。1973年、今度は葡萄の産地勝沼にワイナリーをかまえて本格的醸造を開始。11代目の果たせなかった事業を軌道に乗せることに成功します。
1997年に、勝沼町が大企業の誘致を企画。これに名乗りを上げたのがお菓子メーカーのシャトレーゼ、神戸の日本酒造大手の大関、そして甲州葡萄酒本舗でした(このうち大関のみが阪神大震災の影響により計画を中止)。
この企画に沿った形でフジッコワイナリーの近くに工場があった甲州葡萄酒本舗は、現在の場所に拠点を移転し今日にいたっています。
その生産本数は100万本と、かなりのもの。低価格のシャルドネや、カベルネ・ソーヴィニヨンは海外ワインとのブレンドを行っていますがそれ以外のワインからは、国産葡萄のみを原料としたワインを造りだしています。銘柄は全てヴァラエタル(単一品種)で統一されているというのも特徴の一つ。
2005年11月1日からは社名を『盛田甲州ワイナリー』と改名。工場の隣にも自社畑の開墾を始め、新たなるワイン造りに挑戦しています。

施設の概略
販売所内には数多くの自社製ワインがおいてあり、もちろん購入できます。
見学コースを回れば、ワイン作りに使用する器具を見ることができます。圧搾機や、破砕機だけでなくあまり見れない箱詰め機や、洗ビン機などもあります。
醸造所もあり外側から見ることはできますが中に入って見学することはできません。


葡萄畑
2005年より、ワイナリーの隣の敷地で自社畑が開墾されています。この土地、歴史の項でもちらりと触れたようにもともとは日本酒造の大関のワイン工場が入るはずだったのですが、これが結局実現せず、そのまま空き地になってしまっていた場所。そこを現在のシャンモリが自社畑として活用しています。
とはいえまだ自社畑は始ったばかりで原料の供給源は契約栽培の畑となります。また他に農協などからの葡萄を購入してワインを醸造しています。
なお、販売されているワインのうち低価格のシャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨンを原料としたワインは、輸入ワインとのブレンドワインとなります。
銘柄: 2001年 樽熟甲州
生産元: 盛田甲州ワイナリー(シャンモリワイン)
価格: 1200円
使用品種: 甲州
備考 日本初の国内ワインコンクールのJapan Wine Competition「甲州」部門において銅賞を獲得しています。
バターに近いクリーミーな香りと、甲州のフルーティーな白い花香り。
甲州としてもかなり薄い酒質で、水に近いニュアンスがありますが、樽香が味をある程度補強してくれているので、バランスは悪くありません。。他にリンゴ酸のはつらつとした酸味を感じます。
値段も安く、味わいがニュートラルなので食中酒として向いています。
飲んだ日: 2005年3月29日
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シャンモリ内においてある破砕機や圧搾機です。
実際に使用されているので、忙しい時には説明書きはあっても機材はその場所にはありません。
直営レストラン
敷地内に外見からして立派な南仏料理店「フレンチテーブル・シャンモリ」があります。非常に広大な駐車場もあるので遠慮なく車で行けます。
本格派を名乗るに足るレストランで勝沼でも超オススメでしたが、改装以降は方向性が変わりました。
かつてよりも、どちらかというと味もサービス形式も大衆店的になってしまい高級感が薄れました。この是非を問うのは難しいですが、個人的には「味から高級感や複雑さが落ちた」というように思えます。
ランチはサラダバイキングを含め、1600円代から。ディナーのコースでも2900円代で食事をすることができます。
ワインはもちろん自社製のものが主流。自社製ワインは定価の1割増し程度と、ワイナリー直営店だけありあまり高くない値段で飲むことができます。レストラン限定販売のワインも多いのですが、限定ワインは海外ワインをブレンドしているわりには飲んだ中では当たりにあたったことがありません。さらに自社ワインはほとんどが甲州ワインであるため、欧風料理とは合わせにくい気がします。料理負けしてしまう感は否めません。

テイスティング
販売所にいる社員の方に頼めば販売所内で無料でテイスティング可能です。ほとんどのワインは試飲することができます。

甲州シュール=リー 2003:2004年に行われた山梨県の愛好家のコンテスト甲斐VINで飲んだ際に驚いたワイン。香りはミネラル、パン香、白い花といった甲州シュール=リーの特徴がよく出ていますが、味わいはふくらみとコクがあり印象に残ります。
シャンモリで飲んだ中で最もおいしいと思えたワインですが、2625円と甲州シュール=リーのワインとしてはずば抜けて高いのが問題。

甲斐ブラン 2004:甲州とピノ・ブランを交配させた品種のワインで1260円。辛口の白ワインですが、酸味はあるもののややコクにとぼしくシャンモリの辛口では珍しく樽香もないこともあってインパクトに欠ける部分があります。ちなみにこの甲斐ブランという品種は人気がなく、商品化しているワイナリーは数社のみと思われます。
外観  歴史  施設の概略  葡萄畑   直営レストラン  テイスティング  購入方法  アクセス  管理人のワイン記録 
甲州 遅摘み:甘口の甲州で2100円。洋梨と白い花、ミネラルの香りが主体です。火入れをしているとおぼしき干ししいたけにも似たニュアンスがわずかにあり、それがフレッシュ感を若干阻害している気もします。この含み香もあって、やや古いスタイルの甲州という印象を受けますが、酸味があり、甘口のわりには引き締まった味わいです。

樽醗酵シャルドネ2003:純国産のシャルドネ100%の辛口白ワインで価格3150円。まずヴァニラ香やバター香がはっきりと感じ取れ、続いて少しリンゴのような香りも確認できます。味わいは他のシャンモリのワインと同じように爽やかで、含み香と余韻は樽が主体となります。

シャンモリの特徴は、全体傾向としてとにかく樽を使用した白ワインが多いことだと言えます。また、シャルドネや赤を含め全体に軽めのワインという印象は受けました。
余談ですが甲州とピノ・ブランの交配品種、甲斐ブランは珍しい品種なので、一度は試飲してみるとよいでしょう。

購入方法
 

ワインの販売はワイナリー内の販売店と、公式ホームページからの通販、一般の酒販店などで行われています。日本のワイナリーとしては生産量があるので、そこそこ市場に出回っています。

ワイナリーアクセス
アクセスに関してはシャンモリの公式ホームページに詳しく説明されているのでそちらを御参照下さい。

総論
シャンモリは値段も手頃なうえに、しっかり樽を使っているという意味では付加価値の高いワイン作りを行っているといえます。ただ逆にいうと樽を使っているために、ともすると葡萄の味を潰してしまっているという部分が見受けられます。なぜそこまで樽にこだわるのかが残念ながら私には明瞭に読み取ることができませんでした。もしかしたらフランスのモンラシェのような繊細な樽熟成のワインを目指しているのかもしれませんが、何にしても酒質の向上は必須という印象です。飲んだ限りでは、シュール=リーと樽発酵甲州が印象に残るワインでしたが、こちらもやや高いため価格面でもう一声欲しいところ。
またせっかく立派な設備があるのに、係員が説明するタイプのツアーがないというのも残念です。売上げ向上と、自社のイメージアップのためにもこのあたりも積極的に行ってほしいところです。

と散々なことを書いていますが、シャンモリのワインが飲むに値しないというわけではありません。実際、はじめに行った時よりも明白に内容は向上しており、しかも自社畑の開墾といった真剣にワイン造りに取り組む姿勢が見えています。
作っているワインのほとんどが低価格でありながら樽の効いた高級感のあるワインですから、コストパフォーマンスといった面からみても立ち寄る価値は充分にあるということを付け加えておきます。

販売所はワイン以外のお土産なども売っています。なかなか落ち着いた雰囲気のある売り場です。
駐車場から敷地に入ると正面に見えるのがレストラン「フレンチテーブル・シャンモリ」です。かなり目立つ建物です。
社名 盛田甲州ワイナリー(株) / シャンモリ・ワイン
住所 山梨県甲州市勝沼町勝沼2842
電話番号 0553-44-2003
取寄せ オンラインショッピングあり HP http://www.wine.or.jp/chanmoris/
自社畑あり、契約栽培畑あり ツアー等 訪問自由
テイスティング可(無料)
栽培品種 カベルネ・ソーヴィニヨン、甲州、シャルドネ、
デラウェア、他
営業日 年末年始以外は基本的に営業
営業時間: 10:30〜16:30
     11:00〜16:00(11〜6月)
★訪問日 2003年10月12日、2005年10月9日 
備考:直営レストラン「フレンチテーブル・シャンモリ」経営、旧社名「甲州葡萄酒本舗」
銘柄: 甲州 樽発酵 2004
生産元: 盛田甲州ワイナリー(シャンモリワイン)
価格: 3150円
使用品種: 甲州
備考 国内ワインコンクールのJapan Wine Competition「甲州」部門において銅賞を獲得。フリーランの甲州を樽発酵させたワインです。
色は薄く琥珀色。豊かな樽のバターやヴァニラの香りに、ミネラルや洋梨の果実香があります。
さすがに上級銘柄だけあり、軽めのワインという印象は受けるものの「薄い」ということはなく、コクがあり、発泡しているかのように感じる刺激のある酸味が特徴です。含み香は樽主体で果実香はやや弱めなもののミネラル香があり、少し酸味が突出してる気もしますがヴィンテージの若さを考えればバランスは悪くありません。
コストパフォーマンスでいうとおすすめとはいえませんが、シャンモリの中ではなかなか良い銘柄ではないでしょうか。
飲んだ日: 2005年12月20日