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鎌倉河岸捕物控


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橘花の仇政次、奔る御金座破り暴れ彦四郎古町殺し銀のなえし代がわり独り祝言隠居宗五郎うぶすな参り

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「橘花の仇 鎌倉河岸捕物控 佐伯泰英 ハルキ文庫 2001年 ★★
江戸鎌倉河岸にある酒問屋の看板娘・しほ。ある日、武州浪人であり唯一の肉親である父が斬殺されるという事件が起きる。相手の御家人は特にお構いなしとなった上、事件の原因となった橘の鉢を売り物に商売を始めると聞いたしほの胸に無念の炎が宿るのだった……。しほを慕う政次、亮吉、彦四郎や、金座裏の岡っ引き宗五郎親分との人情味あふれる交流を通じて、江戸の町に繰り広げられる事件の数々を描く連作時代長篇。

「政次、奔る 鎌倉河岸捕物控 佐伯泰英 ハルキ文庫 2001年 ★
江戸松坂屋の隠居松六は、手代政次を従えた年始回りの帰途、剣客に襲われる。襲撃時、松六が漏らした「あの日から十四年……亡霊が未だ現われる」という言葉に、かつて幕閣を揺るがせた若年寄田沼意知暗殺事件の影を見た金座裏の宗五郎親分は、現在と過去を結ぶ謎の解明に乗り出した。一方、負傷した松六への責任を感じた政次も、ひとり行動を開始するのだが――。鎌倉河岸を舞台とした事件の数々を通じて描く、好評シリーズ第二弾。

「御金座破り 鎌倉河岸捕物控 佐伯泰英 ハルキ文庫 2002年 ★
戸田川の渡しで金座の手代・助蔵の斬殺死体が見つかった。小判改鋳に伴う任務に極秘裏に携わっていた助蔵の死によって、新小判の意匠が何者かの手に渡れば、江戸幕府の貨幣制度に危機が――。金座長官・後藤庄三郎から命を受け、捜査に乗り出した金座裏の宗五郎だが、事件の背後には金座をめぐる奸計が渦巻いていた……。鎌倉河岸に繰り広げられる事件の数々と人情模様を描く、好評シリーズ第三弾。

「暴れ彦四郎 鎌倉河岸捕物控 佐伯泰英 ハルキ文庫 2002年 ★★
亡き両親の故郷である川越に出立することになった豊島屋の看板娘しほ。彼女が乗る船まで見送りに向かった政次、亮吉、彦四郎の三人だったが、その船上には彦四郎を目にして驚きの色を見せる老人の姿があった。やがて彦四郎は謎の刺客集団に襲われることになるのだが……。金座裏の宗五郎親分やその手先たちとともに、彦四郎が自ら事件の探索に乗り出す! 鎌倉河岸捕物控シリーズ第四弾。

「古町殺し 鎌倉河岸捕物控 佐伯泰英 ハルキ文庫 2003年
徳川家康・秀忠に付き従って江戸に移住してきた開幕以来の江戸町民、いわゆる古町町人が、幕府より招かれる「御能拝見」を前にして立て続けに殺された。自らも古町町人である金座裏の宗五郎をも襲う剣客の影! 将軍家御目見格の彼らばかりが狙われるのは一体なぜなのか? 将軍家斉も臨席する御能拝見に合わせるかのごとき不穏な企みが見え隠れするのだが……。鎌倉河岸捕物控シリーズ第五弾。

「引札屋おもん 鎌倉河岸捕物控 佐伯泰英 ハルキ文庫 2003年
「山なれば富士、白酒なれば豊島屋」とまでうたわれる江戸の老舗酒問屋の主・清蔵。店の宣伝に使う引札を新たにあつらえるべく立ち寄った一軒の引札屋で出会った女主人・おもんに心惹かれた清蔵はやがて……。鎌倉河岸を舞台に今日もまた、愛憎や欲望が織りなすさまざまな人間模様が繰り広げられる――。金座裏の宗五郎親分のもと、政次、亮吉たち若き手先が江戸をところせましと駆け抜ける! 大好評書き下ろしシリーズ第六段。

「下駄貫の死 鎌倉河岸捕物控 佐伯泰英 ハルキ文庫 2004年 ★
松坂屋の隠居・松六夫婦たちが湯治旅で上州伊香保へ出立することになった。一行の見送りに戸田川の渡しへ向かった金座裏の宗五郎と手先の政次・亮吉らだったが、そこで暴漢たちに追われた女が刺し殺されるという事件に遭遇する……。金座裏の十代目を政次に継がせようという動きの中、功を焦った手先の下駄貫を凶刃が襲う! 悲しみに包まれた鎌倉河岸に振るわれる、宗五郎の怒りの十手――新展開を見せはじめる好評シリーズ第七弾。

「銀のなえし 鎌倉河岸捕物控 佐伯泰英 ハルキ文庫 2005年 ★
銀のなえし=\―ある事件の解決と、政次の金座裏との養子縁組を祝って贈られた捕物用の武器だ。宗五郎の金流しの十手とともに江戸の新名物となる、と周囲が騒ぐのをよそに冷静に自分の行く先を見つめる政次。そう、町にはびこる悪はあとを絶つことはないのだ。亮吉・常丸、そして船頭の彦四郎らとともに、ここかしこに頻発する犯罪を今日も追い続ける政次たちの活躍を描く大好評シリーズ第八弾!

「代がわり 鎌倉河岸捕物控 佐伯泰英 ハルキ文庫 2007年 ★★
豊島屋の清蔵たちは、富岡八幡宮のそばの船着場で、六、七人の子供たちが参詣に来た年寄りから、巾着を奪い取るのを目撃した。店に戻った清蔵たちは、金座裏の若親分・政次にその話をするが、どうやら浅草でも同様な事件が起きているという。さらに今度は増上寺で巾着切りの事件が起こった。だが、被害にあった金貸しの小兵衛は刺し殺され、巾着も奪われたのだ。同じ犯人の仕業なのか? 宗五郎と政次たちは、探索に乗り出すが――。しほとの祝言を控えた政次は、事件を解決することが出来るか!? 大好評書き下ろし時代長編シリーズ第十一弾。

 第五話 代がわり
          一
 しほの江戸での市井の暮らしは、すべてこの川越城下の悲恋に始まった。
 安永八年(1779)、川越藩納戸役七十石の村上田之助と御小姓番頭久保田修理太夫の三女の早希の二人が城下から逐電したのが切っ掛けだ。
 田之助と早希は許婚の間柄だったが、城代家老根島伝兵衛の嫡男秀太郎が早希を見初めて婚約を強引にも解消させられていた。
 一方、田之助は城代家老の嫡男の話を聞き、早希との許婚は身分違いであったと潔くも身を引く決心をした。
 早希は秀太郎との婚礼を控えた夜、早希との所帯をもつことを諦めた田之助を説得し、手に手を取り合って藩を抜けたのだった。
 田之助と早希はそれぞれ江富文之進、房野と名を変えて諸国を流浪した後、江戸の深川の裏長屋にようやく居を構えた。
 貧乏暮らしの中でしほを懐妊し、出産した。
 しほが生まれて十一年後、早希が流行病で亡くなった。
 母亡き後、しほは一家の主婦として務めを果たしながら、自暴自棄の日々を過ごす父親の世話をしてきた。
 十四歳の折、武士を忘れきれない父親を他所にしほは町人の娘になることを決意し、本名の江富志穂からただのしほへと名を変えた。そして、豊島屋に通い奉公に出たのだった。
 そんな日々、田之助が賭け碁の諍いから斬り殺されるという事件が起こる。
 この事件を担当した金座裏の宗五郎一家との付き合いから、しほの両親が川越藩の家臣であったことなど出自も明らかにされていった。
 父親の家系は絶えていた。
 だが、母親の実家の久保田家の血縁は存在し、早希の姉の幾は御番頭六百石の園村家に嫁ぎ、もう一人の姉の秋代はやはり家臣の佐々木利暎と結婚していた。
 かくしてしほと川越との付き合いが始まった。
 秋代の娘、しほの従兄弟にあたる春菜は、小姓組頭の静谷家の理一郎と結婚し、すでに佐々木家を出ていた。
 そんな女三人が江戸から来たしほと彦四郎の二人を川越新河岸の船着場に迎えに出た。そこへ政次、亮吉の二人も駆けつけたのだ。
 旧知の男女が賑やかに挨拶を交わし、再会を喜び合った。
 しほは気付いていた。
「春菜様、お腹にやや子が宿っておられますか」
 どことなく春菜の顔がふっくらとしていたからだ。
「しほ様、そうなの」
 春菜が微笑んだ。
「おめでとうございます」
「春菜もしほもなんですね、往来でそのようなことを口にして」
 と秋代が言い出したが当人が一番にこにこして、静谷理一郎との子が出来たことを喜んでいる様子が覗えた。
「まずはわが屋敷に参りましょうぞ」
 と伯母の貫禄で幾が一同を誘った。
 しほは政次を振り見た。
 御用がどうなったか、気にしてのことだ。
     (後略)

「独り祝言 鎌倉河岸捕物控<13の巻き> 佐伯泰英 ハルキ文庫 2008年 ★★
春を告げる賑わいの鎌倉河岸では、政次としほの祝言が間近に迫っていた。そんななか、金座裏の宗五郎の命により、六所明神に代参することになった政次は、宗五郎の粋な計らいにより、しほ、彦四郎、亮吉三人との同行を許された。だが道中、深大寺に立ち寄った一行は思わぬ事件に巻き込まれてしまう。――旅先での事件を始末し、江戸に戻ったのも束の間、政次にさらなる難事件が待ち構えていた。迫り来る祝言の日。隠密御用に奔走する政次と覚悟を決めたしほの命運は……。大好評書き下ろし時代小説。

 第三話 内蔵の謎
        一
 おみつとしほの供で政次が金座裏に戻ると、園村幾、佐々木秋代、静谷春菜の三人の女の姿があって、宗五郎が応対していた。
 幾と秋代の二人と、しほの亡き母早希は川越藩御小姓番頭久保田家の三人姉妹だ。城代家老の嫡男に横恋慕された末娘の早希が身分違いで破談させられた許婚の納戸役村上田之助と一緒に出奔して浪々の暮らしの中で産んだ子がしほだった。
 早希の姉二人は、それぞれ家中の園村、佐々木両家に嫁ぎ、佐々木秋代の娘の春菜は御小姓組静谷理一郎と二年前に結婚していた。だから、春菜は、しほの従姉にあたる。その春菜の腹がかなり大きく膨らんでいた。
 「春菜様、お腹のやや子は元気ですか」
 「しほ様、元気過ぎて困るくらい」
 春菜は腹が迫り出した分、武家の新造の貫禄を身に付けていた。
 園村家は川越藩松平大和守直恒の御番頭六百石の家柄、佐々木家も静谷家も結城秀康から出た御家門松平家の重臣で、すでにどちらもが理一郎、春菜世代へと代替わりが少しずつ進んでいた。
 江戸と川越は十三里陸路舟運も発達して近いこともあり、半ば隠居の身の女たちが身軽に江戸に出てこられた。
 一番年長の幾の膝には、先日来金座裏の飼い猫になった菊小僧がちょこなんと座っていた。
 三人の女たちは、
 「少々早く政次としほの祝言」
 に出てきたという。おそらく春菜のお腹を気遣いながら川越からゆっくりと徒歩の旅をしてきたのだろう。
 「皆様、知らぬこととはいえ留守をして相すみませんね」
 とおみつがにこやかに話しかけ、
 「おみつどの、しほは両親を早くになくして江戸で皆様方の世話になりながらの独り暮しですが心配はなにもございませぬ。とは申せ、若い娘が祝言を前になにかと不安であろうし手も要ろうと、早くに江戸に出て参りました。ところが親分の話を聞くと準備万端すべて整っているそうな」
 幾らは、しほの身を案じて母親代わりを務めるつもりで早くに江戸入りしたようだ。そんな伯母二人がしげしげとしほを見て、
 「祝言を前にすると、娘はこんなにも綺麗に変わるものかしら」
 「早希が川越を出たときとそっくりですよ。そう思いませぬか、姉上」
 「いえ、しほは肌が抜けるように白くて、雛人形のように顔立ちが整っています。早希はなにしろ末娘の上に川越育ち、しほは公方様のお膝下の江戸育ち、やはり水が違うとこうまで顔立ちがよくなるものですか」
 と伯母二人はしほを見ながら、遠慮のない言葉を重ね、
 「伯母上、母上、しほさんを前に失礼の極みです」
 と春菜に注意された。
 「あら、春菜、私たちはしほのことを褒めているのですよ。身内だからこそできる話です」
 「そうそう、そなたももう少ししほに似ていたらね」
 となんとも屈託ない。
     (後略)

「隠居宗五郎 鎌倉河岸捕物控<14の巻き> 佐伯泰英 ハルキ文庫 2009年 ★★
祝言の賑わいが過ぎ去ったある日、政次としほの若夫婦は、仲人である松坂屋の松六の許へ挨拶廻りにでかけた。道中、日本橋付近に差し掛かった二人は、男女三人組みの掏摸(すり)を目撃する。政次の活躍により、掏摸を取り押さえたたものの、しほは、現場から立ち去る老人に不審なものを感じていた。やがて、政次の捕まえた掏摸が、江戸に横行する掏摸集団の配下であることが判明。隠居然としていた宗五郎も政次とともに、頭目の捕縛に乗り出すが――。金座裏の面々が活躍する大好評書き下ろし時代長篇、待望の第十四弾。

「うぶすな参り 鎌倉河岸捕物控<23の巻き> 佐伯泰英 ハルキ文庫 2013年 ★★
享和二年(1802)の残暑の朝、十一代目の元気な声が、鎌倉河岸に響きわたっていた。金座裏は、「神田明神」へのうぶすな参り(お宮参り)の話題でもち切りだ。そんな折、赤ん坊に蛍をと龍閑川に出掛けた亮吉たちが、浴衣を着た若い娘の死体を見つけてしまう。手には蛍が入った紙袋を掴でいた――。政次たちは早速、探索を始めるが……。金座裏の面々は、人々の平和を守るため、強い結束で今日も江戸を奔る! 大ベストセラーシリーズ二十三弾、ますます絶好調。

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作成:川越原人  更新:2014/4/4