ポリプテルス:ブリーディング

何となく飼ってたけど、あるとき婚活やってみたいな なんていうレベルアップ気分が湧き上がってきたりする。ということでお相手探しにショップ巡りしてみた。

ポリプテルスは性別で尻ビレの骨格形成が異なるので一目瞭然。 オスは肉厚でやや丸みを帯びた尻ビレと その根元がふくらんでいるのに対し、メスは全体的に長くほっそりしています。 是非うちの嫁に!という相手に出会えたとしても、幼魚期はメス型の尻ビレをしているので将来的にイケメン男子に成長することがあります。 もしショップの水槽に複数いたなら尻ビレの形より根元のふくらみ具合を見比べると間違いが少ないかもしれない。あとは運、というか感。 性別が分かったらあとは成熟するの待つだけ。成熟年齢はポリプテルスの種によって異なり、比較的 生育が早いセネガルスでオスは1歳以上 メスは2歳以上かかります。

オスの尻ビレ:肉厚で丸い扇状
メスの尻ビレ:細長い形

オスは成熟すると尻ビレをお椀状に丸く広げるようになります。 しばらくするとメスを追尾しはじめペアができれば2匹寄り添うように並んで泳ぐようになり、オスは頭部で小刻みにトントン小突いたり触れたり軽く噛んだりと産卵を促し、メスの尻ビレをお椀状に広げた尻ビレで包み込み卵を受け取って受精させます …と順調に婚活が進めばいいですが、飼育環境や成長スピード、個体差でも成熟速度は変化するので、残念なことになかなか繁殖まで至りません。 可愛い彼女に相手にされず、ただのストーカー行為で終わることもあります。 当初ザイールグリーンと呼ばれていたレトロピンニスはお互いが成熟して産卵するまでに7年ほどかかりました。気長に待ち続ってみたけど、増やしたとこでどうかな、繁殖させなくていいかなって頃に産卵しました。 かなり前から狙っていたビュティコファリーは、ことごとくメスたち相手にされずに終わるとか。繁殖って上手くいかないものだなって感じです。

実際に繁殖を試してみる

ポリプテルスの生息地は基本的に乾季と雨季しかありません。何月頃には必ず繁殖がはじまるものではなく広大なアフリカ大陸では生息地域によって異なります。 だいたいの乾季は降雨量が少なく太陽熱によって大地は乾燥し河川の水温は上昇と蒸発で水位が下がり流域は渇水、そして残された河川の水質は悲惨な状況に。 雨季の降雨量はそれらを一変させ河川は増水して氾濫をおこし地域一帯を湿地に変えます。 氾濫は大地の栄養素やミネラルを広範囲に流し出して肥沃した環境をつくり、動植物たちはこれを糧にいっせいに増殖・繁殖をはじめる激変サイクル。 ポリプテルスもこのサイクルに乗って雨季に繁殖を行い、幼魚は豊富な餌を捕食して乾季が訪れるまでに大きく育ちます。 日本では比較的 暑い夏頃が繁殖の狙い目のようです。

ビュティコファリー ペア

ということを踏まえて産卵を促すためにこの環境を水槽内で行います。 オスの追尾や小突く行動が確認できたら前段階として乾季のような環境作りをはじめます。1ヶ月以上 水温をそれまでの温度よりやや高めに設定し、水換えは足し水メインで過ごします。 その後水換えを大量に行い水温設定を下げ、雨季の訪れを誤認させて繁殖を促します。

うまく産卵までステップアップすると、ポリプテルスは数日にわたって褐色をした1.5~2㎜ほどの粘着性の卵を少量ずつ流木や水草などに産みつけます。 孵化後、粘着器を持った仔魚はその場に留まってお腹の卵黄で育ちます。1週間ほどかけて卵黄を吸収すると活発に泳ぎ回って微生物を捕食する稚魚になります。

毎日生きたブラインシュリンプを与えるという最も気の使う忙しい試練の到来です。 ブラインシュリンプとは塩水湖に生息する小型甲殻類の総称で、塩水湖が干上がったとき条件がそろうまで乾燥卵で生き残ります。 餌用として市販されているものはこの乾燥卵。 2.0%の塩水を水温25℃前後にセットすれば約24時間でもれなく一斉に孵化するので、この幼生を与えます。 時間の経過とともに栄養価が下がるためポリプテルスの稚魚水槽に入れたいとこですが塩水生物につき淡水水槽では死んでしまいます。 毎日生きたブラインシュリンプを与えて水換え、再びブラインシュリンプを与えて水換えの日々が続きます。

デルヘジィ稚魚
デルヘジィの外鰓

まだ小さなポリプテルスの稚魚は多くの捕食者から狙われる時期。草かげなどに潜んで身を守りますが、成魚のように空気呼吸のたび水面まで泳いで移動するには身の危険が伴います。 そこで呼吸を補助する外鰓(がいさい)が伸びはじめます。 この外鰓は両生類の幼生期や肺魚などの幼魚期と同様の構造機能で、一般的に餌の摂取量が多ければ外鰓は大きく広がると言われています。

外鰓とは?

スクスクと成長しブラインシュリンプから赤虫へサイズアップする幼魚期には、食欲はさらに増して顔の前で動くものには何でも食いつく大食漢になります。 同時期に孵化した兄弟のたなびく外鰓を餌と思い食いちぎる、はたまた頭から丸飲みなど共食い行動がみられます。 無傷で成長させるには充分に餌を与え、それでも危ういなら保育水槽を区切る、コップで単独飼育など対策が必要になります。

残り続けるウィークシーの外鰓
20cm超えウィークシーの外鰓

外鰓は成魚になるにつれて縮小し消失します。 消失時期は餌の摂取量や個体の成長速度・環境・種の違いでも異なり、成長速度が早いエンドリケリー エンドリケリーなどは約半年、ウィークシーのように遅い種では5年以上といった違いがみられます。