海風通信 after season...




P:3 「すきやけいこ」

 芦奈野作品では異色の(!?)、女子高生の学園青春キラメキ物語です。(←言うのか?)
 なにせ、三人の登場人物が全て女子学生。これはキャッキャウフフの展開になるのかと思いきや、そこはやはり芦奈野テイスト、お馴染みの不思議ストーリーへとシフトしていきます。それでもやはり、今回は全体的に明るくほのぼのとした印象を受けるエピソードに仕上がっていますね。
 このお話で初めて、「すーちゃん」こと主人公の名前が「すきやけいこ」であることが判明しました。すきや→数寄屋?…そんな名字ってあるのかな?しかもタイトルには『すきやけいこ』とあるけれども、本編では誰も「けいこ」なんて呼んでいません。もしもこのタイトルチョイスがなければ、危うく下の名前が永遠に不明のまま作品を終えるという可能性もあったのですね。(※厳密にはPN:1の扉絵のアオリ文で、再度紹介されることになりますが。)
 そして何故だか脇役キャラであるハズの気弱(なのかなー?すーちゃんにグイグイ迫ってるし…)な下級生の女のコに、『玉乃まきこ』なんていうちゃんとした名前が命名されているのが、ちょっと可笑しかったです。この子、てっきり今後の話でもすーちゃん達に絡んで登場してくるのかと思ったら、それっきりでしたね(笑)。これもまた一つの『不思議』ということなのでしょうか。
 究めつけ…と言うか、私にとって最もインパクトがあったのは、すーちゃんの親友(だよね?)の『アヤ』の存在です。画像をお見せ出来ないのがもどかしいのですが、どこかで『PositioN』を目にする機会がありましたら、是非ともこのP:3だけは見ていただきたい。まるでココネコギャル化したようなキャラが登場してくるのです!初めて作品を目にした時は、アヤのその態度や言葉使いに「これこれ!ココちゃん、アナタそんなハシタないことする子じゃなかったでしょう!?」と、誌面に向かってツッコミを入れそうになりましたよ(←かなり錯乱してます)。その後のPN:1でのアヤの再登場時までには気持ちの整理が付きましたが、当初は「あのキャラ設定は無いよなァ」とか思ってました。今では1話くらい、アヤが主体のエピソードがあっても良かったと思います。(あ、でもアヤは見えない側としての人間なのか……。)
▲紙飛行機を折った砂浜?向きは逆だが、曲線を描く電灯も。 ▲目の前の海には、ウィンドサーファー達が波間を滑る。
 暴走しつつある私的作品見解はこのくらいにして、そろそろロケーション検証へと話を進めていきましょう。
 学校の設定については明確な描き込みが無いので絞り込みは難しいのですが、P:3およびP:1を統合して見るかぎり、「山の上の高校」という感じが伺えますね。そして山を下り、都市的に発展した中心地(おそらく鉄道駅がありそうなレベル)で玉乃まきこと別れ、海岸で何とは無しにゆるゆると学校帰りのひと時を過ごすアヤとすーちゃん。この一連のロケーションの流れ、私は山ノ内〜小町(鎌倉駅)〜材木座あたりと推測したのですが、どうでしょう?特に砂浜のすぐそばに隣接する海岸道路の様子や、ウィンドサーフィンが多数展開している海域となると、材木座海岸が一番しっくりとする気がして、これが推測を立てる決め手となりました。(※一応、逗子海岸から七里ヶ浜まで、考え得る道路を実走して検証してます。)
 上の写真は、P:3雑誌掲載時の24ページ目の1・2コマ目を見立てて撮影したもの。実はもっと似た風景もあったのですが、撮影に訪れた日は奇しくも来たる夏に向けての「海の家」建設ラッシュの真っ最中。砂浜は建築工事や資材搬入で大わらわで、なんとか通常の静かな浜を呈している場所は、ここくらいしかありませんでした。……またしばらくの間、せわしない季節がやってくるのですね。

 夏の海は大好きなのに、何故かこの地に向かう足取りが少しだけ重くなるという矛盾の時季。私に湧き起こる「フシギ」の1つでもあります。


2019/06/25