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P:2 「土曜の午後」主人公(この時点では名前明かされず)の、小学生時代に体験したお話。未知なる場所への探索・冒険心から展開される不思議現象というのは、きっと誰もが子供時代に一度は味わったことのあるであろう感覚なのではないでしょうか。こうした心の奥底に留めていた記憶を鮮烈に思い起こさせてくれるストーリー展開と描写は、さすがの芦奈野プロットといったところ。PositioNの中でも、私の最も好きなエピソードでもあります。 主人公と共に裏山の探検遊びに行くのは、幼馴染みのキッちゃん。この「キッちゃん」は、PositioNでは後にも先にもこの一話にしか登場してこないのですが、未来もしくは平行世界において、意外な姿で再びの登場となるのかも!?(性別まで違うけど)。あるいはこのワード、芦奈野世界での隠喩として、「キッちゃん=親友・幼馴染み」という意味合いを持たせているのかも知れませんね。
思えば小網代の森は、結構な年齢を徒に重ねた私に、再び少年時代のワクワクとした探検気分を甦らせてくれた場所でもあります。海外や秘境地帯を冒険するのとはまた一味違う、一種独特の雰囲気を漂わせていたのですね。この地域一帯の保全が決まった今、かつてのような自由な行動(無論、常識の範囲内でしたよ)が出来なくなってしまったことを考えると、ある時期、本当に黄金のような体験をさせてもらったと感謝に堪えません。谷戸のけもの道を辿っていくと、「ありゃ、ここに出るのか!」という今回のエピソードのような経験も、何度も味わわせてもらいました。 そんなわけで、半ば強引に作中の描写と似通った小網代の風景を、過去に撮影した写真を交えてピックアップしてみました。写真脚注のカッコ内に表記した番号は、雑誌掲載時のページ番号と、その何コマ目に該当するかを示しています。
この石祠もけっこう三浦のあちこちにあるので、なかなか作品中の設定に合致する理想型を見つけ出すのは苦労します。有名なところでは、三浦富士の山頂付近にはまとまって鎮座していますが、作中では単体で存在しているんですよね。たいていは庚申塚や道祖神などと共に設置されている状況が多いので、単体で、しかも人があまり来ない場所というロケーションは難題です。 そんな中で見つけたのは、まず「石祠の形状」として近かったのが、下宮田にある飯盛神社のもの。三崎口駅からも気軽に行くことが出来ながら、素朴でとても良い雰囲気を持った小さな神社です。飯盛(飯森)と言う地名からも分かるように、まだかろうじて森も残っており、国道も近い。作中の設定要件に近い候補地になり得る場所ですが、いかんせん付近がすぐ住宅街というのが残念なところなのですね。 そしてもう一つ、「何年も人の来ないような所にある小さな祠」という作中の表現に見合うものと言ったら、これはもう小網代の水神様ぐらいしか思い当たるものがありませんでした。もちろん、ここも保全地域に入っているので、今ではもう立ち入ることは出来ません。写真は、かつて三浦七福神詣りをした途中、ついでに(と言っては失礼ですが)久々のご挨拶を兼ねて参拝した時のもの。今ではもう緑のブッシュに埋もれてしまっているのでしょうか?ここまでの参拝ルートを造って欲しいと願う一方、いやいや、あそこは隔絶した聖地として、これからも神秘性を保ちながら鎮座し続けて欲しいという思いも強く感じます。……うーん、やっぱり後者のような存在であるべきでしょうか。
主人公とキッちゃんが、「ありゃ!ここか!」といって辿り着いた場所、ここは私にとって、ヤシャブシ坂を登り詰めて小網代外周道路に合流したポイントに思えてならなかったのですが、やがて私の推測に大きな矛盾が生じてくることになります。そう、実は今回のレポート、確定的と断言できるような位置証拠が、ここまで全くないんですね。すべて私の願望的な推測なのです。この矛盾を決定づけたのが、バスの出現でした。
そんな訳で今回のレポートは、ほぼ私の心象風景から導き出された想像的推測というオチになってしまいました。ここまで読み進めさせておいて、大変申し訳ない結果となりましたが、それでも私はキッちゃんたちが探検したあの森は、やはり小網代だったのではないかと思っています。 それほどまでに、生命・地形・季節的変化に富んだ、そして何よりワクワクとさせる魅力的な森なのです。そしてたぶん、これからも……。 ◆ ※繰り返しになりますが、『水神様』や『カニ団地の崖』は保全地域となり、今はもう行くことが出来ません。このページは、PositioN第2話の発表当時に作成された資料・写真を基に加筆・修正したものです。現在では状況が大きく変わっていることを御了承下さい。 |
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