海風通信 after season...




P:5 「月曜の朝」

 あきらさん編の2回目です。
 「月曜の朝」というタイトルから、おそらく前回とは真逆に、家から会社へと向かう通勤時の光景を描いているようです。ともあれ再び、長者ヶ崎近辺で不思議な現象に遭遇することになるのですね。芦奈野作品では、もうホントにこの付近でのフシギ遭遇率が高い!今後もちょくちょく登場する可能性が期待されるので、ほんのちょっと心に留めておいたほうがいいのかも知れませんね。(←意味深!?)
▲立石公園前の道路。左の電柱に注目! ▲黒松とフェニックス(カナリーヤシ)。
 今回のエピソードでは、自宅から長者ヶ崎に向かうまでの風景が、かなり克明かつ具体的に描かれていることが分かります。まずは、あきらさんの自宅から海沿いの道に出るポイント。これは立石公園の前だということは早くに分かったのですが、実際に現地に訪れて見ると、クロマツやフェニックスの木などの植生の配置、電柱や街路灯、建物の位置などが見事に合致していることに驚かされます。特に手前左の電柱の横棒なんて、正確に三本の配線器具が再現されています!もちろん、描写の構成上、いくつかの修正点や相違点は見受けられます。街路灯のカサ部分も、残念ながら新型のタイプに付け替えられてしまっていますが、おおむね雰囲気は損なわれてはいません。
▲P.189中段の構図と見事に一致。 ▲これが以前あったタイプの電照灯。別地点にはまだ現存。
 そして上の写真の場所も、ほぼ完璧に一致しますね。カーブミラーや円い反射板、電柱やフェンスの形状、前方に見える久留和地区の家並みや突端の岬の海への落ち込み方も符合します。惜しむらくは、ここでも街路灯が新型のものに替わってしまったこと。もう少し早い段階に写真を撮っておけなかったことが悔やまれます。電灯の総LED化が推し進められている昨今、ヨコハマの第48話「レコード・3」のような風景や、そもそも「光」というものの感じ方それ自体が変わっていってしまうのかも知れません。もう既に、裸電球の光に懐かしさを感じ始めてますもんね。
▲「透明な蛇」が発生し始める峯山の信号機付近。 ▲長者側から見る久留和海岸。弓なり感が蛇状ではある?
 話を本編へと戻しましょう。長者ヶ崎に続く長い直線道路で、あきらさんは信じられない光景を目にします。
 それは、渦巻く風が作り出す、白く透明な空気のチューブ。サーフィン用語でいう、波が管状に形成される「パイプライン」のような現象が、道路上で発生します。あきらさんも言ってるように、これは「よくあるなんでもないこと」なんでしょうか?少なくとも私はこれまで体験したことはありません。
 「透明な蛇」と喩えられたそのパイプラインは、峯山バス停付近の信号機あたりから始まります。何故、この信号機で確定なのか?と言うと、実はこの直線道路、信号機はここ1ヶ所にしかないのですね。迷う余地などありません。道路をどんどん北上していくと、次の信号機を見つける頃には、もう長者ヶ崎に辿り着いています。案の定、「透明の蛇」など発生するはずも無く、いつものように気持ちの良い海岸道路を振り返ると、久留和海岸が弓なりに広がりを見せていました。
 後日調べたところ、この地域の古い伝説に、「峯山の大池から尾ヶ島(長者ヶ崎南方の沖島)まで尻尾を伸ばしていた大蛇が棲んでいた」という言い伝えがあることを知り、ちょっとビックリしました。芦奈野先生は、このことを知っていたのでしょうか?いや、知っていたからこそ関連付けたのでしょうね。短編ストーリーなのに、相変わらず深いなぁということを実感させられました。


2014/12/02