硬骨魚類 新鰭亜綱

現存する条鰭類は、軟質亜綱チョウザメ目(2科6属)と腕鰭亜綱ポリプテルス目(1科2属)を除き、すべて新鰭亜綱(44目453科4289属)に分類されます。このうち淡水魚は約44%で一時的に海水域で過ごす回遊魚や周縁性も淡水魚とされます。

古生代 中生代 新生代~現在
カンブリア紀 オルドビス紀 シルル紀 デボン紀 石炭紀 ペルム紀 三畳紀 ジュラ紀 白亜紀 古第三紀 新第三紀 第四紀

軟質亜綱

新鰭亜綱 全骨類

シルル紀後期に登場した初期の条鰭類、軟質亜綱の繁栄が続くなか、ペルム紀はいると現存するアミアAmiaのような姿の新鰭亜綱 アミア類Halecomorphiが登場します。 あくまでもアミアのような姿のアミア類なので現存するアミア カルヴァAmia calvaとはまた別もの。

カラモプレウルス
Calamopleurus audax
Calamopleurus audax(アミア目)
白亜紀 / 国立科学博物館

軟質亜綱の特徴を受け継ぎ、体表面は硬鱗(こうりん)で覆い、臀ビレは方向舵と体の安定として体の中心部より後方にあるなど外見に大差はありませんが、これまで淡水域で不足する溶存酸素を補っていた肺に類似した器官は より安定した遊泳ができるよう食道器官の腹側から背側に移動しました。また、内骨格は軟骨が部分的に残っているものの硬骨化したことで、淡水域で不足しやすいミネラル分を硬骨に蓄え必要時には放出する貯蔵庫として使えるようになりました。

さらに似た特徴を持つ鱗骨類Ginglymodiも登場し、合わせて全骨類Holosteiとされています。

Lepidotes minor
Lepidotes minorLepisosteiformes
ジュラ紀後期 / 国立科学博物館
Lepidotes temnurus
Lepidotes temnurusLepisosteiformes
白亜紀 / 国立科学博物館

アミア類が登場した古生代ペルム紀は、絶滅史ランキング第1位の大絶滅によって海水域の最強の捕食者もろとも海洋生物は96%は姿を消し、古生代が終わりを迎えます。 体内の塩分濃度を調節する内臓器官などが発達したことも重なって、中生代 三畳紀にはヒエラルキー崩壊した海水域へ生息場所を拡大するグループも現れ、ジュラ紀には進化の絶頂に達しました。 しかし軟質亜綱の繁栄が続いていたため全骨類は表立つことはなかったようです。

古生代 中生代 新生代~現在
カンブリア紀 オルドビス紀 シルル紀 デボン紀 石炭紀 ペルム紀 三畳紀 ジュラ紀 白亜紀 古第三紀 新第三紀 第四紀

新鰭亜綱 全骨類

新鰭亜綱 真骨類

ところが白亜紀に入ると、新鰭亜綱からより敏捷な運動性を獲得した真骨類Teleosteiが登場します。 派生はアロワナ類Osteoglossomorphaやカライワシ類 Elopomorphaからはじまり、ニシン類や骨鰾類へと続きます。骨鰾類はコイ類・ナマズ類・カラシン類などが含まれます。

Xiphactinus audax
Xiphactinus audax(アロワナ上目 Ichthyodectidae
白亜紀前期 / 神奈川県立生命の星・地球博物館

アロワナ類 イクチオデクテス科Ichthyodectidaeは浅海域に生息する大型捕食者でXiphactinusの化石には顎の間に海生爬虫類のモササウルスの足ヒレが付いたものも発見されています。 でもまあモササウルスは15m以上に成長するのに対しXiphactinusは約6mほど。俊敏さを生かして普段は逃げる立場だったのかどうなのか。

Knightia sp.
Knightia sp.(ニシン目 ニシン科)
始新世前期 / 国立科学博物館

浮力調節が発達したことで異尾が作り出す揚力は必要としなくなり、前進運動に最適な上下対称形のシンプルな正尾に、他のヒレも遊泳に最適な位置に移動しました。背ビレ・臀ビレの鰭条数がその支持構造数と等しい構造を持つようになります。 筋肉遊泳を行い、遊泳の妨げになる硬く重い硬鱗(こうりん)は、骨質だけの軽くて薄い円鱗(えんりん)や、櫛鱗(しつりん)に進化しました。 軽量化したウロコは内側が基底膜や皮膚層に埋まり大きく重なっているだけで、捕食者からの攻撃に耐えることはできませんが、簡単に剥がれ落ちることで被害を最小限に食い止め 回復を早めるようになりました。クチの上縁を前上顎骨と主上顎骨で構成するようになり、歯は顎骨に癒合して食の多様性も広がっていきました。

Palaeoperca proxima
Palaeoperca proxima(スズキ目 ハタ科)
始新世 / 神奈川県立生命の星・地球博物館
Amphiperca multiformis
Amphiperca multiformis(スズキ目)
始新世 / 神奈川県立生命の星・地球博物館

真骨類の進化と派生は、かつての魚類群が成しえなかった沖合や深海などにの生息環境にも適応し、現在では全魚類の96%をしまるまでになりました。 栄華を誇っていた軟骨の内骨格を持つ軟質亜綱は白亜紀にはほぼ姿を消し、新鰭亜綱 全骨類はアミア類Halecomorphi1種、鱗骨類Ginglymodi現存種で言うとこのガーLepisosteidae7種が限られた水域で現存するのみとなりました。

軟質亜綱
腕鰭亜綱
新鰭亜綱
全骨類 真骨類
呼吸器官 呼吸器官・ウキブクロ 浮力調節器官
肺への気道位置 腹側 背側
内骨格 軟質骨格・部分的に硬質骨格 完全な硬質骨格
上顎の構成骨 頬部に固定 頬部から離れて退化
顎骨の短縮
上顎骨は遊離
押し骨に変化
頬部は開大
顎骨の短縮
舌顎骨 強大 伸長
ウロコ 強固で硬く重い硬鱗 硬鱗 薄くて軽い円鱗や櫛鱗
尾ヒレ 著明な歪形尾 短い歪形尾 成尾
背ビレ位置 中心部より後ろ 前方もしくは中心部

硬骨魚類たちの分岐点

手足をもつ肉鰭亜綱

初期の条鰭類 軟質亜綱・腕鰭亜綱