豊かな海のプロローグ

流れは ざっくり。

気の遠くなるほど遥かな昔、捕食するための原口を獲得した多細胞生物は突然ですがスノーボールアース、つまり全地球凍結を迎えます。 現在のように北極・南極や山岳など部分的な凍結とは違い、地球表面まるごと凍結しました。 何度となく繰り返された全面凍結が終わるころ、多細胞生物は姿を変え、肉眼で確認できるほど大きな軟体生物となりました。華々しい新たな幕開けでしたが、超巨大噴火スーパープルームによって微生物たちの原生代は幕を閉じます。

次は古生代。

カンブリア紀からはじまる古生代は、地球全体の気候が温暖で どの大陸にも氷床がない海洋が覆いつくした高水位の世界が広がっていました。カンブリア紀は軟体生物が次々に殻や外皮など身を包む硬組織を獲得しはじめた時代。 硬組織を獲得したことによって、被食者に対しての攻撃力や捕食者からの防御力を身につける進化競争となりました。

それと同時に眼も進化します。これまでの明暗のみの手探りのような捕食から、眼があることによって捕食者は対象相手を離れた場所から発見し弱点を攻撃、被食者は接近をいち早く察知し対処する、素早く移動するための進化も促されました。 温暖な気候と進化競争の条件が重なり、生物は短期間に爆発的に多様化して現生動物の祖先となる動物門のほぼ全てが揃います。最古の魚類も登場しました。

ウミユリの仲間 イオクリヌス
Iocrinus subcrassus

オルドビス紀には造礁サンゴが広大なサンゴ礁を形成するようになり、これまで海底を平面的に移動していた生物たちは、サンゴ礁を立体的に移動する生活にかわりました。 また造礁サンゴが生きてくためには体内共生の藻類 褐虫藻(かっちゅそう)が必要不可欠なことから、太陽光あふれる浅い海域が広がっていたことが分かります。 豊かな環境下でオウムガイなどの軟体動物や三葉虫などの節足動物、筆石のような半索動物が個性的な多様化をみせはじめます。

海底では活発な噴火活動がはじまり生態に悪影響を及ぼす重金属が海水に溶け出し、広大な浅い海域は造山運動によって押し上げられ陸地になり、気流が変化して短期間のうちに水蒸気は大陸内部に氷床として保存、そして氷河期の到来。急速に下がる海水位と干上がる造礁サンゴ、生物たちは わずかに残された住処をめぐって進化の軍事拡張競争が加速します。魚類はそれまでプランクトンを捕食する濾過食でしたが、より大きな獲物を狙えるアゴの進化が促されました。 しかし、礁周辺の浅海域のみで進化を遂げていた生物たちは海洋まで移動できず壊滅的な最期を迎えます。

シルル紀になると気候が温暖になり、大陸の氷床が溶けだして海水位が上がりました。壊滅を免れた生物たちが急速に回復をはじめます。陸上では地殻変動の影響で雨量が増えるようになり、岩石だらけの乾燥した大地に河川ができました。 淡水性の緑藻類はオルドビス紀から徐々に陸上植物への進化を開始していましたが、シルル紀には本格的に河川に沿って上陸をはじめます。

節足動物も後を追うように上陸を果たし、クモやムカデなどの祖先が地表を這いまわるようになりました。動植物が陸上に生存しているということは枯死体も陸上に蓄積することになります。 枯死体をバクテリアなどが分解して土壌となる腐植土ができ、土壌は水や鉱物から溶け出した栄養源を蓄え、植物はそれを糧に成長し、再び枯死体となってバクテリアに分解されるといったサイクルを繰り返えしながら河川周辺の緑化が進みました。 少し遅れて魚類も淡水域へ進出しはじめます。

デボン紀、陸上植物は大型になり河川周辺に群生して豊かな湿地や森林をつくりだしました。 きびしい太陽光を遮り日差しがやわらぐ淡水域では肺呼吸と四肢のようなヒレを持つ魚類が現れ、両生類として上陸の第一歩を踏みだします。 陸上植物や節足動物と異なり、脊椎動物はの体の構造上、陸上の重力を全てを受け止めて身体内を守る肋骨が必要だったため遅れての上陸となります。

海域では、これまで被食者の立場にいた魚類がアゴによる捕食の多様性を生み出し生態系の頂点に登り詰めます。 デボン紀は魚類の進化が目覚しく無顎類や棘魚類・板皮類・軟骨魚類・条鰭や肉鰭を持つ硬骨魚類、全ての魚類群が揃い それぞれが多種多様に進化したことによって化石の量や種類が非常に多く発見されることから「魚の時代」と言われています。

突然ではありますが、地球史上最大級のサンゴ礁や周辺の生物たち80%ほどがデボン紀末の絶滅によって姿を消します。 この絶滅の特徴は淡水域より海水域の生物が明らかに減ったこと、高緯度の冷たい海より赤道付近の生物が壊滅的などがあげられます。 絶滅させるほどの隕石の痕跡も確認されず、寒冷化したならば冷たい海に生息していた生物は赤道付近に移動すれば生き長らえることも可能ですが、そもそも氷床の痕跡は確認できず、謎にみちた大量絶滅。

そんなこんなで壊滅を免れた生物たちは再び次の進化をはじめるのでした。