硬骨魚類

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シルル紀後期、表層~中層の遊泳に適した紡錘体型、捕食者から身を守るための強固で硬い硬鱗(こうりん)を身にまとった硬骨魚類が登場します。硬骨と言っても、この時点ではまだ他の魚類群と同様に内骨格は軟骨で構成していました。

棘魚類 アカントデス

決定的にどこから派生して硬骨魚類が登場したのかは不明です。オルドビス紀後期の棘魚類アカントデス目Acanthodiformesと頭蓋骨・鰓蓋骨の一部に類似点が多く、姿も似ていることから類縁・近縁関係とされています。

その時代の礁周辺の浅海域では無顎類・有顎魚類まで一通りの魚類群が多様にあふれ、その頂点にはウミサソリなどの節足動物が君臨していました。硬骨魚類はこれらをを避けるように河口付近や内陸の淡水域へ徐々に生息地をうつします。 淡水域は広大で常に安定した環境の海水域とは異なり、干潮による影響や雨期と乾期のような気候変動により水量は常に激変、ときには厳しい環境下に取り残され溶存酸素量が不足する不安定な水域でした。 足りない酸素量を大気から直接吸い込んで補ううち、食道器官の腹側に大気を貯めこめるような肺状の突起ができてきます。そこへ血管を張り巡らすと より多くの酸素を体内へ取り込めるようになりました。さらに塩分濃度による浮力が得られにくい淡水域ではこの突起が浮力調節器官としても大いに役立つことになります。

また淡水域は溶存酸素問題だけではなく、筋肉や神経の働きなど生命の維持に欠かせないリンやカルシウムなどミネラル分が不足しやすい環境でもありました。生きていくためには常に安定した量が必要になります。 摂取が困難な場合には供給できるようカルシウムを骨の組成として体内に蓄えはじめ、軟骨の内骨格は硬骨化していきました。 進化とともに硬骨化が進むと、気候や危機的状況で突然 重力がのしかかる陸上に打ち上げられても体を支えられ、河川の激しい水流にも耐え、急激で活発な運動を行う筋肉も支えられるようにもなりました。

こうして淡水域での適応進化をはじめましたが実際には進化の道は1本ではなく、シルル紀後期の登場からすでに硬骨魚類たちは分岐点に立っていました。デボン紀初期には異なる道を進みだし、それぞれが同時進化を始めます。

手足をもつ肉鰭類

表層~中層を泳いでいた硬骨魚類には捕食者から狙われた際の避難場所や、獲物を狙う場所として潟や湿地帯の浅瀬を選んだグループがいます。 水中に茂る植物や藻、倒木や落ち葉など積もった枯死体などの中を掻き分けたり這いまわるような遊泳移動をするうち、ヒレの内部骨格が発達して両手両足のような2対のヒレ、つまり四肢のように筋肉と関節でつながる肉鰭に進化しました。

肉鰭類の硬鱗は硬骨魚類で最も初期構造のコズミン鱗であることから、登場してすぐの早い段階で派生が起きた裏付けとされています。ほかにも肉鰭類特有の骨格構成がどうのといろいろあるようですが専門用語だらけになるので省略。

その後、水中生活を選んだシーラカンス類を含む管椎類Actinistiaと、上陸を選んだリピディスティアRhipidistiaに分かれます。 ただの肺状の突起を肺のような複雑な器官として使いはじめたリピディスティアから 肺魚類Dipnoiと扇鰭(せんき)類Tetrapodomorphaが派生します。扇鰭類に水面上から酸素を吸い込みやすくする首ができると、次の進化段階である両生類への道が開きました。 ここから派生登場する生物たちを雑に言えば両生類や爬虫類、哺乳類、鳥類など四肢動物は肉鰭亜綱の下位系統グループをいうことになります。 余談ですが鳥類は異なっているように思えて、翼は前肢が進化したものなので四肢動物に含まれます。

遊泳力にステータスを割り振った条鰭類

夏の風物詩パタパタうちわのような射線状に広げた鰭条の筋と薄い膜状の鰭膜で構成するヒレを持つ条鰭類。シルル紀後期 このヒレの形状を持つ条鰭類は全ての魚類群の中でもごく少数で、デボン紀に入っても目立たない存在でした。

条鰭類のヒレは鰭条基部の筋肉によりヒレ全体を広げたりたたんだり屈曲させたり細やかな動作が可能で、肺状突起をウキブクロとして自在にコントロールして、より俊敏で巧みな遊泳力を極めていきます。 ただ残念ながら淡水域で適応進化させた硬骨格は、軟骨格に比べたら重く、遊泳の妨げとなってしまいました。 そこでこれまで外骨格のように攻撃や衝撃に耐えていた丈夫で重い硬鱗を、薄くて軽い円鱗(えんりん)や櫛鱗(しつりん)に進化させました。 ウロコで耐える防御はできませんが、簡単に剥がれ落ち被害を最小限に食い止め、素早く逃げきる防御を手に入れます。

環境に適応したヒレや筋肉遊泳など体構造が発達させて再び海水域へ生息地を移すようになり、体内の塩分・水分濃度の排出量をコントロールする腎臓が発達しました。

条鰭類の進化は、これまでどの魚類群が成しえなかった荒波の沖合や深海などあらゆる環境に適応し、現在では全魚類の96%をしめるまでになりました。

手足をもつ肉鰭亜綱

初期の条鰭類 軟質亜綱・腕鰭亜綱

遊泳力に全フリ新鰭亜綱