軟骨魚類

軟骨魚類の現存種は全頭亜綱Holocephalimorphaのギンザメ目 1目3科6属、板鰓亜綱Euselachiiのサメ類 9目34科105属・エイ類 4目います。 シルル紀の地層から最初期の鱗化石が、決定的となるデボン紀前期の化石ではすでに系統樹が全頭亜綱と板鰓亜綱に枝分かれしていました。 どちらの亜綱もデボン紀から石炭紀にかけて海水域で多様化しますが、生態系の頂点に立つことはなくペルム紀末の大絶滅を迎えます。 この大絶滅で海洋生物は96%・陸上生物は70%が姿を消しました。軟骨魚類の一部は生き延びて新たな進化を経て再び多様化し、現在では海水域の表層から深海、淡水域の河川にも生息するようになりました。

古生代 中生代 新生代~現在
カンブリア紀 オルドビス紀 シルル紀 デボン紀 石炭紀 ペルム紀 三畳紀 ジュラ紀 白亜紀 古第三紀 新第三紀 第四紀

登場すぐから早い段階で異なる進化を歩みだした全頭亜綱と板鰓亜綱ですが、現在までも受け継ぐ共通点があります。 まず一つ目は体表面をザラザラとしたいわゆるサメ肌と呼ばれる棘状の楯鱗(じゅんりん)が覆っています。楯鱗は歯と相同した発生や構造から皮歯(ひし)ともいい、 防御とともに体表面の乱流を抑え水の抵抗をなくし、より高い機動性と安定性の遊泳を可能にする水流安定機能もあります。化石種のウロコ構造や形に変異がありますが、どれも同じ機能をもちます。

軟骨魚類Chondrichthyes
全頭亜綱Holocephali
Paraselachimorpha
Holocephalimorpha
ギンザメ目Chimaeriformes
板鰓亜綱Elasmobranchii
Cladoselachimorpha
Xenacanthimorpha
Euselachii
Hybodontiformes
Neoselachii
エイ類Batoidea
サメ類Selachimorpha

続いてクチやその周辺が前方へ突出した吻(ふん)にある特殊な感覚器官のロレンチー二器官。 この器官は生物が出す微弱な生物電流を感じとる電気受容体で、餌となる甲殻類や貝など対象相手が隠れていても見つけだすことができます。 サメの吻周辺を見ると、たくさんの小さな穴が空いているのが分かると思います。それがロレンチー二器官。

繁殖は種によって卵生や卵胎生・胎生のいずれかになりますが、受精はどれもオスの腹ビレ内側にある交尾器clasperを使い、メスの体内で受精させます。 ただし交尾器は軟骨魚類だけが有する特殊機能でもなく、デボン紀中期の一部の板皮類からも交尾器が確認されています。外見だけで簡単に雌雄わかるので水族館いったらココもチェック。

現存種には淡水河川を遡上するサメ類や淡水に生息するエイ類がいますが、軟骨魚類は海水域で進化を遂げたため、他の魚類群のように淡水域に適応した肺原基や肺 そこから由来するウキブクロがありません。浮力は水より比重の軽い脂肪を大量に肝臓に蓄えて使っています。骨格構造の軟骨も比重が軽く浮力に貢献しています。

2つの亜網にはこのような共通点があり、それぞれ初期型形質・中間型形質および進化した形質が確認できます。しかし歯と楯鱗以外は化石として残りにくい軟質の内骨格なので進化過程の詳細は漠然としか分っていません。

全頭亜綱 ギンザメ類

板鰓亜綱 サメ・エイ類