棘魚類

棘魚の読みは「きょくぎょ」現生魚のイトヨなどトゲウオ類も同じ漢字を用いますが全くの別もので、トゲウオ類はだいたいカタカナ表記が多いようです。

古生代 中生代 新生代~現在
カンブリア紀 オルドビス紀 シルル紀 デボン紀 石炭紀 ペルム紀 三畳紀 ジュラ紀 白亜紀 古第三紀 新第三紀 第四紀

オルドビス紀後期の地層から断片的な微小化石が、シルル紀には決定的となる化石が発見されています。 デボン紀には多様化して繁栄しますが、絶滅史ランキング第1位のペルム紀末の大絶滅によって地球上から姿を消します。 この大絶滅で有力とされる説が大規模な火山活動というもの。地球全体が影響を受けたため海洋生物は96%・陸上生物は70%が絶滅しました。

棘魚類Acanthodii
アカントデス目Acanthodiformes
クリマティウス目Climatiiformes
Ischnacanthiformes

棘魚と名付けられた通り、各ヒレには硬質化した鋭く尖る棘があります。学名に使われるacanthもギリシャ語由来で棘や針を意味し、この棘こそが大きな特徴となっています。頑丈な棘は捕食者に飲み込またとき口腔内部を攻撃し免れる防御の役割がありますが、硬骨魚類の体腔内に体全体が入った化石が発見されていることから必ずしも有益ではなかったようです。

ヒレ数は背ビレ1~2基、対の胸ビレ・腹ビレと対鰭間の6対ほどの副対鰭(中間棘)、臀ビレ1基があり、これらは前縁の棘とそれに支えられる膜状で構成しています。尾ヒレのみ棘がなく上葉部分が長い異尾と膜状で構成しています。

棘魚類はクリマティウス目Climatiiformesが初期に登場し、続いてIschnacanthiformes、そしてアカントデス目Acanthodiformesと 進化していきました。その過程で徐々に背ビレや副対鰭の数は減りますが、棘は体側筋中にしっかり固定されてより長く強固なものへと変化しました。

Acanthodes sp.
Acanthodes sp.Acanthodiformes
石炭紀~ペルム紀 / 国立科学博物館
Acanthodes bridgei
Acanthodes bridgeiAcanthodiformes
石炭紀~ペルム紀 / 国立科学博物館

生息域は海水~淡水域。それまで栄えていた底性魚類の無顎類と異なり、表層~中層を泳ぐのに適した遊泳性の紡錘体型。 シルル紀後期の地層から最初期にアゴを有した魚類クリマティウス目が発見されています。 登場すぐにクリマティウス属Climatiusは、海水域の捕食者やライバルの少ない湖や河川などに生息域を広め多種多様になりました。 多様になったにも関わらず底性適応した化石はいまだ発見されないことから、どの種も活発に遊泳する魚類なようです。

棘魚類の眼は大きく前方に位置し、嗅覚器の外鼻孔は小さく、棘魚類の3目はそれぞれ歯の構造・形状が異なりますが下顎に鋭い歯があることは変わらず、視覚に頼って活発に遊泳し、小型魚類や甲殻類を捕食していたことが分かります。 最も進化したとされるアカントデス目は、プランクトンなど微小生物の捕食に適した形状の鰓弓や歯状突起を持つようになります。

棘魚類には200cmほどの大型種もいますが多くは20cm未満の小型種なことから、どこの水域でも生態系の頂点に立つことはありませんでした。

Acanthodes sp.
Acanthodes sp.Acanthodiformes
ペルム紀 / 国立科学博物館
Acanthodes bronni
Acanthodes bronniAcanthodiformes
ペルム紀前期 / 国立科学博物館

内骨格は主に軟質骨格で化石として残りにくく、初期に登場した種は歯やウロコ・棘などの断片化石ばかりで、アカントデス目だけ細部まで残る全体化石が発見されています。 どの種も体表面のウロコは小さく骨質と歯質組織の層で構成する硬いものがサメ肌状に密に並び、成長と共に同心円状に大きくなっていきました。また進化するほどウロコの層が薄くなる傾向があり、身を軽くすることでより高い遊泳力を得ることができたようです。

初期種ほど板皮類や初期の軟骨魚類との類似点が多くみられ、進化したアカントデス目では頭蓋骨・鰓蓋骨の一部に硬骨魚類との類似点がみられるようになります。 硬骨魚類の類似点には、骨質の薄い板状骨の鰓蓋によって内部構造を保護すると共に 交互にクチと鰓蓋を開閉して効率よくエラ呼吸を行う水流を起こせること、酸素呼吸を補うための原始的な肺状の器官があること、硬骨魚類や四肢類が持つ体の平衡バランスを保つための3種の耳石があることなどがあげられます 魚類全体の系統関係は不十分ではありますが、硬骨魚類の類縁・近縁関係として考えられています。