硬骨魚類 軟質亜綱・腕鰭亜綱

シルル紀後期、最初期の条鰭類アンドレオレピスAndreolepisの部分化石が発見されています。分類上は硬骨魚類ですが、このときはまだ他の魚類群と同じく内骨格は軟質で構成しているので これらを軟質亜綱Chondrosteiとし、その後に進化したグループは新鰭亜綱として分類しています。

古生代 中生代 新生代~現在
カンブリア紀 オルドビス紀 シルル紀 デボン紀 石炭紀 ペルム紀 三畳紀 ジュラ紀 白亜紀 古第三紀 新第三紀 第四紀

軟質亜綱のほとんどはパレオニスクス目Palaeonisciformesで、最初期の条鰭類アンドレオレピスもパレオニスクス目に含まれ、その中のアンドレオレピス科として分類されています。 アンドレオレピスは体長は20cmほど、礁周辺の浅海域に生息していました。

デボン紀にはパレオニスクス目は生息地を大陸内部の淡水域に移り住んで多種多様な進化をはじめます。淡水域で肺のような構造器官ができたことが後の繁栄につながったようです。

Paramblypterus sp.
Paramblypterus sp.Palaeonisci
ペルム紀 / 国立科学博物館

淡水域は常に安定した環境の広大な海水域とは異なり、干潮の影響や雨期と乾期のように気候変動で水量は常に激変し、ときとして厳しい乾期で溶存酸素量が不足する事態が起こります。 少ない溶存酸素を大気から直接吸い込んで酸素量を補ううち食道器官の腹側に大気を貯めこめるような突起ができました。そこへ血管を張り巡らせたことでより多く体内へ酸素を取り込めるようになり、さらに突起は浮力としても大いに役立つことになります。

パレオニスクス目の多くは小型種でしたが100cmほどに達する大型種も現れます。大きくクチを開けられるアゴの構造と鋭い円錐状の歯で魚類を捕食していたらしく、体腔内に棘魚類の体全体が入った化石も発見されています。

Paramblypterus credneri
Paramblypterus credneriPalaeonisci
ペルム紀 / 国立科学博物館
Aeduella sp.
Aeduella sp.Aeduelliformes
ペルム紀 / 国立科学博物館

捕食者でもあり被食者でもあったパレオニスクス目の防御は、強固で硬く重い硬鱗(こうりん)で体表面を覆うことでした。しかし浮力をもつ軟質の内骨格と肺のような機能があったとしても硬鱗では動作が制限されてしまいます。 そこで遊泳しやすいようヒレの条鰭を放射線状に広げ、胸ビレは大きく平衡を保ち、背ビレと臀ビレは方向舵と体の安定として先端が尖る三角形に変え体の中心部より後方に、尾ヒレは上葉が長い異尾の後縁に条鰭が深く切れ込み前進運動に適した上下対称のような形となりました。 これらの特徴は、現生魚類の多数をしめる典型的な真骨類に類似しており、彼らが登場する2億年以上も前に取得したことが淡水域での繁栄につながったとも考えられています。

初期は中間層を泳ぐのに適した紡錘体型でしたが、石炭紀前期になると体高に比べて体幅の少ない側扁体型の種や深く重なりあう円鱗を持つ種なども現れ、多様な進化を遂げたことがわかります。

チョウザメ

やがて条鰭類 新鰭亜綱の中から完全に硬骨化した内骨格と敏捷な運動性を持った真骨類が登場し、より優位な彼らに圧され白亜紀には衰退します。現存種は軟質亜綱チョウザメ目(2科6属)と、進化派生で近縁とされる腕鰭亜綱ポリプテルス目(1科2属)が初期の条鰭類の特徴を受け継いでいます。

硬骨魚類たちの分岐点

手足をもつ肉鰭亜綱

遊泳力に全フリ新鰭亜綱