海風通信 after season...

supplement 06
『風見魚製作日誌2』(後期型モデル)

◆1月8日、コロナ禍による緊急事態宣言が発動され、11年目となる『三浦七福神徒歩巡礼』は、決行直前に自粛となってしまいました。
 再びのステイホーム期間の突入です。このポッカリと空いてしまったお休みの日々を「どうするかな〜?」と考えあぐねていた時に思い立ったのが、
風見魚の後期型モデルの作製でした。よもや令和の世のタイミングで後期型まで作ることになるとは自分でも予想していませんでしたが、とりあえず
は外出自粛期間中の良い気紛れとなったことは幸いと言えるかもしれません。(こうしてホムペの記事にも出来たことですしね。)

 さて、風見魚の後期型は設定資料も少なく、配色も不明など、なかなか作製のハードルが高かったのですが、今回は限られた資料の中から総
合的に勘案して、平均的な予測値でプランニングしました。風見魚の全体的な輪郭フォルムも、第131話と第135話の凡そ中間を捉えたデザイン
として、設計・比率を柔軟的に算出しています。その他の詳細設定は、以下の日誌本文にてどうぞ。


【素体切り出し】 2021年01月10日
 風見魚の後期型フォルムのデザインは実はけっこう曖昧で、各話において微妙に異なっています。131話ではヒレ(背びれと尻びれ?)がかなり特徴的に強調されて描かれているのに対し、135話ではそれがフラットになっています。最終話においては尻びれ部分がほぼ無くなり、もはや別モノ状態。(ひょっとしたら、経年破損により削れてしまったのか、まさかの三代目風見魚なのかも!?いずれにせよ、かなりの時間の流れを表現しているのでしょうね。)
 今回は、見え方によっては131話・135話のどちらとも取れる形状を考慮して作図しました。
 材料は、前回とほぼ同様。プロペラも模型飛行機用のものを使用しています。
【素体削り込み・ヤスリ掛け】 2021年01月12日
 全ての作業工程の中で、最も楽しい素体削り。ゴンチチのアルバム『Devonian Boys』や、『DUO』あたりを聴きながらバルサをサクサク削り込めば、至福の気分に浸れます(笑)。この作業、出来れば三浦の海辺で行ないたかったのですけど、現況では叶わぬ夢ですね。
 ヤスリ掛けはサンドペーパーの荒目80番から細目の600番まで、6段階に分けて丁寧に仕上げていくと、最終的にはサラサラの滑らかボディになります。これもこだわり出したらキリがない作業快感があって、ほぼ半日費やしていたら、輪郭部のエッジがほとんど無い、柔らかな感じの風見魚に仕上がってしまいました。
【配色設定と考察】 2021年02月09日
 配色は今回、特に悩んだところです。後期型はカラーページでの登場はなく、単行本新装版の表紙等でも新たに描き下ろされることはなかったのですね。作中から辛うじて解ることは、かなり木目の風合いが強いこと。そこで思い出されたのが、2001年カレンダーに特典として付いてきた『卓上風見魚』と、その添付文です。以下抜粋すると…
 同封されている付属品は、原作中に登場する“風見魚”の卓上タイプです。これは、作品の主人公・アルファが木を削って手作りしたという想定のもとに設計したものです。材質も、樹脂や軽金属などではなく、木・ネジ・接着剤を使用し、手作り感を重視いたしました。(以下略)
 …とあります。これは、講談社アフタヌーン編集部の公式見解(!?)文でもありますので、↓
【彩色選定】 2021年02月09日
 →この公式文の設定を、最大の参考資料とさせていただきました。また、考察の要素にこれを加えるのには賛否の分れるところですが、小説版の『ヨコハマ買い出し紀行』では、初代の風見魚はオーナーが作ったことになっており、後期型の風見魚は紛れもなくアルファ自身が作ったであろうことから、このような作風の違いに至るのではとも考えたのです。
 というわけで、本体ベースは素材の木目と色合いをそのまま生かし、模様は茶色系を主体に紫系を混色させたカラーで描くことに決定しました。
【色付け・本体部完成】 2021年02月16日
 つや消しクリアのラッカーをサーフェイサー代わりにスプレーし、木地の繊維孔を塞いで下地処理の完了。これで水溶性塗料の滲みや染み出しを防げます。
 使用絵具は前回に続き、ターナーのアクリルガッシュ。滑らかな塗り心地なのに、不透明でムラのない均一の濃度に仕上がります。まさに、「絵の具のくいつきがいいってことだよね 上等!」(by子海石)という感じ。ホント一発勝負なので、怖くもあるんですけどね。
 バーントシェナーにレッドバイオレットを少量混ぜて、卓上風見魚の紫掛かった茶色のような独特の色合いに近付けて塗ってみたのですが、乾いてみたら、ほぼほぼバーントシェナーのままでした。でもまぁ、味と言えば味ですよ。(←前回と同じコト言ってる。)
【全体完成】 2021年02月17日
 各部パーツを取り付けて、ついに後期型風見魚の完成です!
 今回の風見魚は木目基調ということで、プロペラ部もバルサと同系色で塗装しました。
 プロペラキャップとネジ部を隠すシャフトカバーは、なんとコーキング充填用チューブ先端の取り替えノズルで代用しています。プロペラキャップって、マトモに買うとスゴくお高いんですよ。それが100円程度の部品で済んだのですから、かなりのコストカットとなりました。ただ、まぁいろいろと試行錯誤を重ねてますので、結局は総額3000円くらいかかってしまったのですけどね。
【西の岬の空へ!】 2021年03月23日
 トップページの扉写真に使用する構図は、第135話の6コマ目のような青空一色の背景にすると決めていました。これだと自宅近辺でも充分に撮影は可能だったのですが、ここはゼッタイに手抜きをせずに、三浦半島の空気感を写真に映し込みたかったのです。自己満足なのでしょうが、これは譲れませんでした。なので緊急事態宣言の解除を待って、三浦にGO!です。
 小網代の森は残念ながら立入規制が解けずに入れませんでしたが、黒崎原(左写真)・瓜山・江奈・大畑崎・剱崎とまわって、風見魚に三浦の風をたっぷりと浴びせてきました。
 ちなみに、扉写真を撮影した場所は瓜山です。藤ヶ崎へと続く、今も変わらぬ未舗装路の終端分岐点の位置。たぶん、青空だけで何処の場所やら分からないでしょうが・・・。
【風見魚、剱崎の空に散る!?】 2021年03月23日
 旅の最後に訪れた場所は、剱崎。ここで風見魚のプロペラ動作実験を行ないました。
 あ、ここで「止せばいいのに・・・」と思ったアナタ、正解です。最初は長閑にクルクルと回っていた風見魚が、剱崎名物(!?)の強風で、まるでモーターを搭載しているかのような駆動音と共に、とんでもない回転力を生み出してしまったのです。「ち、ちょっ!・・・これ、どうすんの!?」
 手で止めれば確実に指を持ってかれるし、棒などではプロペラが破損してしまいます。そうこうしているうちに支柱の台座が風圧に耐えられなくなり、本体が岬の蒼空に吹き飛ぶことに・・・・!幸い柔らかい草地へと落下し、大した破損もなく事無きを得ましたが、人的被害もなくて本当に良かったです。ソーシャルディスタンスって、ホントに大事。(←そういう事じゃない!)