相続税

相続の手順

相続税
1.相続人の特定
 亡くなった人(被相続人)の誕生してから亡くなるまでの生涯の戸籍謄本(閉鎖謄本・原戸籍や改製原戸籍などを含む)や、相続人全員の誕生から現在までの総ての戸籍謄本、住民票や戸籍の附票を集めて法定相続人を証明します。
2.財産や債務等の特定
 亡くなった人の所有していた財産と負っていた債務の総てをリストアップします。預貯金や有価証券等の金融資産、土地や建物等の不動産、会員権や自家用車など、相続人が相続すべき財産や負うべき債務を明らかにします。
 預貯金や有価証券については金融機関が発行する相続開始日現在の残高証明書、不動産については毎年の固定資産税の課税通知書などで簡単に明らかになります。クレジットカードの支払明細や銀行借入金の返済予定表、医療機関への支払の領収証、住民税の課税通知書も債務の確認にはとても有効です。
3.遺言書の確認
 遺産の分割に際しては遺言書があればこの存在を確認し、その内容を相続人の全員で共有し尊重する姿勢が必要となります。ただし民主的には相続人全員の意志の合意方が優先することになります。裁判所に検認されている遺言書ではそれだけで不動産登記も出来ます。法定相続分の登記なども当然に出来ます。しかし遺産分割の行為の結果でないと、相続自体がまとまらないことの火種になってしまいそうです。全員の合意無しの行動はもめ事になります。
4.遺産の分割
 相続人全員の合意の基に、亡くなった人の財産と債務を、相続人の誰が引き継ぐかを決めてゆきます。そしてその内容を書類(遺産分割協議書)にします。言葉にすると簡単ですが、この作業が一番問題となり時間のかかるる作業ではないでしょうか。
4-2.分割の方法
 分割の方法としては、単純に所有権を決めるのではなく、持ち分を定めて共有で相続する方法や遺産を換金して金銭で分ける方法、遺産とは別に相続人間で代償金をやり取りする方法なども考えられます。
4-3.分割の価値感
 現在の民法では、配偶者を特別に扱いし、子供達は一律平等に扱うことになっています。ところが旧民法では「家督相続」という考え方になっていました。年配者の価値観は「家制度」や「長子の家督相続」で、現実の相続人は均等に分割する「平等」意識があり、相続人間でもギャップが生じる場合があります。
4-4.分割のトラブル
 一般論ではありますが、相続人間での話し合いがもたれ、これで合意できなければ頼りになりそうな親族の仲介なども考えられます。しかしながら残念なことに法律的な解決を求めて裁判になったりする事案なども見受けられます。
 なお、私が経験した事例の中には、相続人の1人が弁護士を依頼して他の複数の相続人との話し合いを持った結果、円満に解決できたというものもあります。
5.相続税の申告
 税金の申告期限と納税や延納・物納の申請期限は、故人の亡くなった日から10ヶ月です。計算はその申告期限の遺産の分割状態によって決まります。分割されていれば各相続人の取得財産と負担債務、それに対応する税額が決まってきます。分割がなされていないと、なされていない分については法定相続分により、取得財産や負担債務からそれに応じた納税という申告をすることになります。

相続とは

 人は皆いつかは死を迎えるものですが、その死を迎えた人が持っていたモノが血縁者や次の世代などに引き継がれることを「相続」と言います。法律上の考え方ですが、モノには所有者がいて、その所有者が亡くなったら、モノには新しい所有者が必要になります。死者は所有者にはなり得ないからです。

相続人

 遺産相続において、亡くなった人(被相続人)が遺した相続財産を受け継ぐことになる人のことを相続人といいます。誰が相続人となるかが民法で決められていますので、法律で定められている相続人のことを「法定相続人」と呼びます。
 ただし相続税を計算する上では両者の定義が若干違います。法定相続人とは、相続の放棄があった場合にはその放棄がなかった場合における相続人で、相続人とは、相続を放棄した者及び相続権を失った者を除いた者となっています。

 法定相続人となる人は相続開始の時に生存している、配偶者、子、父母や祖父母等(直系尊属)、兄弟姉妹です。まず配偶者は常に相続人になり、その他の人には順位が付けられており、その順位に該当する者が無い場合に高順位の人が相続人となります。子が第1順位、直系尊属が第2順位、兄弟姉妹が第3順位です。
 ただし相続人となる人が相続開始の時に死亡・相続欠格・廃除によって相続権を失っていた場合には、その法定相続人の直系卑属たる子が代襲相続人となります。代襲相続人は本来相続人であった人に代わって相続を受ける相続人となります。直系卑属は何代でも代襲が可能ですが、兄弟姉妹の場合は、おい・めいまでとなります。
 なお、相続開始の時に胎児であっても出生して生を受けた場合には相続人として扱われます。
 また子には養子や婚外子(非嫡出子)も含まれます。なお特別養子縁組をしている場合は養親だけの相続となります。非嫡出子については、法定相続分について以前は嫡出子の相続分の半分とされていましたが改正されて現在ではその区別はありません。
法定相続人

法定相続分

 遺産相続は相続人の全員が合意して遺産を分割しまた債務を引き受けます。
あくまで相続人の合意で自由に分けるのですが、民法では一応の目安として相続分を規定しています。

相続放棄と限定承認

 相続人は、遺産として財産と債務を包括的に承継します。つまりプラスの財産だけでなくマイナスの財産(負債)も引き継ぐことになります。そこで相続人には次の三つの対応のうちいずれかを選ぶことになります。

  1. 単純承認 残された財産と債務の総てを引き継ぐ
  2. 相続放棄 残された財産と債務の一切を引き継がない
  3. 限定承認 残された財産と債務の総てが不明なので相続によって得る財産を限度に債務を引き継ぐ

 普通一般的には何の意思表示もせずに単純承認となりますが、債務が多い場合には放棄したり限定承認したりすることもあります。相続放棄は放棄したい人のみが手続を行えばよいのですが、限定承認の場合には相続人全員で手続きをすることになります。そして放棄も限定承認もその手続きをする期限が、亡くなったことを知った日から3ヶ月以内に、亡くなった人の住所地の裁判所に申し立てしなければなりません。

分割

 所有者が亡くなった瞬間には、その所有物は相続人等皆の共有のモノとなりますが、その共有状態から相続人等の各々個々人にそれぞれの所有物が特定されて、所有権等が移転することを「分割」といいます。財産というプラスばかりではなく債務というマイナス財産も同様です。
 この「分割」には、相続人等の全員の合意が必要となります。正式な「遺言書」があれば基本的にはその指定に従うことになるのでしよう。故人の遺志が尊重されるわけですが、これも相続人等の全員の合意があれば故人ではなく相続人等の意向が通ることもあります。まずは相続人全員が「合意」する必要があります。

遺産分割協議書

 その合意内容を文章にしたものが「遺産分割協議書」と呼ばれます。その効力が有効になるためには、相続人全員の実印と印鑑証明の添付が必要となります。分割には期限がありませんので、分割自体が次の世代に引き継がれてしまうことさえあります。
 土地や建物等の不動産は司法書士に依頼して名義変更を登記することになります。預貯金や有価証券等の金融資産は金融機関の窓口に遺産分割協議書を持参して、その内容を所定の書式に記載して申し出なければ移転できません。全員の合意が確認できないと相続人等の各々個々人の自由にはなりません。

相続税の概略

 相続税は、亡くなった人の財産がその相続人へ引き継がれるときにかかる税金です。相続税の計算は、亡くなった人の遺産総額から債務を控除した純財産に対して課税されます。ある相続人の課税額は、相続によって引き継いだ純財産に対して計算されます。その計算は、亡くなった人の純財産に対して相続税の総額を計算した後に、引き継いだ財産分だけの税額を負担するように計算されます。つまり相続人全員の相続税の負担を合計した金額が相続税の総額となります。
 相続税の総額の計算は、亡くなった人の純財産を法定相続分で1人1人の相続人が取得した場合の金額に税率を乗じて計算した金額を、総ての相続人に対して計算し、その総合計金額として計算します。この計算をする場合には、まず基礎控除額を控除してから計算しますが、基礎控除額は亡くなった人の純財産から控除して計算を始めます。
 このように、相続税の計算の仕組みは、相続人等の各々個々人でバラバラに計算するのではなく、遺産の総額に対して税額の総額を計算し、これを相続人等の各々個々人に振り分けて計算します。従って亡くなった人の遺産総額にによって計算されるわけですから、同じ金額を手にした人でも税負担がまったく異なります。1億円相続した人でも、その遺産や相続の状況によっては、税金がかからずに無税の人もいれば、その40%の4000万円を納税することになる人もいるのです。
 また、相続税は分割がなされていなくても、また一部分割でも課税されてしまいます。分割が総て終わっていれば相続人等の各々個々人は実際の相続財産の価値に応じて税が課されます。しかし分割が終わっていなければ法定相続分に応じて課税されることになります。

相続税

相続税の計算

 ※3000万円に、法定相続人1人当たり600万円を計算して加算した総合計金額

 ※純財産の取得割合=亡くなった人の純財産に占めるその相続人の相続した純財産の割合

相続税の加算

 財産を取得した相続税の納税者が、配偶者を除き、亡くなった人の一親等の血族でない場合には、その計算された相続税額は、20%増額されます。
 なお、この規定は、代襲している相続人には適用されず、孫養子には適用されます。

財産の評価

 相続税が課される財産の評価は、概ね以下のようになります。

相続税の非課税財産

相続税の税率(速算表)

 法定相続分に応ずる課税価格 税率(%) 控除額(万円)
 1000万円以下 10
 3000万円以下 15 50
 5000万円以下 20 200
 1億円以下 30 700
 2億円以下 40 1700
 3億円以下 45 2700
 6億円以下 50 4200
 6億円超 55 7200

 ※法定相続人の1人の法定相続分に応ずる課税価格が1億円とすると、
  1億円 × 30% - 700万円 = 2300万円 となります。
  法定相続人全員分の合計額が相続税の総額になります。

一般化してる特例

小規模宅地等の評価減の特例
課税価格から控除できる金額の特例に、小規模宅地等の評価減の特例の規定があります。
これは、亡くなった人の自宅に関する土地の評価金額から、原則として、330㎡まで、評価額の8割の金額について課税しない計算をします。貸家の敷地などにつては200㎡まで5割の金額について課税しないことになっています。遺産の分割が終わっている場合の相続税の申告の際に適用することが出来ます。
生命保険金等の非課税
相続人が生命保険金や死亡退職金を受け取った場合には、相続税の対象になるのですが、法定相続人1人当たり500万円を計算した金額分は非課税として課税価格から除外されます。
配偶者の税額軽減
配偶者が相続人である場合には税額軽減の制度があります。これは、税額の計算を総て済ませてから、純財産の取得割合が50%までか、配偶者の課税価格の1億6000万円までの計算された税額を無くしてしまう特例です。遺産の分割が終わっている場合の相続税の申告の際に適用することが出来ます。

その他の特例(控除)

未成年者控除
法定相続人が20歳未満である場合には、その20歳に達するまでの年数に10万円を乗じた金額が控除されます。控除しきれない金額はその扶養親族の相続税額からも控除できます。
 ただし過去に未成年者控除を受けたことがある場合には、その未成年者控除の総額は、当初の控除額以内に制限されており、今回の控除額はその範囲内となります。
障害者控除
法定相続人が85歳未満の障害者である場合には、その85歳に達するまでの年数に10万円を乗じた金額が控除されます。控除しきれない金額はその扶養親族の相続税額からも控除できます。
また、その者が特別障害者である場合には、その控除額は2倍となります。
ただし過去に障害者控除を受けたことがある場合には、その障害者控除の総額は、当初の控除額以内に制限されており、今回の控除額はその範囲内となります。
相次相続控除
相続人が10年以内に2回以上の相続をした場合には、当初負担した相続税額が1年に10%減ったものとした金額を、今回の相続税額から控除します。なお、当初の相続財産と今回の相続財産の金額的な推移は按分計算で調整されます。
外国税額控除
日本国外にある財産を取得した場合に、その当事国でも相続税に相当する税が課されるときには、その外国税額を日本の相続税額から控除します。ただし日本の相続税が課される割合の範囲内ということになります。

特殊な相続税の計算

生前贈与加算
亡くなった日から3年以内に贈与を受けていた相続人については、その贈与を受けた財産は相続税の計算に含めて計算し、贈与税の支払いを相続税の前払として課税する制度です。つまり亡くなる前の3年間は、贈与をしても贈与税ではなく相続税として課税されるという仕組みです。ただし課税価格だけは贈与時の評価のままです。
相続時精算課税制度
 65歳以上の人から20歳以上で相続人になるであろう人への贈与を、届け出でを前提に、届け出以降すべての贈与について、その贈与を全て仮計算として、全て相続税としての課税関係にしてしまう制度です。相続前の財産移転は贈与税として計算します。この場合の贈与税の基礎控除は、この制度の関係が成立するごとに2500万円を満額とし、税率は一律20%となります。この場合も課税価格だけは贈与時のままです。
農地等の相続税の納税猶予、事業継承税制
農業に関連する場合や特殊な事業継承の法律に関わる場合には様々な評価減、納税の猶予やそれに伴う減免措置もあります。ただしそれぞれに各種の制限が伴います。その制限は結構縛りがキツいという印象でとても専門的です。

相続時精算課税制度について

 相続時精算課税制度とは、贈与税の申告を、将来発生する相続の相続税の前段階の申告として扱う制度です。いわば贈与税の申告を相続税の予定納税のごとく扱います。
 贈与の申告をする場合には、相続時精算課税制度か従来からある贈与税の普通の課税方法である暦年課税制度かの選択ができるようになっています。
しかし一度相続時精算課税制度を選択すると、その人からの贈与税の申告について暦年課税制度には戻れませんので注意が必要です。
 相続時精算課税制度は、相続時に精算するだけなので、この制度自体が節税対策になるわけではありません。
逆にこの制度を選択して自らの税負担を重くしてしまうこともあるからです。この制度を利用して個別に有利になるように計画をしなければなりません。

贈与を受ける人すべてが相続時精算課税制度を選択できるわけではなく適用対象者が定められています。
65歳以上の親から20歳以上の子供や孫などの推定相続人への贈与です。
年齢は贈与年の1月1日現在で判断します。なお住宅資金贈与の場合は、親の年齢は不問となります。

相続時精算課税制度を利用して可能なメリット

相続税精算課税制度を利用する場合のデメリット

相続税精算課税制度の概略図

相続税の確定申告と納税

相続財産の申請期限と納税期限は、相続開始日から10ヶ月以内です。

延納

 納税については金銭一時納付以外にも、金銭一時納付が困難な場合には分割納付という制度があります。20年程度の年賦の分割納付が可能です。延納には一時の金銭納付が困難である場合という制限があり、手元資金を潤沢にした上での延納は出来ない仕組みになっています。また、利息の支払いが必要になり、これを利子税といいます。

物納

 国債や宅地等で境界確定が出来ているものなど、換金が比較的安易に出来そうな財産については、相続した財産そのものを国に引き渡して納税するという物納という制度があります。相続人が自ら相続財産を換金して金銭で納付するのでは無く実物財産での納税も可能ということです。

相続税の申告は自分で出来るのでしょうか?

 相続税の申告を税理士に依頼せず、自分で行うことは可能でしょうか?
所得税など各種税金は自分で申告して自分で払うことが前提となっています。(申告納税制度)
 一般の人にできないことはありませんが、毎年なされる所得税の申告とは違い、一生に一度あるかどうかの内容で毎年の繰り返しではありませんから、多くの人が税理士に依頼します。相続税の申告書を一般の人が手書きで作成することはとても苦労すると思います。税理士でも相続税の申告書の作成はパソコンで専用のソフトウェアを使っているのですから。
 まあ、相続税に限らず、税理士の仕事の大半は、パソコンに向かい税務ソフトウェアの入力・操作となりつつありますが・・・それだけ総ての税法が複雑になっているという事実を証明していることでもあります。

内容が単純であれば自分で相続手続や相続税の申告も可能かも知れません。
 一般的には税理士に相続税の申告を依頼しますが、自分で申告する人がいるのも確かです。
以下に当てはまる人は、自分で申告が出来る可能性が高いと思います。

 各金融機関に金融資産の残高証明書を発行して貰い、法定相続人を特定できる戸籍謄本を入手する、そして故人が日常生活に使っていた預金通帳や葬式費用などの請求書などを持って税務署の相談窓口で指導を受けながら申告書を作成するというのも1つの方法です。多分一回で済むことは無いでしょう。何回か必要です。添付書類もいろいろとありますし正しく出来上がった書類に相続人全員の押印も必要になってきます。
 その添付書類の中には遺産分割協議書もあります。
これは金融機関ごとに専用の書式がありますから分割を正式に行えばその控えを金融機関ごとに複数集めれば代用できるでしょう。このときに各金融機関に法定相続人の特定のための戸籍謄本を提示しなければなりませんが、これは提出せずに原本を確認してコピーをとってもらい、使い回ししましょう。税務署には原本を提出しなければなりませんが。

 なお、上手く書類を作成できて提出した後に、その書類の内容について税務署から問い合わせがあるかも知れませんが、これにも対処する心の準備が必要です。亡くなった日から10ヶ月以内が申告期限かですが、書類が提出されてから一年程度すると調査の可能性があります。調査は内容確認ですが、それ以前に軽微な形式的な間違いに関する問い合わせやお尋ねなどがあるかも知れません。

 相続税の申告を税理士に依頼せずに自分で行うことはできるのか?という質問に対しては、自分でできる人もいるけれど、ある程度の覚悟が必要になる、どちらかというと止めておいた方が無難ということになります。相続税の申告を税理士に依頼すると報酬も支払わなければならなくなりますが、相続税を余計に支払うリスク、有利になる特例等の適用洩れなどの可能性があり、また事後の税務調査への対応等などを受け入れる心の準備が必要になってきます。

 ちなみに、普通の相続税の申告に際しては、遺産に自宅などの不動産があり、土地や建物の評価をしなければなりません。またその不動産については申告の計算に当たって小規模宅地等の評価減という特例が適用されることがあります。これは税額がゼロでも申告書の提出が必要ですので、納税者に有利になるような特例計算の適用は一般の人では少し敷居が高いと思います。特例計算や遺産の範囲を特定するためには税理士の知恵が必要になってくる可能性がかなり高いと思われます。

相続税額のシュミレーション

夫死亡、遺族が妻と子供3人の場合

遺産総額 法定相続分で分割した場合 妻が全て相続した場合 子供が全て相続した場合
合計 子供 合計 子供 合計 子供
5400万円 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1億円 262 0 262 0 0 525 0 525
2億円 1217 0 1217 487 487 0 2435 0 2435
3億円 2540 0 2540 2371 2371 0 5080 0 5080
4億円 4154 0 4154 4154 4154 0 8304 0 8304
5億円 5962 0 5962 5962 5962 0 11924 0 11924

※ 単位:万円
※ 遺産総額5400万円以下は非課税

夫死亡、遺族が妻と子供2人の場合

遺産総額 法定相続分で分割した場合 妻が全て相続した場合 子供が全て相続した場合
合計 子供 合計 子供 合計 子供
4800万円 0 0 0 0 0 0 0 0
1億円 315 0 315 0 0 630 0 630
2億円 1350 0 1350 540 540 0 2700 0 2700
3億円 2860 0 2860 2670 2670 0 5720 0 5720
4億円 4610 0 4610 4610 4610 0 9220 0 9220
5億円 6550 0 6550 6550 6550 0 13110 0 13110

※ 単位:万円
※ 遺産総額4800万円以下は非課税

夫死亡、遺族が妻と子供1人の場合

遺産総額 法定相続分で分割した場合 妻が全て相続した場合 子供が全て相続した場合
合計 子供 合計 子供 合計 子供
4200万円 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1億円 385 0 385 0 0 0 770 0 770
2億円 1670 0 1670 668 668 0 3340 0 3340
3億円 3460 0 3460 3230 3230 0 6920 0 6920
4億円 5460 0 5460 5460 5460 0 10430 0 10430
5億円 7605 0 7605 7605 7605 0 15210 0 15210

※ 単位:万円
※ 遺産総額4200万円以下は非課税

相続税対策

 相続税の計算の仕組みから、相続税の負担を少なくする、いわゆる相続税対策の方法を、計算の技術的なこととして簡単にご説明しましょう。現状の法律と財産や家族の状態での相続税額を把握し、そして将来の法律や家族の生活が変化してゆくという不確実性を前提に、対策とその効果を考えなければなりません。実際の価値はあるけれども、相続税の計算では、実際の価値よりも低く評価するものを保有しておくことが節税に繋がります。ただし、現在の価値と将来の価値は一致していません。相場変動やインフレ・デフレということがありますからそれを覚悟しなければなりません。

1.土地の評価額は有利
時価5000万円の土地で相続税評価が3500万円なら、その差額の1500万円は「課税から逃れられた」ということになります。課税される上での評価額から考えれば、預貯金等を多額に手元に置くよりは土地等で相続させる方が有利ということです。相続人が実際に相続するための処分可能性も考えておかなければなりませんが・・・
2.借金も利用する
借金はその額面のままのマイナスの財産です。ですから銀行借入によって調達した資金を元に、実際の価値はあるけれども、相続税の計算では実際の価値よりも低く評価するものを購入する、これにより計算上の遺産を減額できます。上記の土地を借金により新たに購入すれば「1500万円の遺産を減らすことが出来た」ということになります。相続人が引き継ぐことになる債務の返済原資も準備する必要が出てきますが・・・
3.自宅の土地等は評価減になる
自宅の土地の330㎡までは8割減額(2割評価)で、また、賃貸住宅の敷地などは200㎡まで5割減(半値評価)となる計算制度を利用して、単価が低く広い土地を保有するよりは単価が高くて狭い土地の保有をする方が減額される金額自体が大きくはなります。極端なことをいえば、全財産のほとんどで100坪の土地の自宅に住めば8割の財産が合法的に課税対象から外れます・・・
4.建物の評価額は低い
建物の建築価格と評価金額には大きな差があります。これは私の経験則ですが、施主が建設会社に発注する建築価格が5000万円だとしたら、相続税の評価額となる固定資産税の価格は、木造であればその3割、コンクリート造りで4割程度となります。つまりその差額が「減額」といえます。建物の保有についても、預貯金で持っているよりは、評価額の計算上から有利になります。借金での建築も同様の意味合いになります。ただし建築価格での転売はまず出来ません・・・
5.贈与をして相続財産を減らす
永年にわたって、低い税率の適用範囲内で、贈与をして遺産を減らす、生前贈与という手段もあります。贈与税の仕組み等については別に説明します。
6.基礎控除額や非課税金額を増額する
養子縁組制度を活用して法定相続人の数を増やすことも一方ではあります。一親等の血族でない場合には課税が少し高率に計算されるのですが、これは比較の問題で結果として総負担額で安くなる可能性があります。何人でも養子に出来ますが相続税の計算に当たっては、原則1人増えるだけです。生命保険金等の非課税枠は、500万円に法定相続人の数を乗じた金額です。
 なお、相続での遺産分割という場面で養子が財産を取得するということは、実子の相続人間のバランスを崩してしまう可能性があるということを充分に理解しておかなければなりません。
7.法人所有の財産とする
遺産を法人所有にして、実際の相続財産を、その法人の株式にしてしまうという方法も考えられます。不動産等保有法人を利用するということです。要は個人で直接に財産を所有するのではなく、個人が法人を所有して、その法人が財産を所有している(間接所有)仕組みをつくるのです。
 株式の相続税評価額には、低額に計算する仕組みが隠されています。含み益の半分程度を解散時の法人税として控除してしまう制度を利用します。

ただしこの方法には下記のような注意点があります。
①仮にこの法人を「不動産等保有法人」とすると、元々の不動産保有者である個人は、売却による税負担が先に生じる可能性があります。将来の相続税のために今の所得税を払っておくということの善し悪しもあります。

②相続人が相続した不動産保有法人の株式からは、役員報酬・配当などを現金で受け取ることになり、実際には元の不動産は自由に利用しづらくなります。処分に制限が掛かるという意味合いで、自分が利用しづらいという問題が生じてきます。

③相続人が相続する株式は、株数で分割され、株主になり、相続人は皆いつまで経っても共同して協力し合いながらその法人の運営をしてゆかなければならなくなります。これを解消するためには、一端相続した株式を相続人間で売買することになり、ではその金額を幾らにするのかという難しい問題も生じてしまいます。子供の代は善しとしても、果たして孫の代でも可能でしょうか、関係者が増えてきた場合にも維持出来るのでしょうか?

④このシステムを利用しようとすると、いつでも専門家に依頼して手数料を払い続けることになります。会社の設立は新たに法人の運営をせざるを得無くなり、帳簿や決算書・議事録の作成、法人税の申告、会社法の制約などが考えられるからです。
 相続人の皆が仲良く、会社の運営に協力できる関係で、維持コストの負担をいとわなければ、相続対策・相続税対策にはとても効果を発揮する可能性があります。ただ、ガラス細工のように繊細で微妙なバランスの上に成り立っているとも言えます。

相続対策

相続対策の目的

 さて、相続対策とは、誰が誰のためにすることになるのでしょうか?財産を持っている人が亡くなってその相続人が財産を取得し納税します。対策は被相続人が存命の内になされることですから、その時点では相続人は推定の相続人で確実ではありません。また財産を有する被相続人も亡くなるまでに財産を遣い果たして、現状維持していないかも知れません。そういった不確実なことを前提に、誰も何も揉めずに財産の移転が済むことが一番の目標になるのでしょう。
 相続対策とは、何もかもが確定してはいないが、きっとこうなるであろうという前提での行動です。現在と相続開始時の未来との状況が変わっている可能性も念頭において行動しなければなりません。また、対策をする財産の現在の持ち主と、その財産を引き継ぐであろう人との間の、価値観の擦り合わせや合意が必要となってきます。そして相続人は複数で全員の合意が必要となりますからいろいろと配慮しなければなりません。

相続するであろう財産のリスト

 まずはお持ちの財産の所在やら証書・証券、測量図や境界画定など、財産自体を確実に特定できるようにしておく事ではないでしょうか。それから近隣者との約束などはご本人でなければ解らないことだらけでしょうから済ませておくことも必要でしょう。亡くなった後から「こういう約束だから」と無理難題が相続人に降りかからないようにすべきです。

遺言

 遺言により後世の財産の行方について意思表示をしておくのも無駄な争いを避けるために考えておくべき事かも知れません。また、生前に相続人や周囲に意思表示しておくことも必要な場合があります。遺言書はあった方が良いとは思います。しかし絶対とまでは言えないのです。遺留分の問題もありますし、遺言書の無効だって主張することが出来てしまいます。遺留分は、法定相続分の半分を回復出来る取り戻しの権利ですが、行使するか否かはその相続人次第です。

遺留分の放棄

 なお、あらかじめの相続の放棄は出来ませんが、特異なケースで、相続人となるであろう人はその予想される相続に関して、あらかじめ遺留分について放棄することが出来ます。遺留分を侵害してしまいそうな場合にはあらかじめ放棄しておいてもらうことも出来るという意味です。各々の相続人に不満が無く実行されやすい遺言にするためには、その内容もともかく、相続人の間の良好な関係や良識ある態度が必要になってきます。

エンディングノート

 また、法律上の遺言ではなくとも、エンディング・ノートを作成しておくということも推奨されます。これは色々なタイプが書き込み式で市販されています。医療や介護、相続や財産管理、葬儀やお墓についての希望や、自分史などをまとめるものです。延命措置、財産や生命保険などのリスト、葬儀参列者や遺族へのメッセージなどが内容になります。遺族への遺言書作成の下書きのような利用も出来るでしょう。

生命保険契約

 なお、遺言書で特定の相続人への利益を厚くするということに抵抗がある方には生命保険契約を利用する方法もあります。生命保険金等は相続税の課税対象になるモノですが、法律上では第三者との契約であって、遺産分割の対象から外れるからです。

その家の相続

 その家庭によって価値観は様々ですが、実家を本家として残す、先祖伝来のものを出来る限り形を壊さずに次世代に引き継ぐという価観も否定できませんし、また、平等というのは現実問題としても簡単に行かない場合があります。ただし、いくら相続人が困らないようにと言っても、生前に、ご本人が健在な内に、周囲が言い立てるのも如何なモノかと思われます。ご本人の「人生の計画」というのも当然にありますし、遺産を残さずに使い切ってしまうという選択肢だってあります。色々なケースがあってしかるべきなのではないでしょうか。

争続!?

 遺産分割の話し合いが揉め出すと、相続人の間での昔話が山のように出てきます。学校や教育の費用負担が違ったり留学の費用なども取り上げられることもあります。それから、自動車を買ってもらったとか結婚式の費用を親に出してもらったとか、投資の損失の穴埋めをしてもらったなどなどです。数え上げたらきりがなくなってしまいそうです。
 特に跡継ぎを決めて本家を残したいという希望をお持ちの方は、それを皆に納得させておかないと、全部換金して平等に分けようなどという主張が出てきて空中分解してしまいます。ある相続人が養子縁組みを他の相続人に黙ってしてしまったという場合なども反発を買う事例です。なにしろ一家の主が亡くなって今まで効いていた押さえが無くなるのですから。

 人は立場が変わると見方も当然に変わるものです。実家で親と同居して介護などをしていた相続人がいる場合に、本人は親のために尽くしたのだから相続にあたって少しぐらい考慮して貰えるだろうと思うのでしょうし、他の相続人は、大人になっても自立せずに親の経済力に頼って生活し遺産を減らしてしまったなどと真反対に見ることだってあるものです。

 相続税の申告には期限がありますが、相続の遺産分割の期限はありません。誰か1人でも納得しないでいると、次の世代にまで行ってしまう可能性さえあるのです。いろいろな感情やら経済的な問題もありますが、先代から頂ける財産があるというプラス思考で謙虚な立場を忘れないで頂きたいものです。揉めてしまって得をする相続人は居ないと思って頂いた方が良いのではないでしょうか。

調停や裁判

 一般論ではありますが、相続人間での話し合いがもたれ、これで合意できなければ頼りになりそうな親族の仲介なども考えられます。しかしながら残念なことに法律的な解決を求めて弁護士を依頼する事案なども見受けられます。

 弁護士に関しては、原則として1人の相続人に1人の弁護士がつくことになります。弁護士は依頼人の利益を護らなければならないので、利害が対立する他の相続人の権利主張は出来ません。つまり相続人間の仲裁をするような仕事にはならなくなります。各相続人を代理する弁護士間での協議となるはずです。
 次の段階は裁判所の調停にかかることになるでしょう。弁護士にしろ調停委員にしろ、現行の民法の法定相続分を基本にしますから、特定の相続人を跡継ぎとして、本家を残すというような解決策にはなりづらくなってきます。法定相続分を基礎として生前の受益の多寡を斟酌するということになります。
 調停が不調に終わると裁判になり、和解が持ちかけられたりします。和解が出来ないと裁判での判決まで至ります。そしてこの判決にも承伏できない場合には上告して、上級の裁判所にまで持ち込まれることになります。まったく先が見えなくなってきます。

 私の経験での一般論で言えば、現在から過去に遡って、相続人が皆、できるだけ平等になるように、等分に分割されるように判定されます。判定する人の寄る辺は現行の民法だからです。そしてその平等というのは、子供時代からこれまで親にしてもらった全てを含めて考えるので、やっかいな事柄が含まれてしまうのです。

以下に国税庁等が作成した相続税に関連する説明とデータを添付しておきます。

相続税のあらまし

相続税の仕組

申告要否の簡易判定シート

税務代理権限証書