贈与税

  贈与税とは相続税の補完税です。相続税法の中に贈与税の項目があり、相続税の計算にも 関連します。相続税の課税を免れるなら生前に「贈与」してしまうのが手っ取り早いからです。 つまり、相続税の代替え税なのです。
 贈与という行為は、個人と個人との間で、「あげます」「もらいます」の合意という意味です。 親族間の生活費や香典等の社会的儀礼には課税されません。また、基礎控除額が年間で110 万円ありますので、身内の相続の前渡しという意味合い以外には「贈与税」の課税はまず見かけ ないのではないでしょうか。
 贈与税はモノをもらった人単位で、その年1月1日から12月31日までの年単位で、もらった 金額の合計額に課税されます。あくまでももらった人単位で、誰からもらったの誰かが単位で はありません。
 もらったモノ評価額は相続税評価額です。その年にもらったモノの金額の合計額から 基礎控除額を引いて税率を乗じて計算します。申告期限は翌年の3月15日となります。

相続税との関係

生前贈与加算

 亡くなった日から3年以内に贈与を受けていた相続人については、相続税の計算に含めて 計算し、贈与税の支払いを相続税の前払として課税する制度。つまり亡くなる前の3年間は、 贈与をしても贈与税ではなく相続税として課税されてしまうという規定です。ただし課税価格 だけは贈与時の評価のままです。

相続時精算課税

  65歳以上の人から20歳以上で相続人になるであろう人への贈与を、届け出でを前提に、 届け出以降すべての贈与について、その贈与を全て仮計算として、全て相続税としての課税 関係にしてしまう制度です。基礎控除は、この制度の関係が成立するごとに2500万円を 満額とし、税率は一律20%となります。この場合も課税価格だけは贈与時のままです。

贈与税の負担

 贈与税の税率は、もらった人単位で、年間110万円で、税率は次の通りです。もし年間 120万円の贈与を受けた場合には、110万円の基礎控除額がありますから、 120万円-110万円=10万円、10万円×10%=1万円となります。

課税価格(万円) 税率(%) 控除額(万円)
200以下 10
300以下 15 10
400以下  20 25
600以下 30 65
1000以下 40 125
1500以下 45 175
3000以下 50 250
4500以下 55 400
4500以上 55 400

特別税率(平成27年より)

課税価格(万円) 税率(%) 控除額(万円)
200以下 10
300以下 15 10
400以下  15 10
600以下 20 30
1000以下 30 90
1500超 40 190
3000以下 45 265
4500以下 50 415
4500超 55 640

※ 20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合)

贈与税の特例

配偶者控除

婚姻期間が20年以上である夫婦間の居住用不動産等の贈与については、課税価格から2000万円の特別控除をする制度です。生涯1度限りとなります。
申告書を提出しなければなりません。

住宅取得資金等の非課税

直系尊属から、20歳以上で所得税の合計所得金額が2000万円以下の人が、住宅取得資金等の贈与を受けた場合には、1000万円まで課税対象にしない制度です。総額で1000万円です。
申告書を提出しなければなりません。
 ※国税庁等が作成した住宅取得資金に関連する説明を添付しておきます。
  住宅取得資金

直系尊属からの教育資金の一括贈与

直系尊属から、30歳未満の者へ、教育資金を一括して、金融機関にその目的に合う信託等をした場合には、1500万円~800万円まで課税対象にしない制度です。
金融機関での手続になります。
 ※国税庁等が作成した教育資金に関連する説明を添付しておきます。
  教育資金

直系尊属からの結婚・子育資金の一括贈与

直系尊属から、20歳以上50歳未満の者へ、資金を一括して、金融機関にその目的に合う信託等をした場合には、1000万円まで課税対象にしない制度です。
金融機関での手続になります。
 ※国税庁等が作成した結婚・子育て資金に関連する説明を添付しておきます。
  結婚・子育て資金

贈与税を活用した相続・相続税対策

①毎年の贈与については、税率で10%の最低税率で考えれば、その最大金額で200万円と基礎控除額の110万円と合計した310万円という金額以下で行い、贈与税額で20万円以下の負担が無難でしょうか。総額の割合では6.5%の負担率です。

②総額の負担率で10%となる金額は、逆算すると470万円の贈与金額で、47万円の贈与税です。この負担率で何年間か継続して贈与がなされればかなりの金額の財産の移転が10%の税率でできることになります。

③相続開始時の分割に際して、相続人間で合意が上手く出来ない可能性がある場合には、相続税対策ではなく、相続の分割対策として、相続時精算課税を選択するのも一つの方法ではあります。

④相続時精算課税は、相続税の課税を免れるのではなく、仮の相続分割と納税という性格がある 制度です。相続税の対策として考える場合には、将来に価格が上昇するに違いないモノを低価格の 評価で固定してしまうのに有効です。また、収益性が高い財産の場合には、早くから移転させると、 相続財産を殖やさずに、次世代の収入を増やす効果となります。

贈与税の非課税

贈与税は、原則として贈与を受けたすべての財産に対してかかりますが、次に掲げる財産については贈与税がかからないことになっています。

法人からの贈与により取得した財産
贈与税は個人から財産の贈与を受けた場合にかかる税金ですから、法人からの贈与を受けた場合には贈与税ではなく所得税がかかります。
夫婦や親子、兄弟姉妹などの家族(民法上の扶養義がある者)から生活費に充てるために贈与を受けた財産で、通常必要と認められるもの
通常の日常生活に関する生活費はには贈与税は課税されません。ただし、生活費の名目で贈与を受けた場合であってもそれを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てている場合には贈与税がかかることになります。通常の日常生活に関する生活費は消費してしまうという前提に立っています。
個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞いなどで、社会通念上相当と認められるもの
これは通常の日常生活に関する生活費の延長線上のものと考えられます。
 ※ なお、生活費と日常の贈答等については、金額的には法律上規定されていません。通常必要と認められるもの、社会通念上相当と認められるものという表現がなされているだけですので、時代の価値観やその個人にとっての常識などによって判断されます。
 ※ 子供や孫に自動車を買い与えるというのは普通は贈与税の課税対象になります。また家などの不動産を買い与えても同様です。ですから車や不動産の名義を父母や祖父母とし使用者を子供や孫にして、使わせてあげている状態にすれば、所有権は移転しないので贈与税の課税はないものと考えられます。使用貸借となります。車の利用や家に住まわせているという経済的利益に課税するということは無いものと考えられています。
奨学金の支給を目的とする特定公益信託等から交付される金品で一定の要件に当てはまるもの
奨学金を受給される場合で貸与では無く返済を免除される場合などです。
贈与税の特例に関するもの
これは経済政策的なもので、お金を持っている高齢者はお金を遣わないことが一般に考えられているので、贈与税を課税せずに資金を移して、お金を遣わせて経済を刺激しようというものです。
① 直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち一定の要件を満たすもので、贈与税の課税価格に算入されなかったもの
② 直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち一定の要件を満たすもので、贈与税の課税価格に算入されなかったもの
③ 直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち一定の要件を満たすもので、贈与税の課税価格に算入されなかったもの
宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う一定の者が取得した財産で、その公益を目的とする事業に使われることが確実なもの
慈善活動等を行うモノの財源を確保させようというものです。
障害者の生活に対する配慮から規定されています。
① 地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある人又はその人を扶養する人が心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利
② 特定障害者扶養信託契約に基づく信託受益権
国内に居住する特定障害者が特定障害者扶養信託契約に基づいて信託受益権を贈与により取得した場合に、障害者非課税信託申告書を信託会社などを経由して特定障害者の納税地の所轄税務署長に提出することにより、信託受益権の価額のうち、特別障害者は6,000万円(特別障害者以外の者は3,000万円)までの金額に相当する部分
公職選挙法の適用を受ける選挙における公職の候補者が選挙運動に関し取得した金品その他の財産上の利益で、公職選挙法の規定による報告がなされたもの
これは政治家の政治活動資金集めに関するものです
相続や遺贈により財産を取得した人が、相続があった年に被相続人から贈与により取得した財産
これは相続税と贈与税の関係で、相続開始年に被相続人から贈与を受けた場合には、贈与税では無く相続税の課税にするという税の制度設計の境界ということです。

贈与税の非課税の規定ではありませんが贈与税の課税を免れる制度があります。

贈与税を免れる暦年課税による贈与税の非課税枠110万円
毎年110万円までは課税されません
贈与税の配偶者控除を利用した場合の非課税枠2000万円
配偶者から居住用の不動産等の贈与に関して最高2,000万円まで課税価格から控除されます。
配偶者控除の適用要件
①婚姻期間が20年以上である
②今までに配偶者控除を受けていない(同一夫婦間で1度だけ)
③対象となる財産は、居住用不動産か居住用不動産の取得資金のいずれか
④贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与された居住用不動産を居住の用に供し、その後も引き続き居住する見込である
⑤贈与税の申告(申告をしないとこの特例は適用出来ません)
相続時精算課税制度の適用を受ける場合の特別控除額(2,500万円まで)
ただしこれは贈与の時に贈与税が課税されないだけで将来発生する相続税の課税対象にはなりますので、便宜的に先延ばししているだけともいえます。