税理士の独り言

税理士が生命保険の募集代理店!?

 同業者の中には保険の募集代理店登録をして、生命保険や損害保険を売っていることがあります。税理士会やTKCという組織に関わると、顧客の紹介や代理店登録の依頼が来たりします。税法の適用にあっては、生命保険による特殊な扱いがあるケースがあって、そういう意味からは税理士が 保険を売りやすいのかもしれません。
 世間では生命保険を使った節税という言葉を聞くことがあります。私から言わせれば、それは節税ではなく税の繰り延べという場合が多い気がします。それも、単なる繰り延べではなく、保険会社に 手数料を払ってリスクを冒しての繰り延べなのです。
 確かに上手に計画すれば、法人の利益を平準化することが出来るかもしれません。また、相続を 考えたときに、特定の者を受取人として、遺贈するような効果もありますし、相続税の非課税枠を利用するなど一定の効果はあります。
 ただし、預金を預けるがごとく保険会社の信用度も考えなければなりません。そこに税理士が 関わって顧客に保険を勧め、代理店手数料等の報酬を得ていることが多いのです。節税という謳い 文句で、信頼関係のある顧客に保険を売り、ある意味保険会社の存続等のリスクを負わせ、自分の 手数料収入を得るために・・・私はどうも違和感を感じます。
 私の顧客にはとある保険会社の役員クラスの方がいました。また生命保険の営業マンを教育するための研修を業とする会社の関与先もありましたし、私自ら保険会社の営業マン向けの勉強会の講師を引き受けたこともありました。どうも保険会社の営業には税理士を絡め取りたいようです。
 弁護士は双方代理が禁じられています。当たり前と言えば当たり前で、争っている当事者と相手方の双方の代理や弁護など公平に出来るはずがないのです。係争をではないにしろ取引の両当事者からそれぞれ利潤を得る・・・顧客からは顧問料を貰い顧客の利益にかなう仕事をしているはずなのに片や保険を勧めて手数料を稼いでしまう・・・どうも違和感を感じます。
 ですので、私は、頼まれれば紹介はしますが、勿論アドバイスもしますが、代理店になって売る、それも税理士とその顧客という関係の中で商売をするということは避けています。税理士は顧客との関係の中で税理士としての立場でお付き合いすれば良いわけで、種類の異なったビジネスをしては専門家としての倫理に反するのだと理解しています。
 目の前の税負担を引き下げるために税法上合法である、そしてどんな保険の使い方にしても、基本は今現在の税負担を将来に引き延ばすだけであり、支払った金銭から保険会社の利潤と募集代理店の利潤は控除されて、その控除後の元本を投資して返して貰うわけです。
 全部か部分的かはありますが、支払時に経費で、戻ってきたときに利益です。投資というリスクをとり、保険会社が倒産しないというリスクもとり、利益の繰り延べです。この仕組みをきちんと理解しているのであれば良いのですが。そして本業で得た利益は保険料の支払いにより相殺されて節税となるのですが、部分的にしか経費にならない保険であれば資金繰りにもマイナスの影響が出てしまいます。

※生命保険の契約について

 ただし、どうせ保険に入るならこうすべきだという基本はあります。保険は保険で貯蓄ではないと考えられる掛け捨て保険は経費ですから法人で加入すべきですね。何かあったときのリスクに対して備える保障です。貯蓄となるような返戻金がある保険はもはや投資でしょうから個人で加入するべきでしょうね、基本線では。
 将来の年金を受け取る目的であれば、まずは公的なモノを第一義的に考えてその後に加入した方が良いものです。全額所得控除されます。
 この辺の基本的な仕組みの理解があると、顧客においそれと生命保険を勧めて小遣いを稼ごうなどという気にはなりません。また、仮に生命保険を顧客に売るとしてもこれだけの説明をきちんとした後で、かつ手数料を得ること等を明示してからでないと背信行為のような気がします。

税理士紹介業

 見ず知らずの営業マンから「顧客を紹介したいのですが如何でしょうか?」という変な電話が掛かってきます。税理士紹介業のようです。インターネット上での税理士紹介サイトに乗せませんかというお話もあります。すべて断っていました。
 他の業界から見たら税理士は商売が下手だから広告やら営業の代行をしてビジネスにしようと考えるのでしょうか。マッチングサイトというような意味合いからも、顧客を捜す税理士と、信頼して仕事を任せられる税理士を探す経営者が多くなったということなのでしょうか・・・
 私の一つ目の疑問は、紹介業者は何をもって依頼に見合う税理士を紹介するのでしょうか?その税理士を判断できる眼力が備わっているのでしょうか?だいたいその税理士を紹介できる根拠など無いのではないかと思えます。それとも出会いの場だけを提供しているのでしょうか・・・
 もう一つの疑問は、税理士を探している人は、そんな紹介根拠の希薄な業者に、税理士の紹介を本気で頼むのでしょうか?自分の身の回りに税理士はともかく、税理士を紹介してくれそうな仲間や親戚、取引先や金融機関は居ないのでしょうか?ビジネスをしている経営者が身の回りの情報網の中で税理士の1人も見つけられない・・・違和感があります。
 誰かを紹介するのであれば、双方をある程度知っていなければならないモノだと思います。また、紹介される場合でも、それ程良く知らない人を連れてくる紹介者とは付き合う価値があるのでしょうか?疑問です。
 周りに誰もいない、自分のネットワーク以外で探したいのであれば、名簿なり電話帳やらインターネットで検索でもして候補者のリスト位は作れるでしょうし、その中から何人かを面接してみれば良いのではないでしょうか・・・
 私の顧客は、私を知る紹介者が紹介してくれるケースがほとんどです。すでに付き合っている顧客、銀行、出入りの営業マン、親戚・友人・・・。もちろん何らかのリストからたまたま私を見つけて連絡してきた言わば通りすがりのような方もいらっしゃるにはいらっしゃいます。
 私の仕事はある意味技術的な専門職ではありますが、価値観や個性、ひいては人間性やら相性が重要であることが怏々としてあります。そこまで見越して紹介してくれる人がいるので安心して早々にお付き合いが出来るのだと思います。まあ、それは理想だとか、だから商売が下手だと言われてしまえばそれまでなのですが・・・
 通りすがりでも縁ですからお付き合いさせて頂きます。別に人見知りをするつもりは全くありません。しかし商業的で無責任な紹介業者とはお付き合いする気持ちにはなれません・・・きっと優秀な従業員をよその会社からヘッドハンティングでもする感覚なのでしょうが・・・

電子申告

 電子申告についてですが、この制度はいったい誰のためにあるのでしょうか?納税者の利便性でしょうか?国は懸命に電子申告の推奨をしています。形振り構わず税理士にも納税者にも依頼してきます。納税者にとって便利なはずなのになぜ普及していかないのでしょうか?
 まず一つ目は、税法やら税制自体が電子申告に向いていないということです。今まで紙で提出していた申告書の税法は、電子申告導入に当たって大きな改正がありませんでした。つまり紙の提出が前提な法律制度の目先を変えただけで、電子申告に向いていないのです。
 申告した後に必要書類等は3年間は保管しておく義務があります・・・今まで添付して提出していた証明書等をです。
 あえて言うなら、給与の受給者が会社にして貰っていた年末調整を個々に電子申告で自ら申告するという制度に改めるべきでしょう。企業が、本来は国がすべき仕事(年末調整や給与支払い報告書の提出)をいつまでも代行させられています。マイナンバーの保管さえもさせられます。
 源泉徴収した税額を調整するのは各個々人がプライベートに行ってしかるべきではないでしょうか。源泉徴収も比較的高額にしておいて申告すれば還付になるという前提がよいでしょう。
 日本には税務署が多すぎます。だから誰の家の近くにもあるのです。つまり税務署は比較的身近にあり便利なのです。近くて便利、そこ行けば事足りるのです。電子申告を普及させたいのであれば、来所者に対するサービスを低下させるのではなく、来所しにくくする、つまり税務署を統廃合してしまい各県に1つか2つの大きな税務署にしてしまえば良いのです。半日もかけないとたどり着かない税務署が電子申告には向いています。
 また、電子申告をする申告者にとって、ウェブ上の付加的サービスがもっともっと向上されても良いのだと思います。所得税の申告では所得税の申告書を作成して計算してしまうという税務ソフトウェア的になっています。申告年度のデーターも何年分かは自分のパソコンに取り込んで保管できます。しかし法人税の申告書を作り計算するようには出来ていません。相続税や贈与税も駄目です。
 国税庁のホームページで使い勝手の良い税務ソフトウェァが提供されたなら・・・税理士は利用料を払ってでも使うことでしょう。何だったらストレージサービスやら、申告用ソフトに連動した会計ソフトだって提供してくれれば、納税者も税理士もこぞって電子申告に参加することでしょう。
 理想から言えば、善良な納税者の負担を軽減し、税務行政の効率化を図るためのシステムというなら、マイナンバーを活用するべきでしょう。そして申告書とその元データーは国税庁のサーバーに保管され、その保管と利用は納税者も課税者も互いに便利よく使うというのが良いのだと思います。
 郵便で紙で提出する代わりに電子申告するか・・・身近に出向いて提出する代わりに電子申告するか・・・課税側が面子のために普及率を必死にお願いベースで上げようと活動している・・・現場の職員にはもっと別の本来すべき仕事があるのではないでしょうか。見切りで走り出してしまったまとまりのない制度の普及が現状です。
 私にとっての電子申告は、納税者に依頼されている申告が、税務署という場所に出かけて行かなくて良いということにつきます。ただし、国税が提供している電子申告のプログラムと私が使用している会計や税務のプログラムを橋渡しするプログラムが新たに必要になりました。両者を手入力で繋いでいては要領を得ません。ですから、電子申告のおかげで、新たなプログラムを購入して作業し、電子証明を付加しています。申告自体はデータの転送ですが、申告のためのデータ作成作業が別に増えました。
 税務署には駐車場も完備されておらず、かといって公共交通では不便きわまりないという場所が多いのも特徴です。個人の確定申告時期の税務署には、以前は税理士が専用で提出できる窓口があったのですがそれも姿を消しつつあります。そんな窓口でも混んでいました。そんなことで電子申告をすることになります。
 また、法人税についても税務署等に出向かずに済む、返信用封筒を同封して郵送する手間を避けられるということから電子申告になります。昨今は電子申告もしていない税理士は信用できないということでもあるのかも知れません(笑)
 納税者にとっては何でも良い、依頼した税理士さんがやっていること、そんなところが実情です。

得意な業種

 顧客紹介業者や初対面の方に聞かれることがあります。「どんな業種が得意ですか?」「専門は何ですか?」私の答えは「今時業種の得手不得手や好き嫌いは特にありません、何でもやります」「特段忙しくありませんので仕事があればご紹介下さい」です。
 税理士の専門というのはいつ頃から言われ出したのでしょうか。また、忙しいと言って断る税理士が居るのでょうか?医師や歯科医師の免許は単一ですが専門の診療をする科があります。また、弁護士も○○が専門という言い方があるようにも感じますが、まあ、基本的には何であれ引き受けてくれます。その事案に精通した仲間がいてアドバイスぐらい受けられるのでしょうし、調べれば答えは出てくるのでしょう。
 医者・歯医者は別にしましょう。脳神経外科と整形外科出や産婦人科や精神科では確かに別な専門でしょうし、普通の歯科医が矯正やら口腔外科というのもなかなか出来るものではないでしょうから。
 しかし、ある弁護士に精通した事件というモノが在るにしても、不動産事案を手がけたことのない弁護士はいないでしょう。税理士も弁護士ほどではないにしろ精通したモノが在るとしても、それ程専門と専門外に区別があるとは思えません。
 収入から経費を引き算して利益を出し、会計上の利益から税務上の所得を導き出すだけです。収入や経費がその業界独自である、特徴的で他の業種とは異なっていると言ってもそれは業界の常識であって専門的な税務の問題に発展することは普通ではまず無いと言えます。
 収益を計上をするに当たってどうやって導くか、利益や所得の計算結果が実態に合っているかどうかは、その業界の常識を取材すれば解ることですし、同業の友人やら先輩後輩の間柄で調べることも出来ます。
 たとえば物品の輸入の取引について知らなかったとしても実際に現場での取引の流れとお金の動き、それに伴う書類を見てゆけば、輸入申告書に記載されている商品価格と実際の取引価額が別物であることなどすぐに理解できますし、前者を基準に関税と消費税が計算されて通関時に納付していることなどすぐに理解できます。
 事実を確認して理解すれば別に出来ない仕事は無いのだと思います。勿論取引自体が合法であるという前提は必要ですが。
 弁護士でも税理士でも不動産の取引についてほとんど経験が無く解らないという人がいたら、それは新人でもなければおかしいことだと思います。現状では資産価値の中心的な存在が土地でしょうから、当然に土地の取引やらその周辺のトラブルが多く発生するはずです。実務をやっていく上で避けて通る方が難しいのだと思います。
 商売の仕組みを理解して、その商売がどうやって稼ぎをだしているか、それさえ理解してしまえば、具体的に実態をどう帳簿に映し出すかということを考えるだけです。
 収入や経費が計算期間からずれないようにどうするか、これなども商売の仕組みさえ理解していれば、現場で顧客とどういう取引をしているかを理解していれば得手不得手など、ましてや専門など入り込む余地は無いと思っています。
 社会保険報酬という収入がある場合の過誤をいつ把握するか、何時の時点なら把握できるか、そんなことは事業主に聞けばすぐに解ることでしょうし、聞かないまでも現実の書類を時系列に確認さえすれば解ってきます。源泉税が徴収されているのならば、入金額からの逆算は小学生の算数です。医師・歯科医師のみなし経費の計算(いわゆる措置法差額の計算)は、計算式と睨めっこをしていれば、何をしているのかが見えてきます。
 自由診療と保険診療のそれぞれの収入に見合う経費を計算しているだけで、どう転べば有利か不利かなどはすぐに見えてきます。
 輸入がある業界の例は先に書きましたし、遊技場業、いわゆるパチンコ店などの収入、カード販売と発行会社とのやり取りと精算・相殺なども1年分の書類を眺めていれば理解できますし、決算書を何期か眺めれば、収入と仕入れの差額が本来は純額の収入で、この収入に対応する経費が機械等の設備投資額だと気づくことができます。
 売上と仕入れは現金ないしはカード会社との貸し借りで稼働には関係するけれども、またその利益率なども独自の意味はあるにしても、企業の実態を税理士の目から見れば、粗利を収入に見立てて設備投資額がその見立てた収入に見合う原価になると理解できてくるはずです。
 事業協同組合の決算は予算との比較で決算書が作成され、各事業ごとに収入と経費を部門別計算のごとく事業別に分類集計して独特な決算書を作成しなければならないことになっています。特別なことは関連する書籍を購入するなり協同組合団体中央会から決算のマニュアルやら手引きが配布されています。
 読んだり聞いたりすれば、基本的には形式でしかありませんし、特異なことは実態と比較しながら理解できてしまいます。
 社員研修の企画とか、金券販売、質屋などもちょっと変わった業種でしょうか。税理士試験の科目にある酒税など良く解かりませんが、酒販免許については何度か申請しています。その昔は扱いが面倒でしたが、私が勤めたところに数多くの酒類小売業があり、酒販免許の新規取得やら移転、変更、合併など何度も関わりました。免許の所管が税務署でも税法にはほとんど関わりがありませんでしたが、手引きがあって動いていれば実態が見えてきます。
 そんな酒販店が多くコンビニエンス・ストアに衣替えした時期がありました。大手の4つのフランチャイズの仕組みも月々の書類やら経営者への取材で見えてきます。本部はお金を全部預かる仕入れ問屋だと思っていれば間違えありません。
 そこの特異性は、本部の殺傷与奪の権利とロイヤリティーという看板代です。自分のビジネスが取り上げられて判断の領域が狭められてしまう、経営者が従業員化する怖いシステムです。
 建設業については経営審査の項目で触れてあります。一式と種目別で若干雰囲気は違いますが、現場を想像できれば後は原価計算と同じです。収入と経費の発生状況がどうなっているのかの仕組みと原価計算の折り合いさえ付けられれば問題在りません。製造業も基本は一緒です。
 所詮税理士が扱う決算書は足し算と引き算の集計表で、申告書はその結果をいじって税額を計算するときに掛け算をちょっと使う程度です。専門性があるとすればそれは世間の常識と、その業界の常識を知る能力、実態を想像する能力でしょう。
 私が理解できていて関わりたくないとすれば、それは飲食店、いわゆる飲み屋さんでしょうか。労多くして実入りが少なく、持ち出しが起きてしまう可能性が大だからです(笑)銀座のクラブの端くれの顧客があったこともあります。
 また風俗店の経理の仕事を紹介されたこともありますが長続きしませんでした。私とはあまり相性が良くないのだと思います。波長が違うのでしょうか。でも、基本は、何でもやらせて頂きます、です(笑)。

税理士への不満

①毎月来てくれない

 税理士に毎月来てもらって依頼する仕事がそんなに有るのでしょうか?仕事の邪魔になりませんか?最近の景気はどう?などど世間話をしてもらうために来てもらっても意味はないでしょう。来てもらって資料を渡す?だったら宅配便やFAX、Eメールなどで資料を渡しておいて、試算表の説明を依頼して来てもらったらどうでしょう?毎月前月の試算表を持って説明に来てくれる税理士には価値があると思います。ただし、依頼主の側でも、資産表作成することが出来る資料をタイムリーに毎月提供しなければなりません。毎月来てもらっても領収証のチェックをさせるのでは意味がない気がします。私は、必要があればいつでもお邪魔しようとは思っています。

②顧問料の割には何もしてくれない

 顧問料という名で払っているお金についてのサービス内容を税理士に確認するべきでしょうか。ある人は税務署に対する用心棒代と言っていました(笑)保険のよう、にいつ起こるか解らない事故に対しての保険料と考えることも出来ます。また、会計帳簿を作ってもらう記帳代行料がその大部分を占めるのかもしれません。パソコンで処理したデーターの確認を依頼する人もいるでしょう。いつ何時でも社長が個人的に相談できる知恵袋という位置づけもあります。是非、支払う対価として納得できるサービスを受けたいモノです。

③質問しても明確な回答がない

 これは困ります。専門分野については最低限キチンと答えて頂きたいモノです。ただし、質問に具体性がなかったり、仮定の話が多すぎても専門家であるが故に、余計な知識が邪魔して簡単には答えられなかったりします。税理士の守備範囲でなかったり、また、普通の経済人としての許容範囲を超えても駄目でしょう。個人的にどう思うのか聞いてみますか?守備範囲であるのなら即答できなくても調べてから報告して欲しいものです。なお、守備範囲であっても、いわゆるグレーゾーンについては明確には答えられないケースもあります。

④なかなか連絡が取れない

 まったくもって困りモノです。「忙しい」を連発されると閉口モノです。私のために忙しくなってくれる程度は支払っているのではないのですかと聞いてみたくなります(笑)私は何においても「忙しい」と言わないことにしています。私が「忙しい」と言われたときに感じることは、私を受け入れてくれる気持ちがないということです。「忙しい」と言って世間から引っ張りだこだとでも言いたいのでしょうか。繋がらないというのは最悪です。少なくとも何があっても数時間以内に連絡がなければおかしいと思います。社会人としての資質でしょうか・・・

⑤自社で帳簿処理したくないのに無理強いする

 私は自社処理は基本的にはお勧めしていません。会計担当者がいてそれなりの知識を備えているのであれば好ましいことだとは思っていますが。試算表のデーターを得るスピード感が違いますので、会計担当者から経営者への報告は速いに越したことがありません。会計帳簿の記帳代行を依頼するのか、それとも会計データーのチェックを依頼するのか、はたまた申告だけを依頼するのか、それは依頼者自身がハッキリと意思表示すべきです。

⑥自社で帳簿処理したいのに推奨してくれない

 昨今はパソコンと会計ソフトという組み合わせで、経理専用のパソコンを用意しても良いのかもしれません。出納帳として考えても良いでしょう。そして、値段的にも扱うデータの重要性からも秘密を守れることが望まれます。またバックアップも必ず必要です。私のスタンスは、私が利用している専業メーカーの費用がそれ程掛からないソフトウェアを一応推薦します。一応です。お好きなモノでよいのでないかと思っています。データの互換性が有った方が良いかどうかは利用の仕方次第です。

⑦試算表は届くが説明がない

 試算表については納得の行く説明を求めたいところです。経営者の仕事での手応えと机上の数字との間にギャップがないに越したことはありません。仮にギャップがあるのなら原因を究明してそのギャップを埋めておかなければなりません。私はそれこそが本来の仕事だと思っています。仕事上の基礎でしょう。ギャップが埋まらないのであれば、何かが間違っているかもしれません。また、前年同月比でも良いし、今期の決算についての見込みでも良いので、それを経営者と打ち合わせしておくことが大事だと思っています。

⑧試算表が届くのに時間が掛かる

 刺身にする魚でも旬があります。季節感よりももっと速い経営判断の材料になるはずです。前月末の試算表が当月何時出てくるのが当たり前なのかを、税理士も依頼者も本気で考えるべきです。記帳代行をしていて思うことは、材料がなければ板前でも料理が出来ないということです。資料がないと税理士も帳簿や試算表が作れないのです。経営者に試算表を素早く届けて説明と確認をし、自身の仕事が少しは経営者に役に立っていると思いたいものです。

⑨決算をやってみないと損益が不明

 決算前の時点での試算表と、決算をしてみての試算表に大きな差がある・・・これは年に一度だけ資料を整理しているのと変わりませんね。そういう仕事の仕方で構わないのか、月々なのか、隔月なのかそれとも数ヶ月に一度なのか、半年に一度でよいのか・・・これは税理士に依頼して仕事をしてもらう上で本当に大事な要素です。何をどう依頼するのか、どういう支払なのか、何時までに何をしてもらうのかということです。当初の取り決めと現実が合わないのなら是非とも摺り合わせるべきです。

⑩資金が無いのに儲かっていると言われる

 これは良くある話です。儲かっているかどうかは損益と言いますが、それがどういう形なのか、何処に隠れているのかを説明するのは、税理士の試算表説明責任の一端です。在庫が増えていたり、借入や支払債務が減っていたり、はたまた設備投資やら社長の仮払いやらです(笑)私は、損益計算書と貸借対照表を経営者にとって見やすくまとめるのが税理士の使命だと思っています。

⑪調査官のような仕事の仕方をする

 ある税理士さん達は、領収証や請求書を日常的にチェックする仕事をやりたがります。私には考えられません。決算時などに重要な項目などについて確認するために見せてもらう、内訳を細かく聞くよりも手っ取り早いから請求書をFAXしてもらう、そんなことはありますが。税務署の調査官の予行演習がごとくに、毎月、月次監査や巡回監査と称して・・・税理士が監査という言葉を使うことにも違和感があります。頼まれればするかもしれませんが本来の仕事に思えません。もう少し経営者の直接の利益になる仕事がしたいですね。

⑫業種独特の知識がない

 依頼者独自の業界の常識というものがあります。言葉だったり単位だったり、商習慣だったりします。それは申告する段階で、はたまた試算表を作成する段階で確認すべきことです。試算表を作成する上で当然にやらなければならない情報収集、前提条件なのです。その業界の常識という観点からも数字を見ないといけないと思います。同業他社との比較などと言うのは大げさですが、少し立ち入った常識も知る必要があり依頼者から教えてもらう必要がありますね。

⑬よく間違える

 私も間違えることはあります。間違えたことがないなどと口が曲がっても言えません。ただし、同じような間違えを繰り返さない努力を仕事の中に取り入れようとはしています。人は間違えるモノだ、だから間違えないために大事なことは、別の時、別の場所、別の目でチェックすることだと考えています。間違えない努力を積み重ねています。また間違えが解った段階で、有るべき姿を考えて最善策を探します。勿論依頼者に誤ってからです。誤って怒られた記憶はあまりありませんが(笑)

⑭パソコンに弱い

 これはある年代以降の人たちにとっては致し方ないことなのかもしれませんね。私は、世の中で電卓が普及していなかったら税理士をしていなかったと思います。まず確実です。伝票とそろばんではなく伝票と電卓でもこの業界にいなかったかもしれません。そう言う意味では、昔のオフィスコンピーター(オフコン)と言う言葉は死語になり隔世の感があります。私は別にパソコンが詳しいわけではありませんが、プログラムやらデータは至って論理的だから何とか基本が理解できて使えるだけです。活用という段階にまでは至っていないのかもしれません。

⑮調査の時に調査官と揉める

 別に調査官と口喧嘩しようが依頼者に不利益がなければ良いのだと思います。ただし同席していて見苦しくなければ(笑)調査の現場だけで何かが即決まってしまうことなどまずありません。細かいことなど気にせず相手にせずに本題になりそうなことに注意を払っていればよいのだと思います。まあ、相手が幾ら嫌な奴でも大人の社会人として最低限の対応ではいたいものです(笑)そうやって時間つぶしをして調査の効率を悪くしているのでしょうか・・・私の知る限りでは、調査官は納得すれば早めに切り上げて帰って行きます。まさか調査官と争ってさえいれば納税者の目に勇ましく頼りがいがあると勘違いしている訳では無いと思いますが。

⑯調査の時に調査官と一緒になって調査する

 税務署出身の税理士が我を忘れてつい昔の癖で・・・そんなこともないのでしょうが、私の口から言わせてもらえば、納税者から資料を預かりその前提で申告した、でも良く資料を見たら間違って処理していた、税理士も見逃していた、それを調査官から指摘されて、私であれば「笑って見ている」程度の話なのかもしれませんが、それが税務に与える影響が大きくなりそうで、ないしは自分のミスを他人である納税者を責めることで自らの責任を誤魔化そうとしている、そんな解釈でしょうか(笑)。

⑰やたらにモノを売りつける

 パソコンから会計ソフトに伝票、保険契約のような金融商品は元より建設会社の紹介から一括借り上げ賃貸業者の紹介、そして不動産取引までも、絡みたい人はいます。手数料が欲しいのですね。それを何か別の言葉で隠していたりします。リスクマネジメントだったり相続対策だったり、決算対策だったりします。ワンストップサービスも使っているのかな(笑)。私は基本的には有資格者はサイドビジネスをすべきではないと思っているのですが・・・

⑱節税のアドバイスがない

 税理士の試験では、特段の注意書きがない限り、今期の税額が安くなる方法で回答します(笑)だから節税などという言葉をあからさまに使っているのも如何なモノかと思います。私としては、税額が安くなる方法ではこういう条件で処理していますと報告しています。別の選択肢があれば当然にメリットとデメリットを併せて説明します。納税者が判断して方向や方法を決めることが多くなっているのが昨今の税法です。だから尚更税理士の説明能力が問われています。一番良い方法でやっておきましたが通用しなくなってきています。

⑲商法や登記のアドバイスがない

 税法と商法、税法にとっての登記は密接な関わりを持っています。税法のある規定を適用する場合の要件だったりします。また役員であることのメリットデメリットは、税法でもビジネスでも意味合いがあります。退職のタイミングやら退職の定義も含めて登記が一つの大事な要件として有効であったりもします。会社の合併や分割、増資や減資も登記が大きく関わっています。また、贈与や売買のタイミングでの重要な要件の一つが登記でもあります。身近な司法書士や弁護士に確認をとることも必要になってきます。

⑳経営や労務のアドバイスがない

 私自身は、経営のアドバイスについては、まったくもって出来ないと思っています。経営については、私は経営者としての経験やら人に伝えるべき知識を持っているとは思えないからです。ただし、私の知る他の経営者の擬似的な判断はお伝えできるかなと思っています。色々な考え方がある、それぞれの判断にはメリットとデメリットがある、そんなことを冷静にお伝えすることはできます。今の時代、経費について固定費から変動費に変えてゆく努力は必要でしょう。立案された計画に基づいて収支予算書なら作れます。お前ならどうするという質問に謹んでお答えするのみです。plan-do-see-checkなどと言っても始まらないでしょうし、ABC分析の話やマーケティングの話は知らないわけではありませんが、それは学生時代の知識でしか有りません。私は経営者として組織を管理し事業をとりまとめる優れた経営者でもなければ、それをアドバイスする立場でもありません。強いて言うなら、非常勤の社外取締役の役割を果たせることがある、その程度のモノだと思います。あくまでも専門は、税務や帳簿の顧問、なのです。その計画が実行された場合の決算書のバランスなら当然に説明することができます。

?金融や保険の知識がない

 金利や為替などのデリバティブやらレバレッジ取引、ヘッジファンドに匿名組合、変額保険に逓増定期保険、長期平準定期保険・・・統計数値のテクニックではノーベル賞受賞の学者の出る幕なのですが、そうでない者がこれらの言葉と付き合うのでしたら、簡素に理解するに限ります。集めた金をどう運用するのか、投資家にとってどういう利点とリスクがあるのかを客観的に見ているだけです。まあ、基本的には、そんなにうまい話はないということぐらいでしょうか。世の中上がりっばなしの相場も無ければ下がりっぱなしの相場もありません。

?銀行取引に関しての知識がない

 私は顧客に対して、小中の銀行と付き合って、ビジネスが大きくなったら大の銀行と付き合ったら如何でしょう、小や中と付き合うにしても最低でも二行と付き合うべきでしょうとアドバイスします。また、私自身が出来る限り銀行マンと付き合って情報交換をしています。私が顧客から報酬を頂いて作成する書類は、まずは銀行で必要としているからです。常に銀行マンが見ているのです。銀行とトラブルになるのでしたら税務署とのトラブルの方が顧客に被害が少ないとも思っています。だから、銀行マンの目線や価値観から決算書を見る、と同時に、税務調査官の目線や価値観から決算書を見ることになります。最低でも複眼になってしまうのです。

報酬について

 東京の中心で、高層ビルのフロアーに受付があって、洒落た制服を着たキレイなお姉さんがいて、完全予約制で、社員や有資格者がたくさんいて立派な会議・応接丁度が小部屋で並んでいる・・・そういう事務所だったら・・・いったい、いくら料金とられるんでしょうか・・・
 もし、そんな立派なオフィスなのに料金が安かったら、それはそれで不思議でしょう。どうやって高い家賃と人件費や設備費を払ってるんだろう・・・そう思わなくちゃいけないんです。従業員や所長の乗っている車の値段を見ても解るのだろうと思います(笑)
 首都圏しか知りませんが、だいたい多摩川が報酬の分かれ目のような気がします。従業員の人件費はさほど変わりませんから、後は立地という事務所維持の費用が大きく影響するのでしょうし、所長自らの想定所得がどの程度かで料金が決まるのだと思います。
 最終的に報酬が高いか安いのかは、支払う人の金銭感覚によりますから何とも言えませんが、支払う側が感じる「サービスと対価のバランス」は取りたいと思って請求書をつくっています。
 また、今まで値下げの要請をされたことがほとんどありませんし、私の側から勝手に値下げするケースが何度かあります。まあ、私の報酬は比較的安いのかリーズナブルなのだろうと自分勝手に理解しています(笑)
 「業界の基準」によって決められていた報酬が、規制緩和という社会の流れによって否定されたのが平成12年頃です。資格者の報酬も、市場競争や需要と供給のバランス等により決定されるべきものということになりました。
 世界貿易機関(WTO)や経済協力開発機構(OECD)等の発効する国際条約に基づいての国内の規制緩和施策でした。それまては「税理士会の決めた報酬基準」がすべての基準でした。確か最高限度額を決めたモノだったと思います。
 この業界独自の基準が無くなって喜んだ人と困った人がいました。喜んだ税理士は、「業界基準に縛られずに幾らでも際限なく高く請求できる」と考えた人たちでした。困った人は、「顧客に請求金額の根拠を提示できなくなった」人たちです。
 しかしながら「自分のオリジナルの基準を作らなければならなくなった」ということに変わりはありません。
 以前の業界基準では、法人や個人事業について、収入の大きさと保有資産規模を中心に、指導と書類作成という作業区分で報酬を計算し、そして難易度等で2倍までの調整をするといったものでした。細かく計算しているようですが最後はざっくりでした。
 どんな基準を作っても機械的に当てはめることが出来るオールマイティーなモノなど作りようがありませんので、結果、誰の目にも解りやすいところで細かく、最後の帳尻でざっくり調整するということになるのでしょう。私が掲げている報酬基準もそんな程度のモノです。いい加減と言えばいい加減でしょう。
 支払う側から考えた場合は、どんな料金だったら納得しやすいでしょうか?面談時間1時間あたりの料金ですか?電話相談1回30分いくらとか?そばにタイマー置いておかないといけませんね。記録も残しておかないと。
 作成書類1枚あたり幾らとか計算しましょうか?訪問した場合の時間と交通費、来所して頂いたらゼロでと・・・やっぱり変でしょうね。会計処理の一仕訳幾らとか、納税額に対して一定率で計算するのにも違和感があります。
 結局、私は、自分の作業量と責任の大きさで考えます。どれだけ時間を割いたかということです。どれだけ大きな責任があるのかということです。丸一日の拘束を基準に、どんな大きさの金額を扱うかで料金を計算しています。どんなに細かく計算しても0.5まで、つまり半日が限度でしょう。6時間程度を1日、3時間以内を半日に考えます。利益が1億円と100万円では数字の上で責任の度合いが変わってくるのだと思います。
 1日は6万円と見ます。6万円の根拠を聞かれるとそれはまたそれで厳密には答えられませんが。興味があったら私に直接聞いてみて下さい(笑)責任の大きさについては客観的な基準を持ち合わせていません、これは言わば職業的な本能からくるモノでしょう(笑)

税理士から見た税理士の選び方

 税理士も、その人によって個性は様々です。そして、その個性によって仕事の仕方も様々なことでしょう。皆さんは、税理士に、何を期待をされますか。
 依頼者と税理士との間には信頼関係が必要だと思います。普通の商取引では要求されない信頼関係や良好な人間関係が必要ではないでしょうか。依頼者との相性もあるのでしょう。
 どうぞご自身に合った税理士を見つけて、納得出来る予算で納得のゆく仕事を依頼して下さい。
 どうぞ納得のいく説明を求めて下さい、納得いくまで説明してもらって下さい。それが税理士の仕事の本質だと思います。
 どうぞ良い関係でお付き合い下さい、さもなければとても不幸で勿体ないことだと思います。
 依頼者の目からは、税理士の仕事の善し悪しはなかなか簡単には解らないかもしれません。だからこそ、信頼できて良好な人間関係が必要になってくるのではないでしょうか。
 複数の税理士に依頼するのも一つの方法です。医者や弁護士を利用する場合には一般化しつつあります。
 男女の区別でなく、長幼からでなく、そして経歴でなく、どうぞ気の合う、信頼できる人を探して下さい。

 以上が、私が税理士の側から見た、依頼者のためになると思われる、税理士選びのポイントです。何かのご縁で私が皆様のお役に立てれば幸いです。