会社設立

独立・開業に創業

事業を営むのに『個人』か『法人』か?

 事業を始めるに当たっては、小規模だし将来にわたって継続する目処も立っていないし、 まずは個人でやってみるという場合もあります。また、独立するに当たって取引先が法人 という企業でないと取引してくれないので、まずは会社を作ってから始めるというケースも 見受けます。
 一方、会社にした方が税金が安い、節税になると言われたりします。そこで、その仕組みや、 メリット・デメリットなどを整理してご説明してみましょう。目的や価値観が合っていないと、 一般論を何となく信じて、結果そんなつもりではなかったということも起こってしまいます。

個人事業のメリット

 個人事業の良いところは、まずは制約が少ないことでしょう。目の前にあるお金を始め、 事業用の財産といったモノ全てが、事業用である無しに関わらず、事業主の一存で処分出来る ことです。商売に利用しようが個人生活で使おうが、売ろうが捨てようが自由です。
 それは当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、法人としての事業では、それは 簡単に出来ない意味合いがあることだからです。法人では個人事業とは随分と勝手が違って きます。事業を止めて会社を閉鎖するのにも会社法上の清算手続きが必要になってきます。

法人を設立する意味

 法人とは、法律上での人を意味しますから、財産を所有して債務を負うことになります。 従って事業用の財産は会社のものということになり、経営者や会社のオーナーといえども 会社に損害を与えてはならないからです。
 経営者や会社のオーナーという個人とは別の、独立した経済活動をするための人格をわざ わざ法律上で認めてもらうことが、そもそもの法人の設立だからです。
 法人の仕組みは、独自の存在で財産を所有し債務を負って事業をする主体を人為的に作る ということです。その主体の経営をするのが取締役であり、資金的な後ろ盾は株主という オーナーが出資する資本金ということになります。
 事業主体として、従業員を雇い、本社を設け、資金の動きを帳簿に記載して最低でも年1回は 決算書をつくらなければならないことになります。株主が拠出した元手によって取締役が主導 して事業を営み利益をあげ株主に配当するという仕組みが法人です。
 会社経営としては、会社法という特段の法律により、会社として守るべきルールや、役員や 株主に対する権利・義務があって、基本的には会社の経済的利益を優先しなければなりません。 自分1人だけが取締役で、株主も自分だけで全額出資していたとしても同じことなのです。

法人組織のメリット

 ではなぜそんな制約があり面倒なことになりかねない会社を作ってまで事業を行うのでしょうか? 制約を受けてまで得るべき利益とは何でしょうか?まずは①永続企業としている社会的信用の確保 ということでしょう。そして②税制を利用した税負担の軽減ということになります。
 前者は、雰囲気という側面もありますが、会社法の適用を受けているというだけでも信用に なっているのではないでしょうか?経営者個人の個人的な生活のプライバシーを守るという意味 あいもあるのかも知れません。
 法人の税制上のメリットというのは、個人で事業をしていた場合の事業所得(利益)に対する 所得税等の課税を、法人で事業をした場合の、経営者の給与所得(役員報酬)に対する所得税等と 法人の利益に対する法人税等との合計額を比較して判断することになります。

所得水準別の節税の比較

1.個人事業による事業所得と、事業を法人化してその利益の全部を給与所得に変換出来るのであれば、給与所得の方が税の負担が確実に少ないことになります。
  → 法人の利益管理が上手く出来れば、事業を法人組織とすることはとても有利である。

2.平均30%の税負担で見ると、個人事業では1500万円、給与で2400万円、法人税等の率で1000万円程度になります。
  → 税負担率で考えるなら、利益は給与所得に変換することが一番で、個人事業は避けるべき。

3.給与で2000万円の税負担は27%ですが、これを2人で等分な給与とすれば17%の負担で済むことになります。
  → 所得税の累進税率を考えれば、所得の分散により低税率を使うことが負担減に繋がる。

4.所得水準によって、税負担の少なくて済む、所得総額の法人と個人(役員報酬による給与課税分)への配分金額は変動します。
  → 給与所得控除、所得税の累進税率、そして累進制のない800万円までの低税率の法人税率の組み合わせで、税負担の軽減が図れる。

5.所得別の税負担比較

 これは役員が1人での場合の所得別の最少負担を考える方法です。したがって役員が複数の場合には答えが変わってきます。ただし別の言い方をすると、他の役員の給与を控除した後での所得総額で考えて頂くべきものかもしれません。

①所得総額が1000万円以下である場合
法人法人所得を残さないように給与を設定できれば負担は最小と考えられる。
ただし法人所得が400万円以下になるのであれば大旨最小負担である。
16%程度の負担は避けられない。
②所得総額が2000万円程度である場合
給与給与総額が1200万円程度となる配分の負担率が最も小さくなる。
法人所得が500万円から1000万円の範囲に収まっていれば大旨最小負担である。
23%程度の負担は避けられない。
③所得総額が3000万円程度である場合
給与総額が2000万円程度となる配分の負担率が最も小さくなる。
法人所得が500万円から1500万円の範囲に収まっていれば大旨最小負担である。
30%程度の負担は避けられない。