17 今庄 越前東郷 氣比神宮 三方湖(福井県)


・平成26年9月15日(月) 今庄

 東京駅6時26分発の「ひかり501号」に乗る。米原駅に8時48分に着く。米原駅8時59分発の北陸本線「しらさぎ1号」に乗り換える。福井駅に10時に着く。

 奥の細道を歩いていたとき、福井は、平成18年1月7日から同年7月17日まで何度も訪れた(「奥の細道旅日記」目次29同目次30同目次31参照)。
 奥の細道の旅が終わっても、福井へは、平成24年5月3日から6日まで(目次5参照)と、平成25年9月16日から19日まで訪ねた(目次12参照)。

 駅の構内にある観光案内所へ行く。女性2人が交替で案内を務めていて、福井を旅行するたびにお世話になっている。
 今回の旅行の予定を話し、それについてお話を聞く。いつも丁寧な説明があり、旅行案内書に載っていないような有益なお話を伺うことができる。

 11時になったので、駅前のユアーズホテルフクイで昼食を摂る。ユアーズホテルフクイは食事がおいしいので、福井へ行くときはいつも宿泊する。今回も2泊予約している。
 (ユアーズホテルフクイについては、目次5、平成24年5月3日、同6日、「奥の細道旅日記」目次31、平成18年7月15日、同16日、同17日参照)

 ユアーズホテルフクイの3階「フレンチレストラン ボヌール」に入る。
 「秋の味覚フェア」として期間限定になっているランチを注文する。サラダとフルーツはブッフェになっている。

     スープ    温かいジャガイモのスープ
     サラダ    福井県産のキノコを千切りにして醤油味でソテーしたものがおいしい。
     パ ン     胚芽パンとクルミパン
     メイン     スズキと海老のソテー 里芋と百合根を添えて 白ワインのソース
     デザート   木いちごのケーキとリンゴのムース

 おいしい食事をして駅に戻る。福井駅12時10分発の敦賀駅行きの電車に乗る。12時45分に今庄(いまじょう)駅に着く。後戻りしたことになる。
 午前中、北陸本線の各駅停車は連絡が悪く、米原から電車に乗っても今庄に着くのは11時頃になる。それよりユアーズホテルフクイでゆっくりとおいしい食事をして今庄へ出直す予定にした。
 (今庄については、「奥の細道旅日記」目次30、平成18年5月6日、同目次34、平成19
年3月25日参照)

 昨年9月17日に、今庄と敦賀間の北陸本線旧線の廃線跡地の一部である南今庄から杉津(すいづ)まで歩いた(目次12参照)。
 当時の北陸本線旧線を走っていたD51(デゴイチ)が今庄駅の近くに保存、展示されている。また、
今庄駅の構内に、北陸本線旧線の遺構である給水塔が保存されている。D51と給水塔を見学するために今庄駅を訪ねた。

 駅を出て左へ曲がる。駅前の駐車場から、今庄駅の構内の今庄機関区跡に立つ煉瓦造の給水塔が見えた。


今庄機関区跡 給水塔


 陸橋を渡り線路の反対側に出る。左へ曲がる。南越前町今庄総合事務所の駐車場の端に、「D51 481号」が保存、展示されていた。
 目の前で見る蒸気機関車の威容に圧倒される。それぞれ役割を与えられた機械の一つ一つが美しい。


D51 481号



・同年9月16日(火) 越前東郷

 昨日チェックインしたユアーズホテルフクイでおいしい朝ごはんを食べる。
 今朝は、鯖の味噌煮はなかったが、鯖の醬油煮があった。小鯛のささ漬け、福井県産の青大豆で作った自家製の豆腐等おいしいものが沢山あった。

 駅へ行く。福井駅9時7分発の越美北線(えつみほくせん)の電車に乗る。9時21分、四つ目の越前東郷駅に着く。無人の駅である。
 駅を出て200m程歩く。旧東郷街道に出る。街道の中央を幅3m程の堂田川が流れている。きれいな水が流れていて、泳いでいる魚の群れが見える。 

 左へ曲がり、流れる水音を聞きながら川沿いに歩く。この街道を荷車を曳く馬が行き交っていた昔、堂田川は馬の水飲み場でもあっただろう。


旧東郷街道


 旧い商家の建物や造り酒屋の建物を見ながら歩く。
 板塀を巡らし、良く手入れされている見越しの松を備えた美しい建物が建っていた。この建物は県の歴史的建造物に指定されている。背後に緑濃い山が聳えている。



 駅に戻る。旧東郷街道を右へ曲がり、真っ直ぐに延びる駅までの道を歩いていたとき、左手に、大きな木造の建物が複数建っているのに気がついた。昔の工場のような建物である。
 近づいて、建物の出入口から中を見る。服の生地があちらこちらに積まれている。中央に台があり、生地の裁断が行われていた。


旧機屋


 幾つもの棟の周囲を歩きながら建物を見る。高齢の女性が立っていたので、建物のことを尋ねる。
 「古い建物ですね」と伺うと、「ここは、以前、機屋(はたや)さんだったんですよ。今は、建物は人に貸しているようですね。ずいぶん前から建っていましたが、いつ頃建てられたものか分かりません。」ということを教えていただいた。
 今は、静かに裁断が行われているが、昔、この建物の中は織機(しょっき)が並び、活気に満ちていたことだろう。

 福井駅に戻る。ユアーズホテルフクイに行き、昨日と同じ3階のレストラン・ボヌールに入る。
 月替わりのボヌールランチを注文する。サラダ、パンは昨日と同じだった。

     スープ    温かい薩摩芋のスープ 
     魚料理   イトヨリと帆立のムース仕立て サフランソース
             微かに塩気があって、口の中でふわっと溶ける。

     肉料理    赤鶏のソテー フェットチーネ(パスタ)添え トマトソース
     デザート   チョコレートケーキと洋梨のゼリー 


・同年9月17日(水) 敦賀 氣比神宮

 ホテルでおいしい朝ごはんを食べた後、駅へ行く。福井駅9時10分発の敦賀駅行の電車に乗る。敦賀駅に10時に着く。
 敦賀は、過去何度も訪れた(「奥の細道旅日記」目次31、平成18年8月13日、同目次32
、同年10月7日参照)。     

 駅を出て30分程歩く。大宝2年(702年)創建の氣比神宮(けひじんぐう)に着く。
 正保2年(1645年)建立の大鳥居を潜る。高さ約11mの大鳥居は、奈良県の春日大社、広島県の厳島神社と並ぶ日本三大木造大鳥居の一つである。国重要文化財に指定されている(厳島神社については、目次9、平成24年12月31日参照)。


氣比神宮 大鳥居


 氣比神宮を訪ねるのは、8年前の8月13日以来2度目になる。境内は静かで落ち着いている。


拝殿



 ゆっくりと歩いて駅に戻る。途中、駅前の商店街の中にある「食事処 建(たけし)」に入り、昼食を摂る。
 日替わり定食を注文する。サンマの刺身だった。他に、カニときゅうりの酢の物、野菜の煮物が付いている。新鮮な
サンマ刺身にしているのでおいしい。他の料理もご飯もおいしかった。

 駅の待合所で観光のパンフレットを見る。チェックインの時間になったので駅前のホテルに入る。2泊予約していた。


・同年9月18日(木) 三方湖 舟小屋

 ホテルで朝食後、駅へ行く。
 敦賀駅8時15分発の小浜線の電車に乗る。8時45分に三方(みかた)駅に着く。

 駅の観光案内所で、三方湖(みかたこ)に残る舟小屋を訪ねることを話す。今の時間はバスはないので、行きはタクシーを使う。帰りも、これから行くにはバスの時間がうまく合わないと言われた。バスの便が悪いことは予め分かっていたので、帰りは歩いて戻る予定である。

 観光案内所の職員が外を見て、駅前にタクシーの営業所があるが、タクシーが停まってないので出払っているようですね、タクシーを駅に回してもらうように電話しましょう、と言って、親切に電話してくれた。

 15分程待って、駅に着いたタクシーに乗る。三方湖の舟小屋まで行ってもらう。舟小屋は今は使われていませんよ、と運転手さんが話す。5分程走ると、三方湖が見えてきた。湖の周囲に梅畑が広がる。三方五湖の周辺は梅の産地ですよ、と運転手さんが説明してくれた。
 梅干しの店が複数見えてきた。店は開いているが、どの店も人の気配がない。梅の花が咲き、青梅が実る頃、賑わうのだろう。

 車は15分程走って舟小屋に着いた。茅葺屋根の舟小屋が三棟建っている。
 車を降りるとき、運転手さんが、バスの時間を教えときましょう、と言って、停留所の場所と時間を教えてくれた。約2時間後だった。観光案内所では、帰りに都合のいい時間のバスはない、と言われたのに変だなと思いながらもお礼を言って、時間をメモした。
 

 三方湖は、水草が繁茂している。


三方湖


 三方五湖(みかたごこ)は、三方湖(みかたこ)、水月湖(すいげつこ)、菅湖(すがこ)、久々子湖(くぐしこ)、日向湖(ひるがこ)の五つの湖の総称である。国指定名勝である。
 2005年、湿地の保存に関する
ラムサール条約
に登録された指定湿地である。
 五つの湖は、海水と淡水が入り混じり、それぞれつながっている。

 湖の方から舟小屋を見る。二つの舟小屋にボートが繋留されている。湖水によりボートが流されないための処置なのか、ボートの前に土嚢が置かれている。
 舟小屋の周囲を回りながら観察する。古い建造物だと思うが、いつごろ建てられたものか分からない。


舟小屋





 湖面を渡って来る風にコスモスが揺れている。



 雨が降ってきた。早めにバスの停留所へ行く。
 停留所は大きな梅干し屋さんの前にあった。バスの時間を見た。やはりタクシーの運転手さんは間違っていた。運転手さんが教えたのは、駅とは反対側へ行くバスの時間だった。駅へ行くバスが来るのは約3時間後である。

 梅干し屋さんの店内で、50代くらいの女性が掃除していた。念のために、運転手さんに聞いたバスの時間のことを尋ねた。
 女性は、私がメモした時間を見て、あ!これは違いますね。コミュニティバスも来るけど、あれは時間が一定してないからね、と言われた。
 それじゃあ駅まで歩きます。1時間半で着くでしょう、と言ったら、女性が、歩くといってもこの雨の中ではね、と言って、じゃあ、私が駅まで送りますよ。どうせ、今日、駅の近くまで用事が
あってでかけようと思っていたから、と言った。

 私が、お仕事中、それでは悪いですよ、と言ったら、いいんですよ、今、用意してきますから、ちょっと待っててください、と言って、家の中へ入っていった。

 そのまま乗せてもらうのも悪いと思い、店内の梅干しを3パック買った。却って、女性は恐縮していた。

 明るい人で、運転中、ずっと話しをしてくれた。
 湖の対岸にある梅畑へ行くとき舟で渡っていたので、舟小屋は、その時に使われていた。今は、道路ができて、車で行く方が早いので、現在は使われていない。
 湖は、ワカサギやエビが獲れるが、水草が殖え過ぎて水が汚れ、ワカサギやエビも以前に比べて少なくなった。
 家(うち)の梅畑には100本の梅の木があり、ネットに自然に落ちた実だけを採って、梅干しを作っている。
 他にも、地域のことについて、いろいろとお話をしてくれた。

 私が、都合の良いところまでで結構ですよ、と言ったけれども駅まで送ってくれた。ありがとうございました。

 観光案内所にもう一度、顔を出すと、職員が、歩いて来たんですか、と言うので、梅干し屋さんに車で送ってもらったことを話した。
 水草が殖え過ぎていることを尋ねたら、「ヒシ」が増えて、枯れて腐った葉や茎が湖底に沈み、水が汚染されている。NPO法人が除去しているのだが、繁殖力が強く、困っているところです、と説明があった。

 敦賀駅に戻る。昨日と同じ、駅前の商店街にある食堂「建」に入る。日替わり定食を注文する。
 今日の日替わりは、カレイの煮つけだった。他に、タコときゅうりの酢味噌、海老と里芋の炊き合わせが付いていた。今日も、料理もご飯もおいしかった。これから敦賀に来ることがあったら、この店に寄ろうと思った。


・同年9月19日(金) (帰京)

 早朝、ホテルを出て、敦賀駅のホームで特急電車が来るのを待つ。
 敦賀駅にも給水塔があった。駅の構内の叢の中に立っていた。敦賀駅は何度も乗り降りしたが、給水塔に気がついたのは今朝が初めてだった。これも北陸本線旧線の遺構である。


給水塔


 帰ってから、梅干しを食べてみる。
 とてもおいしい。梅の香りがある。皮が薄くて柔らかい。果肉は多く、種は小さい。
 冷蔵庫で保存しなければならない減塩梅干しや蜂蜜に漬けた甘い梅干しなどではなく、保存食として日本人が古来食してきた、塩と紫蘇だけで作られた正真正銘の梅干しである。







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