東日本地域と星の名 2019/08/25

【星の伝承体系】
 日本の星の名は、それぞれが個別に伝承されてきたわけではなく、多くは地域ごとにまとまった体系がみられます。この体系は、 地域の立地条件や自然環境、歴史、生業、暮らしのあり方などさまざまな要素と密接にかかわり合い、しかも星の利用実態に基づく 伝承を基盤として成立している場合が多いようです。
 当館が公開している星の名を体系別に整理すると、ほぼ23種の星あるいは星群によって構成されていることがわかります。 基本的には、これらの組み合わせがその地域における主体的な利用体系となるわけです。一つの対象に対して複数の呼称が存在する ことを考慮すると、実際の星名体系はもっと複雑であり、同一地域内において異なる体系が伝承されているケースもあります。
 星が暮らしに活かされていた時代には、多くの星が利用体系に組み込まれていたものと推測されますが、昭和40年代以降に そうした時代が終焉を迎えてからは、星利用の体系が次第に簡素化された傾向が窺えます。これらは、地域や生業の枠を超えて 代表的な星(星群)へと次第に収斂されていったためと考えられます。おうし座のプレアデス星団やオリオン座の三つ星、おおぐま座の 北斗七星がそのもっとも顕著な事例として挙げられます。

【地域別の体系】
 この展示における東日本とは、北海道から三重県までの24都道県が含まれます。このうち、当館が行った星の名に関する 調査において体系的な伝承が記録された地域は、東日本のすべての自治体に及びます。ただし、関東地方やその周辺の一部地域では 多くの調査事例があるものの、青森県を除く東北や北陸、信越、中部地方については2008年以降に本格的な調査を開始して いますので、体系的な地域特性を示す十分な記録となっていない事例もみられます。また、関東以外の地域では海のない県を除き、 沿岸部(漁港付近)での伝承記録を主体とした展示となっておりますので、これら地域の記録については必ずしも全域の特性を 示したものではないことをご理解ください。
 したがって、北海道や青森県、関東地方およびその周辺地域の一部において複数の事例が確認されている地域については、 できる限り個別の星名体系を示しながら地域ごとに星の「利用体系」と「星名体系」の双方について解説を行っています。 一方、事例が少ない地域においてはそれが代表的な体系とは言えないため、複数の記録を整理して参考資料として掲げてあります。
 表記については、地域別に対象となる星(星群)と伝承された星の名を一覧表の形式で示しました。掲載の順序は、 概ね北天の星座からはじまり、春の星座、夏の星座、秋の星座、冬の星座、南天の星座、惑星という構成になっています。

北海道 2017/07/21

【利用体系】
 北海道の記録は、西部および 南部沿岸域の漁村部における聞きとり調査が中心です。西部の日本海沿岸一帯は、かつて鯡漁で 活気を呈した地域でしたが、その灯が消えてからは、地先の沿岸漁業を主体とした営みが続いて きました。大正から昭和の時代には、沿岸でのイカ釣り漁がさかんに行われ、その際に利用された 星が一つの体系となってのこされています。ただし、これらはその地で独自に生まれたものではなく、 多くは本州からの出稼ぎや移住などによって伝えられたものです。
 小樽市から積丹半島を介して岩内町にいたる地域では、小さな漁師町が連なっており、ここで 集中的な調査を行った1970年代には、年配のイカ釣り経験者であれば、ほとんどの人が何らかの星の 伝承を記憶していました。これらは、ヤクボシと称されて代々受け継がれてきたものです。この 地域のイカ釣漁は秋を最盛期としており、したがって、この時期に東天から現れる星が利用上の 中心的な役割を担っていました。もっとも一般的な利用体系は、ぎょしゃ座のカペラ・おうし座の プレアデス星団とアルデバラン・オリオン座の三つ星および周辺の他・おおいぬ座のシリウス・そして 金星の組み合わせです。これらは、北海道に限らず、イカ釣り漁あるいは他の漁業においても特に注目 された星として知られています。そのほか、一部の地域でこぐま座の北極星やおおぐま座の北斗七星の 利用が認められます。
 その後、2017年に渡島半島南部沿岸域の調査を実施したところ、積丹半島の調査から41年を経過した 現在もイカ釣りの星の伝承を記録することができました。伝統的なイカ釣り漁が姿を消して既に半世紀 以上経ちますが、この地域においてもおうし座のプレアデス星団からアルデバラン、オリオン座の三つ星、 おおいぬ座のシリウス、そして金星へと続く一連の星々について、その利用体系が明らかになりました。

【星名体系】
 西部地域では、ぎょしゃ座でノトボシやサキボシ系が主体となっています。ノトボシは、 本来越前や若狭地方(いずれも福井県)を中心に発生した呼称ですが、移住者などによって伝播・定着 したものと考えられます。プレアデス星団は、ほぼシバリ(スバル系)とウヅラ(ムツラ系)で占められ、 アルデバランもアカボシやアトボシ系が主流です。また、三つ星とその周辺のサンコウやマスボシも 典型的なタイプといえるでしょう。シリウスは、アトボシ系と色によるアオボシを主体としていますが、 金星ではどの地域も夜明け前の明星を対象としており、地域による多様性が認められます。シバリや アカボシ、サンコウ、アオボシなどは、日本海の北陸地方や東北沿岸地域と類似のパターンが形成されて いることから、ノトボシと同様にこれらの地域から伝えられたものと考えてよいでしょう。
 なお、渡島半島南部における星名伝承もプレアデス星団がムツラボシ系、アルデバランはアカボシ、 三つ星はサンコウまたはミツボシ、そしてシリウスがアオボシという具合に、ほぼ類似のパターンが 認められます。
 以上のように、北海道においては利用体系、星名体系ともに他の地域から影響を受けたものが基本であり、 少なくとも漁業に関しては、独自の発想に基づく呼び名はほとんど認められません。ただし、アイヌ民族には 独自の星の文化があります。これらを調査・分類した資料がいくつか発表されていますが、現地調査では、 登別市においてニサッサオッノチウという金星の呼称を一つだけ記録しています。

積丹半島北部沿岸地域の星名体系T

星座(星群) 積丹郡積丹町A 積丹郡積丹町B 積丹郡積丹町C
 おおぐま座 カジボシ
 ぎょしゃ座 サキボシ
 プレアデス星団@ シンバリ ムジナ シバリ
 プレアデス星団A ウヅラボシ ナナツボシ ナナツボシ
 アルデバラン@ アカボシ アカボシ
 アルデバランA アトボシ ムジナノアトボシ
 三つ星@ サンコウ サンコウ
 三つ星A ミツボシ タケノフシ
 三つ星・他 マスボシ マスボシ
 おおいぬ座@ アオボシ アオボシ アオボシ
 おおいぬ座A サンコウノアトボシ
 金 星@ ヨアケノミョウジョウ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金 星A ヨアケノホシ クレノミョウジョウ アケノホシ
 金 星B メシタキボシ メシタキボシ

積丹半島北部沿岸地域の星名体系U

星座(星群) 積丹郡積丹町D 積丹郡積丹町E 積丹郡積丹町F
 こぐま座 ネノヒトツボシ キタノヒトツボシ
 おおぐま座 ナナツボシ
 ぎょしゃ座 ウヅラノサキボシ
 プレアデス星団@ シンバリ ムヅラボシ
 プレアデス星団A ウヅラ ウヅラボシ ウヅラボシ
 プレアデス星団B ムジナボシ
 アルデバラン アトボシ アカボシ アカボシ
 三つ星@ サンコウ サンコウ
 三つ星A サンコボシ
 三つ星・他@ マスボシ マスボシ
 三つ星・他A サカマス
 おおいぬ座 マスノアトボシ アオボシ アオボシ
 金 星@ アケノミョウジョウ アケノミョウドウ アサボシ
 金 星A メシタキボシ クレノホシ
 金 星B クレノミョウドウ

積丹半島南部沿岸地域の星名体系T

星座(星群) 古平郡古平町 余市郡余市町A 余市郡余市町B
 ぎょしゃ座 ノトボシ
 プレアデス星団@ シバリ ムツボシ
 プレアデス星団A ウヅラ ウヅラボシ ウヅラボシ
 アルデバラン アトボシ ツキガネ アカボシ
 三つ星@ サンコウ サンコウ
 三つ星A ミツボシ
 三つ星B カラツキ
 三つ星・他@ サカマス マスボシ
 おおいぬ座@ アオボシ アオボシ アオボシ
 おおいぬ座A サカマスノアトボシ
 金 星@ ヨアケノミョウジョウ アケノミョウジョウ アケノミョウドウ
 金 星A ヨアケボシ ヨアケボシ ヨアケボシ
 金 星B メシタキボシ

積丹半島南部沿岸地域の星名体系U

星座(星群) 岩内郡岩内町 古宇郡泊村 古宇郡神恵内村
 ぎょしゃ座 ノトボシ ノトボシ ノトボシ
 プレアデス星団@ シバリ シバリ シバリ
 プレアデス星団A スバル ウヅラボシ
 プレアデス星団B ホウキボシ
 アルデバラン アカボシ アカボシ アカボシ
 三つ星@ ジョウトウヘイボシ サンコウ サンコウ
 三つ星A ミツボシ ミツボシ
 三つ星・他 マスボシ マスボシ
 おおいぬ座 アオボシ アオボシ アオボシ
 金 星@ アケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ アケノミョウジン
 金 星A アケノホシ
 金 星B メシタキボシ メシタキボシ

西部沿岸地域の星名体系

星座(星群) 小樽市A 小樽市B 増毛郡増毛町
 おおぐま座 ナナツボシ
 プレアデス星団@ ムジナボシ シバリ ムツボシ
 プレアデス星団A ウヅラ ウヅラボシ ウヅラボシ
 プレアデス星団B ナナツボシ
 三つ星@ サンコウ サンコウ サンコウ
 三つ星A ミツボシ
 三つ星・他 マスボシ マスボシ マスボシ
 おおいぬ座 アオボシ アオボシ アオボシ
 金 星@ アケノミョウドウ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金 星A ヨアケボシ ヨイノミョウジョウ ヨアケノホシ
 金 星B メシタキボシ アカボシ

渡島半島南部沿岸地域の星名体系T

星座(星群) 函 館 市 北 斗 市 上磯郡木古内町
 こぐま座 ヒトツボシ
 おおぐま座 ナナツボシ ナナツボシ
 プレアデス星団 ムヅラボシ ムジラ ムジナボシ
 アルデバラン アカボシ アカボシ アカボシ
 三つ星@ サンコウ サンコウ
 三つ星A ミツボシ ミツボシ ミツボシ
 おおいぬ座 アオボシ アオボシ アオボシ
 金 星@ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金 星A ヨアケボシ

渡島半島南部沿岸地域の星名体系U

星座(星群) 松前郡福島町 松前郡松前町 檜山郡上ノ国町
 こぐま座
 おおぐま座 ナナツボシ ナナツボシ ナナツボシ
 プレアデス星団@ ムヅラボシ ウヅラ
 プレアデス星団A カップ
 アルデバラン アカボシ
 三つ星 ミツボシ ミツボシ ミツボシ
 おおいぬ座 アオボシ アオボシ
 金 星@ アケノホシ アケノホシ
 金 星A アケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ
 金 星B ミョウジョウ
 金 星C ヨイボシ

青森県 2020/03/25

【利用体系】
 青森県では、1970年代に太平洋側の下北地方および八戸周辺で調査を行いましたが、その後約40年振りに再開 されました。いずれも、イカ釣り漁が行われていた沿岸域が対象あり、星の利用は北海道とほぼ同じ体系をもっています。 これは、ぎょしゃ座・プレアデス星団・アルデバラン・三つ星・おおいぬ座・金星と連なるもので、東通村では、さらに オリオン座のベラトリックス(γ)やサイフ(κ)、ふたご座の二星などを加えた構成となっています。また、八戸 周辺域では、こぐま座とおおぐま座の伝承もみられます。
 イカ釣りに利用される星々は、一連のつながりが重要視されるため、個々の呼び分けよりも主要な星(プレアデス星団 と三つ星)に対する前後の位置関係を的確に把握する必要がありました。それを端的に示しているのが、サキボシや マエボシ、アイボシ、アトボシなどの表現です。利用する星の種類が多ければその識別も煩雑となり、同じアトボシでも 全体の構成からみて明らかに異なる星を呼び分けている事例を下北地方で確認することができます。

【星名体系】
 まず、ぎょしゃ座では風間浦村にノトボシがあり、福井県方面からの移住者による伝播と考えられます。 プレアデス星団の場合、下北地方ではムツラ系を主体にスバル系の併存がみられます。アルデバランは、いずれの 地域もプレアデス星団からみたアトボシ系統の呼称が主体です。三つ星の星名は、下北地方ではサンコウが主体ですが、 八戸地方にはタケノフシという独自の呼び名がみられます。シリウスは、ほぼアオボシに統一された分布となっており、 北海道との共通性が明瞭に表れています。
 なお、金星については、やはり夜明け前の金星に対する呼称が対象であり、 地域的な特性がみられます。いずれにしても、青森県沿岸域における星名方言の特徴は、イカ釣り漁を主体とした利用 体系と星名体系により構築されているといえるでしょう。

下北地方沿岸地域の星名体系T

星座(星群) 下北郡大間町A 下北郡大間町B 下北郡風間浦村
 ぎょしゃ座 ノトボシ
 プレアデス星団@ ムジナボシ ムツナボシ シバリ
 プレアデス星団A ミヅラボシ
 アルデバラン ムジナノアトボシ ムツナノアトボシ シバリノアトボシ
 オリオン座(γ) サンコウノサキボシ
 三つ星@ サンコウ サンコウ サンコウ
 三つ星A サンコボシ
 三つ星・他 マスボシ
 おおいぬ座@ アオボシ アオボシ アオボシ
 おおいぬ座A サンコウノアトボシ サンコウノアトボシ
 金 星@ アケノミョウジョウ アケノミョウドウ ヨアケノミョウジョウ
 金 星A ヨイノミョウジョウ クレノミョウドウ

下北地方沿岸地域の星名体系U

星座(星群) 下北郡大畑町 下北郡東通村A 下北郡東通村B
 おおぐま座 ナナツボシ ナナツボシ
 ぎょしゃ座@ サキボシ
 ぎょしゃ座A ムヅラノマエボシ
 プレアデス星団 ヒバリ ムヅラ ムヅラ
 アルデバラン アカボシ ムヅラノアトボシ アトボシ
 オリオン座(γ) アイボシアトボシ
 三つ星 サンコウノホシ サンコウ サンコボシ
 オリオン座(κ) アトボシ
 ふたご座 サンコノアトボシ
 おおいぬ座 アオボシ アオボシ アオボシ
 金 星@ アケノホシ アケノミョウドウ ヨアケボシ
 金 星A クレノホシ

東部沿岸地域の星名体系

星座(星群) 八戸市A 八戸市B 三戸郡階上町
 こぐま座 ホクセイ
 おおぐま座@ シチヨウ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒヤグ
 プレアデス星団 ムヅラ ムジナ
 アルデバラン ムヅラノアトボシ アトボシ
 三つ星@ サンコウ ミツボシ サンコウ
 三つ星A タケノフシ タケノフシ
 おおいぬ座 アオボシ アオボシ
 金 星@ ヨアケボシ アケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ
 金 星A ヨイノミョウジョウ

津軽地方沿岸地域の星名体系

星座(星群) 外ヶ浜町(*1) 鰺ヶ沢町(*2) 深 浦 町(*2)
 おおぐま座@ ヒシャク シャクシ
 おおぐま座A ナナツボシ
 プレアデス星団@ シバリボシ シバリ
 プレアデス星団A ヒバリ
 アルデバラン アカボシ
 三つ星 サンコウ
 三つ星・他 マスボシ マスボシ マスボシ
 おおいぬ座 アオボシ アオボシ アオボシ
 金 星@ アケノホシ アケノホシ
 金 星A アケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ

(*1)東津軽郡 / (*2)西津軽郡

岩手県 2017/10/22

【利用体系】
 岩手県では、1970年代の調査でわずかな記録があり、その後2015年からようやく沿岸域での本格的な調査を実施しています。 この地域では、かつてイカ釣り漁がさかんに行われていたことから、星の利用においてもいわゆるイカ釣りの役星に関する伝承が 多く確認されました。主な体系は、おうし座(プレアデス星団・アルデバラン)・オリオン座(三つ星・小三つ星)・おおいぬ座 (シリウス)・金星と続く一連の星々で、地域によってはこれにおおぐま座などが加わります。北国における典型的な利用体系を 示していると言えるでしょう。

【星名体系】
 おうし座では、プレアデス星団の星名の一つにオクサがあり、この地域で特徴的な伝播を示しています。また、オリオン座では 三つ星をサンコウと呼ぶ地域が多く、さらにこの三つ星と小三つ星を合わせたムヅラ(ムジラなどの転訛形が多い)が一般的な 星名となっています。さらに、おうし座のアルデバランやおおいぬ座のシリウスについては、サキボシやアトボシ系の名で呼び 分けている事例が確認されました。おおいぬ座では、シリウス以外にも南部沿岸域でδ・ε・ηの三星をサンカクと呼ぶ事例が あります。

北部沿岸地域の星名体系T

星座(星群) 下閉伊郡普代村A 下閉伊郡普代村B 下閉伊郡普代村C
 おおぐま座 ナナツボシ
 プレアデス星団 オクサ オクサ
 アレデバラン オクサノアトヒカリ ムヅラノサキボシ
 三つ星 サンコウ
 三つ星+小三つ星 ムヅラ ムヅラ
 おおいぬ座 ムヅラノアトボシ
 金星@ アケノホシ ヨアケボシ
 金星A

北部沿岸地域の星名体系U

星座(星群) 九戸郡洋野町 九戸郡野田村 宮古市
 おおぐま座 ヒシャクボシ ナナツボシ ナナツボシ
 プレアデス星団
 三つ星 サンコウ
 三つ星+小三つ星 ムジラ ムヅラ
 おおいぬ座 サンコウノアトボシ
 金星@ アケボシ オオボシ
 金星A ヨアケノミョウジョウ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星B ヨイノミョウジョウ

南部沿岸地域の星名体系

星座(星群) 釜石市 ◇◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇◇
 おおぐま座
 プレアデス星団 オクサ
 三つ星+小三つ星 ムヅラ
 おおいぬ座@ オオボシ
 おおいぬ座A サンカク
 金星@ ヨアケノオオボシ
 金星A

宮城県 2018/10/21

【利用体系】
 2014年より中部沿岸域の調査を開始しました。2011年の東日本大震災による影響が色濃く残るなかで、生活の再建と漁業の 復興が続いています。この地域は、養殖漁業のさかんなところですが、当初は星の伝承に関して本来の痕跡を辿ることが 難しい状況にありました。しかし、その後の北部沿岸域や内陸部での調査をとおして、伝統的なイカ釣り漁に伴う星の伝承等が 記録されるようになってきたところです。現在、利用が確認された星は、こぐま座・おおぐま座・おうし座・オリオン座・ おおいぬ座・金星という構成になっており、その他の星として従来の記録にはない星の観方が確認されています。

【星名体系】
 北部沿岸域の一部でジャクボシ−ジャクノアトボシ−ムヅラボシ−ムヅラノアトボシと続く典型的なイカ釣りの役星の記録が あります。このうちジャクボシはザクボシが転訛したものと考えられ、県内においても南三陸町歌津地区に特有の星名です。 オリオン座ではいわゆるムツラボシ系が北部沿岸域で一般的に伝承されており、さらに岩手県沿岸部へと連なる特性がみられます。 なお非日常的な現象として、明るい惑星同士の接近をカサネボシと呼ぶ事例が仙台市郊外にありました。

北部沿岸地域の星名体系

星座(星群) 本吉郡南三陸町A 南三陸町B 気仙沼市
 こぐま座 ネボシ
 おおぐま座 ナナツボシ シシャグボシ ナナツボシ
 プレアデス星団@ ジャクボシ
 プレアデス星団A ジャグ
 アルデバラン ジャクノアトボシ
 三つ星 ミツボシ
 三つ星+小三つ星@ ムヅラボシ ムジナ ムツラ
 三つ星+小三つ星A ムジラ
 おおいぬ座 ムヅラノアトボシ ムジナノアトボシ
 金星@ ヨアケボシ ヨアケボシ ヨアケボシ
 金星A ヨアケノミョウジョウ
 金星B ヨイノミョウジョウ

中部沿岸地域の星名体系T

星座(星群) 宮城郡松島町 東松島市 牡鹿郡女川町
 おおぐま座 ナナツボシ ナナツボシ ナナツボシ
 プレアデス星団
 三つ星 ミツボシ ミツボシ
 金星@ ヨアケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

中部沿岸地域の星名体系U

星座(星群) 塩竈市 宮城郡七ヶ浜町 ◇◇◇◇◇◇◇
 おおぐま座
 プレアデス星団
 三つ星 サンダイボシ ミツボシ
 金星@ アケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ
 金星A ヨアケボシ

内陸地域の星名体系

星座(星群) 仙台市若林区 ◇◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇◇
 おおぐま座 ナナツボシ
 プレアデス星団
 三つ星
 金星@ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ
 月に接近した星 チカボシ
 近接した星 カサネボシ

秋田県 2016/11/30

【利用体系】
 秋田県では、南部沿岸地域と男鹿半島において2012年の調査記録があります。また、2016年には北部沿岸地域でも調査が行われ ました。これらは、いずれも漁港やその周辺地域における主に漁業者を対象とした聞きとりによるものです。ただし、伝承の内容は かつてのイカ釣り漁(伝統的な漁具を使った手釣り漁法)を主体に、その当時指標とされた星についての断片的な記録にとどまって います。
 本来の利用体系は、日本海北部沿岸域で定番となっている一連の星(ぎょしゃ座・プレアデス星団・アルデバラン・三つ星・ おおいぬ座・金星などの基本体系)で構成されていたものと考えられますが、これまでの調査で基本形を総体的に伝承している地域は なく、イカ釣り漁の変化(装備の近代化・省力化)や沿岸域におけるイカ釣り漁そのものの衰退などにより、多くの伝承が失われて きた現状をよく表しています。

【星名体系】
 おうし座では、プレアデス星団の呼称としてスバル系のシバリやヒバリが南部沿岸域に、さらにムツラボシ系のムツボシが男鹿半島に 分布します。また、オリオン座では三つ星および周辺の星を含めた呼び名としてサンコウやマスボシなどが伝承さています。基本系 以外では、おおぐま座にナナツボシやヒシャクボシがあり、金星のオオボシとともに潜在的な伝承力の強さをみせています。

男鹿半島沿岸地域の星名体系

星座(星群) 男鹿市A 男鹿市B 男鹿市C
 おおぐま座 ナナツボシ ナナツボシ ナナツボシ
 プレアデス星団 スバル ムツボシ
 三つ星@ ミツボシ ミツボシ ミツボシ
 三つ星A サンコウ
 金 星@ アケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ
 金 星A オオボシ

南部沿岸地域の星名体系

星座(星群) にかほ市A にかほ市B 由利本荘市
 おおぐま座 ヒシャクボシ ヒシャクボシ ナナツボシ
 プレアデス星団 ヒバリ シバル
 アルデバラン・他 モッコボシ
 三つ星@ ミツボシ
 三つ星A サンコウ サンコウ
 三つ星・他 マスボシ
 金 星 アケノミョウジョウ ヨアケボシ ヨアケボシ

北部沿岸地域の星名体系

星座(星群) 山本郡八峰町 ◇◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇◇
 おおぐま座@ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャクボシ
 プレアデス星団
 三つ星 ミツボシ
 金星@ ヨアケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ

山形県 2018/10/21

【利用体系】
 山形県では、飽海郡遊佐町から酒田市、鶴岡市へと連なる沿岸域と内陸の一部で記録があります。イカ釣り漁や タイ釣り漁を主体とした漁業での利用が基本ですが、日本海の孤島として知られる飛島と本州沿岸域の調査には20年 以上の年代差があり、星の名の伝承などにおいて、その変化の一端を窺うことができます。県内で最もイカ釣り漁が 盛んな飛島では、基本的にぎょしゃ座・プレアデス星団・アルデバラン・三つ星・おおいぬ座・金星という体系を示し、 この一連の星群よりも早く、北国では利用されていない秋の星座「みなみのうお座」のフォーマルハウトが登場します。 これらは、イカ釣りの際のヤクボシとして利用されてきました。
 一方、沿岸域では古くからマダイの延縄漁が行われ、鶴岡市温海で利用された星々はこぐま座・おおぐま座・さそり座・ おうし座・オリオン座・金星という伝統的な体系の一端が窺えます。なお、内陸部では調査事例が少なく、断片的な 利用に止まっています。

【星名体系】
 プレアデス星団はシバリ(スバル系)が、三つ星はサンコウが主体です。また、おおいぬ座シリウスのアオボシや 金星のオオボシも、漁業では一般的な星名体系といえるでしょう。これらは、北日本のイカ釣り漁で利用された星名体系と ほぼ共通しますが、沿岸域では独自の体系がみられます。特にオヤカタボシ〈北極星〉やガヂャガヂャボシ〈プレアデス 星団〉、オヤコボシ〈さそり座〉などは、ローカル色の強い呼び名となっています。

北部沿岸・島嶼地域の星名体系

星座(星群) 酒田市(飛島) 酒田市A 飽海郡遊佐町
 おおぐま座 ヒシャク
 みなみのうお座 キョクボシ
 ぎょしゃ座
 プレアデス星団 シンバリ
 アルデバラン シンバリノアトボシ
 三つ星 サンコウ サンコウ
 おおいぬ座@ アオボシ アオボシ
 おおいぬ座A サンコウノアトボシ
 金 星@ オオボシ メシタキボシ アケノミョウジョウ
 金 星A ヨイノミョウジョウ

南部沿岸地域の星名体系

星座(星群) 鶴岡市A 鶴岡市B ◇◇◇◇◇◇◇
 こぐま座 オヤカタボシ
 おおぐま座 ナナツボシ ナナツボシ
 さそり座 オヤコボシ
 プレアデス星団 ガヂャガヂャボシ
 ヒアデス星団 モッコボシ
 三つ星@ サンコウ
 三つ星A ミツボシ ミツボシ
 金 星@ オオボシ ヨアケボシ
 金 星A ミョウジョウ アサノミョウジョウ
 金 星B ヨイノミョウジョウ

内陸地方の星名体系

星座(星群) 山形市 東村山郡中山町 ◇◇◇◇◇◇◇
 おおぐま座 ナナツボシ ナナツボシ
 プレアデス星団
 三つ星 ミツボシ
 金星@ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ
 金星B ヒトツボシ

福島県  2018/10/21

【利用体系】
 福島県には、浜通り・中通り・会津地方という地域区分があり、それぞれに特徴的な文化を育んでいます。調査は1970年代に 中通りや会津地方の一部で実施され、その後2008年から浜通りを中心として再開されています。これまでに確認された星の利用は こぐま座・おおぐま座・おうし座(プレアデス星団)・オリオン座(三つ星)・金星というごく一般的な構成で、地域によって こと座やわし座などが加わります。

【星名体系】
 調査事例が少なく、体系としての特性は不明です。ただし、本来の伝統的な星名という視点でみると、プレアデス星団 についてはムツボシやムツラ系が、また三つ星については、サンタイボシ系やサンジョウ系の呼び名が広く分布していたものと 推察されます。会津地方のナナトボシ(七つ星)やサンジョノホシ(三星の星)などは独自の転訛を遂げた事例といえるでしょう。

浜通り地方の星名体系

星座(星群) いわき市A いわき市B ◇◇◇◇◇◇◇
 おおぐま座 ナナツボシ
 プレアデス星団
 三つ星 サンダイシサマ サンボウシ
 金星@ アケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ
 金星A ヨノミョウジョウ

中通り地方の星名体系

星座(星群) 伊達郡霊山町 白河市 二本松市
 こぐま座 ホクシン
 おおぐま座 ナナツボシ
 こと座 オリヒメ
 わし座 ヒコボシ
 プレアデス星団 ムヅラボシ
 三つ星 サンダイショウ ミツボシ ミツボシ
 金星@ ヨアケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ
 月に接近した星 チカボシ

会津地方の星名体系

星座(星群) 耶麻郡北塩原村 南会津郡檜枝岐村 ◇◇◇◇◇◇◇
 おおぐま座
 プレアデス星団 ムツボシ ナナトボシ
 三つ星@ サンタイボシサマ サンジョノホシ
 三つ星A ミツボシ
 金星@ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A クレノミョウジョウ

茨城県 2019/04/25

【利用体系】
 利根川中・下流域一帯を中心とし、県中部から北部にかけて調査を継続しています。利用パターンは、こぐま座・おおぐま座・ プレアデス星団・三つ星・金星という体系が基本ですが、地域によってこと座やわし座が加わります。プレアデス星団については、 調査時点ですでに伝承が消失したとみられる状況がみられ、沿岸域についてもその傾向は変わりません。本来は、漁業においても こぐま座・おおぐま座・プレアデス星団・三つ星・金星という伝統的な体系が存在していたものと考えられます。

【星名体系】
 プレアデス星団の星名は、基本的にムツラボシ系でいくつかの事例が確認されています。三つ星については、サンチョウボシを 基本とするものの、シャクゴボシが県南部に広く分布し、他にサンジャクボシなどもあります。北部ではサンダイシ系の転訛事例が 新たに記録されたほか、全体として変化に富んだ伝承がみられます。また、おおぐま座はナナツボシが主体ですが、猿島郡の一部 地域におけるタマンジャクという星名はこの地域特有の伝承といえるでしょう。なお、沿岸域の漁業者に対する調査では、ナナツ ボシ(北斗七星)とミツボシ(オリオン座)を基準とする簡素な体系が大半を占めています。

南西部地域の星名体系T

星座(星群) 常総市 猿島郡三和町 猿島郡五霞村
 おおぐま座@ ヒシャクボシ タマンジャク
 おおぐま座A ナナツボシ
 プレアデス星団 オムツラサマ
 三つ星 シャクゴボシ シャクゴボシ サンチョボシ
 金星@ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ

南西部地域の星名体系U

星座(星群) 筑西市 古河市 桜川市
 こぐま座 ヒトツボシ
 おおぐま座@ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャクボシ ヒシャクボシ
 プレアデス星団
 三つ星@ シャクゴボシ シャクゴボシ
 三つ星A ミツボシ ミツボシ
 金星@ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

南中部・南東部地域の星名体系

星座(星群) 土浦市 龍ヶ崎市 稲敷郡東町
 おおぐま座 ヒシャクボシ ナナツボシ ナナツボシ
 プレアデス星団
 三つ星@ シャクゴボシ サンジャクボシ サンチョウノホシ
 三つ星A ジョウトウヘイボシ
 金星@ アケノミョウジョウ アケノミョウジン アケノミョウジンサマ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジン ヨイノミョウジンサマ

中部地域の星名体系

星座(星群) 小美玉市 笠間市 那珂市
 おおぐま座 ナナツボシ ナナツボシ ナナツボシ
 プレアデス星団@ ムツボシ
 プレアデス星団A ムツラボシ
 三つ星@ シャクゴボシ シャクゴボシ サンダイシ
 三つ星A ミツボシ ミツボシ ミツボシ
 金星@ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ
 金星B ヒトツボシ

北部地域の星名体系

星座(星群) 常陸大宮市 ◇◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇◇
 おおぐま座@ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャクボシ
 こと座 オリヒメ
 わし座 ヒコボシ
 プレアデス星団
 三つ星 サンデッシサマ
 金星@ ヨアケノミョウジン
 金星A ヨアケボシ

沿岸地域の星名体系

星座(星群) 神栖市 ひたちなか市 日立市
 おおぐま座 ナナツボシ ナナツボシ ナナツボシ
 プレアデス星団
 三つ星@ ミツボシ ミツボシ ミツボシ
 三つ星A サンボシ サンダイサマ
 金星@ アサノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ
 金星B ヨアケボシ ヨアケノホシ

栃木県 2018/05/20

【利用体系】
 利根川流域を含めた南部地域および中部地域で調査記録があります。しかし、その多くが2008年以降の調査であるため、 本来のこの地域における利用体系は明らかになっていません。茨城県南部と同様に、おおぐま座・プレアデス星団・三つ星・ 金星が基本の体系と考えられますが、背景となる生業は農業を基幹として一部紡織などにもかかわる要素がみられます。

【星名体系】
 おおぐま座では、大きな伝承力をもつナナツボシの存在が目につきます。三つ星については、利根川下流域における特徴の 一つであるサンチョウボシの系統とシャクゴボシが優占する傾向を示しつつも、その伝承力は相当に衰えているものと推測 されます。中東部では、新たにサンダイシ系の呼称も確認されました。また、プレアデス星団には、ナナツボシとオムツラ サマ、さらにホウキボシ系の記録がありますが、いずれも関東地方においては他の県でも伝承されている呼称です。ただし、 ナナツボシの場合は、おおぐま座の代表的な呼称として知られており、ホウキボシも一般的には彗星をさす場合が多いので、 注意を要します。

南部地域の星名体系T

星座(星群) 下都賀郡野木町A 下都賀郡藤岡町 小山市
 おおぐま座 ナナツボシ ナナツボシ
 プレアデス星団 ナナツボシ
 三つ星@ サンチョウボシ シャクゴボシ
 三つ星A ミツボシ ミツボシ
 金星@ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ
 月に接近した星 チカボシ

※藤岡町は、合併により現在栃木市に属しています.

南部地域の星名体系U

星座(星群) 足利市 佐野市 下都賀郡岩舟町
 おおぐま座@ ナナツボシ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャクボシ
 わし座 ヒコボシ
 プレアデス星団
 三つ星@ サンチョウボシ サンチョウボシ
 三つ星A ミツボシ ミツボシ ミツボシ
 三つ星B サンジンサマ
 金星@ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ
 金星B アケボノノミョウジョウ
 月に接近した星 チカボシ

南部地域の星名体系V

星座(星群) 栃木市 下野市A 下野市B
 おおぐま座@ ナナツボシ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャクボシ ヒシャクボシ
 おおぐま座B シャクシ
 こと座&わし座 タナバタノホシ
 プレアデス星団
 三つ星@ シャクゴボシ シャクゴボシ シャクゴボシ
 三つ星A ミツボシ
 金星@ アケノミョウジン アケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジン ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ
 金星B イッポンボシ ヒトツ

南部地域の星名体系W

星座(星群) 真岡市 下都賀郡野木町B ◇◇◇◇◇◇◇
 こぐま座
 おおぐま座@ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャクボシ
 プレアデス星団 ホウキボシ オムツラサマ
 三つ星 ミツボシ サンチョウボシ
 金星@ ヨアケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

中部地域の星名体系T

星座(星群) 鹿沼市 日光市 那須烏山市
 こぐま座 ヒトツボシ
 おおぐま座@ ナナツボシ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャクボシ
 プレアデス星団 オムツラサマ ホウキボシ
 三つ星@ サンチョウサマ サンデッシャマ
 三つ星A ケン
 三つ星B ミツボシ ミツボシ
 金星@ アケノミョウジョウ アケガタノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

群馬県 2016/10/02

【利用体系】
 群馬県では、利根川流域や西部および北部の山間域などで調査を行ないました。利根川流域における利用体系は、 茨城県や栃木県などと同様におおぐま座・プレアデス星団・三つ星・金星が基本です。ただし、プレアデス星団に ついては、伝承そのものの崩壊が進んでいます。他の山間域も、基本は変わらないものと考えられますが、地域に よりプレアデス星団やおおぐま座は次第に伝承力を失いつつあるようです。

【星名体系】
 プレアデス星団では、平野部でオモツラサマが記録されています。三つ星は、利根川流域にサンジョウ系と サンチョウ系を分ける明瞭な境界線が存在しており、これより東はサンチョウ系ですが、西側から北部 地域はサンジョウ系が一般的となります。ただし、南西部ではミツボシ系が主体です。また、おおぐま座に ついては、北斗七星のナナツボシが主体となっています。

南部地域の星名体系

星座(星群) 邑楽郡板倉町 新田郡尾島町 多野郡上野村
 おおぐま座 ナナツボシ ナナツボシ
 プレアデス星団 オモツラサマ
 三つ星 サンチョウボシ サンジョサマ ミツボシ
 金星@ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ

中部地域の星名体系

星座(星群) 安中市 桐生市 渋川市
 おおぐま座@ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャクボシ ヒシャクボシ ヒシャクボシ
 こと座&わし座 タナバタノホシ
 プレアデス星団
 三つ星@ ミツボシ ミツボシ
 三つ星A サンジョウノホシ サンジョサマ
 金星@ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ
 金星B ヒグレノミョウジン

北部地域の星名体系T

星座(星群) 高山村 沼田市 みなかみ町
 おおぐま座@ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャクボシ ヒシャク
 プレアデス星団
 三つ星 サンジョウサマ ミツボシ サンジョサマ
 金星@ アケノミョウジョウサン アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウサン ヨイノミョウジョウ クレノミョウジョウ

北部地域の星名体系U

星座(星群) 中之条町 ◇◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇◇
 こぐま座 ヒトツボシ
 おおぐま座@ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャク
 プレアデス星団
 三つ星@ サンジョウサン
 三つ星A オサンジョサマ
 三つ星B ミツボシ
 金星@ ヨアケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ

埼玉県 2020/03/25

【利用体系】
 埼玉県では、ほぼ全県的な調査を実施し、各地域における利用体系が明らかとなっています。まず、東部地域 ではおおぐま座・プレアデス星団・三つ星・金星を基本として、これにからす座やカシオペア座、オリオン座の 小三つ星が加わる場合があります。中部地域になると、からす座が標準体系に加わり、おおぐま座・カすら座・ プレアデス星団・三つ星・金星というパターンを形成し、地域によってこぐま座やカシオペア座、三つ星付近の 四辺形などが付加されます。さらに、西部地域ではカシオペア座が標準化され、これを基本形としてこぐま座や さそり座三星、ヒアデス星団、小三つ星、木星が加わり、県内でもっとも多様な利用形態が伝承されています。
 総体的に、東部から中部、さらに西部へと移行するにしたがい、利用体系は複雑になる傾向を示していると いえるでしょう。ただ、これが伝承どおりに地理的傾斜によるものか、あるいは時代や社会の変化に基づくもの かは明らかではありません。埼玉県においては、東部で稲作が、中部では畑作および稲作が、そして西部の山間域 では製炭業を含めた山の仕事が一つの大きな特性として存在していますので、こうした生業や暮らしのあり方が、 星の利用体系にも深くかかわっているものと考えられます。

【星名体系】
 プレアデス星団では、東部でオムツラサマやムツボシ系が、中部ではムツボシ系を主体として、一部スイノウ ボシやクヨウボシなどが伝承されています。西部では、スイノウボシが優占しています。三つ星は、地域による 分布特性が比較的明瞭で、東部ではサンチョウ系が、北部から北西部の丘陵地ではサンジョウ系が、また 北西部の平野部から山間部にかけてミツボシが優占する分布を示しています。おおぐま座の場合は、平野部で ナナツボシが、山間域ではヒチヨウ系が優占する傾向が認められます。からす座においても、平野部でヨツボシが、 山間域ではカワハリ系の優占が顕著です。こららの星の利用実態については、三つ星や北斗七星、からす座四辺形に 伝承の集中化がみられますが、プレアデス星団では明確な利用に関する伝承は認められません。
 全体として、埼玉県内では、内陸部における星の利用に関して、ほぼ類型的な構図が維持されてきたものと理解 することができます。そこで育まれた特徴的な呼び名として、スイノウボシやショウギボシ、カンムリボシなどが 記録されています。もう一つの特性は、星名体系の多くが、数詞に基づく呼称で構成されている点です。ムツボシ (プレアデス星団)、ミツボシ(三つ星)、ナナツボシ(北斗七星)を基本形として、地域によってはヨツボシ (からす座)やイツツボシ(カシオペア座)を加えた体系となっています。

《 埼玉県の地域区分 》

星名伝承は、県東部地域、中部地域、西部地域の三区分によって整理し、それぞれ 以下の郡部に対応しています。

☆東部《主に低地帯》
 北葛飾郡・北埼玉郡・南埼玉郡・北足立郡
☆中部《主に台地・丘陵帯》
 大里郡・比企郡・入間郡
☆西部《主に丘陵・山地帯》
 児玉郡・秩父郡・入間郡(一部)

東部地域の星名体系T

星座(星群) 幸手市 上尾市 浦和市
 おおぐま座 ナナチョウボシ ナナツボシ ナナツボシ
 からす座 ヨツボシ
 カシオペア座 イツツボシ イツツボシ
 プレアデス星団@ オムツラサマ ムツボシ
 プレアデス星団A ロクチョウボシ
 三つ星 オオサンチョウ ミツボシ サンチョウボシ
 小三つ星 コサンチョウ
 金星@ ミョウチョウボシ アケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ
 金星A イッチョウボシ ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

東部地域の星名体系U

星座(星群) 北埼玉郡北川辺町 南埼玉郡宮代町 北葛飾郡庄和町
 おおぐま座 ナナツボシ ナナツボシ ナナツボシ
 ペガスス座 トマスノホシ
 プレアデス星団
 三つ星@ ミツラボシ サンチョウボシ サンチョウサマ
 三つ星A ミツボシ ミツボシ
 金星@ トビアガリ アケボシ
 金星A ヨイノミョウジョウ

※北川辺町は合併により現在加須市に、庄和町は現在春日部市に属しています.

東部地域の星名体系V

星座(星群) 加須市 蓮田市 北埼玉郡騎西町
 おおぐま座@ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座A ナナチョウ
 おおぐま座B ヒシャク ヒシャクボシ
 三つ星@ サンチョウボシ サンチョウボシ サンチョウボシ
 三つ星A ミツボシ ミツボシ ミツボシ
 金星@ アケノミョウジン ヨアケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジン ヒグレノミョウジョウ
 金星A イチバンボシ イチバンボシ

※騎西町は合併により現在は加須市に属しています.

中部地域の星名体系T

星座(星群) 所沢市 入間市 東松山市
 こぐま座 ミョウケンサマ
 おおぐま座@ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャクボシ ヒシャクボシ
 からす座 ヨツボシ
 カシオペア座 イツツボシ
 こと座・わし座 メオトボシ
 プレアデス星団@ ムツボシ ムツボシ ムツボシ
 プレアデス星団A ホウキボシ
 三つ星 ミツボシ ミツボシ ミツボシ
 三つ星・他 カンムリボシ
 金星@ ヨアケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ
 金星A クレノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

中部地域の星名体系U

星座(星群) 比企郡小川町 大里郡寄居町 大里郡川本町
 おおぐま座 ヒシャクボシ ナナツボシ ナナツボシ
 からす座 ヨツボシ ヨツメ
 プレアデス星団@ ムツボシ ムツボシ クヨウセイ
 プレアデス星団A ホウキボシ スイノウボシ ムツボシ
 三つ星 サンジョウサマ サンジョウボシ サンジョサマ
 金星@ アケノミョウジョウ トンビアガリ アケノミョウジョウ
 金星A クレノミョウジョウ ヒグレノミョウジョウ ヒグレノミョウジョウ

中部地域の星名体系V

星座(星群) 川越市 深谷市 比企郡都幾川村
 おおぐま座@ ナナツボシ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャクボシ
 プレアデス星団@ ムツボシ ムツボシ
 プレアデス星団A ムツラボシ スイノウボシ
 三つ星@ サンジョサマ サンジョウサマ
 三つ星A ミツボシサマ ミツボシサマ
 三つ星B サンジョノホシ ジョウトウヘイノホシ
 金星@ ヨアケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ アケノミョウジョウサマ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウサマ

※都幾川村は合併により現在はときがわ町になっています.

西部地域の星名体系T

星座(星群) 飯能市 入間郡名栗村 秩父郡横瀬町
 こぐま座 キタヒトサマ
 おおぐま座@ キタシッチョウ キタシッチョウ ヒチヨウ
 おおぐま座A ナナツボシ ナナツボシ
 からす座@ ヨスマ ヨツボシ ヨツマサマ
 からす座A カワハリサマ カアハラサマ
 さそり座 オヤカツギボシ
 カシオペア座 ゴヨウセイ
 プレアデス星団 スイノウボシ オマツボシ スイノウボシ
 ヒアデス星団 ツリガネボシ
 三つ星 ミツボシ ミツボシ ミツボシサマ
 金星@ ヨアケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ クレノミョウジョウ
 木星 ヨナカノミョウジョウ

西部地域の星名体系U

星座(星群) 秩父郡東秩父村 秩父郡皆野町 秩父郡小鹿野町
 おおぐま座@ ヒチジョウノホシ ヒシャクボシ ヒシャクボシ
 おおぐま座A ナナツボシ ナナツボシ
 からす座@ ヨツボシ オゼンボシ
 からす座A シカクボシ
 カシオペア座 イツツボシ
 プレアデス星団@ スイノウボシ スイノウボシ スイノウボシ
 プレアデス星団A ショウギボシ
 三つ星 サンジョウサマ サンジョウサマ ミツボシサマ
 小三つ星 ヨコサンジョウ
 金星@ アケボシ ヨアケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ
 金星A ユウボシ ヒグレノミョウジョウ

西部地域の星名体系V

星座(星群) 秩父市 秩父郡吉田町 秩父郡大滝村
 おおぐま座@ ヒチヨウノホシ ヒシャクボシ ヒシャクボシ
 おおぐま座A ナナツボシ ナナツボシ ナナツボシ
 からす座@ ヨツボシ ヨツボシ
 からす座A カワハリサマ カワハリサマ
 からす座B カアハリ
 プレアデス星団@ スイノウボシ スイノウボシ スイノウボシ
 プレアデス星団A ショウギボシ
 プレアデス星団B ホウキボシ ホウキボシ
 プレアデス星団C ナナツボシ
 三つ星 ミツボシサマ ミツボシサマ ミツボシサマ
 金星@ ヨアケノミョウゾウ アケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウゾウ ヨイノミョウジョウ
 金星B ヒグレノミョウゾウ クレノミョウジョウ ヒグレノミョウジョウ

※吉田町、大滝村のいずれも合併により現在は秩父市に属しています.

千葉県 2014/02/24

【利用体系】
 北部の利根川下流域、および外房・内房の沿岸域を中心に調査が行われています。利根川流域では、茨城県や埼玉県などと 同様に、おおぐま座・プレアデス星団・三つ星・金星を基本とする構図がみられます。歴史的には、江戸時代に行われた大規模な 工事による利根川の流路変更という背景がありますが、流域一帯の生業や文化は総じて多くの共通点をもっているようです。 かつては農業における具体的な利用が行われていたものと考えられますが、残念ながらこれまでの調査では確認されておりません。
 また、沿岸域のうち内房地域では、プレアデス星団・三つ星・金星という最も基本的な体系を有しており、特定の漁法における プレアデス星団の具体的な利用法が伝承されています。

【星名体系】
 利根川流域では、プレアデス星団がムツラボシ系、おおぐま座がナナツボシを主体とした星名体系がみられます。三つ星について は、サンチョウ系を主体に成田市以東ではサンチョウレンへと変化し、一部では茨城県からのシャクゴボシが利根川を越えて 点在する構図を示しています。いずれにしても、この流域一帯では対岸の茨城県と類似した星の文化圏を形成していることがわかり ます。
 さらに、漁業とのかかわりをみますと、内房地域ではプレアデス星団のスバル系や三つ星のサンギ(ボシ)系およびサンボシ系が 主体をなし、金星の呼称においてはさまざまなバリエーションが認められます。これらは、海を隔てた対岸の神奈川県とのかかわりを 強く示唆していますので、東京湾の漁業が星の文化の伝播に重要な役割を担っていたことは確かです。また、外房地域北部の銚子市 などでは北極星の利用に関する伝承が顕著に示されています

北部地域の星名体系T

星座(星群) 野田市 我孫子市 東葛飾郡関宿町
 おおぐま座 ナナチョウ ナナツボシ ナナツボシ
 プレアデス星団 オムツラサマ
 三つ星@ サンチョウボシ シャクゴボシ シャクゴボシ
 三つ星A サンジャクボシ
 金星@ ヨアケノミョウジョウ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

北部地域の星名体系U

星座(星群) 東葛飾郡沼南町 印旛郡本埜村 東印旛郡栄町
 おおぐま座@ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャクボシ
 プレアデス星団 オムツラサマ
 三つ星@ シャクゴボシ サンチョウノホシ サンチョウノホシ
 三つ星A ミツボシ
 金星@ アケノミョウジョウ ヨアケノホシ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

北部地域の星名体系V

星座(星群) 成田市 香取郡下総町 香取郡大栄町
 おおぐま座 ヒシャクボシ ナナツボシ ナナツボシ
 カシオペア座 イツツボシ
 プレアデス星団 ムヅラボシ
 三つ星@ サンチョウボシ サンチョウノホシ サンチョウレン
 三つ星A ミツボシ ミツボシ
 金星@ アケノミョウジョウ アケノホシ
 金星A ヨイノミョウジョウ

東京湾内湾地域の星名体系

星座(星群) 浦安市 船橋市 市川市
 おおぐま座 ナナツボシ
 プレアデス星団
 三つ星@ ミツボシ ミツボシ
 三つ星A サンテン サンボシ
 金星@ アケノミョウジョウ オオボシ ヨアケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ クレノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

内房地域の星名体系T

星座(星群) 袖ヶ浦市 木更津市 富津市
 こぐま座 ヒトツボシ
 おおぐま座 ナナツボシ ナナツボシ
 プレアデス星団@ スバル スバル
 プレアデス星団A ハゴイタボシ ホウキボシ
 三つ星@ サンボシ サンズイボシ
 三つ星A サンギ サンギ サンギリボシ
 三つ星B ミツボシ ミツボシ ミツボシ
 金星@ トビアガリ トビアガリ アケノミョウジン
 金星A アケノミョウジョウ オオボシ オオボシ
 金星B ヨイノミョウジョウ ミョウトボシ ヨイノミョウジン

内房地域の星名体系U

星座(星群) 安房郡鋸南町 南房総市 館山市
 こぐま座 キタノホウノホシ ヒトツボシ
 おおぐま座@ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャクボシ
 からす座 スパンカー
 こと座&わし座 タナバタノホシ
 プレアデス星団 スバリ スバリボシ スバリ
 三つ星@ サンボシ サンバンボシ
 三つ星A ミツボシ ミツボシ ミツボシ
 りゅうこつ座 メラボシ メラボシ
 金星@ トビアガリ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A オオボシ ヨアケボシ ヨアケボシ
 金星B ヒトツボシ ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

外房地域の星名体系T

星座(星群) 館山市 南房総市A 南房総市B
 こぐま座 ヒトツボシ ヒトツボシ
 おおぐま座@ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャク ヒシャクボシ ヒシャク
 おおぐま座B シソウ
 プレアデス星団 スバリ スバル スバリ
 三つ星@ サンボシ
 三つ星A ミツボシ
 りゅうこつ座 メラボシ
 金星@ オオボシ
 金星A アケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ
 金星B ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

外房地域の星名体系U

星座(星群) 鴨川市 勝浦市 いすみ市
 こぐま座 ヒトツ
 おおぐま座 ヒシャクボシ ナナツボシ ナナツボシ
 プレアデス星団 スバリ
 三つ星@ サンボシ サンボシ サンボシ
 三つ星A ミツボシ ミツボシ ミツボシ
 りゅうこつ座 メラボシ
 金星@ オオボシ オオボシ オオボシ
 金星A トンビアガリ トビアガリ
 金星B ヨアケノミョウジン アケノミョウジン
 金星C クレノミョウジョウ ヨイノミョウジン ヨアケボシ

外房地域の星名体系V

星座(星群) 山武市・九十九里町 旭市 銚子市
 こぐま座@ キタノヒトツ キタノヒトツボシ
 こぐま座A ヒトツボシ ヒトツ
 おおぐま座 ヒシャク ナナツボシ
 プレアデス星団
 三つ星@ サンチョロサマ サンボシ
 三つ星A サンチョウレン ミツボシ
 金星@ アサノミョウジン アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A オオボシ アサノヒトツ
 金星B ヨアケノホシ

東京都  2015/05/16

【利用体系】
 東京都では、都心から30〜40`圏の農業経験者や西部山間域の炭焼き経験者を中心として、東京湾沿岸や一部島嶼域 における漁労者を対象とした調査記録があります。北多摩地域の場合は、おおぐま座・プレアデス星団・三つ星・金星が 基本的な利用体系と考えられますが、西部山間域では、これらにからす座を加えた構成が典型的なタイプとなります。 また、地域によって、こぐま座やヒアデス星団が付加されるケースもあり、こうした体系は、製炭業における星利用の 実態に即した構成となっています。特にからす座やオリオン座に対する関心の高さが大きな特徴と言えますが、周辺の 埼玉県や山梨県、神奈川県の一部を含めて、炭焼きと星の文化の深いかかわりがみられます。
 一方、沿岸域や島嶼地域については、2004年以降に一部の地域で調査が行われていますが、これまでに漁業との関係を 示唆するような体系は確認されておりません。

【星名体系】
 利用体系は比較的シンプルですが、個々の星群に対する呼称には多様性が認められます。まず、プレアデス星団では、 ハゴイタボシを主体としてクヨウボシ系、ナナツボシ、オオクサボシ、コマツボシ、ホウキボシなど変化に富んだ構成と なっており、一部地域でヒアデス星団のツリガネボシが加わります。三つ星は、標準和名のミツボシが主体ですが、西部 山間域においては、アシアライボシという製炭業独自の文化から生まれた呼称が利用されてきました。また、からす座に ついては、ヨツボシ系とカワハリ系の併用が特徴であり、おおぐま座ではナナツボシを主体に一部でヒチヨウ系との併用が みられます。金星以外に、木星に注目した地域も少なくありません。
 都心に近い地域の星名体系は、埼玉県南西部の体系と類似点が多く、基本的には数詞をもとにした星名構成となって います。利用体系が、東から西に向かって複雑になるのと併せて、星名の多様性も増しています。このような傾向は、 基本的に埼玉県でみられる特性と同じと考えてよいでしょう。なお、製炭業におけるアシアライボシや都市近郊地の ツリボシは、この地域特有の呼び名として貴重な存在となっています。沿岸域についても、大田区に三つ星の星名として サンカラボシが伝承されており、同様の観点から注目されます。

北多摩地域の星名体系

星座(星群) 東村山市 武蔵村山市 清瀬市
 おおぐま座 ナナツボシ ツリボシ
 からす座 ヨツボシ
 プレアデス星団 ムツボシ
 三つ星 ミツボシ ミツボシ ミツボシ
 金星@ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

西部山間地域(西多摩郡)の星名体系T

星座(星群) 青梅市 五日市町A 五日市町B
 おおぐま座@ ナナツボシ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒチヨノホシ
 からす座 カアハリ カアハリ
 プレアデス星団@ ハゴイタボシ ハゴイタボシ ハゴイタボシ
 プレアデス星団A コマツボシ
 プレアデス星団B ホウキボシ
 三つ星@ アシアライボシ
 三つ星A ミツボシ ミツボシ ミツボシ
 金星@ アケノミョウジョウ ヨアケノミョウゾウ アケノミョウゾウ
 金星A ヨイノミョウゾウ ヨイノミョウゾウ ヨイノミョウゾウ

西部山間地域(西多摩郡)の星名体系U

星座(星群) 奥多摩町A 奥多摩町B 奥多摩町C
 こぐま座 キタノミョウケン
 おおぐま座@ ヒチヨウノホシ ヒチヨウノホシ ヒチヨウ
 おおぐま座A ナナツボシ
 からす座@ カアハリボシ カワハリ カアハリ
 からす座A ヨツボシ ヨツメ ヨツボシ
 からす座B シコウ
 プレアデス星団@ クヨウセイ クヨウノホシ
 プレアデス星団A ホウキボシ ホウキボシ オオクサボシ
 プレアデス星団B ハゴイタボシ ハゴイタボシ
 三つ星@ アシアライボシ アシアライボシ
 三つ星A ミツボシ ミツボシ ミツボシサマ
 三つ星B サンコウ
 金星@ トビアガリ
 金星A ヨアケノミョウゾウ ヨアケノミョウゾウ アケノミョウゾウ
 金星B ヨイノミョウゾウ ヨイノミョウゾウ ヨイノミョウゾウ
 木星 ヨナカノミョウゾウ ヨナカノミョウゾウ

西部山間地域(西多摩郡)の星名体系V

星座(星群) 檜原村A 檜原村B 檜原村C
 おおぐま座@ ヒシャクボシ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒチヨウノホシ ヒチヨウノホシ
 からす座@ カアハリ カアハリ カアハリ
 からす座A ヨツボシ ヨツボシ ヨツボシ
 プレアデス星団@ ハゴイタボシ ハゴイタボシ
 プレアデス星団A ホウキボシ ホウキボシ
 プレアデス星団B クヨウセイ
 ヒアデス星団 ツリガネボシ ツリガネボシ
 三つ星@ アシアライボシ アシアライボシ
 三つ星A ミツボシ ミツボシ ミツボシサマ
 金星@ ヨアケノミョウソウ ヨアケノミョウゾウ ヨアケノミョウゾウ
 金星A ヨイノミョウゾウ ヨイノミョウゾウ ヨイノミョウゾウ
 金星B アシアライボシ
 木星 ヨナカノミョウゾウ

沿岸域・島嶼地域の星名体系

星座(星群) 大田区 ◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇
 おおぐま座 ナナツボシ
 プレアデス星団
 三つ星@ サンカラボシ
 三つ星A ミツボシ
 金星@ ヨアケノオオボシ
 金星A アケノミョウジョウ

神奈川県 2014/06/30

【利用体系】
 東京湾および相模湾の沿岸域、中・北部の山間地域などで記録があります。まず、漁業における利用の体系では、三浦半島沿岸域 から湘南一帯にかけてこぐま座・おおぐま座・プレアデス星団・三つ星・りゅうこつ座・金星を基本としています。ただし、 りゅうこつ座に関する伝承は、半島南部と湘南地域の一部に限られるようです。
 一方、中部から北部山間域の場合は、隣接する東京都や山梨県で確認されている体系が基本となります。その主体は、おおぐま座・ からす座・プレアデス星団・三つ星・金星で、一部こぐま座やカシオペア座が加わる構成となっています。かつての製炭業を中心に 農業や林産業などにおける星の利用という点からみても、一般的な傾向を示していると言えるでしょう。また、都市化が著しい平野部 については、おおぐま座・三つ星・金星という簡略化された事例がいくつか記録されています。

【星名体系】
 三浦半島を中心とした沿岸域においては、横浜市の特殊な事例を除くとプレアデス星団の呼称は、ほぼスバル系で占められています。 それに対して、三つ星の場合はミツボシ・サンボシ・サンゲンボシなどの数詞系呼称を主体に、一部で千葉県沿岸域と共通のサンギ系が 伝承されています。おおぐま座では、ナナツボシとシソウを主体に、やや特殊な事例としてヒチケンボシがみられますが、分布は 限定的です。また、りゅうこつ座のカノープスに対する二種の星名(メラボシとダイナンボシ)は、東日本を代表する存在であり、 特にメラボシは房総半島南部一帯に連なる比較的広範囲に及ぶ伝承として知られています。
 星名の多様性は、北部山間域でも認められます。プレアデス星団やからす座で異なる呼称が存在するほか、オリオン座の三つ星には、 一部地域で特殊な見方があることも分かりました。いずれにしても、基本的な体系は東京都や山梨県などと共通性を有することが 明らかであり、製炭業などの生業を介した伝播の実態にも注目する必要があるでしょう。

北部山間地域の星名体系

星座(星群) 津久井郡藤野町A 津久井郡藤野町B 津久井郡津久井町
 こぐま座 ミョウケン
 おおぐま座@ ヒシャクボシ ヒシャク
 おおぐま座A ナナツボシ
 からす座 オゼンボシ ヨツボシ カアハリボシ
 カシオペア座@ イツツボシ イツツボシ
 カシオペア座A イカリボシ
 プレアデス星団 ハゴイタボシ ムツボシ ホウキボシ
 三つ星 ミツボシ ミツボシ ミカヅキ
 金星@ アケノミョウジョウ アサノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ イチバンボシ ヨイノミョウジョウ
※藤野町、津久井町は、いずれも合併により現在相模原市に属しています.

中部地域の星名体系T

星座(星群) 秦野市 ◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇
 おおぐま座@ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャクボシ
 わし座 ヒコボシ
 三つ星 ミツボシ
 金星@ ヨアケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ
 金星B ヒトバンボシ

東京湾沿岸地域の星名体系T

星座(星群) 横浜市金沢区 横須賀市A 横須賀市B
 こぐま座
 おおぐま座 シチケンボシ
 プレアデス星団@ ジャンジャラ
 プレアデス星団A スバル スバルボシ スバルボシ
 三つ星 サンギ サンゲンボシ サンゲンボシ
 りゅうこつ座 メラボシ
 金星@ オオボシ オオボシ オオボシ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジン クレノミョウジョウ

東京湾沿岸地域の星名体系U

星座(星群) 三浦市A 三浦市B 三浦市E
 おおぐま座@ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャクボシ シャアク
 プレアデス星団
 三つ星@ ミツボシ ミツボシサマ ミツボシ
 三つ星A サンゲンボシ
 金星@ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A ヨアケノホシ ヨイノミョウジョウ オオボシ
 金星B トビアガリ トビアガリ

相模湾沿岸地域の星名体系T

星座(星群) 三浦市C 三浦市D 横須賀市C
 こぐま座 ヒトツボシ ヒトツボシ
 おおぐま座 シソウ
 プレアデス星団 スバル スバル スバル
 三つ星@ サンボシ サンボシ
 三つ星A ミツボシ ミツボシ ミツボシ
 三つ星B サンゲンボシ
 りゅうこつ座 デェナンボシ
 金星@ オオボシ オオボシ
 金星A アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ ヨアケボシ
 金星B ヨイノミョウジョウ アケノミョウジン ヨイノミョウジョウ
 金星C アケボノノミョウジョウ

相模湾沿岸地域の星名体系U

星座(星群) 三浦郡葉山町 鎌倉市 藤沢市
 こぐま座 ネノホシ
 おおぐま座 ヒシャク
 プレアデス星団 スバル スバル
 三つ星 ミツボシ ミツボシ ミツボシ
 りゅうこつ座 ダイナンボシ
 金星@ アケノミョウジョウ トビアガリ オオボシ
 金星A ヨイノミョウジョウ アケノミョウジョウ キンボシ

相模湾沿岸地域の星名体系V

星座(星群) 中郡二宮町 足柄下郡真鶴町 湯河原町
 こぐま座
 おおぐま座 ナナツボシ
 プレアデス星団
 三つ星@ ミツボシ ミツボシ ミツボシ
 三つ星A サンジボシ サンボシ
 りゅうこつ座
 金星@ ヨアケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

新潟県 2020/03/25

【利用体系】
 佐渡地方および本州沿岸域における調査記録があります。東北沿岸から北海道にかけての地域と同様に、イカ釣りを主体と した利用体系が基本で、ぎょしゃ座・プレアデス星団・アルデバラン・三つ星・おおいぬ座・金星という構成になっています。 佐渡地方の場合は、さらにこぐま座やおおぐま座、ふたご座、こいぬ座などが加わることがあり、多様な体系が認められます。
 また、近年実施されている本州部沿岸域の調査では、おおぐま座・オリオン座・金星という簡素化された構成を示す地域が 多い中で、出雲崎町においては伝統的な体系がまだ伝承されていました。

【星名体系】
 佐渡地方では、伝統的な星の名が多く残されています。まず、ぎょしゃ座には地名由来のヤザキボシとサキボシ系が あります。プレアデス星団は、他の事例も含めてスバル系を主体とし、アルデバランではアカボシとアトボシ系がみられます。 三つ星はムツラ系とその他の系列になり、おおいぬ座はアトボシ系で代表されます。全体として、山形県から北海道にかけての 伝承と類似点が多いものの、三つ星周辺のカラスキ系は、むしろ北陸地方から西日本へ連なる系統といえます。 なお、ぎょしゃ座のヤザキボシはこの地域特有の呼称であり、ノトボシよりもさらに限定された生産領域が対象となっています。
 一方、沿岸域に関しては一部の地域でスバル、サンコウを中心にサキボシ(ぎょしゃ座)やアトボシ(おうし座)、アオボシ系が 認められ、山形県に連なるさそり座の伝承もみられます。

佐渡地方の星名体系

星座(星群) 佐渡郡相川町 両津市A 両津市B
 こぐま座@ キタノヒトツボシ
 こぐま座A ホクセイ
 おおぐま座 カジボシ
 ぎょしゃ座 ヤザキボシ スワルノサキボシ
 プレアデス星団 スマル スバリ スワルボシ
 アルデバラン アカボシ スワルノアトボシ
 オリオン座(γ) ムツラノマエボシ
 三つ星 ジョウトウヘイボシ
 三つ星・他 カラスコ ムツラ ムツラ
 ふたご座 フタツボシ
 こいぬ座 シロボシ
 おおいぬ座 ムツラノアトボシ
 金 星@ ヨアケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ
 金 星A ヨイノミョウジョウ

沿岸地域の星名体系

星座(星群) 三島郡出雲崎町 村上市 糸魚川市
 こぐま座 キタボシ
 おおぐま座 カジボシ ナナツボシ ナナツボシ
 さそり座@ オヤコボシ
 さそり座A アカボシ
 ぎょしゃ座 サキボシ
 プレアデス星団 スバル
 アルデバラン アトボシ
 三つ星@ サンコウ
 三つ星A ミツボシ ミツボシ ミツボシ
 おおいぬ座 アオボシ
 金星@ オオボシ アケノミョウジョウ ヨアケボシ
 金星A ヨイノミョウジョウ
 月に接近した星 チカボシ
 月から離れた星 トオボシ

富山県 2013/08/25

【利用体系】
 2012年から2013年にかけて富山湾沿岸域で実施した調査記録があります。この地域の漁業は定置網を主体とする網漁が 主体ですが、かつてはスルメイカを主な対象としたイカ釣り漁も広く行われていました。したがって、星の伝承についても 北国や新潟県佐渡地方などと同じように、イカ釣り漁における利用が基本的な枠組みとなっています。本来の利用体系は、 ぎょしゃ座・プレアデス星団・アルデバラン・三つ星・おおいぬ座・金星などで構成されていたものと推測されますが、 これまでに確認されたのは、プレアデス星団・三つ星・おおいぬ座・金星という代表的な星の連なりとおおぐま座です。

【星名体系】
 プレアデス星団は、スバルからの転訛形を主に、一部の地域でナナツボシの呼称が伝承されています。また、三つ星は カラスキ系のカラツキが一般的で、それに続くおおいぬ座はイカ釣りの星としてよく知られたアオボシという構成です。 なお、あけの明星である金星には、少ない事例ながら星の名の多様性を示唆する特徴がみられます。

富山湾沿岸地域の星名体系T

星座(星群) 魚津市 射水市 氷見市
 おおぐま座
 プレアデス星団 ナナツボシ ヒバル スバリ
 三つ星@ ミツボシサン ミツボシ
 三つ星A カラツキ カラツキ
 おおいぬ座 アオボシサン アオボシ アオボシサン
 金 星@ オオボシサン ママタキボシ ママタキボシ
 金 星A アケノホシ
 金 星B ヨイノミョウジョウ

富山湾沿岸地域の星名体系U

星座(星群) 黒部市 ◇◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇◇
 おおぐま座 ナナツボシ
 プレアデス星団
 三つ星 ミツボシ
 金星@ アケノミョウジョウ
 金星A

石川県 2018/08/20

【利用体系】
 石川県では、1975年に能登半島の一部地域で行った調査記録がありますが、2013年には再度半島の沿岸部を中心に調査を実施 しました。したがって、記録された伝承はそのほとんどが漁業による利用と推測され、また一部の星については、日本海を往来した 北前船によって利用されたと伝わるものがあります。
 県内の漁業は、現在半島の内海沿岸で定置網漁、刺網漁などが、また外海沿岸では刺網漁や一本釣り漁などが行われていますが、 過去には引網漁や延縄漁、イカ釣り漁、蛸壺漁などさまざまな漁法が営まれており、基本的にはそうした漁業活動を通して星の 利用が図られてきたものと考えられます。ただし、半島沿岸部の小さな漁業集落では、そのほとんどが長い間半農半漁の暮らしを 受け継いできた経緯があり、しかも過去には農業を基盤としてその副業に漁業を営んできたという地域も少なくありません。記録 された伝承の中には、漁業ばかりでなく農業においても同じような利用(たとえば季節や時間を知るなど)が行われた事例もあった ことでしょう。いずれにしても、具体的な利用体系はこぐま座・おおぐま座・プレアデス星団・三つ星・金星が基本的な構成と みられ、地域によっていて座が加わります。2018年には加賀地方の沿岸域でも調査を行いました。

【星名体系】
 おおぐま座のカジボシは北陸地方で一般的な呼称ですが、一部でこれをキタノオオカジと称し、いて座のミナミノコカジとともに 呼び分けを行っていたことは星名文化の奥深さを感じさせます。しかも21世紀を迎えて久しい今日まで伝承者が存在していた 事実は本当に驚きです。利用度の高いプレアデス星団はスバル系を主体とし、三つ星はサンコウがその代表となっています。なお、 金星の呼称にみられるオオメ(ボシ)とヤマネ(ボシ)はそれぞれ夜明け方と夕暮れ時を意味することばですが、この地域特有の 星名として注目されます。

能登半島外海沿岸地域の星名体系

星座(星群) 珠 洲 市 輪島市 A 輪島市 B
 こぐま座 ヒトツボシ
 おおぐま座@ キタノオオカジ カジボシ
 おおぐま座A ナナツボシ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座B ヒシャクボシ
 いて座 ミナミノコカジ
 プレアデス星団 スバリ スバルサマ スバリ
 三つ星 サンコウ ミツボシ
 金 星@ オオボシ
 金 星A ヨアケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ ヨアケノミョウジン
 金 星B ヨイノミョウジョウ

能登半島内海沿岸地域の星名体系

星座(星群) 七 尾 市 鳳珠郡穴水町 ◇◇◇◇◇◇◇
 こぐま座 ヒトツボシ
 おおぐま座@ ヒシャクボシ
 おおぐま座A ナナツボシ ナナツボシ
 プレアデス星団
 三つ星 ミツボシ サンコウ
 金星@ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ
 金星B オオメボシ
 金星C ヤマネボシ

加賀地方沿岸地域の星名体系

星座(星群) 白 山 市 ◇◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇◇
 こぐま座
 おおぐま座 ナナツボシ
 プレアデス星団
 三つ星 ミツボシ
 金星@
 金星A

福井県 2018/08/20

【利用体系】
 1975年の初調査以来、その記録は若狭地方に限られていましたが、2018年になってようやく越前地方でも記録を残す ことができました。いずれも漁業における伝承が主体であり、伝統あるイカ釣り漁を始めとしてさまざまな利用が図られて います。利用体系としての基本的なタイプは、ぎょしゃ座・プレアデス星団・アルデバラン・三つ星(他)・おおいぬ座・ 金星というパターンです。これらは、北国におけるイカ釣りの星へと連なっていますが、地域によってはこぐま座や おおぐま座、こいぬ座などが加わります。

【星名体系】
 ぎょしゃ座のノトボシは、能登半島以西の沿岸域に特有の呼び名です。これが、後に北海道や青森県に伝播し、郷里と 同じ感覚で利用されていたことは驚きです。新潟県のヤザキボシとともに、地名を冠した星名の代表といえるでしょう。 最近の調査によってアカボシやシンボシ、カジボシ、フタツボシなど旧来の星の名が記録されたことは、純漁業集落地に おける伝承力の強さを再認識する貴重な機会となりました。

若狭地方沿岸地域の星名体系T

星座(星群) 三方郡美浜町A 三方郡美浜町B 大飯郡高浜町
 こぐま座 シンボシ
 おおぐま座 ナナツボシ ナナツボシ
 ぎょしゃ座 ノトボシ
 プレアデス星団 スンバリ スンバリ
 アルデバラン アカボシ
 三つ星 カラツキ ミツボシ
 おおいぬ座 オボシ オボシ
 金星@ オオボシ
 金星A ヨアケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ
 金星B ヨイノミョウジョウ

若狭地方沿岸地域の星名体系U

星座(星群) 小 浜 市 ◇◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇◇
 こぐま座
 おおぐま座 シャク
 ぎょしゃ座 ノトボシ
 プレアデス星団
 三つ星 ミツボシ
 金星@ ヨアケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ

越前地方沿岸地域の星名体系

星座(星群) 坂 井 市 丹生郡越前町 ◇◇◇◇◇◇◇
 こぐま座 ネノホシ
 おおぐま座 ナナツボシ カジボシ
 ぎょしゃ座
 プレアデス星団 スバル
 アルデバラン アカボシ
 三つ星@ ミツボシ ミツボシ
 三つ星A カラツキ
 こいぬ座 フタツボシ
 金星@ アケノミョウジョウ ヨアケノミョウジンサン
 金星A ヨイノミョウジョウ

山梨県 2019/05/25

【利用体系】
 東部から北部、中部、南部にかけての地域で調査記録があります。これまでに確認できた体系としては、埼玉県や東京都、 神奈川県の山間域で一般的なおおぐま座・からす座・プレアデス星団・三つ星・金星という構成ですが、一部の地域では、 これにカシオペア座が加わります。生業は農業や林業を主体に製炭業などが隆盛を極めた時代もあり、周辺地域とほぼ類似の 生活スタイルを想定することができるでしょう。

【星名体系】
 一部の星については、地域的な多様性が認められます。プレアデス星団では、西日本で伝承されていないイッショウボシが現れ、 他にナナツボシ、クヨウボシ、ゴジャゴジャボシ、ホウキボシ、ムツボシなど実に多彩です。オリオン座(三つ星)はミツボシを 主体としますが、小菅村のアシアライボシは東隣にあたる東京都の山間域に連なる呼び名であり、生業を介した伝播などが考え られます。
 さらに、高根町のミツメについては、ミツボシ以前に利用された古い伝承の名残でしょう。おおぐま座は、ナナツボシを主体に ヒチヨウ系の併用がみられ、からす座では東京都に連なるカワハリボシの系統を中心にゼンボシやヨツボシが記録されています。 カシオペア座のイツツボシも関東地方に点在する呼称の一つです。このように、山梨県東部域では隣接する各県と多くの共通点を 有していることが分かります。

東部地域の星名体系T

星座(星群) 北都留郡小菅村A 北都留郡小菅村B 北都留郡小菅村C
 おおぐま座 ヒチヨウ ナナツボシ ヒチヤノホシ
 からす座 カアハリ ゼンボシ カアハリ
 プレアデス星団@ ゴジャゴジャボシ ホウキボシ ゴジャゴジャボシ
 プレアデス星団A ナナツボシ
 三つ星@ ミツボシ ミツボシ ミツボシ
 三つ星A アシアライボシ
 金星@ ヨアケノミョウジョウ ヨアケノミョウゾウ ミョウゾウボシ
 金星A ユウグレノミョウゾウ
 木星 ヨナカノミョウゾウ

東部地域の星名体系U

星座(星群) 北都留郡上野原町A 北都留郡上野原町B 南都留郡秋山村
 おおぐま座@ ナナツボシ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャクボシ
 カシオペア座 イツボシ
 プレアデス星団@ クヨウボシ ムツボシ
 プレアデス星団A イッショウボシ ホウキボシ
 三つ星 ミツボシ ミツボシ ミツボシサマ
 金星@ アケノミョウジョウ ヨアケノミョウゾウ ヨアケノミョウジョウ
 金星A ヒトツボシ
 金星B クレノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

東部地域の星名体系V

星座(星群) 北都留郡丹波山村 塩山市 ◇◇◇◇◇◇◇
 おおぐま座
 からす座 カワハリ
 プレアデス星団 クヨウボシ イッショウボシ
 三つ星 ミツボシ ミツボシサン
 金星@ アケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ
 金星A アサボシ
 金星B ヨイノミョウジョウ

北部地域の星名体系

星座(星群) 北巨摩郡高根町A 北巨摩郡高根町B 山梨市(牧丘町)
 おおぐま座 ナナツボシ ヒチヨウ ナナツボシ
 からす座 ヨツボシ
 プレアデス星団@ イッショウボシ イッショウボシサン
 プレアデス星団A クヨウボシ
 三つ星@ ミツボシ ミツボシサン ミツボシサン
 三つ星A ミツメ
 金星@ ヨアケノミョウジョウ ヨアケノミョウゾウ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウゾウ
 金星B ヒトツボシ

中部および南部地域の星名体系

星座(星群) 笛 吹 市 市川三郷町 南巨摩郡身延町
 おおぐま座@ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャク ヒシャクボシ
 プレアデス星団
 三つ星 ミツボシ ミツボシ ミツボシサン
 金星@ ヒトツボシ アサノミョウジョウ
 金星A アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星B ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

長野県  2019/09/25

【利用体系】
 長野県では1970年代と1980年代にごく一部の地域で調査が行われ、その後2014年より本格的に調査を再開しています。ただし、 対象は県中部地域に集中しており、北部や南部地域での記録は僅かです。これまでに確認された体系は、おおぐま座、こと座、 わし座、おうし座、オリオン座、金星、その他という一般的なものですが、本来はこぐま座(北極星)などの星も利用されて いたものと考えられます。

【星名体系】
 近年の調査では、おおぐま座のナナツボシ系やオリオン座のミツボシ系がほぼ全国的に伝承力を維持している傾向がみられ、 長野県においてもその現象が顕著に認められます。おおぐま座では、他にヒシャクボシ系も散見されますが、三つ星については 今のところ標準星名以外に記録がありません。一方、おうし座のムツボシ系や金星のキンボシ、流星のヌケボシなどは、この 地域における伝統的な星名の一部とみられ、総体的に〜サンあるいは〜サマと呼ばれる事例が多いようです。

中部地域の星名体系T

星座(星群) 上伊那郡高遠町 諏訪郡富士見町 東筑摩郡朝日村
 おおぐま座@ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャクボシ
 プレアデス星団 ムツボシサマ
 三つ星 ミツボシサマ ミツボシサマ ミツボシサマ
 金星@ キンボシ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ
 金星B ヒトツボシ
 流星 ヌケボシ

※高遠町は、合併により現在伊那市に属しています.

中部地域の星名体系U

星座(星群) 塩 尻 市 松 本 市 東筑摩郡山形村
 おおぐま座@ ナナツボシ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャクボシ
 こと座 オリヒメ
 わし座 ヒコボシ
 プレアデス星団
 三つ星 ミツボシ ミツボシサマ
 金星@ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ
 金星B ヒトツボシ
 月に接近した星 チカボシサマ

中部地域の星名体系V

星座(星群) 伊 那 市 上伊那郡宮田村 ◇◇◇◇◇◇◇
 おおぐま座@ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャクボシ
 こと座 オンナボシ
 わし座 オトコボシ
 プレアデス星団 ムツボシサマ
 三つ星 ミツボシ ミツボシサマ
 金星@ ヒトツボシ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ
 月に接近した星 チカボシサマ

岐阜県 2018/08/20

【利用体系】
 岐阜県では、2014年以降に飛騨地方および美濃地方の一部地域について調査を行っています。ただし、確認された星はこれまでの ところ、おおぐま座・プレアデス星団・三つ星・金星などの一般的な体系に限られています。飛騨、美濃という二つの文化圏が接する この県では、それぞれに特有の伝承が記録〔文0311〕されており、調査ではその体系の一部を確認したことになります。

【星名体系】
 おおぐま座では、ナナツボシやシャモジボシ、ヒシャク系などの多様性がみられますが、オリオン座はミツボシがほとんどで、 プレアデス星団もハゴイタボシだけに止まっています。これまでのところ、金星の呼称にも地域による分布特性などはみられません。

飛騨地方の星名体系

星座(星群) 下呂市A 下呂市B ◇◇◇◇◇◇◇
 おおぐま座@ ナナツボシ ナナツノホシ
 おおぐま座A ヒシャク
 おおぐま座B シャモジボシ
 プレアデス星団
 三つ星 ミツボシ マグワボシ
 金 星@ アケノミョウジョウ ヨアケノミョウジョウ
 金 星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

美濃地方の星名体系

星座(星群) 揖斐郡池田町 岐 阜 市 揖斐郡揖斐川町
 おおぐま座 ナナツボシ ナナツボシ フシャクボシ
 プレアデス星団 ハゴイタボシ
 三つ星 ミツボシ ミツボシ
 金 星@ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金 星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ
 金 星B ヨアケノミョウジンサン
 金 星C ヨイノミョウジンサン
 月に接近した星 チカボシサン

静岡県 2019/04/25

【利用体系】
 南東部の伊豆半島沿岸、駿河湾沿岸地域、遠州灘地域および内陸部の各地で調査記録があります。ただし、一部 地域を除いて調査は2008年以降に集中して行われているため、確認された利用パターンはおおぐま座・三つ星・金星 という基本体系を中心に、こぐま座やプレアデス星団などが組み込まれた構図を示しています。このうち、記録の 大部分は漁業における利用であり、特にさまざまな漁法において、オリオン座の三つ星や金星(明けの明星)に対する 認識が重要な役割をもっていたようです。

【星名体系】
 伊豆地域では、やや多様な一面も窺えますが、今のところ駿河湾西部の沿岸地域は単調さが目立ちます。星座別に みると、まず北斗七星では関東地方で一般的なナナツボシ系とヒシャクボシ系があり、この地域に特徴的な呼び名は みられません。三つ星は、ミツボシ系を基本に伊豆地域でミツダナサンやムツガミサン(三つ星と小三つ星)などの 特徴的な呼び名が散見されます。また、プレアデス星団については、一部地域でスバル系およびナナツボシ系の記録が あります。ナナツボシは、本来おおぐま座の代表的な星名ですが、プレアデス星団のそれも各地に伝承があります。 なお、金星の呼称では地域的な多様性が認められ、特にトンキョボシは沼津市沿岸部に特有の星名となっています。

相模湾沿岸地域の星名体系T

星座(星群) 伊東市A 伊東市B 熱海市
 こぐま座 ヒトツボシ
 おおぐま座 ヒシャク ヒシャクボシ
 プレアデス星団@ スバル スバル
 プレアデス星団A ナナツボシ
 三つ星@ ミツボシ ミツボシ ミツボシ
 三つ星A サンボシ
 おおいぬ座 オオボシ
 金星@ トビアガリ キンボシ
 金星A アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星B ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

相模湾沿岸地域の星名体系U

星座(星群) 賀茂郡東伊豆町 賀茂郡河津町 下田市
 こぐま座 ヒトツボシ
 おおぐま座@ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャクボシ
 プレアデス星団 スバル スバル
 三つ星 サンボシ サンボシ ミツボシ
 三つ星+他 ムツガミサン
 金星@ オオボシ オオボシ メシタキボシ
 金星A アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星B ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

駿河湾沿岸地域の星名体系T

星座(星群) 沼津市A 沼津市B ◇◇◇◇◇◇◇◇
 こぐま座 キタノミョウジョウ
 おおぐま座 ナナツボシ
 プレアデス星団 スバル
 三つ星 ミツボシ ミツボシ
 金星@ オオボシ
 金星A トンキョボシ アケノミョウジョウ
 金星B ヨアケノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

駿河湾沿岸地域の星名体系U

星座(星群) 伊豆市 西伊豆町 南伊豆町
 こぐま座 ヒトツ
 おおぐま座@ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャクボシ
 プレアデス星団
 三つ星@ ミツボシ ミツボシ ミツボシ
 三つ星A ジョウトウヘイボシ ミツダナサン
 三つ星+他 ムツボシサン
 金星@ トンビアガリ アケノホシ
 金星A メシタキボシ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星B ヨアケノミョウジョウ ヨイノホシ ヨイノミョウジョウ

駿河湾沿岸地域の星名体系V

星座(星群) 静岡市 焼津市A 焼津市B
 こぐま座 コシャク
 おおぐま座@ ナナツボシ ナナツボシ ヒシャク
 おおぐま座A ヒシャク シャクシボシ
 プレアデス星団
 三つ星 ミツボシ ミツボシ ミツボシ
 金星@ オオボシ
 金星A アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星B ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

駿河湾沿岸地域の星名体系W

星座(星群) 榛原郡吉田町 牧之原市 御前崎市
 おおぐま座@ ヒシャクボシ ヒシャクボシ
 おおぐま座A ナナツボシ ナナツボシ
 プレアデス星団 スバル
 三つ星 ミツボシ ミツボシ ミツボシ
 金星@ ヨアケノミョウジョウ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

遠州灘地域の星名体系

星座(星群) 浜松市(西区) 浜松市(北区) ◇◇◇◇◇◇◇
 こぐま座 ヒトツボシ
 おおぐま座
 プレアデス星団 スバル
 三つ星 ミツボシ ミツボシ
 金星@ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

内陸地域の星名体系T

星座(星群) 裾野市 菊川市 富士宮市
 おおぐま座@ ナナツボシ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャクボシ
 プレアデス星団 ムツボシサン
 三つ星 ミツボシ ミツボシ
 金星@ ヨアケノミョウジョウ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ クレノミョウジョウ

内陸地域の星名体系U

星座(星群) 駿東郡小山町 ◇◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇◇
 おおぐま座@ ナナツボシ
 おおぐま座A ヒシャクボシ
 プレアデス星団
 三つ星 ミツボシサン
 金星@ アケノミョウジョウ
 金星A ヨイノミョウジョウ
 月に接近した星 チカボシ

愛知県 2019/08/25

【利用体系】
 2012年以降に実施した渥美半島から三河湾、さらに知多半島の各沿岸域を対象とした調査記録があります。三河湾や伊勢湾に おける漁業は、小型船による底曳き網や小型定置網、貝(アサリ)漁、潜水漁、のり養殖などが主体に展開されているほか、知多 半島沖の島嶼部では、旧来のタコ漁やシラス網漁などが現在も盛んに行われています。沿岸域の漁港の多くは半農半漁をベースと した暮らしを継続しており、いわゆる磯の漁師が大半を占める地区もみられます。
 記録された星の利用体系は、こぐま座・おおぐま座・プレアデス星団・三つ星・金星などで構成される一般的なものですが、 分布は広範囲に及んでいます。

【星名体系】
 まず、こぐま座の北極星ではヒトツボシやキタノホシがあり、北斗七星にもヒシャクボシやナナツボシなどの一般的な星の名が みられます。プレアデス星団については、この地域特有の呼び名としてオシャリサンを記録し、他にスワリサン、スバルサンなど、 いずれもより親しみを込めた呼称が目立ちます。またオリオン座三星はミツボシ系とサンコウ系が併存し、ここでもサンコウサンと いう表現が生かされています。金星の場合は、ごく一般的な呼び名が多いものの、アカツキノミョウジョウに関しては夜明けの 状況を表す古い言葉を示唆する星名として注目されます。

三河湾および伊勢湾沿岸地域の星名体系T

星座(星群) 田 原 市 西 尾 市 常 滑 市
 こぐま座 ヒトツボシ ヒトツボシ キタノホシ
 おおぐま座 ナナツボシ ヒシャクボシ
 プレアデス星団 スバルサン スワリサン オシャリサン
 三つ星@ ミツボシ ミツボシ
 三つ星A サンコウ サンコウサン
 金 星@ アケノミョウジョウ アカツキノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金 星A ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

三河湾および伊勢湾沿岸地域の星名体系U

星座(星群) 知多郡南知多町 蒲 郡 市 南知多町(島嶼)
 こぐま座 ネノホシ
 おおぐま座 シャアクノホシ
 プレアデス星団 スバル
 三つ星@ ミツボシ
 三つ星A サンコウサン サンコウ
 金星@ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星A ヨアケノミョウジョウ

三重県  2018/05/20

【利用体系】
 2013年の南部沿岸域調査を皮切りに、翌年には北部沿岸域の一部を、さらにその翌年に北部内陸地域および中部沿岸域を 調査しています。その後も中部沿岸域の島嶼部などで調査を継続中です。南部沿岸域では、この地域における現在の漁業主体は 定置網漁や海老網漁(概ね10月−4月)となっており、一部でカツオ船やサンマ船が操業しています。星の利用に関しては、 海老網漁における網あげの指標とされた星の伝承がいくつか記録されており、確認できた利用体系は、おおぐま座・おうし座・ オリオン座・ふたご座・おおいぬ座・金星という構成になっています。
 また、北部沿岸域ではオリオン座と金星のみの記録となっているほか、内陸部においてはおおぐま座・オリオン座・金星の 基本形が伝承されていました。中部沿岸域の島嶼部においても、おおぐま座・おうし座・オリオン座・金星というパターンを 確認しています。

【星名体系】
 南部沿岸域における典型的な体系として、おおぐま座のナナツボシ、おうし座のスバル、オリオン座のミツボシがあり、一部 地域でオオボシ(おおいぬ座)やフタツボシ(ふたご座)が加わります。また、金星については、ミョウジョウ系以外にヨアケ ボシやヒトツボシの記録があります。内陸部においても、おおぐま座のナナツボシやオリオン座のミツボシを主パターンとする 体系が存在しているようです。なお、一部の島嶼部では金星の呼称としてヨアカシボシ(夜明かし星)が伝承されています。

南部沿岸地域の星名体系

星座(星群) 北牟婁郡紀北町A 北牟婁郡紀北町B 尾 鷲 市
 おおぐま座 ナナツボシ ナナツボシ
 プレアデス星団 スバル
 三つ星 ミツボシ ミツボシ ミツボシ
 ふたご座 フタツボシ
 おおいぬ座 オオボシ
 金星@ ヨアケボシ ヒトツボシ
 金星A ヨアケノミョウジョウ アケノミョウジョウ アケノミョウジョウ
 金星B ヨイノミョウジョウ ヨイノミョウジョウ

中部沿岸地域の星名体系

星座(星群) 松 阪 市 鳥 羽 市 ◇◇◇◇◇◇◇
 おおぐま座 ナナツボシ
 プレアデス星団 スバル
 三つ星 ミツボシ ミツボシ
 金星@ ミョウジョウ ヨアカシボシ
 金星A アケノホシ

北部沿岸地域の星名体系

星座(星群) 鈴 鹿 市 ◇◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇◇
 おおぐま座
 プレアデス星団
 三つ星@ ジョウトウヘイ
 三つ星A ミツボシ
 金星@ ミョウジョウ
 金星A

内陸地域の星名体系

星座(星群) 伊賀市 ◇◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇◇
 おおぐま座 ナナツボシ
 プレアデス星団
 三つ星 ミツボシ
 金星@ ヒトツボシ
 金星A アケノミョウジョウ
 金星B ヨイノミョウジョウ
 月に接近した星 チカボシサン