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死刑と憲法 その他

 

参考文献・・・
『死刑廃止論 第六版』(有斐閣/団藤重光/2000)
『死刑の日本史』(三一新書/佐藤友之/1994)
『死刑』(現代書館/前坂俊之/1991)
『世界のなかの日本の死刑』(インパクト出版会/2002)

『戦後ニッポン犯罪史』(批評社/礫川全次/2000)

関連・参考サイト・・・
内閣府

 

 

 

世界の死刑事情

[ 世界の死刑事情 ]

1989年(平成元年)12月15日、国連総会で死刑廃止条約が採択されたが、日本は反対にまわった(死刑廃止条約の採択)。

死刑廃止条約の正式名称は「死刑廃止に向けての市民的および政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書」といい、内容は次のようなもの。

第1条 この締約国の管轄下にある者はなにびとも処罰されることはない。各当事国は死刑廃止のためあらゆる必要な措置を講じなければならない。

第2条 戦時に犯された軍事的性格を有する極めて重大な犯罪に対する有罪判決により戦時に死刑を適用する規定に関する留保を除き、いかなる留保を付することも許されない。

第3条 当事国は実施のために講じた措置の情報を人権委員会に報告しなければならない。

賛成59ヶ国、反対26ヶ国、棄権49ヶ国、欠席25ヶ国で可決、採択された。賛成した59ヶ国はヨーロッパの先進国が多く、イギリス、フランス、西ドイツ、ベルギー、イタリア、デンマーク、スペインなどで、逆に反対した26ヶ国は死刑存置国が多く、イスラム国、発展途上国などで、先進国では日本とアメリカ、それ以外では中国、エジプト、イラン、イラクなどである。

日本政府は反対した理由を国会の質問で次のように答えている。

(1)死刑廃止の問題は一義的には各国により、その国民感情、犯罪態様などを考慮しつつ慎重に検討すべきである。

(2)死刑廃止についての国際世論は必ずしも一致していない。

(3)この条約はこれまで人権委員会で充分議論が尽くされていない。

以上の3点で各国の国民感情や犯罪態様によって決めるべきで、充分議論が尽くされていないというのである。

アムネスティ・インターナショナルアムネスティ・インターナショナル日本)によると、、、

2022年12月31日現在

現在199ヶ国(植民地も含む)のうち

A:死刑を存続させている国・・・55ヶ国。
B:法律上・事実上死刑廃止国・・・144ヶ国

Bの法律上・事実上死刑廃止国144ヶ国のうち

○すべての犯罪に対して廃止(刑罰として死刑がない)・・・112ヶ国

○通常犯罪のみ廃止(軍法下の犯罪や特異な状況における犯罪のような例外的な犯罪にのみ、法律で死刑を規定)・・・9ヶ国

○事実上廃止(殺人のような通常犯罪に対して死刑制度を存置しているが、過去 10年間に執行がなされておらず、 死刑執行をしない政策または確立した慣例を持っていると思われる国。死刑を適用しないという国際的な公約をしている国も含まれる)・・・23ヶ国

・・・となっている。

アムネスティ・インターナショナル・・・amnesty international 1961年にイギリスの弁護士ベネンスンによって創設され、1977年にはノーベル平和賞を受賞した民間団体。あらゆる政治的権力・イデオロギー・宗教を超えて、特に(1)「良心の囚人」の釈放、(2)政治犯に対する公正かつ迅速な裁判を求めること、(3)死刑および拷問の廃止を目的とし、地球上いたるところに張り巡らされたネットワークによって世界的規模の人権擁護活動をしている団体。いかなる権力や勢力によっても影響されないようにするため、政府や財団などの財政的援助を受けることなく、150ヶ国にいる110万人(1993年現在)を超える会員によって支えられている。アムネスティが死刑制度に反対する根本的な理由は死刑が残虐な刑罰であり、生きる権利を否定するものであるからとしている。

死刑と犯罪

[ 死刑と犯罪 ]

1947年(昭和22年)〜1993年(平成5年)の47年間の統計で、「1審で死刑判決の言い渡しを受けた者」が876人、そのうち「強盗致死罪(強盗強姦致死も含む)の者」が605人で605÷876×100=69.063・・・%、「殺人罪(尊属殺人も含む)の者」が258人で、258÷876×100=29.452・・・%、「その他の罪(建造物放火、汽車電車船舶覆没致死、爆発物取締罰則)の者」が13人で、13÷876×100=1.484・・・%となっている。

刑法199条(殺人)・・・人を殺した者は死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する(2005年1月1日施行の改正刑法により「3年以上の懲役」から「5年以上の懲役」に改正された)。

刑法240条(強盗致死傷)・・・強盗が人を負傷させたときは無期又は7年以上の懲役に処し死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

刑法241条(強盗強姦致死傷)・・・強盗が女子を強姦したときは、無期又は7年以上の懲役に処する。よって女子を死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

刑法200条(尊属殺人)・・・死刑または無期懲役と定められていたが、1973年(昭和48年)4月4日の最高裁で、憲法14条の「法の下の平等」に反するという判決が出て以来、適当されず、刑法199条の(一般の)殺人罪が適用されてきた。1995年(平成7年)5月12日の刑法の口語文への改正、6月1日の施行で200条は削除された。この「尊属殺人は違憲判決」を導き出した事件・・・栃木実父殺し事件

刑法108条(現住建造物放火)・・・人が住居に使用、または人がいる建造物、汽車、電車、船舶または鉱坑を放火によって焼損した者は死刑または無期もしくは5年以上の懲役。

刑法126条(汽車電車船舶覆没致死)・・・人がいる汽車や電車、船舶を転覆や沈没または破壊した者は、無期または3年以上の懲役。これによって人を死亡させた者は死刑または無期懲役。

特別法・爆発物取締罰則1条・・・治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ爆発物ヲ使用シタル者及ヒ人ヲシテ之ヲ使用セシメタル者ハ死刑又ハ無期若クハ七年以上ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス。

つまり大雑把に言うと、死刑判決となった者のうち約70%が「強盗殺人」で、約30%が「殺人」による犯罪で合わせて98%以上を占めている、ということである。

1945年(昭和20年)〜1982年(昭和57年)の38年間の統計で、「強盗致死(強盗強姦致死も含む)で検挙された者」が5807人で、そのうち「1審で死刑判決の言い渡しを受けた者」が606人で606÷5807×100=10.435・・・%、「殺人罪(尊属殺人、殺人未遂も含む)で検挙された者」が90183人で、そのうち「1審で死刑判決の言い渡しを受けた者」が215人で、215÷90183×100=0.238・・・%となっている。

つまり大雑把に言うと、「強盗殺人」では10人に1人、「殺人」では500人に1人が死刑判決になっているということで、これからも分かる通り、死刑がいかに例外的な刑罰であるかが分かる。

日本の場合、裁判では判例主義が取られており、過去に同じような事件の判例を参考に量刑を決めている。「強盗致死」では無期か死刑と規定されているが、「殺人」では無期または死刑もしくは5年以上の懲役(2005年1月1日施行の改正刑法によって「3年以上の懲役」から「5年以上の懲役」に改正されている)と規定されており、1人を殺した場合、ほとんど死刑判決になることがないが、2、3人になると死刑になる確率は高くなる、といった事情がある。

ちなみに 『平成14年版 犯罪白書』(財務省印刷局/法務省法務総合研究所編/2002)によると、2001年(平成13年)に、「殺人」によって死亡した者は696人となっている。これには「傷害致死」(222人)や「交通事故に係わるもの以外の業務上過失致死」(345人)、「交通事故による業務上過失致死」(8747人/一般に言われる「交通事故による死亡者数」で、正確には「事故が起きてから事故が原因で24時間以内に死亡した人数」のことを言う/他に「事故が起きてから事故が原因で30日以内に死亡した人数」のデータがある)は含まれておらず、「こうすれば相手が死ぬだろう」という「殺意」が認められた「殺人」による死亡人数である。696÷365=1.9068・・・人で、1日に約2人が「殺人」によって死亡していることになる。

死刑になる犯罪

[ 死刑になる犯罪 ]

日本で法定刑に「死刑」の罰則規定が含まれる犯罪に、刑法で12種類、特別法で5種類、合わせて17種類ある

1、内乱刑法77条)・・・国の統治機構を破壊し、またはその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を撹乱することを目的として暴動をした者は内乱の罪とし、次の区別に従って処断する。

(1)首謀者は死刑または無期禁錮。

(2)謀議に参与し、または群集を指揮した者は無期または3年以上の禁錮、その他諸般の職務に従事した者は1年以上10年以下の禁錮。

(3)不和随行し、その他単に暴動に参加した者は3年以下の禁錮。

2、外患誘致(刑法81条)・・・外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は死刑。(「死刑」以外の刑罰を定めていない犯罪はこの犯罪だけである)

3、外患援助(刑法82条)・・・日本国に対し外国からの武力の行使があったときに、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与えた者は死刑または無期もしくは2年以上の懲役。

4、現住建造物放火(刑法108条)・・・人が住居に使用、または人がいる建造物、汽車、電車、船舶または鉱坑を放火によって焼損した者は死刑または無期もしくは5年以上の懲役。

5、激発物の破裂(刑法117条)・・・火薬、ボイラーその他の激発すべき物を破裂させて、建造物、汽車、電車、船舶または鉱坑を損壊させた場合は放火罪と同様に罰せられる。また、それ以外の物を損壊し、公共の危険を生じさせた者も同様とする。

6、建造物浸害(刑法119条)・・・出水させて、人が住居に使用、または人がいる建造物、汽車、電車、鉱坑を浸害した者は死刑または無期もしくは3年以上の懲役。

7、汽車電車船舶覆没致死(刑法126条)・・・人がいる汽車や電車、船舶を転覆や沈没または破壊した者は、無期または3年以上の懲役。これによって人を死亡させた者は死刑または無期懲役。

8、往来危険による汽車転覆等(刑法127条)・・・鉄道やその標識、灯台や浮標を損壊し、またはその他の方法により、汽車や電車、船舶の往来の危険を生じさせた者は、無期または3年以上の懲役。これによって人を死亡させた者は死刑または無期懲役。

9、水道毒物混入致死(刑法146条)・・・公衆に供給する飲料の浄水や水源に毒物その他、人の健康を害する物を混入した者は2年以上の懲役。これによって人を死亡させた者は死刑または無期もしくは5年以上の懲役。

10、殺人(刑法199条)・・・人を殺した者は死刑または無期もしくは5年以上の懲役(2005年1月1日施行の改正刑法によって「3年」から「5年」に改正された)。

11、強盗致死傷(刑法240条)・・・強盗犯人が人を傷つけたときには無期または6年以上の懲役。死亡させたときは死刑または無期懲役。

12、強盗強姦致死傷(刑法241条)・・・強盗犯人が女を強姦したときには無期または7年以上の懲役。それによって女を死亡させるに至ったときには死刑または無期懲役。

以上、刑法では12種類あるが、他に特別法では次の5種類ある。

13、爆発物不法使用爆発物取締罰則1条)・・・治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ爆発物ヲ使用シタル者及ヒ人ヲシテ之ヲ使用セシメタル者ハ死刑又ハ無期若クハ七年以上ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス。

14、決闘殺人決闘罪ニ関スル件3条)・・・決闘ニ依テ人ヲ殺傷シタル者ハ刑法ノ各本条ニ照シテ処断ス。

15、航空機強取等致死航空機の強取等の処罰に関する法律[ハイジャック防止法]1、2条)・・・1条 (航空機の強取等) 暴行若しくは脅迫を用い、またはその他の方法により人を抗拒不能の状態に陥れて、航行中の航空機を強取し、又はほしいままにその運行を支配した者は、無期又は七年以上の懲役に処する。2、前項の未遂罪は、罰する。2条 (航空機強取等致死) 前条の罪を犯し、よって人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。

16、航空機墜落致死航空機の強取等の処罰に関する法律[ハイジャック防止法] 2条)・・・2条 (航行中の航空機を墜落させる等の罪) 航行中の航空機(そのすべての乗降口が乗機の後に閉ざされたときからこれらの乗降口のうちいずれかが降機のため開かれるときまでの間の航空機をいう。以下同じ。)を墜落させ、転覆させ、若しくは覆没させ、または破壊した者は、無期または3年以上の懲役に処する。2、前条の罪を犯し、よって航行中の航空機を墜落させ、転覆させ、若しくは覆没させ、または破壊した者についても、前項と同様とする。3、前2項の罪を犯し、よって人を死亡させた者は、死刑または無期若しくは7年以上の懲役に処する。

17、人質殺害人質による強要行為等の処罰に関する法律2、3条)・・・2条 (加重人質強要) 2人以上共同して、かつ、凶器を示して人を逮捕し、又は監禁した者が、これを人質にして、第三者に対し、義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求したときは無期又は5年以上の懲役に処する。3条  航空機の強取等の処罰に関する法律(昭和45年法律第68号)第1項1号の罪を犯した者が、当該航空機内にある者を人質にして、第三者に対し、義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求したときは無期又は10年以上の懲役に処する。4条 (人質殺害) 2条又は前条の罪を犯した者が、人質にされている者を殺したときは、死刑又は無期懲役に処する。2、前項の未遂罪は、罰する。

尊属殺人(刑法200条/現・削除)では死刑または無期懲役と定められており、以前は死刑になる罪は全部で18種類あったが、1973年(昭和48年)4月4日の最高裁で、憲法14条の「法の下の平等」に反するという判決が出て以来、適当されず、刑法199条の(一般の)殺人罪が適用されてきた。1995年(平成7年)5月12日の刑法の口語文への改正、6月1日の施行で200条は削除され、現在は17種類になっている。「尊属殺人は違憲判決」を導き出した事件・・・栃木実父殺し事件

1の「内乱罪」と2の「外患誘致罪」は人を殺したか否かにかかわらず死刑としている。特に、外患誘致罪は主犯・従犯の区別なく全員死刑と定めている。しかし、この罪で処刑された者は1人もいない。

6の「建造物侵害罪」と9の「水道毒物混入致死罪」、13〜17の「特別法」はこれまでほとんど適用されたことがない。

11の「強盗致死罪」で拘禁されている死刑囚が現在もっとも多く、10の殺人罪と両方合わせて全体の98%を占めている。

14の「決闘罪」は1889年(明治22年)12月30日、公布&施行のかなり古い法律で、その罪名からも時代錯誤な印象を受けるが、実際には「死刑判決」にならないまでも、この罪名が適用された事件は今でも起きている。

「決闘罪」が適用された判例・・・2003年(平成15年)3月6日、福岡地裁で後輩の暴走族にけんかをけしかけ、決闘罪などに問われた福岡市城南区、暴力団組員のA(当時22歳)の判決公判があった。裁判長は「地域社会に大きな不安を与え、危険かつ悪質だ」と懲役3年6ヶ月(求刑・懲役5年)を言い渡した。判決によると、昨年7月22日未明、Aは福岡市西区の小戸公園で2つの暴走族が代表者3人ずつを出し1対1でけんかする決闘をさせた。Aは決闘を仕掛けた側の暴走族の元リーダーで、暴走族を有名にするため、後輩に決闘するようけしかけた。Aが特攻服などを用意し、審判役をしていた。

死刑の確定と執行

[ 死刑の確定と執行 ]

1989年(平成元年)11月10日に1人の死刑囚が処刑(そのときの法務大臣・後藤正夫)された。以来3年4ヶ月間、1993年(平成5年)3月26日に3人の死刑囚が処刑(そのときの法務大臣・後藤田正晴)されるまで死刑の執行がなかったのは、この間に就任した4人の法務大臣(長谷川信、梶山静六、左藤恵、田原隆)が「執行命令書」にサインしなかったからである。こんなにも長い間、執行がなかったのは近代刑罰史の中で初めてであった。

1989年(平成元年)12月、国連は死刑廃止条約を採択、10ヶ国の批准をもって1991年(平成3年)7月、発効した。このまま、日本でも死刑が廃止されるのではないかと思われた。だが、1993年(平成5年)1月、当時の皇太子(徳仁親王)が婚約し、恩赦が取り沙汰されていた矢先の3月に3人が処刑された。6月、皇太子(徳仁親王)が結婚。8月、38年続いた自民党政権に幕が下され、細川連立内閣が誕生した。法務大臣として民間から迎えられた法律学者の三ヶ月(みかづき)章は、就任挨拶の記者会見で「死刑制度についてどう思うか」と問われて、「裁判所が真剣に、3審までやったのを、最後の段階で執行しないのは、刑事訴訟法の精神に反する。『死刑反対』の信念をもっている人は法相を引き受けるべきではないのではないか。(執行を)決断するのは人間として苦しいことで、任期中に案件がないことを望むが、もし、ふりかかってきたら神に祈るような気持ちで決断するしかないだろう」と答えている。11月4日、国連人権委員会は日本政府に「死刑廃止への措置を講ずること」と勧告した。その直後の11月26日、4人の死刑囚が処刑された。結局、1993年(平成5年)は7人の死刑囚が処刑されたことになる。これほどの人数が処刑されたのは1976年(昭和51年)に12人が処刑されて以来のことで17年ぶりであった。憲法98条では「国際法規は、これを誠実に遵守する」としており、憲法が踏みにじられ、国際的信義を著しく失墜させた。ちなみに、1959年(昭和34年)4月、当時の皇太子(明仁親王)が結婚しているが、この年は30人が処刑されている。死刑(制度)と天皇は直接的な関係はないが、判決を下す裁判官は天皇に任命された最高裁判所長官に指名された者であり、唯一死刑執行権をもつ法務大臣もまた、天皇に任命された内閣総理大臣に指名された者でなければならない。さらに、刑の執行を免除したり、刑を軽減する恩赦も天皇の名において行なわれる。死刑(刑罰)だけでなく、司法制度そのものが天皇と密接に関わっている。

2007年(平成19年)8月、法務大臣として鳩山邦夫が就任したとき、「法相の署名が絡まないでも自動的に死刑が執行できる方法はないか」などと提言し、「ベルトコンベヤー発言」と波紋を呼んだ。絞首刑についても「ほかの方法はないか」と疑問を呈し、法務省内に死刑に関する勉強会を設置した。2007年(平成19年)12月7日、鳩山が法相になってからは初めての3人の死刑囚の死刑が執行され、それまで非公開だった死刑被執行者の氏名と執行場所、犯行事実の概要を公表した。続けて、2008年(平成20年)2月1日に3人、4月10日に4人、6月17日に3人の死刑囚の死刑が執行され、同じく死刑囚の氏名などを公表した。鳩山の就任中、13人の執行が行われたことになる。

2009年(平成21年)3月13日、法務省がサイト「回答する記者団(2016年10月より活動を休止)」運営者の請求に応じ、幼女連続殺人事件の宮ア勤元死刑囚らに対する死刑執行命令書を全面開示したことが分かった。同日、命令書はサイトで公開された。命令書全文の公開は初めてとみられる。公開された宮ア元死刑囚に対する執行命令書は2008年(平成20年)6月13日付。鳩山邦夫法相が東京高検の樋渡利秋検事長(当時/現・検事総長)に<平成18年7月31日上申に係る宮崎勤に対する死刑執行の件は、裁判言い渡しのとおり執行せよ>と命じている。そして、刑事訴訟法476条により、「法務大臣が死刑の執行を命じたときは、5日以内にその執行をしなければならない」と規定されている通り、実際に死刑が執行されたのは、6月13日から4日後の6月17日だった。

死刑に立ち会うのは、その判決が確定した裁判所に対応する検察庁の検察官になる。たとえば、地裁の1審判決が死刑、2審が控訴棄却、最高裁が上告棄却となった場合、地裁の判決が確定したことになるので、地検の検察官が立ち会うことになる。ただし、東京の場合は昔からの慣行で、東京地裁の死刑判決が確定したとき、東京地検ではなく、東京高検の検察官が立ち会うことになっている。宮ア勤の場合も同様に1審判決が死刑、2審が控訴棄却、最高裁が上告棄却となり、地裁の判決が確定したことになるので死刑に立ち会う東京高検の検事長に命令書が提出された。

刑法11条では「死刑は監獄内において絞首して執行する」、2項では「死刑の言渡しを受けた者は、その執行に至るまで監獄に拘置する」と規定されている。また、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律178条では「死刑は、刑事施設内の刑場において執行する」、2項では「日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)に規定する休日、1月2日、1月3日及び12月29日から12月31日までの日には、死刑を執行しない」と規定されている。1993年(平成5年)3月26日以降の死刑執行はほとんどが木曜日か金曜日に行なわれている(死刑被執行者)。

刑事訴訟法442条では「再審の請求は、刑の執行を停止する効力を有しない。但し、管轄裁判所に対応する検察庁の検察官は、再審の請求についての裁判があるまで刑の執行を停止することができる」と規定されている。「刑の執行を停止することができる」と規定されてはいるが、「刑の執行を停止しなければならない」とは規定されていない。つまり、再審の請求中に死刑の執行を行なっても違法にはならないということになる。

★『時事通信社』2020年(令和2年)2月20日付より・・・

1990年代に京都府と滋賀県で2人が殺害された事件で、強盗殺人罪などで死刑が確定した松本健次死刑囚(69歳)が、再審請求中の執行は違法として応じる義務がないことの確認を求めた訴訟で、大阪地裁は20日、請求を棄却した。同死刑囚は8回目の再審請求中で、請求中の死刑執行は憲法で保障された裁判を受ける権利を侵害するなどと主張。しかし、松永栄治裁判長は「公平な裁判所で確定判決を受けた場合、再審手続き中に執行されたとしても、裁判を受ける権利が侵害されたとは言えない」と判断した。確定判決によると、松本死刑囚は1990年に京都府のいとこの男性(36歳)、1991年に滋賀県の独居女性(66歳)を殺害し、現金を奪うなどした。過去7回の再審請求は全て退けられた。

刑事訴訟法475条および475条2項の規定により、「死刑の執行は死刑確定から6ヶ月以内に法務大臣の命令によって執行しなければならない。但し、上訴権回復若しくは再審の請求、非常上告又は恩赦の出願若しくは申出がされその手続が終了するまでの期間及び共同被告人であつた者に対する判決が確定するまでの期間は、これをその期間に算入しない」と規定されている。さらに、刑事訴訟法476条により、「法務大臣が死刑の執行を命じたときは、5日以内にその執行をしなければならない」と規定されている(罰則規定はない)。だが、「6ヶ月以内に執行しなければならない」という規定は守られていない。

2001年(平成13年)6月8日に発生した大阪池田小児童殺傷事件の元死刑囚・宅間(現姓・吉岡)守は2003年(平成15年)8月28日、大阪地裁で死刑を言い渡され、9月10日に控訴したが、9月26日に自ら控訴を取り下げ、死刑が確定した。2004年(平成16年)9月14日、死刑が執行された。確定から約1年経ってからの死刑執行だが、これでも他の死刑囚と比べると異例と言えるほど短い。

関連ページ・・・死刑確定囚 / 死刑被執行者

死刑の執行に関する法律

[ 死刑の執行に関する法律 ]

< 刑法 >

死刑は監獄内において絞首して執行する。(刑法11条)

死刑の言渡しを受けた者は、その執行に至るまで監獄に拘置する。(刑法11条2項)

刑の言渡しを受けた者は、時効によりその執行の免除を得る。(刑法31条)

時効は、刑の言渡しが確定した後、次の期間その執行を受けないことによって完成する。(刑法32条)

 一 死刑については30年
 二 無期の懲役又は禁錮については20年
 三 十年以上の有期の懲役又は禁錮については15年
 四 三年以上十年未満の懲役又は禁錮については10年
 五 三年未満の懲役又は禁錮については5年
 六 罰金については3年
 七 拘留、科料及び没収については1年

時効は、法令により執行を猶予し、又は停止した期間内は、進行しない。(刑法33条)

死刑、懲役、禁錮及び拘留の時効は、刑の言渡しを受けた者をその執行のために拘束することによって中断する。(刑法34条)

罰金、科料及び没収の時効は、執行行為をすることによって中断する。(刑法34条2項)

< 刑事訴訟法 >

再審の請求は、刑の執行を停止する効力を有しない。但し、管轄裁判所に対応する検察庁の検察官は、再審の請求についての裁判があるまで刑の執行を停止することができる。(刑事訴訟法442条)

再審の請求が理由のあるときは、再審開始の決定をしなければならない。(刑事訴訟法448条)

再審開始の決定をしたときは、決定で刑の執行を停止することができる。(刑事訴訟法448条2項)

死刑の執行は法務大臣の命令による。(刑事訴訟法475条)

前項の命令は、判決確定の日から6ヶ月以内にこれをしなければならない。但し、上訴権回復若しくは再審の請求、非常上告又は恩赦の出願若しくは申出がされその手続が終了するまでの期間及び共同被告人であつた者に対する判決が確定するまでの期間は、これをその期間に算入しない。(刑事訴訟法475条2項)

法務大臣が死刑の執行を命じたときは、5日以内にその執行をしなければならない。(刑事訴訟法476条)

死刑は、検察官、検察事務官及び監獄の長又はその代理者の立会の上、これを執行しなければならない。(刑事訴訟法477条)

死刑の執行に立ち会つた検察事務官は、執行始末書を作り、検察官及び監獄の長又はその代理者とともに、これに署名押印しなければならない。(刑事訴訟法478条)

死刑の言い渡しを受けた者が心神喪失の状態に在るときは、法務大臣の命令によつて執行を停止する。(刑事訴訟法479条)

死刑の言い渡しを受けた女性が懐胎しているときは、法務大臣の命令によつて執行を停止する。(刑事訴訟法479条2項)

前2項の規定により死刑の執行を停止した場合には、心神喪失の状態が回復した後又は出産の後に法務大臣の命令がなければ、執行することはできない。(刑事訴訟法479条3項)

第475条第2項の規定は、前項の命令についてこれを準用する。この場合において、判決確定の日とあるのは、心神喪失の状態が回復した日又は出産の日と読み替えるものとする。(刑事訴訟法479条4項)

死刑、懲役、禁錮又は拘留の言渡を受けた者が拘禁されていないときは、検察官は、執行のためこれを呼び出さなければならない。呼出に応じないときは、収監状を発しなければならない。(刑事訴訟法484条)

死刑、懲役、禁錮又は拘留の言渡を受けた者が逃亡したとき、又は逃亡する虞があるときは、検察官は、直ちに収監状を発し、又は司法警察員にこれを発せしめることができる。(刑事訴訟法485条)

死刑、懲役、禁錮又は拘留の言渡を受けた者の現在地が判らないときは、検察官は、検事長にその収監を請求することができる。(刑事訴訟法486条)

請求を受けた検事長は、その管内の検察官に収監状を発せしめなければならない。(刑事訴訟法486条2項)

< 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律 >

死刑は、刑事施設内の刑場において執行する。(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律178条)

日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)に規定する休日、1月2日、1月3日及び12月29日から12月31日までの日には、死刑を執行しない。(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律178条2項)

死刑を執行するときは、絞首された者の死亡を確認してから5分を経過した後に絞縄を解くものとする。(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律179条)

死刑と憲法

[ 死刑と憲法 ]

死刑(制度)に対する裁判所が下した判決。いずれも憲法9条、13条、25条、31条、36条に違反しないという判決が下されている。

憲法9条・・・日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

憲法13条・・・すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

憲法25条・・・すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

憲法31条・・・何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

憲法36条・・・公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

○1948年(昭和23年)3月12日、最高裁大法廷判決 尊属殺、殺人、死体遺棄 (刑集 第2巻3号191頁)

<死刑といえども、他の刑罰の場合におけると同様に、その執行の方法等がその時代と環境とにおいて人道上の見地から一般に残虐性を有するものと認められる場合には、勿論これを残虐な刑罰といわねばならぬから、将来若し死刑について火あぶり、はりつけ、さらし首、釜ゆでの刑のごとき残虐な執行方法を定める法律が制定されたとするならば、その法律こそは、まさに憲法第36条に違反するものというべきである。>

○1951年(昭和26年)4月18日、最高裁大法廷判決 窃盗等 (刑集 第5巻5号923頁)

<刑法死刑の規定は憲法第9条に違反するというのであるが、同条の規定から死刑廃止に至らねばならないと解すべき理由を見出すことはできない。>

<刑法死刑の規定はそれぞれ憲法第13条、第36条に違反するというのであるがそのとるをえないことは当裁判所昭和二二年(れ)第一一九号同二三年三月一二日大法廷判決(判例集二巻三号一九一頁 ↑)の示すとおりである。>

○1955年(昭和30年)4月6日、最高裁大法廷判決 強盗殺人、同未遂、殺人予備、私文書偽造、偽造私文書行使、詐欺、詐欺未遂 (帝銀事件/刑集 第9巻4号663頁)

<現在わが国の採用している方法による絞首刑は憲法第36条にいう「残虐な刑罰」にあたらない。

○1058年(昭和33年)4月10日、最高裁第1小法廷判決 強盗殺人、死体遺棄 (刑集 第12巻5号839頁)

<死刑を定めた刑法の規定が憲法9条、13条及び36条に違反するものでないことは、当裁判所昭和二四年新(れ)第三三五号同二六年四月一八日大法廷判決(刑事判例集五巻五号九二三頁以下 ↑)及び昭和二二年(れ)第一一九号同二三年三月一二日大法廷判決(刑事判例集二巻三号一九一頁以下 ↑)の示すところであり、又憲法25条に違反するものでないこともこれらの大法廷判例の趣旨により明らかである。>

○1961年(昭和36年)7月19日、最高裁大法廷判決 強盗殺人 (刑集 第15巻7号1106頁)

<明治六年太政官布告第六五号絞罪器械図式は、現在法律と同一の効力を有するものとして有効に存続している。

絞首刑たる死刑を宣言することは、憲法第31条に違反しない。>

<現在の死刑の執行方法が所論のように明治六年太政官布告第六五号の規定どおりに行われていない点があるとしても、それは右抗告で規定した死刑の執行方法の基本的事項に反しているものとは認められず、この一事をもつて憲法第31条に違反するものとはいえない。>

憲法31条は、「何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他刑罰を科せられない」と規定されている。ここでいう「手続き」とは、刑罰を科するまでの手続きにとどまらず、刑罰の執行方法も含むと解されなくてはならない。この点は最高裁も認めている。しかし、現行法制では死刑執行についての「法律」が存在せず、あるのは絞架の設計図を示した明治6年の太政官布告のみなのである。だが、これを法律でない、あるいは現憲法下では失効しているとすると、死刑の執行や宣告は必然的に全て憲法違反ということになってしまう。最高裁としては、したがってこの太政官布告が、現在でも「法律」として有効だということを論理付けなくてはならなかったのである。

1983年(昭和58年)7月8日、最高裁第2小法廷判決 窃盗、殺人、強盗殺人、同未遂、銃砲刀剣類所持取締法違反、火薬類取締法違反 (永山則夫連続射殺魔事件/刑集 第37巻6号609頁)

<死刑制度を存置する現行法制の下では、犯行の罪質、動機、態様ことに殺害の手段方法の執拗性・残虐性、結果の重大性ことに殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等各般の情状を併せ考察したとき、その罪責が誠に重大であつて、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむをえないと認められる場合には、死刑の選択も許される。>

死刑存廃の争点

[ 死刑存廃の争点 ]

死刑存廃の最大の争点に、「死刑制度を存続させることによって凶悪犯罪を防ぐことができる」と考える法務省側と「死刑に凶悪犯罪を防ぐ抑止力がない」とする考え方とがあって未だに論争が続いている。こういう場合、実際に死刑制度を廃止した国でその後、犯罪が増えたのかどうかを調べてみれば参考になるとは思うが、それについて明らかに廃止したことによって増えたというケースはあるのかもしれないが、私は知らない。アムネスティ・インターナショナルでも死刑が他の刑罰に比べより大きな犯罪抑止力効果をもつことは確認されていないとしている。いずれにせよ他国での廃止後の犯罪事情がどうであれ、やはりそれは参考にしかならないと考えるべきだという気がする。廃止した直後に、「死刑がなくなったから思い切って殺したい奴らをまとめて殺した」なんていう凶悪犯の事件が起きないとは限らないわけで、そうなれば死刑廃止は失敗だったということになるでしょう。死刑廃止に賛成する最大の理由として、「誤判による死刑判決が起こる可能性がある限り死刑を廃止すべきだ」というのがある。確かに犯人でない者を死刑にしたのでは取り返しがつかないことになる。死刑だけでなく、懲役刑であってもその刑に服した時間を取り返すことができない、といった意見もあるが・・・。死刑判決になるような事件では戦後まもなくの頃と違ってこれからは誤判となることはない、という意見もある。だが、そう言い切れるかどうか疑問である。

日本では裁判によって一度、死刑が確定したあとに再審によって無罪となった事件が4件(免田事件、財田川事件、島田事件、松山事件)ある。・・・死刑確定後再審無罪事件

死刑に賛成と反対の意見をまとめるとだいたい次のようになる。

○死刑に賛成
 
死刑制度の存在は犯罪の抑止力になる
誤判による死刑判決がこれから起こる可能性はゼロに等しい
社会の当然の正当防衛だ
被害者の家族の苦しみを思えば当然だ
殺された人のために代わりに復讐してやっているんだ
悪いことをすれば罰せられるという見せしめ
 
○死刑に反対
 
死刑制度の存在は犯罪の抑止力にならない
誤判がある限り死刑はなくすべきだ
罪を深く反省している人を殺すなんて残酷だ
国家による殺人だ
世界に残った最後の蛮行だ
生きて罪を償わせることこそ大切だ
死刑を執行する人たちが殺人者にさせられてしまう
まれに、死刑を望んで殺人行為に及ぶ者がいる

「国家による殺人」といえば戦争があり、同じ国家による殺人行為にもかかわらず、戦争には反対しても死刑には賛成という人も多いようである。

死刑についての世論調査

[ 死刑についての世論調査 ]

★内閣府(前・総理府)が行なった死刑廃止に対する賛否の世論調査の結果は次の通り。

内閣府 → 内閣府の政策 → 政府広報 → 世論調査

  調査年月 死刑廃止に賛成 死刑廃止に反対 分からない
1956年(昭和31年)4月 18.0% 65.0% 17.0%
1967年(昭和42年)6月 16.0% 70.5% 13.5%
1975年(昭和50年)5月 20.7% 56.9% 22.5%
1980年(昭和55年)6月 14.3% 62.3% 23.4%
1989年(平成元年)6月 15.7% 66.5% 17.8%
1994年(平成6年)9月 13.6% 73.8% 12.6%
1999年(平成11年)9月 8.8% 79.3% 11.9%
2004年(平成16年)12月 6.0% 81.4% 12.5%
2009年(平成21年)11・12月 5.7% 85.6% 8.6%
10 2014年(平成26年)11月 9.7% 80.3% 9.9%
11 2019年(令和元年)11月 9.0% 80.8%  10.2%

2回目(1967年6月)の調査では「人を殺した者」「内乱の首謀者」「人のいる建物に火をつけた者」といったいくつかの項目を立てて、これに対する意見の選択肢として、「死刑にすることができるようにしておいた方がいい」「死刑にできないようにしておいた方がよい」「一概に言えない、分からない」となっていた。これでは「死刑廃止に反対」が70.5%になるのも分かる気がする。

5回目(1989年6月)の調査は1989年(平成元年)6月から7月にかけて全国の20歳以上の男女を対象に実施したが、2293人から回答があった。この頃、宮ア勤幼女連続殺人事件女子高生コンクリ詰め殺人事件などの凶悪な犯罪が起きており、そうした時期での調査の結果を「正しい世論」と言えるかどうか疑問である。その内容と結果は次の通り。

(1)凶悪な犯罪は4、5年前と比べて増えていますか、減っていると思いますか、同じようなものだと思いますか。

増えている 90.8%
減っている 0.9%
同じようである 5.6%
分からない 2.7%

(2)死刑という刑罰をなくしてしまうと悪質な犯罪が増えると思いますか、別に増えるとは思いませんか。

増えると思う 67.0%
増えると思わない 12.4%
分からない 4.4%

(3)今の日本で、どんな場合にも死刑を廃止しようという意見にあなたは賛成ですか、反対ですか。

賛成 15.7%
反対 66.5%
分からない 17.8%
(1)で「凶悪な事件が増えている」と認識させ、(2)で「死刑を廃止することで凶悪な犯罪はもっと増える」と暗示させ、(3)で「だから死刑は必要なんだ」という見事な三段論法に思えるような設問構成になっている。(3)の「どんな場合にも」という念を押したように思える設問にも疑問を感じる。

6回目(1994年9月)〜9回目(2009年11・12月)の調査では「どんな場合でも死刑は廃止すべきである」「場合によっては死刑もやむを得ない」だったが、10回目(2014年11月)の調査では有識者からなる検討会が「より明瞭な回答」を得られるようにと提言したことを受け、「どんな場合でも」と「場合によっては」を削除した。また、10回目の調査では仮釈放のない終身刑の導入を仮定した質問を初めて設置。死刑について「廃止する方がよい」は37.7%にとどまり、「廃止しない方がよい」が51.5%と過半数を占めた。

★2013年(平成25年)3月12日、死刑廃止を目指す英国のNGO団体「デス・ペナルティー・プロジェクト(DPP)」が研究報告書を公表した。その研究報告書によると、2008〜10年(平成20〜22年)、委託した日本の調査会社に登録している20〜49歳の男女から無作為で選んだ計約2万人にインターネット上でアンケートを実施した結果は次の通り。

(1)死刑は絶対にあった方がよい・・・44%
(2)死刑はあった方がよい・・・35%
(3)死刑は廃止した方がよい・・・3%

(1)+(2)=死刑に賛成=44%+35%=79%

ほぼ同じ時期の2009年(平成21年)11・12月に内閣府が行った死刑廃止に対する賛否の世論調査の結果である「死刑廃止に反対(つまり死刑に賛成)」は上記の表の通り、85.6%で、DPPによる研究報告書の「死刑に賛成」の79%と比べ、設問の仕方によって数字に多少の違いが出てくる、と思う程度の違いしか感じられない。ただ、「死刑は絶対にあった方がよい」が44%と思っていたほど少ないので意外な気がした。

★『毎日新聞』2013年(平成25年)7月19日付より・・・

毎日新聞がインターネット上で展開している参院選のボートマッチ「えらぼーと」を利用した9万3890人の回答を集計した。えらぼーとは26の設問に答えると、参院選のどの立候補者や政党と自分の考えが近いか数字で示される仕組みで死刑制度に対する結果は次の通り(分析は7月1日〜19日午前10時現在のデータに基づくもの)。

(1)死刑制度に「賛成」と答えた人・・・69%
(2)死刑制度に「反対」と答えた人・・・22%

(1)の死刑制度について男女とも「賛成」すると答えた人が多かったが、男性(72%)に比べ女性(62%)の方が賛成が少なかった。

★「フジテレビ系(FNN)」2016年(平成26年)10月17日付より・・・

FNNが行った世論調査で、日本弁護士連合会が「死刑廃止」を求める宣言を採択したことに関して尋ねたところ、死刑廃止に「賛成」と答えた人は2割(20.5%)、死刑廃止に「反対」の人は7割(73.3%)を超えた。7割を超える人が、死刑制度の存続を求めている。

死刑と無期懲役刑と終身刑

[ 死刑と無期懲役刑と終身刑 ]

日本では「死刑」が一番厳しい刑罰だが、その次は「無期懲役刑」となっている。これは「終身刑」とは違い、刑法28条(仮出獄)の「懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の3分の1を、無期刑については10年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に出獄を許すことができる」となっており、文字通り早ければ無期刑で収監されていた者は10年で出所できることになっているが、実際には現在、無期懲役刑で仮出所した者が収監されていた期間は平均で約30年を超えるようになった。

1998年(平成10年)6月18日に最高検が「特に犯情悪質等の無期懲役刑確定者に対する刑の執行指揮及びそれらの者の仮出獄に対する検察官の意見をより適正にする方策について」と題する依命通達を出したが、通達の中で最高検次長検事は、検事長に対し、無期懲役刑が確定した事件のうち、「動機や結果が死刑事件に準ずるくらい悪質」などの「マル特無期事件」について、刑務所長・地方更生保護委員会からの意見照会に対し、仮出獄不許可の意見を作成し、事実上の「終身刑」とするよう求めており、そうした動きもあって平均収監期間が年々長くなっていると思われ、「終身刑」の導入を巡る議論にも影響を与えそうだ。

2007年(平成19年)末時点で、無期懲役の判決を受けて刑務所に服役している受刑者(無期懲役囚)が1670人に達し、戦後最大になったことが法務省のまとめ(速報値)で分かった。2007年(平成19年)は89人の無期懲役囚が新たに入所したのに対し、仮釈放は3人にとどまり、仮釈放の平均入所期間は30年を超えた。凶悪犯罪に対して厳罰を求める世論や仮釈放者の再犯に対する社会不安が背景にあるとみられ、仮釈放を認めない「終身刑」の導入に向けた動きとも受け取られる。

ちなみに、現在の最長有期刑は2005年(平成17年)1月1日施行の改正刑法によって「懲役20年」から「懲役30年」に改正されており、それまでは有期刑では「懲役20年に処す」が最高刑だったが、「懲役30年に処す」という判決を言い渡すことができるようになった(刑法12、14条)。

刑法12条・・・懲役は無期および有期とし、有期懲役は1ヶ月以上20年以下とする。
刑法14条・・・有期の懲役または禁錮を加重する場合は30年までにすることができる。

『終身刑を考える』(インパクト出版会/2001)によると、その「終身刑」にも次のような問題点があると指摘している。

『終身刑を考える』(インパクト出版会/2001)
○終身釈放の期待をもつことのできない刑を新設するのは人道上良くない
○終身に渡る拘禁は人格が完全に破壊されてしまうなどの悪影響があり、人間の尊厳、人間性に反する
○終身刑はいわば緩慢に死刑を執行するようなものであり、一生社会へ戻さないのであるから、ある意味死刑より厳しい刑である。
○本人にまったく希望を失わせることは人格形成の無限の可能性を奪うものである。
○終身自由刑は再社会化という行刑目的に反する。

死刑廃止運動団体

[ 死刑廃止運動団体 ]

函館シャロームの会 「函館地区カトリック正義と平和委員会」という名称を一般市民に開かれたグループとなるようにと1994年(平成6年)に現在の「函館シャロームの会」に改称。「平和と人権」をメインテーマに会独自の活動、また他の市民グループと連携した活動を行っている。会報は年に数回適時発行。
死刑廃止連絡会・みやぎ 1989年(平成元年)、宮城県内外の死刑に反対する人々が声をかけ合って集まったのをきっかけに発足。仙台拘置支所に在監する獄中者らとの交流を中心に死刑廃止に関する催しや学習会、死刑執行停止のアピール等の活動をしています。月に1回例会を開いてます。
死刑廃止の会 1980年(昭和55年)の1.24死刑廃止集会をきっかけに発足。1月24日は幸徳秋水らをはじめとする大逆事件の12人が処刑された日。常に獄中にある死刑囚と共に死刑制度の本質を見つめ、死刑の実態を多くの人に知らせ、死刑廃止を訴えていくというのが会の基本姿勢。
社団法人アムネスティ
インターナショナル日本
1961年(昭和36年)にイギリスの弁護士ベネンスンによってアムネスティ・インターナショナルが創設され、1977年(昭和52年)にはノーベル平和賞を受賞した民間団体。あらゆる政治的権力・イデオロギー・宗教を超えて、特に(1)「良心の囚人」の釈放、(2)政治犯に対する公正かつ迅速な裁判を求めること、(3)死刑および拷問の廃止を目的とし、地球上いたるところに張り巡らされたネットワークによって世界的規模の人権擁護活動をしている団体。いかなる権力や勢力によっても影響されないようにするため、政府や財団などの財政的援助を受けることなく、150ヶ国にいる110万人(1993年現在)を超える会員によって支えられている。日本にも約7000人の会員がいる。
死刑をなくす女の会 1980年(昭和55年)、死刑廃止について中山千夏と丸山友岐子がテレビで対談したのがきっかけで1981年(昭和56年)4月に発足。活動方針は死刑制度が日本にあることを知ってもらい、死刑という刑罰がいかに人権を無視した行為であるかということを広く訴えていくことです。「女の会ニュース」を不定期に発行。年に1回総会を開いてます。
フォーラム90 「死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90」が正式名称。1990年(平成2年)春、前年国連で「死刑廃止条約」が採択されたのを機にアムネスティ、死刑執行停止連絡会議、JCCDの3団体が条約批准を求める運動を通して全国の廃止論者を顕在化させる「フォーラム運動」を呼びかけた。賛同者は全国で約5000人。
死刑廃止運動全国ネットワーク 死刑廃止に取り組む全国の個人・団体が交流を深め、情報・意見を交換し、より信頼を深めて有機的につながり協力し合っていくことを目指すため。1989年(平成元年)、神戸での第2回全国合宿で結成が確認されました。毎年、全国合宿の様々な課題、今後の方向性等について和気藹々の中にも真剣な討議が行なわれています。
ユニテ 1991年(平成3年)2月、発足。当会の目的の第一は獄中者(死刑囚・無期囚)を主体として相互の団結と友情を育成、自身の人生や犯した罪などの反省をより深め、内面的(精神的)な向上を仲間と共に実践していくことにあります。年4回、交流季刊誌「希望」を発行。
全国犯罪・非行協議会(NCCD) 本会の活動方針は「刑罰の改良を推進するとともに、犯罪者および非行者の処置、処遇ならびに被害者の救済にかかわる分野の改善、発展を促進させることにある。季刊誌「NCCD in Japan」
都高教・死刑に反対する会 1987年(昭和62年)、東京都高等学校教職員組合(都高教)の有志が集まって発足。
死刑廃止キリスト者連絡会 1992年(平成4年)5月、発足。カトリックとプロテスタントを含む超教派の連絡会。法務省交渉に参加したり法務大臣に要請文や抗議文を送るなど、当局に働きかけると共に、キリスト教の内部に死刑廃止の主張を広げることも重要な課題と考えて取り組んでいる。キリスト教倫理は必ずしも死刑制度を否定していなかったので、死刑廃止論はキリスト教のあり方を根本から問う重要な問題である。
監獄人権センター 1995年(平成7年)3月、刑事拘禁施設および出入国管理施設の人権状況を国際水準に合致するよう改善していくこと、死刑を廃止すること等を目的として発足。
真宗大谷派死刑廃止を願う会 1998年(平成10年)6月の死刑執行に対し、真宗大谷派は「死刑制度を問い直し死刑執行の停止を求める声明」を出しました。これは以前から活動を続けてきた「死刑廃止を願う真宗大谷派有志の会」など宗派内での死刑廃止への動きを受けたもので、宗派としては初めて。そこで、これを機に有志が緊急集会を開き、それまで個人個人が別々に動いていた宗派内での死刑廃止運動を結集し、宗派外の人々との交流をはかりながら運動を活性化させるために、1998年(平成10年)7月7日、「有志の会」を「真宗大谷派死刑廃止を願う会」として発足。機関誌「アイムサー(不殺生)」
国際井戸端連絡会議 アムネスティとの共催で人権に関する映画の上映やアメリカのアフガニスタン空爆に抗議してデモ行進、ピースウォークなどの活動をしている。死刑廃止との直接なつながりはない。
死刑廃止フォーラム・イン静岡 1996年(平成8年)4月、静岡県で死刑廃止を願う人々のネットワークとして発足。メンバーは主に県内在住のフォーラム90賛同人。2ヶ月に1回、例会を開き死刑廃止のための活動や学習活動を行なっている。
死刑廃止フォーラム in なごや 毎月1回の定例会を開き、活動計画、行事の企画、死刑制度に関わる情報などについて話し合っています。
かたつむりの会(かえるの会) 1979年(昭和54年)、発足。1993年(平成5年)に大阪拘置所で3年4ヶ月ぶりに4人の死刑執行(3月26日に2人、11月26日に2人)があった(この年は計7人が執行されている/死刑被執行者)が、1994年(平成6年)1月から「これ以上、もう1人の執行も許せへん!」お思いで大阪拘置所の周りを「死刑やめろ」の声を出し拍子木をたたいて歩く「夜回り」を開始。通信「死刑と人権」を発行。
死刑廃止フォーラム in おおさか 1995年(平成7年)6月、大阪で活動している7つの死刑廃止団体が中心となって団体相互の連絡、情報交換、共同行動を目的に結成。毎月1回、例会を開いている。
個別支援ネットワーク・関西 大阪拘置所の死刑囚の現状を把握しながら迫ってくる処刑の危機にどう対処していくかに心悩ませながら、弁護人と相談して精一杯の活動、支援をしようとしている。
フォーラムひろしま 1989年(平成元年)に死刑についての勉強会からスタートした小さな集まり。
ファイヤー編集室 大阪拘置所に収監中の I さん(ペンネーム「高松の仙人」)が語る故郷の思い出や昔話を中心に I さんの娘が綴る「子仙の面会日記」や獄内外からの便りを掲載した「どんぐり通信」を発行。
死刑廃止タンポポの会 福岡拘置所の死刑囚との面会からスタート。月に1回、会議を開き、「わたげ通信」を不定期に発行。

その他

[ その他 ]

赤軍、オウム、林真須美ら死刑囚78人の肉筆を週刊誌が掲載
2013年(平成25年)2月4日に発売された『週刊ポスト』(2013年2月15・22日号)が日本の確定死刑囚133人にアンケートを実施。合計78名の死刑囚の肉筆が掲載された特集を組んでいる。肉筆が掲載されている主な死刑囚は、連合赤軍事件の坂口弘、連続企業爆破事件の大道寺将司、和歌山毒物カレー事件の林真須美、奈良女児誘拐殺人事件の小林薫、埼玉保険金殺人事件の八木茂など、日本中を震撼させた事件の首謀者ばかり。さらに一連のオウム事件で死刑判決を受けた早川紀代秀、土谷正実、井上嘉浩らの肉筆も含まれている。死刑囚らは拘置所への意見、被害者への気持ち、死刑制度について、執行の事前通知についてなどについて語っており、反省を述べる者、冤罪を訴える者など、その主張は様々。78名中70名は実名で掲載されており、コメントの抜粋が掲載されている。
死刑の刑場を初公開 東京拘置所 法相の意向を受け
2010年(平成22年)8月27日、法務省は東京拘置所内の死刑の刑場を報道機関に公開した。千葉景子法相の意向を受けたもので、刑場の外部への公開は、国会議員の視察を除けば初めて。死刑制度について国民的議論につなげたい考えだ。公開されたのは、宗教者の教戒を受ける「教戒室」、絞首刑が実施される「執行室」、検事らが執行を見届ける「立会室」など5つの部屋。教戒室は刑場出入り口のすぐ左手にあり、死刑囚が最初に通されて執行を告げられ、希望があれば宗教家の教戒を受ける。教戒のための机といすが中央に置かれ、右手には大型の仏壇が備え付けられている。次に死刑囚が連行される「前室」は、執行室とつながっており、青色のカーテンで仕切ることができる構造。壁面は木目で、床にはふじ色のカーペットが敷かれている。ここにも壁内の仏壇に仏像が置かれ、希望すれば教戒を受けられる。死刑囚は前室で目隠しと手錠をされ、カーテンが開いた後、執行室に移る。執行室中央の床には、約1メートル四方の開閉式の「踏み板」が設置されており、周囲に赤いテープが張られている。真上の天井には、死刑囚の首にまくロープを通す大型の滑車が埋め込まれている。踏み板は、執行室と壁で隔てられた「ボタン室」で操作される。ボタン室の壁面には3つのボタンがあるが、踏み板を開くのは一つのみ。3人が同時に押すことで、誰のボタンで開いたのか分からないようにして、刑務官の心理的負担を軽減する仕組みだ。ガラス越しに執行の様子を見る立会室からは、執行室の下の階にあり、踏み板の穴から落ちた死刑囚の死亡を確認する部屋も見渡せ、階段で降りて行くこともできる。死刑囚の首にまかれるロープは外された状態で、踏み板が開く様子も公開されなかった。また、執行室の下の部屋は、「死刑囚の生命が絶たれる厳粛な場所で、家族や刑務官の心情も考慮した」(法務省)として、立ち入り対象から除外された。
中国で日本人の死刑執行
2010年(平成22年)4月6日、中国当局は2006年(平成18年)9月に中国から覚醒剤約2.5キロを遼寧省の大連空港から日本に密輸しようとしたとして麻薬密輸罪に問われ、2009年(平成21年)4月に死刑が確定した大阪出身の赤野光信(65歳)に対する刑を遼寧省で執行した。日本人に対して死刑が執行されたのは1972年(昭和47年)の日中国交正常化後、初めて。
2010年(平成22年)4月9日、大連市看守所で麻薬密輸罪で死刑が確定していた名古屋市出身の武田輝夫(67歳)、岐阜県出身の鵜飼博徳(48歳)の両死刑囚を、瀋陽市看守所で福島県出身の森勝男(67歳)を執行した。判決によると、武田は2004年(平成16年)6月に広東省で覚醒剤約3.1キロを所持しているところを拘束され、2003年(平成15年)に大連から覚醒剤計約3.7キロを密輸しようとした組織のリーダーと認定された。鵜飼と森は2003年(平成15年)7月、それぞれ1キロ以上の覚醒剤を隠し持ち、中国から空路で帰国しようとして拘束された。
2014年(平成26年)7月25日、覚醒剤を日本に密輸しようとした罪で中国で死刑が確定していた日本人について中国東北部・大連の拘置所で死刑を執行した。外務省によると、執行されたのは50代の男性という。死刑被執行者の氏名や正確な年齢の公表なし? 
2015年(平成27年)6月下旬、覚醒剤売買で死刑判決を受けていた日本人死刑囚の刑が執行されたことが明らかになった。死刑となった男性は2010年(平成22年)5月に広東省珠海市で覚醒剤3キロあまりを売買した罪で逮捕された。
2016年(平成28年)10月20日、中国広東省で約8キロの覚醒剤を売買した罪に問われ、2011年(平成23年)に死刑判決が確定した日本人の男に対し、死刑が執行されたことが分かった。現地の裁判所は男を主犯格と認定し、犯行にかかわった別の男には執行猶予付きの死刑判決を出している。日中関係筋が明らかにした。日本人の死刑執行は7人目。
中国の麻薬密輸罪・・・中国刑法347条はアヘンの場合は1キロ以上、覚醒剤やヘロインの場合は50グラム以上を密輸した者を懲役15年か、無期懲役または死刑に処すと定めている。密造や製造、輸送する行為も死刑となる。中国公安省によると、2009年(平成21年)、外国人による密売事件を集中的に取り締まり、外国人1559人を摘発、薬物1.96トンを押収した。
アジア16ヶ国で薬物犯罪の最高刑は死刑・・・日本では覚醒剤を営利目的で密輸した場合でも最高刑は無期懲役だが、アムネスティによると、アジア地域では薬物に関する犯罪で最高刑に「死刑」を設けている国が多く、2009年(平成21年)8月現在で、中国、タイ、マレーシア、シンガポールなどアジアに16ヶ国ある。自国民だけでなく、外国人でも死刑が執行されるケースが少なくない。
死刑執行の音 ラジオで放送
2008年(平成20年)5月6日、AMラジオの文化放送(東京)が報道特別番組「死刑執行」で、実際に死刑が執行される瞬間の音を放送した。裁判員制度の導入(2009.5.21開始)を前に死刑の実態を伝えるのが目的という。文化放送によると、使用した音源は昭和30年代、刑務官の教育を目的に大阪拘置所で録音されたテープ。死刑囚と姉との最後の面会の様子、読経の声、死刑囚の立つ床板が外れてロープがきしむ音など10分弱を流した。番組は約1時間で、元刑務官らへのインタビューで構成され、刑場の様子や執行の手順、死刑囚・刑務官の置かれた状況を伝えた。放送後、文化放送には聴取者からさまざまな意見が寄せられた。「死刑について考えるよい機会になった」などの肯定的な意見が多かったが、「犯罪被害者の声がなく、公平性に欠ける」などの批判もあった。テレビ朝日は4月29日、同じ音源を使って、死刑の直前・直後の音を放送している。
死刑を扱った映画作品
『アミスタッド』(DVD/監督・スティーヴン・スピルバーグ)   『凶悪』(DVD/監督・白石和彌) 
『グリーンマイル』(DVD/監督・フランク・ダラボン)   『絞死刑』(DVD/監督・大島渚)
『さらばわが友・実録大物死刑囚たち』(DVD/監督・中島貞夫)   『サルバドールの朝』(DVD/監督・マヌエル・ウエルガ)
『ジャスト6.5 闘いの証』(DVD/監督・サイード・ルスタイ)   『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(DVD/監督・ラース・フォン・トリアー)
『チョコレート』(DVD/監督・マーク・フォスター)   『デッドマン・ウォーキング』(DVD/監督・ティム・ロビンス)
『天国の駅』(DVD/監督・出目昌伸)   『7番房の奇跡』(DVD/監督・イ・ファンギョン)
『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』(DVD/監督・アラン・パーカー)   『ラストダンス』(DVD/監督・ブルース・ベレスフォード)
『リターン・トウ・パラダイス』(DVD/監督・ジョセフ・ルーベン)   『冷血』(DVD/監督・リチャード・ブルックス)
『私たちの幸せな時間』(DVD/監督・ソン・ヘソン)   『私は貝になりたい』(DVD/監督・福澤克維)
『私は死にたくない』(DVD/監督・ロバート・ワイズ)    
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