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犯罪関連用語の基礎知識

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【 は行 】

- 50音順 -

 

ハイジャック防止法
売春防止法
破壊活動防止法
爆発物取締罰則

発射罪
ハラスメント
パラノイア

パワーハラスメント
判決 控訴 上告
判決の言い渡し
犯罪ドラマ
犯罪などの虚構申告罪
犯罪の成立
犯罪被害者参加制度
犯罪被害者等給付金制度
犯罪被害者等通知制度
犯罪被害者保護法

反社会性人格障害
犯人蔵匿罪 証拠隠滅罪
反復強迫
BBS会
被害者避難

被疑者国選弁護制度

被疑者 容疑者 重要参考人

ひき逃げ
非行少年 不良行為少年

被告人の勾留
砒素
PTSD
ピッキング防止法
ビデオリンク方式
非犯罪化
非弁行為の罪
秘密の暴露

秘密を侵す罪

ファムファタル

フィッシング
不起訴処分
武器等製造法
復顔法

不作為犯
侮辱罪 名誉毀損罪

付審判制度

婦人補導院
不正アクセス禁止法

不正指令電磁的記録に関する罪
不利益変更禁止の原則
プリゾニゼーション

フレームアップ
プロファイリング
文化財保護法
文書偽造の罪
併合罪

ヘイトクライム

弁護士

弁論

放火罪 失火罪
放火症
暴行罪 傷害罪

放射線発散行為処罰法

幇助犯

法定刑

法廷の中の人々
法廷侮辱

法テラス
報道協定制度
冒頭陳述
冒頭手続き
保護観察所
保護司

保釈

ホスピタリズム
ぼったくり防止条例
ポリグラフ検査
ポルノグラフィ

 

ハイジャック防止法

ハイジャック防止法

Hijack 「ハイジャック処罰法」とも言う。航空機の強取等の処罰に関する法律が正式名称。

法制化のきっかけは1970年(昭和45年)3月31日に赤軍派9人が日航機「よど号」を乗っ取って北朝鮮に渡った、いわゆる「よど号」ハイジャック事件。当時はハイジャックの処罰法がなく、初の事件発生を受けて1ヶ月半の国会審理で制定され、同年5月18日に公布、6月7日に施行された。

暴行や脅迫によって人を抵抗不能にし、航行中の航空機を乗っ取った者は無期または7年以上の懲役、人を死亡させた場合は死刑または無期懲役が科せられる。国外での犯行も同様に処罰される(1条 航空機の強取等)。

2項 前項の未遂罪は、罰する(未遂罪)。

前条の罪を犯し、よつて人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する(2条 航空機強取等致死)。

航空機強取等致死罪が適用された事件に1999(平成11年)7月23日に起きた全日空機ハイジャック事件(無期懲役が確定)がある。

1条1項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、3年以下の懲役に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する(3条 航空機強取等予備)。

偽計又は威力を用いて、航行中の航空機の針路を変更させ、その他その正常な運航を阻害した者は、一年以上十年以下の懲役に処する(4条 航空機の運航阻害)。

人質による強要行為等の処罰に関する法律3条 航空機の強取等の処罰に関する法律(ハイジャック防止法/昭和四十五年法律第六十八号)1条1項の罪を犯した者が、当該航空機内にある者を人質にして、第三者に対し、義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求したときは、無期又は10年以上の懲役に処する。

ちなみに、飛行機の乗っ取りをハイジャック(hijack)というのは、アメリカの西部劇時代に、駅馬車強盗が、Hands up high,Jack!(きさま、手をあげろ)と脅したことからきている。

売春防止法

売春防止法

売春防止法は売春そのもの、あるいはその相手となる買春行為そのものを処罰の対象としていない。ただし、18歳未満の児童の買春(性交類似行為も含む)をすると児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童保護等に関する法律(児童買春・ポルノ禁止法)4条 児童買春をした者は、5年以下の懲役又は300万円以下の罰金となる。
売春防止法1条(目的) この法律は、売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであることにかんがみ、売春を助長する行為等を処罰するとともに、性行又は環境に照して売春を行うおそれのある女子に対する補導処分及び保護更生の措置を講ずることによつて、売春の防止を図ることを目的とする。
売春防止法2条(定義) この法律で「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。
売春防止法3条(売春の禁止) 何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない。
売春防止法4条(適用上の注意) この法律の適用にあたつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。
売春防止法5条(勧誘等) 売春をする目的で、次の各号の一に該当する行為をした者は、6ヶ月以下の懲役又は1万円以下の罰金に処する。
一 公衆の目にふれるような方法で、人を売春の相手方となるように勧誘すること。
二 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
三 公衆の目にふれるような方法で客待ちをし、又は広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。
売春防止法6条(周旋等) 売春の周旋をした者は、2年以下の懲役又は5万円以下の罰金に処する。
2項 売春の周旋をする目的で、次の各号の一に該当する行為をした者の処罰も、前項と同様とする。
一 人を売春の相手方となるように勧誘すること。
二 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
三 広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。
売春防止法7条(困惑等による売春) 人を欺き、若しくは困惑させてこれに売春をさせ、又は親族関係による影響力を利用して人に売春をさせた者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
2項 人を脅迫し、又は人に暴行を加えてこれに売春をさせた者は、3年以下の懲役又は3年以下の懲役及び10万円以下の罰金に処する。
3項 前2項の未遂罪は、罰する。
売春防止法8条(対償の収受等) 前条1項又は2項の罪を犯した者が、その売春の対償の全部若しくは一部を収受し、又はこれを要求し、若しくは約束したときは、5年以下の懲役及び20万円以下の罰金に処する。
2項 売春をした者に対し、親族関係による影響力を利用して、売春の対償の全部又は一部の提供を要求した者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
売春防止法9条(前貸等) 売春をさせる目的で、前貸その他の方法により人に金品その他の財産上の利益を供与した者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
売春防止法10条(売春をさせる契約) 人に売春をさせることを内容とする契約をした者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
2項 前項の未遂罪は、罰する。
売春防止法11条(場所の提供) 情を知つて、売春を行う場所を提供した者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
2項 売春を行う場所を提供することを業とした者は、7年以下の懲役及び30万円以下の罰金に処する。
売春防止法12条(売春をさせる業) 人を自己の占有し、若しくは管理する場所又は自己の指定する場所に居住させ、これに売春をさせることを業とした者は、10年以下の懲役及び30万円以下の罰金に処する。
売春防止法13条(資金等の提供) 情を知つて、11条2項の業に要する資金、土地又は建物を提供した者は、5年以下の懲役及び20万円以下の罰金に処する。
2項 情を知つて、前条の業に要する資金、土地又は建物を提供した者は、7年以下の懲役及び30万円以下の罰金に処する。
(14条以下、省略)

破壊活動防止法

破壊活動防止法

破壊活動防止法 略して「破防法」。「暴力主義的破壊活動」を組織的に行なった団体を規制し、そうした活動をした個人を刑法の規定より広い範囲で処罰する法律。オウム真理教(現・アレフ)に関連して注目されたが、元々は1952年(昭和27年)、左翼の武装活動の規制を主な狙いに制定された。団体規制には、デモや集会など活動停止の処分(5ヶ月未満)に加え、団体を解散させる処分がある。旧憲法時代の治安維持法としばしば比較されるが、治安維持法が思想そのものを取り締まり対象としていたのに対し、破防法は破壊活動の統制が目的。拡張解釈や乱用を禁じる規制も置かれ、実際、個人が起訴された例はあるものの、団体規制が適用されたことは、これまで一度もない。

爆発物取締罰則

爆発物取締罰則
「爆発物」とは大きな圧力を瞬間的に発生させて、その衝撃や熱などで周辺に破壊現象をもたらしかねないものをいう。代表的なものに火薬があるが、真空ガラス容器などの何かの拍子に破裂する可能性のあるものは該当する。ウランやプルトニウムなどの放射性物質を用いて起爆装置が取り付けられた核弾頭も該当する。
爆発物取締罰則第一条 治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ爆発物ヲ使用シタル者及ヒ人ヲシテ之ヲ使用セシメタル者ハ死刑又ハ無期若クハ七年以上ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス
第二条 前条ノ目的ヲ以テ爆発物ヲ使用セントスルノ際発覚シタル者ハ無期若クハ五年以上ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス
第三条 第一条ノ目的ヲ以テ爆発物若クハ其使用ニ供ス可キ器具ヲ製造輸入所持シ又ハ注文ヲ為シタル者ハ三年以上十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス
第四条 第一条ノ罪ヲ犯サントシテ脅迫教唆煽動ニ止ル者及ヒ共謀ニ止ル者ハ三年以上十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス
第五条 第一条ニ記載シタル犯罪者ノ為メ情ヲ知テ爆発物若クハ其使用ニ供ス可キ器具ヲ製造輸入販売譲与寄蔵シ及ヒ其約束ヲ為シタル者ハ三年以上十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス
第六条 爆発物ヲ製造輸入所持シ又ハ注文ヲ為シタル者第一条ニ記載シタル犯罪ノ目的ニアラサルコトヲ証明スルコト能ハサル時ハ六月以上五年以下ノ懲役ニ処ス
第七条 爆発物ヲ発見シタル者ハ直ニ警察官吏ニ告知ス可シ違フ者ハ百円以下ノ罰金ニ処ス
第八条 第一条乃至第五条ノ犯罪アルコトヲ認知シタル時ハ直ニ警察官吏若クハ危害ヲ被ムラントスル人ニ告知ス可シ違フ者ハ五年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス
第九条 第一条乃至第五条ノ犯罪者ヲ蔵匿シ若クハ隠避セシメ又ハ其罪証ヲ湮滅シタル者ハ十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス
第十条 第一条乃至第三条ノ罪ハ刑法(明治四十年法律第四十五号)第四条の二ノ例ニ従フ
第十一条 第一条ニ記載シタル犯罪ノ予備陰謀ヲ為シタル者ト雖モ未タ其事ヲ行ハサル前ニ於テ官ニ自首シ因テ危害ヲ為スニ至ラサル時ハ其刑ヲ免除ス第五条ニ記載シタル犯罪者モ亦同シ
第十二条 本則ニ記載シタル犯罪刑法ニ照シ仍ホ(なお)重キ者ハ重キニ従テ処断ス

発射罪

発射罪

1995年(平成7年)6月に施行された改正銃刀法(銃砲刀剣類所持等取締法)で新設された罪名(第3条の13)。公共の場所や乗り物などの中で、あるいはこれらに向けて短銃などを発射すると被害の有無を問わず処罰される。暴力団の対立抗争などにより街中で流れ弾によって死傷する危険を抑止するのが狙い。

改正以前は、発射行為自体は処罰の対象にならず、発砲した場合は短銃と実弾を同時に所持した加重所持罪(3年以上の懲役)などで処罰されていたが、改正によって設けられた「発射罪」により、「無期または3年以上の懲役」になり、身代金目的の略取誘拐罪と同じ法定刑となった。両罰規定として法人に1000万円以下の罰金。

暴力団などが組織的に発射した場合は無期または5年以上の有期懲役になり、3000万円以下の罰金を科す場合もあり。

ハラスメント

ハラスメント

Harassment いろいろな場面での嫌がらせやいじめ 与えるダメージが身体的なものでも精神的なものでも同じで行為者にどういう意図があったかは問題ではなく、相手が不快な感情を抱けばハラスメントになる。一般社団法人日本ハラスメント協会は、ハラスメントの種類は30種類以上におよぶと提言している。
パワーハラスメント・・・同じ職場で働く者に対して上下関係や権力を利用した嫌がらせ行為。
セクシュアルハラスメント・・・職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により、解雇、降格、減給などの不利益を受けることや、性的な言動が行われる行為。
モラルハラスメント・・・倫理や道徳に反する精神的な暴力や言葉や態度による嫌がらせ行為。相手の意見をことごとく拒絶したり、わざと実行不可能な仕事を依頼したりと外部からは見えにくい。
マタニティハラスメント・・会社で働く女性が妊娠や出産、子育てを理由に解雇などをされる行為。
ジェンダーハラスメント・・・男らしさや女らしさを強要する嫌がらせ行為。
セカンドハラスメント・・・パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントなどを受けた人が、その後、別の上司や周囲の同僚から二次被害を受ける行為。
リモートハラスメント・・・特定の社員をWeb会議に参加させなかったり、Webカメラに映った部屋の様子を細かくチェックするなど、オンライン環境下ならではのハラスメント全般を指す行為。
アルコールハラスメント・・・飲酒に関連した嫌がらせ行為や迷惑行為。
スモークハラスメント・・・非喫煙者に受動喫煙させてしまう行為や喫煙者が非喫煙者に対して喫煙を強要する行為。
テクノロジーハラスメント・・・ハイテクノロジー技術に詳しい人やITスキルの高い人が、そうでない人に対していじめや嫌がらせする行為。
スメルハラスメント・・・匂いによって周囲を不快にさせる行為で、口臭や体臭、強すぎる香水や柔軟剤の匂いなど。
リストラハラスメント・・・リストラ対象者に無理難題を押し付けたり、望まない部署への異動を命じたりする嫌がらせ行為。
SOGIハラスメント・・・SOGIはSexual Orientation(性的指向) Gender Identity(自分の性別に対する認識)の略でそのことに関する差別や嫌がらせ行為。

パラノイア

パラノイア

Paranoia 妄想性障害のことだが、ドイツの精神病理学者エミール・クレペリンによる有名な定義では、「内的な原因から発生し、思考、意志、行動の秩序と明晰さが保たれたまま、徐々に発展する揺るぎない妄想体系」をもつ精神障害とされる。分裂病とは異なり、幻覚は伴わず、妄想以外の部分では人格は破壊されない。

精神鑑定で、被告人が「パラノイア」と診断された事件に、1974年(昭和49年)8月28日に起きたピアノ騒音殺人事件がある。

パワーハラスメント

パワーハラスメント

Power Harassment (Harassment いろいろな場面での嫌がらせやいじめ) パワーハラスメントは「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」と定義されている。上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるものも含まれる。
職場のパワーハラスメントの行為類型は以下の通り。(ただし、職場のパワーハラスメントのすべてを網羅するものではない。)
(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)
(2)精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
(4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
(5)過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
2019年(令和元年)5月、改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)が成立した。改正法は、大企業では2020年(令和2年)6月、中小企業では2022年(令和4年)4月から施行される。パワハラ防止法により、企業(事業主)は職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが義務となる。加えて、適切な措置を講じていない場合には是正指導の対象となる。

判決 控訴 上告

判決 控訴 上告

被告人が有罪なのか無罪なのか、有罪なら量刑はどの程度なのかなどを宣言するのが判決で、その審級の最終判断。これは必ず口頭弁論を開いた上で行なわなければならない。

第1審の判決に納得がいかない場合、被告、原告、検察官といった当事者は、さらに上級の裁判所に不服申立をすることができる。刑事訴訟の場合、第1審が地裁でも家裁でも簡裁でも、不服申立は高等裁判所に対して行なうが、これを控訴と呼ぶ。

さらに高裁の判決に不服があれば、訴訟は最高裁に持ち込まれ、これを上告と呼ぶ。それ以上は、いくら不満があっても不服申立はできず、判決は確定する。ひとつの事件で最高3回までは裁判を受けるチャンスがあるということになる。

「上訴」という言葉が使われることもあるが、これは控訴、上告、抗告の3つをまとめた総称である。「抗告」とは、「決定」に対する不服申立のことで、決定とは、裁判所や裁判官による判断という意味では「判決」と同じだが、それより重要度が低く、口頭弁論も必要ない。たとえば、公判中に、弁護人が新たな証拠の提出を請求しても、裁判官がその証拠や証人を調べる必要がないと判断すれば、請求は却下される。これを決定という。つまり、公判の途中で判決とは違う裁判が行なわれているのである。

ただし、民事の場合は、4審まで行くことがありうる。民事訴訟に限って、簡易裁判所からの控訴を地方裁判所に対して行なうことになっている。したがって、上告は高等裁判所、さらに最高裁まで持ち込むことができ、これで計4審となる。ただ、簡裁で扱う民事訴訟は請求額が140万円以下なので、訴訟にかかる費用を考えれば、最高裁まで争うことは考えにくい。

控訴や上告は100%認められるとはかぎらない。原則として、控訴の場合は事実誤認や量刑不当、新証拠が見つかるなどの点が必要。審理の結果、控訴申し立てに理由がないとみなされれば「控訴棄却」になる。上告の場合はさらに厳しく、判決に憲法違反や最高裁の判例に抵触する内容がある、などの条件を満たさないと「上告棄却」となる。

控訴や上告は判決を言い渡されてから2週間以内であれば行なうことができるが、しない場合は2週間経つと自然と刑が確定する。

判決の言い渡し

判決の言い渡し

裁判において司法最大の強制力が発動される瞬間。判決は刑罰など(あるいは無罪)の内容を示す「主文」とその根拠を説明する「判決理由」に分かれる。刑罰の執行が猶予されない場合を実刑判決という。執行猶予が付く場合はその説明も行われる。
懲役などの実刑判決を言い渡す際、被告人が勾留されていた期間が長い場合はその期間の全部または一部を刑期に算入することができるとされており、「懲役○年、未決勾留日数○日を算入する」といった言い渡しをする。
さらに被告人の将来について裁判官がアドバイスをすることがあり、「説諭(訓戒)」という。
被告人は判決に不満がある場合は高等裁判所に控訴(最高裁に上告)してさらに上級の裁判のに判断をあおぐことができるということを裁判官が説明をする。これが閉廷の合図となり、判決の翌日から14日以内に控訴や上告がなければ、自然と刑が確定する。

犯罪ドラマ

犯罪ドラマ

犯罪ドラマとは犯罪をテーマにしたフィクションのことで推理小説、探偵小説、実録犯罪小説などの活字メディアやそれらを映像化したメディアなどがある。
人間が犯罪やセックスに関する情報を好む背景を考えると、誰しも本能的な衝動としての攻撃性や性衝動に強く内面を衝き動かされているにもかかわらず、市民生活においてはその行動化が強く抑圧されているという状況に思い至る。人が犯罪や性行動について見たり聞いたり読んだりすることはそのような人間的な衝動に「代理満足」を与えるためである。実際に行動する「代わり」に活字や舞台の上の人物に束の間「同一化」し、彼(彼女)が体験したのと同じように欲望の充足と発散を体験する(カタルシス)。

犯罪などの虚構申告罪

犯罪などの虚構申告罪

軽犯罪法1条 左(下)の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
16号 虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者
犯罪などの虚構申告は回数や状況により、刑法233条の業務妨害罪になる場合もある。この場合は3年以下の懲役または50万円以下の罰金。
消防署にウソの火事や傷病を報告した場合は消防法44条15号により、30万円以下の罰金または拘留。
船や飛行機が遭難したなどとウソの無線通信を発した者は電波法106条2項により、3ヶ月月以上10年以下の懲役となる。

犯罪の成立

犯罪の成立

犯罪を成り立たせるのに最低限必要な条件は構成要件と呼ばれる。

[ 1 ] 客観的構成要件・・・処罰するに足る違法性があるか

(1)結果 犯罪は「結果」が一番先に表れる。殺人事件の場合は「死体」が結果となる。

(2)実行行為 次に犯罪に当たる行為があったのかどうかを考える。死体があるということは、犯罪が完成しているので、これを殺人罪の既遂犯という。

さらに、単独犯か共犯かを考える。共犯は2人以上でなければ成立しない賄賂罪のような必要的共犯と、1人でもできる犯罪を複数でやる任意共犯がある。共犯者のうち実行行為を担当した人を正犯という。実行行為の一部を担当すれば共同正犯、実行行為には直接関わっていなくても一緒に計画すれば共謀共同正犯となり、ともに正犯として裁かれる。犯行を決意させ実行させると教唆(きょうさ)犯となる。オウムの麻原などが問われているのはこの問題で、共謀共同正犯なのか、教唆犯なのかということが議論されている。

(3)因果関係 実行行為と結果との因果関係を考える。殺したという行為があれば死ぬことになるので簡単に因果関係が立証できるが、複数の人が絡んでくると話は別。AがBに電話で「CにDを殺せ」と命じた場合、BがCに伝えたということが立証されなければ、因果関係が成立せずAは処罰されない。

[ 2 ] 違法性阻却事由・・・違法性を正当化する理由はあるか

やってしまったことは犯罪であっても例外として違法性を阻却できる場合がある。

(1)正当行為 法令に定められた行為やスポーツ。きちんとした手続きを経た安楽死、警察官が逮捕のときに犯人に怪我を負わせることやボクシングの試合で相手を殺してしまった場合など(刑法35条)。

(2)正当防衛 Aに殴られそうになったBが身の危険を感じて殴り返そうとすることは当然のこととして正当防衛が成立するが、これが認められるのはAとBの行為のバランスが取れている場合で、Aが殴ってきたときに、Bが刃物で応戦して刺し殺してしまったときは過剰防衛になる。情状によって刑は減免されるが、違法性は阻却されない(刑法36条)。

(3)緊急避難 差し迫った危険を避けるために無関係の第三者を巻き込むのが緊急避難。襲われそうになって逃げたとき、近くにいた人を突き飛ばして転ばせてしまうのがこのケース。ただし、業務上特別の義務がある場合には適用しない(刑法37条)。

[ 3 ] 主観的構成要件・・・責任を問えるか

殺すという犯罪を犯した人に責任を問えるかは、原則として故意あるいは過失があるかどうかで決まってくる。充分な注意を払っていたのに予想を超えたことが生じて起きてしまった犯罪結果に関しては無過失となり、処罰の対象にならない。

(1)故意 一般的な社会通念上から見て、自分がやろうとしていることから犯罪結果が生じることを認識していること。AがBをピストルで撃った場合、ピストルで撃てば誰もが死ぬだろうと思うので、殺人の故意があったとされる(刑法38条)。

(2)過失 過失とは「危険性」をいかに認識しているかということ。スピードを出して車を走らせていたら、子どもを轢いて殺してしまったとする。このとき、このとき、運転していた人が子どもが死んでしまうという具体的な結果を認識することは不可能だが、スピードを出していれば人を轢いてしまうかもしれないという「危険性」は、一般的に考えて充分に認識できたと思われるので、業務上過失致死が成立する。この場合の「業務」とは「仕事」という意味ではなく、社会生活上継続反復する行為のこと(刑法209〜211条)。

[ 4 ] 責任阻却事由・・・責任を問えない理由はあるか

(1)違法性阻却事由の認識 正当防衛ではないのに正当防衛だと思ってしまうこと。相手にやられると誤解し、やられる前に反撃してしまう誤想防衛、やられたと誤解してやり返してしまった誤想過剰防衛がある。襲われていると思うと狼狽して慌ててしまい、このような行動に出てしまうことは非難できないため刑は減免される。

(2)責任能力 精神病者や薬物使用で意識がない場合は責任能力を欠いているとされ、刑は減免される。医師が責任能力なしと判断しても、判例では責任能力ありとするケースもある。

(3)期待可能性 命令されてやむを得ず法律を犯した場合は、一般の人から見て非難できない状況にあたるので、罪には問われない。

犯罪被害者参加制度
犯罪被害者参加制度
犯罪の被害者などが公判期日に出席し、被告人に対する質問を行うなど刑事裁判に直接参加することができる制度で、2008年(平成20年)12月1日にスタートした。参加できる犯罪は次の通り・・・
(1) 殺人、傷害などの故意の犯罪行為により人を死傷させた罪
(2) 強制わいせつ、強姦などの罪
(3) 自動車運転過失致死傷などの罪
(4) 逮捕および監禁の罪
(5) 略奪、誘拐、人身売買の罪
(6) 2〜5の犯罪行為を含む他の犯罪
(7) 1〜6の未遂罪
参加できるのは犯罪被害者本人や法定代理人(未成年者の両親など)、犯罪被害者本人が亡くなった場合や心身に重大な故障がある場合の犯罪被害者の配偶者、直系親族、兄弟姉妹。
裁判所から刑事裁判への参加を許可された犯罪被害者などを被害者参加人といい、被害者参加人になるためには検察官を通じて裁判所に対し刑事裁判への参加を申し出ることになる。
被害者参加人になると次のようなことができる。
○公判期日に出席すること
○検察官の権限行使に関し、意見を述べ、説明を受けること
○証人に尋問をすること
○被告人に質問をすること
○事実関係や法律の適用について意見を陳述すること
被害者参加人は刑事裁判に参加するに当たり、上記の行為(○印)を弁護士に委託することができる。また、経済的に余裕がない方には弁護士の費用を国が負担する被害者参加人のための国選弁護制度もある。

犯罪被害者等給付金制度

犯罪被害者等給付金制度

1974年(昭和49年)8月30日に起きた東アジア反日武装戦線<狼>グループによる「三菱重工ビル爆破事件」がきっかけとなって、「犯罪被害者等給付金制度」が1980年(昭和55年)5月に公布し、1981年(昭和56年)にスタートした。

これは、人の生命または身体を害する犯罪行為により、不慮の死を遂げた者の遺族や、重い障害を受けた者に対し、国が一時金を支給する制度。通り魔や爆弾魔のように犯人が分からなかったり、犯人は逮捕されても資力がなく、被害者やその遺族へ補償できない場合を考慮したもので、この請求は都道府県の公安委員会あてに行う。

実際に一時金が支給されるのは年間200人ほどで、1999年(平成11年)を例に取ると、総額で6億4500万円が支給された。ちなみに、この制度の適用第1号事件は1981年(昭和56年)1月22日に起きた「佐賀保険金替え玉殺人事件」で、被害者の遺族に国から390万円支給されている。

[ 佐賀保険金替え玉殺人事件 ] 1981年(昭和56年)1月22日、事業不振に陥っていた福岡県北九州市の水産会社社長の酒井隆(42歳)が妻(当時41歳)と愛人(当時43歳)と共謀して、競艇場でたまたま知り合った大工の森下隆基(46歳)をバットで殴り車ごと佐賀県肥前町の海に落として殺害。この「事故」で酒井は自分が死んだように偽装し、保険金2億7000万円を騙し取ろうとした。だが、発覚した直後の28日に酒井は遺書を残して下関駅で電車に身を投げ自殺。

詳しくは、警察庁犯罪被害者等施策

三菱重工ビル爆破事件については日本赤軍と東アジア反日武装戦線

犯罪被害者等通知制度

犯罪被害者等通知制度

1997年(平成9年)11月、東京都世田谷区で当時小学2年生だった片山隼ちゃんが青信号で横断中、ダンプカーに轢かれて死亡した。運転手は業務上過失致死と道交法違反(ひき逃げ)の容疑で現行犯逮捕されたが、20日後に不起訴となった。翌1998年(平成10年)になって隼ちゃんの父親が東京地検に問い合わせ、不起訴となった処分結果を初めて知ることとなった。さらに父親の問い合わせに対し、東京地検は「処分理由を教える義務はない」と回答した。東京地検は隼ちゃんの件で批判を浴びたが、これを教訓として、8月、事件の刑事処分の結果などを被害者や遺族、重要証人などに知らせる「被害者等通知制度」を導入することを決定し、1999年(平成11年)4月1日から全国で施行された。

この制度では、希望に応じて処分の結果や裁判の日程などを伝えるほか、トラブルの恐れを満たす被害者らに対しては、不起訴の理由も説明できるようにした。通知を希望するかどうかは地検が事情聴取のときに確認する。死亡した被害者の遺族には捜査に支障がないと検察官が判断すれば事情聴取していない場合でも通知の希望を聞くことになっている。

2020年(令和2年)10月21日から通知制度を拡充。被害者遺族の要望を受けて、死刑囚の刑の執行に関する情報を申請する被害者や遺族などに対して通知することになった。通知は電話か文書で、「死刑を執行した事実」、「執行日」「執行場所」を知らせるというもの。電話を希望した場合、法務省が死刑囚の刑の執行を公表する前に通知を試みるという。また、死刑囚が病死した場合も、通知を希望した被害者などには知らされるという。

犯罪被害者保護法

犯罪被害者保護法

犯罪で被害に遭った人の保護と権利の回復を目的として犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律が2000年(平成12年)5月19日に公布、11月1日に施行された。これによって、犯罪の被害者やその遺族は裁判の傍聴席を優先的に確保し、判決が確定する前であっても裁判の記録を見たり、コピーできるようになった。

同時に刑事訴訟法も改正された。改正点は被害者の精神的負担を和らげるのが主な目的。被告人(加害者)のいる法廷で不安や緊張を感じるおそれがあるときに、それを和らげるために付添い人を付けることやビデオカメラを使って別室で証言すること(ビデオ・リンク方式)を認めた。(刑事訴訟法第157条の4)

反社会性人格障害

反社会性人格障害

人格障害とは性格の著しい偏りがあり、そのため自ら悩むか、あるいは社会を悩ませるもの、と定義されている。社会を悩ませる者の最も純粋な形が反社会性人格障害ということができる。健康とも病気とも言えない一群の犯罪者に対して、背徳者、変質、社会の敵、社会病質、精神病質などのさまざまな呼称があった。
反社会的行動という外面的事実だけで判断すると、いわゆる累犯者の大部分が人格障害という広義の病として診断されてしまう。実際、反社会性人格障害という病名は使用すべきではないとか、少なくても乱用すべきではないという批判的意見も少なくない。

犯人蔵匿罪 証拠隠滅罪

犯人蔵匿罪 証拠隠滅罪

罰金以上の刑にあたる罪を犯した者または拘禁中に逃走した者を蔵匿、または隠避させると犯人蔵匿罪刑法103条)になり、2年以下の懲役または20万円以下の罰金。

他人の刑事事件に関する証拠を隠滅、偽造、変造、または偽造や変造の証拠を使用すると証拠隠滅罪(刑法104条)になり、2年以下の懲役または20万円以下の罰金。

103条と104条の罪については、犯人または逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる(刑法105条)。

自分あるいは他人の刑事事件の捜査や審判に必要な知識を有すると認められる者またはその親族に対し、当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請、または強談威迫の行為をすると証人威迫罪(刑法105条の2)となり、1年以下の懲役または20万円以下の罰金。

反復強迫

反復強迫

フロイトによる精神分析用語。過去に遭遇した悲惨な出来事や苦痛な体験を、人生のさまざまな段階で、同じことを繰り返していながら、自分ではその出来事を自分でつくっていると気づかず、また、過去の体験と現在の状況のかかわりにも気づかずに続けている状態を反復強迫という。

たとえば、レイプに遭った人がまた危険な場所をフラフラ歩いたり、戦争体験者がそのことを忘れたいと思っていながら、テレビや映画で戦闘シーンを観てしまうことなど。

BBS会

BBS会

Big Brothers and Sisters Movement の略。 BBSは様々な問題を抱える少年と兄や姉のような身近な存在として接しながら少年が自分自身で問題を解決したり健全に成長していくのを支援するとともに犯罪や非行のない地域社会の実現を目指す青年ボランティア団体で全国で約4300人の会員が参加している。近年では児童自立支援施設における家庭教師派遣活動や児童館における子どもとのふれあい行事等も実施している。BBSの趣旨に賛同し誠意と熱意のある方ならどなたでも参加できる。
入会等に関するお問い合わせは法務省保護局更生保護を支える人々全国の地方更生保護委員会・保護観察所一覧まで。

被害者避難

被害者避難

「犠牲者避難」とも言う。犯罪の被害者などに対し「そんな目に遭ったのは被害者側にも落ち度があったからだ」と非難すること。
被疑者国選弁護制度

被疑者国選弁護制度

2004年5月に成立した「刑事訴訟法の一部を改正する法律」によって実現したもので、起訴されていない被疑者に国の費用で弁護人をつける制度。2006年10月から「死刑または無期もしくは短期1年以上の懲役もしくは禁錮にあたる事件」(殺人、傷害致死、強姦など)に適用される。これまでは自分の費用で弁護人を依頼することができない場合、被告人となってから初めて国選弁護人をつけることができた。しかし、逮捕、勾留された段階で弁護人からの法的な支援がないと取り調べや手続きの意味が理解できなかったり、黙秘権など自分の権利を適正に行使できなかったりという不利益を被ることがある。対象となる事件も段階的に拡張され、2009年5月からは傷害や恐喝など長期3年を超える懲役・禁錮にあたる事件に国選弁護人が付くようになった。国選弁護人は、日本司法支援センター(法テラス)が候補者を指名し、裁判所が選任する。

被疑者 容疑者 重要参考人

被疑者 容疑者 重要参考人

刑事訴訟法では罪を犯した疑いのある者を被疑者と呼んでいるが、マスコミではより分かりやすい言葉ということで、被疑者のことを容疑者と呼んでいる。容疑者と同様にマスコミ用語で、逮捕状を出せるほど容疑が固まっているわけではないが、きわめて疑わしい者として捜査機関が事情聴取を行なったときは重要参考人と呼ばれることが多い。ちなみに、被告人とは検察官が犯人として起訴した者のこと。

ひき逃げ

ひき逃げ

道路交通法72条(交通事故の場合の措置) 交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。
道路交通法117条 車両等(軽車両を除く)の運転者が、当該車両等の交通による人の死傷があった場合において、72条(交通事故の場合の措置)1項前段の規定に違反したときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2項 前項の場合において、同項の人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるときは、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

非行少年 不良行為少年

非行少年 不良行為少年

少年法では、犯罪に関わる少年を次のように分類している。

非行少年・・・犯罪少年、触法少年、虞犯(ぐはん)少年をいう。

犯罪少年・・・罪を犯した14歳以上20歳未満の者(少年法3条1項1号)

触法少年・・・罪を犯した14歳未満の者(少年法3条1項2号)

虞犯少年・・・性格、行状等から判断して、将来、罪を犯し、または刑罰法令に触れる行為をする虞(おそれ)のある20歳未満の者(少年法3条1項3号)

不良行為少年・・・非行少年には該当しないが、飲酒、喫煙、家出等を行なって警察に補導された20歳未満の者。

被告人の勾留

被告人の勾留

勾留には被疑者を拘束するものと被告人を拘束するものの2種類あるが、被告人の勾留は起訴された事件の被告人をきちんと公判に出廷させるために行なわれるもの。被告人が不在だと公判が開けないため、逃亡のおそれがある場合に裁判官の職権によって勾留できる。被疑者勾留と違って検察官からの請求はない。

被告人勾留の期間は起訴から2ヶ月。その後は1ヶ月ごとに更新される。被疑者の場合は逮捕されていなければ勾留できないが、被告人の場合は逮捕されずに在宅で起訴された者でも勾留することができる。起訴前保釈が認められているアメリカと違って、日本では被告人勾留だけに保釈が認められている。被疑者は代用監獄と呼ばれる警察の留置場で勾留されることもあるが、被告人は原則として拘置所に勾留されることになっている。

砒素

砒素

三酸化ニ砒素のことで、通称・亜ヒ酸。ギリシャ時代から広く暗殺に使われてきた薬品。毒物として用いられるのは三酸化砒素、無水亜砒酸などで、無味無臭。砒素化合物を飲むと消化器系が犯される。胃に激痛を感じ、圧迫感に襲われ、緑色の塊を吐く。のどが渇いて、胸が苦しくなり、心臓の鼓動が速まり、動脈圧が低下する。致死量は0.1〜0.2グラムで、致死量を飲んだ場合は、呼吸中枢、運動中枢、神経中枢が麻痺して、意識を失い、やがて死亡する。

砒素が使用された最近の殺人事件に、1998年(平成10年)7月25日の和歌山毒カレー殺人事件がある。

PTSD

PTSD

Post-Traumatic Stress Disorder の略。外傷的な出来事によって生じる心の傷を、トラウマと言うが、DSM−Wによると、外傷的な出来事とは、(1)あやうく死にかけたり、重傷を負うような出来事を体験、目撃、直面すること。(2)その人の反応が強い恐怖、無力感または戦慄に関するものである、とされている。これによって生じた深刻な精神的後遺症をPTSD(心的外傷後ストレス障害)と呼ぶ。児童虐待のように、これが反復的に続いた場合は、多重人格や人格障害のようなもっと精神障害の原因になるとされている。

ピッキング防止法

ピッキング防止法

特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律 通称・ピッキング防止法。「ピッキング」Picking 伝票や指示書に基づいて商品を取り出す作業をいう。
ピッキング防止法3条 何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、特殊開錠用具を所持してはならない。
ピッキング防止法4条 何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、指定侵入工具を隠して携帯してはならない。
ピッキング防止法16条 3条又は4条の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
ピッキング防止法15条 業務その他正当な理由によることなく所持することの情を知って特殊開錠用具を販売し、又は授与した者は、2年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

ビデオリンク方式

ビデオリンク方式

被害者や証人を保護する立場から考案された証言手法。法廷で被告人(加害者)を前に証言することに不安や緊張を感じるおそれがあるときに、それを和らげるために別室でビデオやカメラを通して証言を行わせ、法廷のテレビモニターを通して尋問を行うことができる。(刑事訴訟法157条の6) 民事裁判でも行うことができる。(民事訴訟法204条)

[ 最近の例 ]

2003年(平成15年)8月28日、大阪地裁で児童8人が殺害された大阪池田小児童殺傷事件で、殺人などの罪に問われた宅間守被告(事件当時37歳)に対する判決公判が開かれたが、一部の遺族の要望を受け、別室に設けたモニターカメラで傍聴した。「刑事訴訟法157条の4」には「傍聴」について規定されていないため、それまでは被害者の遺族が要望しても認められなかったが、大阪地裁が法廷外での傍聴を全国で初めて認めた。

2004年(平成16年)1月14日、北九州監禁連続殺人事件(概要)の第20回公判が福岡地裁小倉支部であり、小倉北区のマンションに監禁された被害者のうち1人だけ生き残った少女(事件発覚時17歳)の証人尋問が始まった。虐待した松永太(逮捕時40歳)、緒方純子(逮捕時40歳)両被告と同席することから、テレビ回線を通じ別室から「ビデオリンク方式」での証言となった。

関連用語・・・犯罪被害者保護法

非犯罪化

非犯罪化

これまで犯罪として罰せられた行為を処罰しないものとすること(decriminalization)。具体的には法規定そのものの廃止。あるいは廃止はしないが、取締りの緩和や法解釈の変更によって実際の適用を減らす、刑罰を軽くするなどする。この逆が犯罪化(criminalization)。
非犯罪化する要因として(1)「被害者なき犯罪」であるか、被害者がいても不特定の公衆であったり、被害意識が希薄であること、あるいは個人や家族の責任に任される私的行為であること。(2)社会で実際に広く行われるようになり、法規定と一般通念との間にギャップが生じていること。(3)刑罰の代替手段(教育、福祉、治療など)が有効と考えられること。
非犯罪化については以前から賭博、売春、ポルノグラフィなどの猥褻行為、薬物乱用、堕胎、嘱託殺人、公共の場での酩酊などが問題にされてきた。賭博に関しては賭博罪が規定されているが、被害者は存在しないし、賭け麻雀はほとんど日常茶飯事化しており、法の厳格な適用は事実上不可能である。猥褻と芸術との境界は社会の風潮に左右され、裁判所の基準も揺れ動いている。麻薬や覚醒剤などの違法薬物の乱用は非犯罪化と関係が深い。薬物入手のための窃盗、中毒状態での暴力犯罪、製造・密売を別にすれば、薬物の自己使用・所持はあくまで私的な行為であって、被害者は存在しない(使用者本人が薬害の被害者ではあるが)。したがって本来、刑罰が介入するべきでないという意見がある。

非弁行為の罪

非弁行為の罪

弁護士法72条(非弁護士の法律事務所の取扱い等の禁止) 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
違反した者は2年以下の懲役または300万円以下の罰金に処する(弁護士法77条)。

秘密の暴露

秘密の暴露

刑事事件等で、取調べの際に被疑者が真犯人でしか知るはずのない事項を自白することである。それについて改めて捜査が行われた結果、事実に間違いない確証を得られれば、たとえ物的証拠や目撃証言がなくてもその自白の信憑性は非常に高くなる。
ただし、冤罪事件では秘密の暴露と判断された証言が、実は捜査側があらかじめ知っていた内容を誘導した結果であった例もあり、判断に慎重を期する必要がある。

秘密を侵す罪

秘密を侵す罪

刑法133条(信書開封) 正当な理由がないのに、封をしてある信書を開けた者は、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。
その人に伝えたい思いや情報が入った封書や剥離式ハガキ等の郵便物。封書に「親展」と書かれていなくても成立する。
郵便法77条(郵便物を開く等の罪) 会社の取扱中に係る郵便物を正当の事由なく開き、き損し、隠匿し、放棄し、又は受取人でない者に交付した者は、これを3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。ただし、刑法の罪に触れるときは、その行為者は、刑法の罪と比較して、重きに従つて処断する。
刑法134条(秘密漏示) 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6ヶ月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
2項 宗教、祈祷若しくは祭祀の職にある者又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときも、前項と同様とする。
刑法135条(親告罪) この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
★2009年(平成21年)4月15日、奈良地裁で奈良県田原本町の医師(当時50歳)宅放火殺人の供述調書漏洩事件で、秘密漏示罪に問われた精神科医の崎浜盛三(当時51歳)の判決公判が開かれ、石川恭司裁判長は懲役4ヶ月・執行猶予3年(求刑・懲役6ヶ月)を言い渡した。最高裁によると、記録が残る昭和53年以降、秘密漏示罪の判決宣告は初めて。報道・出版の自由や取材源の秘匿をめぐり論議を呼んだ異例の事件は、調書が引用された『僕はパパを殺すことに決めた』(講談社)を出版したフリージャーナリスト、草薙厚子(当時44歳)の刑事責任は問われないまま、取材源のみが有罪とされる結果となった。弁護側は、崎浜が草薙に調書などを見せたことは認めたものの、放火殺人事件の少年審判で精神鑑定を担当した医師の長男(19歳)に殺意はなかったことを社会に理解してもらうためで、正当な理由があったと主張。さらに治療行為を行わない鑑定人は秘密漏示罪の対象となる医師には当たらないとして、無罪を訴えた。これに対し検察側は「少年法の精神を破壊した前代未聞の事件で極めて悪質」と指弾。同罪の法定刑の上限である懲役6ヶ月を求刑していた。判決によると、崎浜被告は2006年(平成18年)10月5〜15日、京都市の自宅やホテルで、3回にわたり草薙らと面会。奈良家裁から鑑定資料として貸与された長男や父親らの供述調書を見せるなどし、業務上知り得た秘密を不当に漏らした。弁護側は即日控訴した。12月17日、大阪高裁は懲役4ヶ月・執行猶予3年(求刑・懲役6ヶ月)とした1審・奈良地裁判決を支持し、弁護側の控訴を棄却した。小倉正三裁判長は「調書を報道させる行為に正当な理由はない。プライバシーを侵害された被害者らのショックは大きく、精神科医の社会的信頼を失墜させた」と述べた。弁護側は即日上告した。2012年(平成24年)2月13日、最高裁で上告棄却で懲役4ヶ月・執行猶予3年が確定。
[ 奈良県田原本町の医師宅放火殺人の供述調書漏洩事件 ]  2006年(平成18年)6月20日、奈良県田原本町の医師宅から出火し、医師の妻と幼い子供2人が死亡。当時16歳だった長男が逮捕され、奈良家裁は同年10月、中等少年院送致の保護処分を決定した。この事件をめぐりフリージャーナリストの草薙厚子は長男らの供述調書を引用した著書『僕はパパを殺すことに決めた』を出版。草薙に調書の写しを見せたなどとして、長男の精神鑑定を担当した崎浜盛三が秘密漏示罪で逮捕、起訴されたが、草薙の立件は見送られた。

ファムファタル

ファムファタル

Femme fatale フランス語 「妖婦」「男を破滅させる女」「宿命の女」「死にいたらしめる女」などと訳す。このようなタイプの女は西欧のオペラ、文学、演劇のなかに繰り返して登場し、その危険な魅力によって大いに大衆の人気を得てきた。
メリメの『カルメン』に登場するカルメンや谷崎潤一郎の『痴人の愛』に登場するナオミなどが代表例である。

フィッシング

フィッシング

Phishing 「Phishing」という英語のつづりは利用者を「釣る」という意味の「fishing」と、その手口が「洗練されている」という意味の「Sophisticated」を合わせた造語と言われている。

フィッシングとは銀行などの実在する企業を装って電子メールを送り、その企業のサイトに見せかけて作成したニセのサイトに誘導し、そこにクレジットカードの番号やネット上で個人を識別するためのIDやパスワードなどを入力させて金融情報や個人情報を不正に入手する行為。

不起訴処分

不起訴処分

検察官が事件を不起訴にする場合、次の4つのパターンがある。

[ 1 ] 犯罪の嫌疑がないか不充分なとき。逮捕された被疑者が、その後の捜査で犯人と断定するだけの証拠を集められなかったケース。

[ 2 ] ある行為によって犯罪の嫌疑がかけられたものの、その行為自体が犯罪ではなかったケース。

[ 3 ] 被疑者の犯罪行為が明らかな場合でも、その被疑者が死亡していたり、時効が成立していれば、訴訟条件が揃っていないので不起訴となる。

[ 4 ] 事件の中には、犯行後の状況や犯人の年齢、境遇などを考えると、処罰する必要性のないものもある。そういう場合は、不起訴にして刑事責任を問わない。これを「起訴猶予」といい、不起訴処分の中で最も多く80%に達する。

殺人犯が起訴猶予になることもある。たとえば、母親が子どもと無理心中を図って、自分だけが生き残った場合、子どもを殺したのだから明らかに殺人罪が成立するが、無理心中をせざるを得なかった事情などに同情すべき点があり、刑罰を科す必要がないと判断されれば、不起訴にして助けるケースもまれにある。

武器等製造法

武器等製造法

武器等製造法4条、31条 経済産業大臣の許可なく売り渡すためのピストル・ライフル・機関銃・大砲などを製造すると、無期若しくは5年以上の有期懲役又は無期若しくは5年以上の有期懲役及び3000万円以下の罰金に処する。
両罰規定として法人に3000万円以下の罰金。

復顔法

復顔法

復顔法は、カービング Carving(彫刻)とも呼ばれる。身元不明死体が発見された場合、それが誰であるのかを特定する方法として、照合するべき写真がある場合は、スーパーインポーズ法で判明する確率が高いが、捜索願いが出されていなかったり、リストに入っているものの写真がなかったりする場合は、復顔法、つまり頭蓋骨の上に粘土で肉付けをして、生前の顔を復元する方法が用いられる。

人の顔の骨から表面までの皮膚までの厚さは数多くの測定によって平均値が割り出されている。その数値を元に骨に肉付けをしていく。こうして再現された顔は、交番などで貼り出される「この人を知りませんか?」などというポスターに使われることになる。

ひとつの「顔」を作り上げるのに最低1ヶ月かかるという。現在は科学警察研究所で開発されたコンピューター・グラフィックス(CG)を使った復顔法システムが威力を発揮している。

不作為犯

不作為犯

するべき行為を実行しないことによって被害が生じると犯罪になる。
たとえば、店で買い物をして釣銭を多くもらっているのに気付かないフリをして出ていくと「不作為の詐欺」が成立している。
生まれたばかりの赤ちゃんにミルクを与えないという行為も殺そうという意思があれば「不作為犯」になる。

侮辱罪 名誉毀損罪

侮辱罪 名誉毀損罪

「愛人がいる」などの具体的な事実を指摘して公然と他人の名誉を傷つけると名誉毀損罪刑法230条)になり、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金。事実の内容が真実でも嘘でも罰せられる。「公然と」とは不特定多数の人が知り得る状態のこと。

前条の行為が公共の利害に関する事実を公益のために指摘した場合は、それが真実ならば名誉毀損にはあたらない(刑法230条の2)。

「公共の利害に関する事実」とは、[ 1 ] 公訴されていない人の犯罪行為についての事実(刑法230条の2−2項)、[ 2 ] 公務員や選挙候補者に関する事実(刑法230条の2−3項)を指す。

故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。(民法709条)

他人の身体、自由もしくは名誉を侵害した場合または他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条(民法709条)の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。(民法710条)

他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は被害者の請求により、損害賠償に代えて、または損害賠償とともに名誉を回復するのに適当な処分を命じることができる。(民法723条)

「あいつはバカだ」など、自分の主観による評価によって公然と相手の体面を損なわせると侮辱罪(刑法231条)になり、1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金または拘留若しくは科料に処する。

名誉毀損罪、侮辱罪ともに、告訴しなければ公訴することができない親告罪(刑法232条)である。

告訴をすることができる者が天皇、皇后、太皇太后、皇太后又は皇嗣であるときは内閣総理大臣が、外国の君主又は大統領であるときはその国の代表者がそれぞれ代わって告訴を行う(刑法232条2項)。

付審判制度

付審判制度

刑事訴訟法は警察官の暴行や公務員の職権乱用が疑われるケースで検察官が不起訴にした場合、告訴、告発人は不服があれば、事件を審判に付すよう地裁に求めることができると規定しており、「準起訴手続き」とも呼ばれている。地裁が請求を認める決定をすれば、検察官の起訴独占の例外として事件は起訴があったとされ、有罪、無罪や量刑を決める審判が開かれる。通常の刑事裁判とは異なり、地裁指定の弁護士が検察官の職務を行う。

婦人補導院

婦人補導院

婦人補導院は、売春防止法5条の罪を犯して補導処分になった満20歳以上の女子を収容し、規律ある明るい環境のもとで、社会生活に適応させるために必要な生活指導、職業補導、その更生の妨げになる心身の障害に対する医療を行い、社会で自立して生活できる女性として復帰させることを目的としている国立の施設。補導処分の期間は6ヶ月で、現在、東京婦人補導院が八王子市に置かれている。

売春防止法5条(勧誘等) 

売春をする目的で、次の各号の[ 1 ]に該当する行為をした者は、6ヶ月以下の懲役または1万円以下の罰金に処する。

[ 1 ] 公衆の目にふれるような方法で、人を売春の相手方となるように勧誘すること。

[ 2 ] 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、またはつきまとうこと。

[ 3 ] 公衆の目にふれるような方法で客待ちをし、または広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。

法務省矯正局婦人補導院

不正アクセス禁止法

不正アクセス禁止法

不正アクセス行為の禁止等に関する法律 略して、不正アクセス禁止法。
不正アクセス禁止法3条(不正アクセス行為の禁止) 何人も、不正アクセス行為をしてはならない。
不正アクセス禁止法8条(罰則) 3条に違反した者は1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2項 前項に規定する不正アクセス行為とは、次の各号の一に該当する行為をいう。
 一 アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能に係る他人の識別符号を入力して当該特定電子計算機を作動させ、当該アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者又は当該識別符号に係る利用権者の承諾を得てするものを除く。)
 二 アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能による特定利用の制限を免れることができる情報(識別符号であるものを除く。)又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者の承諾を得てするものを除く。次号において同じ。)
 三 電気通信回線を介して接続された他の特定電子計算機が有するアクセス制御機能によりその特定利用を制限されている特定電子計算機に電気通信回線を通じてその制限を免れることができる情報又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為
「不正アクセス行為」を分かりやすく言うと、インターネットやLANの上にある場所(サイトなど)は基本的に誰でも自由に出たり入ったりできるが、中にはネット上で金銭や商品といった重要なものをやりとりしたり(買い物サイトや銀行サイトなど)、参加者を特定した上で互いに交流したりするサイトも存在する。さらに、サイトの運営そのものを管理する目的で使われる場所もあり、こられは会員や管理者などとしてサーバーコンピューターに登録されている人だけに入る権限を与えられているのが普通で、こうした出入りが制限されているネット上の場所やへ権限もないのに勝手に入ることをいい、法律上、処罰の対象となる「不正アクセス行為」には、他人のIDとパスワードを勝手に入力する行為やファイヤーオールの欠陥や不備を突いて入る行為の2種類がある。
不正アクセス禁止法4条(不正アクセス行為を助長する行為の禁止) 何人も、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を、その識別符号がどの特定電子計算機の特定利用に係るものであるかを明らかにして、又はこれを知っている者の求めに応じて、当該アクセス制御機能に係るアクセス管理者及び当該識別符号に係る利用権者以外の者に提供してはならない。ただし、当該アクセス管理者がする場合又は当該アクセス管理者若しくは当該利用権者の承諾を得てする場合は、この限りでない。
不正アクセス禁止法9条(罰則) 4条の規定に違反した者は、30万円以下の罰金に処する。
不正指令電磁的記録に関する罪
不正指令電磁的記録に関する罪
刑法168条の2(不正指令電磁的記録作成等/一般には「ウイルス作成罪」と呼ばれている) 正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
 一 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
 二 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録
2 正当な理由がないのに、前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、同項と同様とする。
3 前項の罪の未遂は、罰する。
刑法168条の3(不正指令電磁的記録取得等) 正当な理由がないのに、前条第一項の目的で、同項各号に掲げる電磁的記録その他の記録を取得し、又は保管した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
不利益変更禁止の原則
不利益変更禁止の原則
刑事訴訟法上、被告人により(または被告人のために)控訴または上告がされた場合、控訴審または上告審で原判決より重い刑を言い渡すことができない原則のことをいう(刑事訴訟法402条・414条)。
この原則は被告人側がより悪い結果になることを恐れてためらうことなく上訴権を自由に行使できるようにする政策に基づいている。検察側が上訴した場合はその理由にかかわらず、この原則は適用されない。刑の軽重は刑法(10条)だけで決めるのではなく、全体として実質的に考慮して決めなければならない。
被告人の上訴により破棄差し戻し判決があった場合、差し戻し後の判決にもこの原則の適用がある。再審の判決にもこの原則の適用がある(刑事訴訟法452条)。

プリゾニゼーション

プリゾニゼーション

Prisonization 拘禁症のこと。監獄に閉じ込められた人は、不安を感じて怒りを爆発させたり、あるいは意識が薄れたり、ときには幻覚や妄想の症状が出るなどの拘禁反応を示すが、逆に、そういった環境に過剰に適応してしまうことがあり、自由が奪われたことによって積極性を失い、従属的、受動的になっていく。

精神鑑定が行なわれるときに、被告人の精神状態が拘禁症によるものなのか、そうでないのかが問題になる場合もある。

フレームアップ

フレームアップ

Frame up でっち上げのこと。多くは政治的な弾圧、労働組合や争議つぶしに使われる。アメリカでは1930年代、無政府主義的傾向をもつ2人のアナルコ・サンジカリストをでっち上げ死刑にしたサッコ・ヴァンゼッティ事件、フランスでは今世紀初めのデレフュス事件、ドイツではナチスが権力確立のきっかけとした共産党国会放火事件、日本では1910年(明治43年)の大逆事件が知られる。数人の無政府主義者の爆弾試作により明治天皇暗殺計画の罪で多数の社会主義者を逮捕し、大逆罪に仕立てて幸徳秋水ら12人を死刑に処した。戦後では菅生(すごう)事件や松川事件など、日本共産党つぶしのフレームアップが相次いで企てられた。
松川事件の概要は下山事件に収録。

プロファイリング

プロファイリング

Profiling アメリカのFBI(連邦捜査局)が、1970年代の初頭から多発する異常性犯罪を解決するためにプロファイリングと呼ばれる犯罪分析手法を開発した。プロファイリングとは、犯行現場に残された手がかりを元に行動科学、特に心理学を中心として犯人像を推定し、捜査に役立てようというもの。FBIによれば、1981年(昭和56年)の調査で、プロファイリングが捜査の過程でおおいに役立っていたと答えた司法執行機関が77%あったと報告している。

プロファイリングの心理技官たちは、まず、これまで逮捕された36人の異常性犯罪のインタビューを試み、犯人の心理、行動パターンを引き出している。これによって、それまでほとんど知られていなかった異常性犯罪者たちの内面が浮かび上がってきたのだ。

異常性犯罪者には大きく分けて3つのタイプがある。ひとつは、犯罪が計画的でリスクの少ない被害者を選び、証拠を残さない「秩序タイプ」。もうひとつは、衝動的でリスクもなにも考えず、証拠隠滅にも頓着のない「無秩序タイプ」。さらにこの両方を合わせもつ「混合タイプ」がある。「混合タイプ」となる要因として、複数犯、突発的な出来事、犯人の変化などが考えられている。

[ 秩序型・無秩序型殺人犯のプロファイル特性 ]

  秩序型 無秩序型
生育した家庭環境 父親の職業は安定している。兄弟の中では年長、第一子の場合も多い。子ども時代の躾が甘く首尾一貫していなかった。 父親が職を転々とする。兄弟の中で年下である場合が多い。子ども時代の躾が非常に厳しかった。
キャラクター 知性 平均かそれ以上。 平均かそれ以下
職業 能力以下だが、専門的な熟練労働に従事。 単純労働も長続きせずたいした職歴もない。
性的機能 大半は正常。 機能不全。経験に乏しく、倒錯的。
日常生活の状況 配偶者と暮らしている。一応の社会性を身につけ、地域住民に溶け込んでいる。整備した自動車を所有し、行動範囲が広い。 一人暮らしまたは親と同居。社会的に未成熟で対人関係に恐怖を抱いている。幼稚で脅迫的な観念に取り付かれ隔絶した妄想の世界に没入している。
犯行以前の心理 外部からのさまざまなストレスを強く意識し、緊張・興奮する。 抑圧され錯乱した精神状態で突発的・衝動的な犯行に至る。
犯行時の状態 感情のコントロールは可能。しばしばアルコールを飲用。 感情が爆発し、ほとんど抑制不能。アルコール飲用の例は少ない。
犯行後の行動 マスコミ報道を見守っており、積極的に事件の情報を求める。頻繁に転職・転居する。 マスコミにほとんど興味がなく、事件への関心は希薄。ライフスタイルは変化に乏しい。

[ 秩序型・無秩序型殺人犯の犯行現場特性 ]

  秩序型 無秩序型
犯行現場の印象 生前と秩序だっている。 乱雑で秩序がない。
襲撃状況 計画的。じっくりと狙いを定めた上で犯行に及ぶ。 無計画で衝動的。不意な襲撃を躊躇しない。
犠牲者の選択 偶然、見知らぬ他人を選ぶ。その相手がなんらかの共通した特徴をもっている場合が多い。 移住する地域の顔見知りが多いが、無差別な襲撃もある。
犯行時の行動
殺害状況
犠牲者と会話したり、仮の交友関係を結ぶことがある。犠牲者に服従を要求。支配力をことさら誇示する。拘束用の道具を使用。犠牲者を制的に暴行後、ゆっくり殺す。 殺害は迅速で暴力的。犠牲者に抵抗の機会を与えない。犠牲者の身体への過剰攻撃を加えて、非人格化する傾向がある。犠牲者の死後、サディスティックな性的行為を行なう。しばしば、死体切断も見られる。
「記念品」「戦利品」などを持ち去ることもある。
凶器・証拠など 凶器は事前に用意する。犯行後、証拠類とともに持ち帰りきちんと始末する。 凶器は現場にあったものでそのまま放置される。指紋その他、証拠を隠す意図・努力が見られない。
死体の処理 犠牲者や死体を移動させ、熟知した場所に遺棄・隠匿する傾向がある。 死体を放置する場合が多いが、逆に手元に保存する犯人もいる。

この分類に従えば、8人の女性を殺した大久保清は秩序タイプ、阿部定は無秩序タイプということになる。大久保清連続殺人事件 / 阿部定事件

文化財保護法
文化財保護法
文化財保護法196条 日本国や都道府県が指定する天然記念物を殺傷したり、弱らせたり、見た目を変えたりすると5年以下の懲役若しくは禁錮又は30万円以下の罰金に処する。
両罰規定として法人に30万円以下の罰金。
2項 自分が所有する天然記念物を殺傷したりすると2年以下の懲役若しくは禁錮又は20万円以下の罰金若しくは科料に処する。
両罰規定として法人に20万円以下の罰金。
天然記念物の例・・・イリオモテヤマネコ、アマミノクロウサギ、コウノトリ、オオサンショウウオ、イシカワガエル、オカヤドカリ、阿寒湖のアリモ、屋久島のスギ原始林など。
文書偽造の罪
文書偽造の罪
刑法154条(詔書偽造等)行使の目的で、御璽、国璽若しくは御名を使用して詔書その他の文書を偽造し、又は偽造した御璽、国璽若しくは御名を使用して詔書その他の文書を偽造した者は、無期又は3年以上の懲役に処する。
2項 御璽若しくは国璽を押し又は御名を署した詔書その他の文書を変造した者も、前項と同様とする。
刑法155条(公文書偽造等) 行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
2項 公務所又は公務員が押印し又は署名した文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3項 前2項に規定するもののほか、公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は公務所若しくは公務員が作成した文書若しくは図画を変造した者は、3年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。
運転免許証の氏名欄の上に別の氏名を書いた紙片をのせてコピーし、まるで別人の運転免許証が存在するかのような写しを作る行為は「偽造していない」と解釈もできそうだが、最高裁の判例では「コピーは現物と同じ内容を示しているという社会的な信頼がされているので偽造にあたる」と結論付けている。
刑法156条(虚偽公文書作成等) 公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造したときは、印章又は署名の有無により区別して、前2条の例による。
刑法157条(公正証書原本不実記載等) 公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2項 公務員に対し虚偽の申立てをして、免状、鑑札又は旅券に不実の記載をさせた者は、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。
3項 前2項の罪の未遂は、罰する。
刑法158条(偽造公文書行使等) 154条から前条までの文書若しくは図画を行使し、又は前条1項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。
2項 前項の罪の未遂は、罰する。
刑法159条(私文書偽造等) 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、3ヶ月以上5年以下の懲役に処する。
2項 他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3項 前2項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
<私文書偽造・変造の例>
入学試験の解答用紙の欄に他人の氏名を記入した上で問題を解く行為(替え玉受験)。違反点数の累積で免許停止になるのを避けるために切符の著名欄に他人の氏名を記入する行為。素人が描いた絵に勝手に著名な画家の雅号印をマネて記す行為。
刑法160条(虚偽診断書等作成) 医師が公務所に提出すべき診断書、検案書又は死亡証書に虚偽の記載をしたときは、3年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処する。
刑法161条(偽造私文書等行使) 前2条の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。
2項 前項の罪の未遂は、罰する。
刑法161条の2(電磁的記録不正作出及び供用) 人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2項 前項の罪が公務所又は公務員により作られるべき電磁的記録に係るときは、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
3項 不正に作られた権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を、1項の目的で、人の事務処理の用に供した者は、その電磁的記録を不正に作った者と同一の刑に処する。
4項 前項の罪の未遂は、罰する。
併合罪
併合罪
刑法45条(併合罪) 確定裁判を経ていない2個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。
刑法46条(併科の制限) 併合罪のうちの1個の罪について死刑に処するときは、他の刑を科さない。ただし、没収は、この限りでない。
2項 併合罪のうちの1個の罪について無期の懲役又は禁錮に処するときも、他の刑を科さない。ただし、罰金、科料及び没収は、この限りでない。
刑法47条(有期の懲役及び禁錮の加重) 併合罪のうちの2個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。
例えば、3つの犯罪を犯して、それぞれの法定刑の上限が1年、2年、10年だとすると、最も重い罪の10年の1.5倍で15年だが、法定刑の全部の合計は13年だから、結局は最大で13年になるということで、これを超えることはできない。
さらに、有期刑(期間の定めがある懲役・禁固刑)は、併合罪などの場合でも、上限が30年までとされてる(刑法14条2項)。
刑法48条(罰金の併科等) 罰金と他の刑とは、併科する。ただし、46条第1項の場合は、この限りでない。
2項 併合罪のうちの2個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断する。
刑法49条(没収の付加) 併合罪のうちの重い罪について没収を科さない場合であっても、他の罪について没収の事由があるときは、これを付加することができる。
2項 2個以上の没収は、併科する。
刑法50条(余罪の処理) 併合罪のうちに既に確定裁判を経た罪とまだ確定裁判を経ていない罪とがあるときは、確定裁判を経ていない罪について更に処断する。
刑法51条(併合罪に係る2個以上の刑の執行) 併合罪について2個以上の裁判があったときは、その刑を併せて執行する。ただし、死刑を執行すべきときは、没収を除き、他の刑を執行せず、無期の懲役又は禁錮を執行すべきときは、罰金、科料及び没収を除き、他の刑を執行しない。
2項 前項の場合における有期の懲役又は禁錮の執行は、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを超えることができない。
刑法52条(一部に大赦があった場合の措置) 併合罪について処断された者がその一部の罪につき大赦を受けたときは、他の罪について改めて刑を定める。
刑法53条(拘留及び科料の併科) 拘留又は科料と他の刑とは、併科する。ただし、46条の場合は、この限りでない。
2項 2個以上の拘留又は科料は、併科する。
刑法54条(1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合等の処理) 1個の行為が2個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
2項 49条第2項の規定は前項の場合にも、適用する。
ヘイトクライム
ヘイトクライム
Hate crime 人種、宗教、肌の色、民族、性的指向、性別、障害などに係る特定の属性を持つ個人や集団に対する偏見や憎悪を動機とする犯罪。憎悪犯罪ともいう。物理的暴力だけでなく、脅迫、嫌がらせ、ヘイトスピーチも含まれる。
弁護士
弁護士

すべての弁護士は都道府県ごとに設けられた弁護士会に加入している。その弁護士会の連合体が、日本弁護士連合会(日弁連)。弁護士の監督権は各弁護士会と日弁連だけに与えられており、完全自治が認められている。弁護士会への加入は強制的なものなので、弁護士会に所属していない弁護士はいない。また、すべての弁護士と弁護士会は自動的に日弁連の会員になる。日弁連の会長は全弁護士の選挙によって選ばれる。

弁護士会は原則として各都道府県にひとつずつ置かれるが、北海道に4つ、東京には3つあるので、全部で52ヶ所ある。

北海道の場合は広すぎるという地理的な理由から4つに分かれている。東京の場合は東京弁護士会から第一東京弁護士会が分かれ、さらに第二東京弁護士会が設立された。

刑事事件では法律で定めている刑が懲役3年以上の重い事件は「必要的弁護事件」と呼ばれ、弁護人がいなければ裁判をすることができない。

経済的な理由などで私選弁護人を頼むことができないときは、裁判所に請求すれば国選弁護人がつけられる。ただし、国選弁護人をつけられるのは起訴されたあとに限られる。その費用は国が立て替えるが、必ずしも被告人が支払いを免除されるわけではない。日本では刑事事件のおよそ90%を国選弁護人が担当している。

逮捕から起訴までの勾留中に法律的なアドバイスを受けるには、私選弁護人を選ぶしかないが、「当番弁護士」という制度があり、これは各地区の弁護士会による一種のボランティア活動。弁護士会ごとに、その日の「当番」が決まっていて、要請があれば駆けつけられるようスタンバイしている。逮捕された被疑者が、警察官あるいは検察や裁判所に対して、「当番弁護士を依頼する」と言えば、その日の「当番」が面会に来てくれる。初回は無料で助言してくれる。

国選弁護人の場合、被告人が勝手に解任することはできず、選任や解任ができるのは裁判所だけである。

私選弁護人は被告人や被疑者が個人的に雇っているので、依頼者が自由に選任や解任ができるが、裁判の引き延ばしを狙って選任と解任を何度も繰り返す場合は権利の濫用と見なされ、裁判所が国選弁護人を選任して裁判を引き延ばされないようにできる。

被告人や被疑者から依頼があったとき、それを引き受けるかどうかは弁護士の自由だが、いったん弁護を引き受けた事件についても、被告人との間で弁護方針が食い違うなどの事情が生じたときには、途中で弁護を降りることができる。

普通は正式な資格を持った弁護士が弁護人として仕事をすることになるが、弁護人が必ず弁護士とはかぎらない。弁護士資格のない者を弁護人として選任することができる「特別弁護人制度」があり、第1審で被告人(起訴前の被疑者は不可)にかぎってその選任が認められている。

1893年(明治26年)に施行された最初の弁護士法では「弁護士タラムト欲スル者ハ・・・男子タルコト」とあり、女性は弁護士になれなかった。1929(昭和4年)、明治大学に専門部女子部(法科)が創設され、大学法学部への道が開かれた。1933年(昭和8年)の弁護士法改正で性別要件が削除され、1940年(昭和15年)に最初の女性弁護士3人が誕生した。

詳しくは弁護士法

弁論
弁論
裁判において弁護人は被告人が真剣に反省していること、被害者への謝罪や弁償が済んでいること、今後の生活を指導する家族がいることなどをアピールし、執行猶予付きとなる量刑が可能であれば、執行猶予付きの判決を裁判官に求める。否認している事件であれば、検察官による立証の不足や矛盾点を指摘して無罪を主張する。
放火罪 失火罪
放火罪 失火罪

放火により、現に人が住居に使用しまたは人がいる建造物、汽車、電車、船舶、鉱坑を焼損すると現住建造物等放火罪刑法108条)になり、死刑または無期、あるいは5年以上の懲役。

放火により、現に人が住居に使用せず、かつ現に人がいない建造物、船舶または鉱坑を焼損すると非現住建造物等放火罪(刑法109条)になり、2年以上の懲役。これが自分所有の物であるときは6ヶ月以上7年以下の懲役。ただし、公共の危険を生じなかったときは罰しない(刑法109条の2)。

判例によると、一人暮らしの者が自宅に火をつけても「非現住建造物等放火」にしかならない。ここでいう「人」は犯人自身は含まれないからだ。

放火により、108条と109条に規定する物以外の物を焼損し、公共の危険を生じさせると建造物等以外放火罪(刑法110条)となり、1年以上10年以下の懲役。これが自分所有の物であるときは1年以下の懲役または10万円以下の罰金(刑法110条2項)。

1980年(昭和55年)8月19日に起きた新宿駅西口バス放火事件では、バスも汽車や電車に準ずるものとして、刑法108条を適用すべきだったが、判例がなく学説も分かれている関係から刑法110条の建造物等以外放火罪と殺人で裁判が行なわれている。

109条−2項または110条−2項の罪によって、108条または109条に規定する物に延焼させると延焼罪(刑法111条)になり、3ヶ月以上10年以下の懲役。

100条−2項の罪によって、100条に規定する物に延焼させると、3年以下の懲役(111条−2項)。

108条および109条の未遂罪(刑法112条)は罰する。

108条または109条の罪を犯す目的で、その予備をすると予備罪(刑法113条)になり、2年以下の懲役。ただし、情状により、その刑を免除することができる。

火災の際に、消化用の物を隠くすか壊す、またはその他の方法により、消火を妨害すると消火妨害罪(刑法114条)になり、1年以上10年以下の懲役。

109条および110条に規定する物が自分の所有であっても差押さえを受け、物権を負担し、賃貸し、または保険に付した物である場合において、これを焼損させたときは、他人の物を焼損した者の例による(刑法115条)

失火により、108条に規定する物または他人の所有に係わる109条に規定する物を焼損させると失火罪(刑法116条)になり、50万円以下の罰金。

失火によって109条に規定する物であって自分の所有に係わる物または110条に規定する物を焼損して、公共の危険を生じさせても同罪(刑法116条−2項)となる。

火薬、ボイラーその他の激発する物を破裂させて、108条に規定する物または他人の所有に係わる109条に規定する物を損壊した者は放火の例による。109条に規定する物であっても自分の所有に係わる物または110条に規定する物を損壊したことによって、公共の危険を生じさせた者も同様(刑法117条)。

117条の行為が過失による場合は失火の例による(刑法117条−2項)。

116条または117条の行為が業務上必要な注意を怠ったり、重大な過失によるものである場合、業務上失火罪(刑法117条の2)になり、3年以下の禁錮または150万円以下の罰金。

ガス、電気または蒸気を漏出、流出させ、または遮断したことによって、人の生命、身体または財産に危険を生じさせた者は3年以下の懲役または10万円以下の罰金(刑法118条)。

また、これにより人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して重い刑により処断する(刑法118条2項)。

故意に火をつければ「放火」になり、過失で火を出せば「失火」になる。だが、「失火」であっても、例えば、家が家裁保険に入っているのをいいことに、そのまま放置して家を全焼させたような場合は「放火」と見なされる。本人の意識の中に「家を燃やしてしまえ」という「犯意」があッたことが明らかだからだ。

警察用語で放火のことを「赤馬」という。

放火症
放火症
Pyromania ピロマニア、病的放火、放火癖、放火狂ともいう。放火には盗みや殺人などの犯行の隠蔽や個人的な恨みによる復讐、保険金詐欺、自殺など様々な動機がある。放火症とはこのような特定の目的を実現する一手段として放火するのとは違い、放火それ自体の行為が犯人の目的になる場合がある。放火行為とそれに付随する行為である犯行準備、点火作業、炎上の光景、消火活動、群衆の騒ぎなどが強い心理的、生理的な快感をもたらす。火に対する喜びはしばしば放火に着手するまでのスリル、緊張感からの解放と結びついている。不満をもつ人がうっぷん晴らしの目的で無関係の家屋などに放火する八つ当たり的な犯罪は比較的多く見られるが、放火症という場合には同じ行為が強迫的に反復されることが特徴である。
精神分析の立場からは炎や消火行為が性的な象徴であり、放火は幼児的性欲とくに尿道愛を満足させる代理行為と解釈されている。その元にあるのはフロイトが道具としての火の使用の始まりについて述べたことにある。つまり原始人は燃え上がる炎(男根の象徴)を放尿によって消す行為のなかで尿道の感覚を通して同性愛的な快感を満足させたのだが、快感を断念して火を持ち帰ったとき、それを道具として役立たせるようになったという。
他に目的をもたない「窃盗のための窃盗」を反復する窃盗症(クレプトマニア)と共通点があり、精神疾患の分類では両者とも「衝動制御の障害」の中に含まれている。
暴行罪 傷害罪
暴行罪 傷害罪

暴行の故意をもって他人の身体に暴行を加え、傷害するに至らなかった場合は暴行罪(刑法208条)となり、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金または拘留も若しくは科料になる。傷害罪には未遂罪の規定がないが、その大部分が暴行罪に該当する。例えば、殴ろうとしたが相手によけられた場合も暴行罪となる。暴行は殴る、蹴るだけでなく、身体に影響を及ぼす病原菌、腐敗物、光、音なども含まれる。

こうすれば怪我するだろうと故意に他人を攻撃し、その結果として相手が怪我をすれば傷害罪刑法204条)となり、10年以下の懲役または30万円以下の罰金か科料になる。それで死亡させたら、傷害致死罪(刑法205条)となり、2年〜15年の懲役。また、自ら人を傷害させなくても現場で勢いを助ければ、現場助勢罪(刑法206条)となり、1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料になる。

暴行の故意もなく過失で人を怪我させたら過失傷害罪(刑法209条)になり、30万円以下の罰金または科料になる。それで、死亡させたら、過失致死罪(刑法210条)になり、50万円以下の罰金。

業務上必要な注意を怠り、人を死傷させると、業務上過失致死傷罪(刑法211条)になり、5年以下の懲役若しくは禁錮または100万円以下の罰金に処する。

「業務」とは「仕事」という意味ではなく、社会生活上継続反復してやる行為で、人を死傷させる危険性を含んでいるものを指すため、仕事上でなくても事故を起こすと、罪名は「業務上過失致傷罪」となる。

2人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は凶器準備集合罪(刑法208条の3)になり、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金になる。

2項 前項の場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って人を集合させた者は、凶器準備結集罪(刑法208条の3の2項)となり、3年以下の懲役になる。

暴力行為等処罰ニ関スル法律

第一条 団体若ハ多衆ノ威力ヲ示シ、団体若ハ多衆ヲ仮装シテ威力ヲ示シ又ハ兇器ヲ示シ若ハ数人共同シテ刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百八条、第二百二十二条又ハ第二百六十一条ノ罪ヲ犯シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三十万円以下ノ罰金ニ処ス

→<集団等暴行> 団体や大勢(暴力団など)が自分のバックに控えているという威力を示しながら、あるいは凶器を使いながら、または数人がグルになって暴行を行うと3年以下の懲役または30万円の罰金に処する。

第一条ノ二 銃砲又ハ刀剣類ヲ用ヒテ人ノ身体ヲ傷害シタル者ハ一年以上十五年以下ノ懲役ニ処ス

2 前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス

3 前二項ノ罪ハ刑法第三条、第三条の二及第四条の二ノ例ニ従フ

第一条ノ三 常習トシテ刑法第二百四条、第二百八条、第二百二十二条又ハ第二百六十一条ノ罪ヲ犯シタル者人ヲ傷害シタルモノナルトキハ一年以上十五年以下ノ懲役ニ処シ其ノ他ノ場合ニ在リテハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス

→<常習暴行> 過去に何度も暴行行為を繰り返しいる者が懲りずに暴行、脅迫、器物損壊を行うと3ヶ月以上5年以下の懲役に処する。

第二条 財産上不正ノ利益ヲ得又ハ得シムル目的ヲ以テ第一条ノ方法ニ依リ面会ヲ強請シ又ハ強談威迫ノ行為ヲ為シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ十万円以下ノ罰金ニ処ス
2 常習トシテ故ナク面会ヲ強請シ又ハ強談威迫ノ行為ヲ為シタル者ノ罰亦前項ニ同シ

第三条 第一条ノ方法ニ依リ刑法第百九十九条、第二百四条、第二百八条、第二百二十二条、第二百二十三条、第二百三十四条、第二百六十条又ハ第二百六十一条ノ罪ヲ犯サシムル目的ヲ以テ金品其ノ他ノ財産上ノ利益若ハ職務ヲ供与シ又ハ其ノ申込若ハ約束ヲ為シタル者及情ヲ知リテ供与ヲ受ケ又ハ其ノ要求若ハ約束ヲ為シタル者ハ六月以下ノ懲役又ハ十万円以下ノ罰金ニ処ス

2 第一条ノ方法ニ依リ刑法第九十五条ノ罪ヲ犯サシムル目的ヲ以テ前項ノ行為ヲ為シタル者ハ六月以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ十万円以下ノ罰金ニ処ス

軽犯罪法1条 左(下)の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

5号 公共の会堂、劇場、飲食店、ダンスホールその他公共の娯楽場において、入場者に対して、又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、飛行機その他公共の乗物の中で乗客に対して著しく粗野又は乱暴な言動で迷惑をかけた者

29号 他人の身体に対して害を加えることを共謀した者の誰かがその共謀に係る行為の予備行為をした場合における共謀者

決闘罪ニ関スル件 施行:明治23年1月19日

第一条 決闘ヲ挑ミタル者又ハ其挑ニ応シタル者ハ六月以上二年以下ノ重禁錮ニ処シ十円以上百円以下ノ罰金ヲ附加ス

第二条 決闘ヲ行ヒタル者ハ三年以上五年以下ノ重禁錮ニ処シ二十円以上二百円以下ノ罰金ヲ附加ス

第三条 決闘ニ依テ人ヲ殺傷シタル者ハ刑法ノ各本条ニ照シテ処断ス

第四条 決闘ノ立会ヲ為シ又ハ立会ヲ為スコトヲ約シタル者ハ証人介添人等何等ノ名義ヲ以テスルニ拘ラス一月以上一年以下ノ重禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス

2 情ヲ知テ決闘ノ場所ヲ貸与シ又ハ供用セシメタル者ハ罰前項ニ同シ

第五条 決闘ノ挑ニ応セサルノ故ヲ以テ人ヲ誹謗シタル者ハ刑法ニ照シ誹毀ノ罪ヲ以テ論ス

第六条 前数条ニ記載シタル犯罪刑法ニ照シ其重キモノハ重キニ従テ処断ス

放射線発散行為処罰法
放射線発散行為処罰法
放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律 略して、放射線発散行為処罰法。 
放射線発散行為処罰法3条 放射性物質をみだりに取り扱うこと若しくは原子核分裂等装置をみだりに操作することにより、又はその他不当な方法で、核燃料物質の原子核分裂の連鎖反応を引き起こし、又は放射線を発散させて、人の生命、身体又は財産に危険を生じさせた者は、無期又は2年以上の懲役に処する。
2項 前項の罪の未遂は、罰する。
3項 1項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、5年以下の懲役に処する。ただし、同項の罪の実行の着手前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
放射線発散行為処罰法6条 放射性物質又は原子核分裂等装置を用いて人の生命、身体又は財産に害を加えることを告知して、脅迫した者は、5年以下の懲役に処する。
放射線発散行為処罰法7条 特定核燃料物質(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律2条5項に規定する特定核燃料物質をいう。)を窃取し、又は強取することを告知して脅迫し、義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求した者は、5年以下の懲役に処する。
幇助犯
幇助犯
「ほうじょはん」と読む。誰かの犯行を助ける行為。犯行のための資金や凶器などを調達したり、犯行現場の見張りをしたりするほか、相手を言葉で励ますことも幇助に含まれる。ただし、助けた相手が犯罪の実行行為を始めなければ幇助犯は処罰の対象にならない。
法定刑
法定刑

刑法などで定められた刑のこと。たとえば、刑法204条には「人の身体を傷害したものは、10年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料に処する」と傷害罪を定めているが、この「10年以下の〜」が法定刑。

刑法では「○年以下」とか、「○円以下」などと幅があるので、「相対的法定刑」と呼ばれている。ただし、刑法81条の外患誘致罪だけは、「死刑に処する」とされ、幅がない「絶対的法定刑」である。

裁判所はこの法定刑から適用すべき刑を選び、法律上、裁判上の加重減軽を加えて処断刑を割り出す。裁判上の減軽は酌量減軽ともいわれる。

刑の加重減軽は、再犯加重、法律上の減軽、併合罪加重、酌量減軽の順で行なわれる。

量刑の基準については刑法では定められていないが、全国の裁判所では日々、判決が下されており、それらを参考に量刑を決めていく、判例主義がとられている。

強盗罪の法定刑は、懲役5年以上15年以下となっている。単純に平均値をとれば懲役10年ということになる。それでは実際に強盗罪に科せられた量刑の平均値が懲役10年になるかというとそんなことはなく、ほとんどの判決が懲役5年〜6年になっており、量刑が法定刑の低い方に集中する傾向にある。

法廷の中の人々
法廷の中の人々

[ 裁判官 ] 法廷に入って正面の高い壇上にいるのが裁判官。第1審の地方裁判所の場合、比較的軽い事件は、担当する裁判官は1人(単独)で、それが重い事件になると、3人(合議)になる。

[ 裁判員(事件による) ] 2009年(平成21年)5月21日に裁判員制度がスタートしたが、裁判員制度が適用される事件は殺人罪、傷害致死罪、強盗致死傷罪、現住建造物放火罪などの重大犯罪である可能性の高い事件で地方裁判所で行われることになり、裁判員6人と裁判官3人の合議体で構成されるのが原則となり、裁判員が3人ずつ3人の裁判官の外側に並んで座る。

同じ1審でも、もともと軽微な事件しか扱わない簡易裁判所はすべて1人の裁判官が審理を行なっている。控訴審、つまり第2審の高等裁判所になると、事件が重い軽いに関わらず、必ず3人の裁判官が審理する。さらに、上告審、つまり第3審の最高裁判所の場合は、普通の事件は小法廷で扱われ、5人の裁判官によって審理が行なわれる。大法廷で扱われるのは、憲法の解釈が問題になるような大きな事件だけで、これを審理する裁判官は15人である。

裁判官は3人で審理する場合は、中央に座っているのが裁判長。その右側(向かって左側)にいる裁判官は「右陪席」、左側(向かって右側)は「左陪席」と呼ばれている。右陪席と左陪席については法律上の権限は同じだが、普通は中堅クラスの裁判官が右陪席で、司法修習を終えたばかりの若い裁判官は左陪席に座る習慣になっている。判決文は、まず合議の結論にしたがって左陪席が原稿を書き、それを右陪席と裁判長が順に修正して完成させることが多い。

[ 司法修習生 ] 司法修習生(司法試験合格後研修している人)は裁判官の横や壇の横に座って傍聴している。

[ 書記官 ] 裁判官より一段下の前の壇に座っているのが書記官と速記官。書記官は裁判官と同じく黒い法服を着ていて、裁判に関する記録や手続き、裁判官が判決を下すための調査や補助を行なう。

[ 速記官 ] 書記官の横に座っているのが速記官。裁判でのやりとりを「ソクタイプ」という機械で記録している。(いない場合が多い)

[ 検察官 ] (刑事事件の場合)犯罪を捜査し、裁判を起こし、進行し、刑の執行を指揮監督する。法廷では被告人を「攻める」立場。

[ 弁護人 ] (刑事事件の場合)法廷では被告人を「守る」立場。証言台をはさんで検察官と向き合う形で座る。

裁判所によって、検察官と弁護人の位置がまちまちだが、東京地裁では廊下に近い方が弁護人で、その反対側に検察官という配置になっている。どちらの席も廊下までの距離が同じ場合は、裁判官に向かって左側が検察官、右側が弁護人になっている。

[ 被告人 ] 被告人はだいたい弁護人の前に座る。手錠をつけ、さらに入退場のときは腰縄をつけられるが、保釈されている場合などは手錠や腰縄はない。

[ 看守 ] 被告人が勾留されている場合は、被告人の横に付き添っている人(1人か2人)がいるが、これが看守。被告人が警察の留置場に拘置されている場合は警察官、被告人が拘置所に拘置されている場合は刑務官が看守となる。身に付けている制服が違うのでひと目で被告人が留置場か拘置所のどちらに拘置されているのかが分かる。公判中はほとんど何もすることがなく中には寝ている看守もいたりするが、そのことに気付いているのかいないのか裁判官がそのことで注意するということもないようだ。その日の審理を終え、その場で次回の公判日程を裁判官が決めるが、そのとき弁護士や検察官がその日時に出廷できるようであれば、その日時が次回公判となる。このとき、看守がその日時をメモにとることが多い。

[ 廷吏 ] 裁判官がいる壇上の脇か傍聴席のすぐそばのどちらかの小さい机に座り、法廷周りの雑事を担当する。たとえば、当事者の出頭の確認、傍聴人の不適当な行為の制止、法廷外との連絡など。公判中に裁判官、弁護士、検察官との間での書類の受渡しなども行なう。

[ 傍聴人 ]  一般の人、報道関係者、被告人関係者、被害者関係者、研究目的の学生、証人として待機している人など。公判中であっても出入りは自由だが、何度も出入りを繰り返すと注意されることもある。メモをとることは許されているが、録音や撮影は禁止されている。

民事事件の場合は、正面に向かって左側が原告席で本人あるいはその代理人としての弁護士、右側が被告席で本人あるいはその代理人としての弁護士が座る。証言台のところにいるのがその日に調べる証人となっている。

訴えられた側を刑事事件では「被告人」と呼ぶが、民事事件では「被告」と呼ぶ。また、刑事事件では弁護する人を「弁護人」と呼ぶが、民事事件では「代理人」と呼ぶ。

法廷侮辱
法廷侮辱
裁判所の権威を傷つける行為。1952年(昭和27年)、当時頻発した法廷における審理の妨害に対処するため、英米法の法廷侮辱罪にならって法廷等の秩序維持に関する法律が制定された。
裁判所または裁判官が法廷または法廷外で事件につき審判その他の手続きをするに際し、その面前その他直接に知ることができる場所で、秩序を維持するため裁判所が命じた事項を行わず、もしくはとった措置に従わず、または暴言・暴行・喧騒その他不穏当な言動で裁判所の職務の執行を妨害し、もしくは裁判の威信を著しく害した者は、20日以下の監置もしくは裁判の3万円以下の科料に処せられる。
法テラス
法テラス
「日本司法支援センター」の通称。「法で社会を明るく照らしたい」「みんながくつろげる陽当たりのよいテラス(Terrace)のような場所にしたい」という思いが込められている。2004年6月に公布された総合法律支援法に基づいて設立された政府全額出資の法人。
法律に関する全般的な情報提供や民亊裁判への扶助(弁護士費用等の貸付)や犯罪被害者への法的支援などを行っている。被疑者国選弁護制度の対象にならない事件の被疑者段階での弁護士費用の援助なども行っている。
法テラス
報道協定制度
報道協定制度

報道機関が取材または報道することによって被害者の生命に危険が及ぶおそれがある誘拐事件が発生した場合、人命尊重の立場から、被害者を発見あるいは保護し、被害者の生命に危険が及ぶおそれがなくなるまでの間、報道各社が相互間で取材または報道を自制する協定を結び、報道機関と警察が相互の信頼と協力の下に運用する制度。

1960年(昭和35年)5月16日、東京都中央区銀座の天地堂カバン店社長の長男の尾関雅樹ちゃん(7歳)が慶応幼稚舎に登校の途中、誘拐され200万円の身代金を要求された。だが、受渡し場所に犯人である歯科医の本山茂久(当時32歳)は現れなかった。その後、本山は新聞で誘拐事件が報じられたこと、さらに、誘拐時と同じ服装をした雅樹ちゃんの写真が載っていたことを知り、雅樹ちゃんを殺害して杉並区の路上に放置して逃亡した事件が発生した。2ヵ月後、本山は逮捕され、裁判で死刑が確定し、1971年(昭和46年)、死刑が執行された。

日本新聞協会は、この雅樹ちゃん誘拐殺人事件を契機として、「身代金目的誘拐事件報道協定制度」を創設した。1970年(昭和45年)、同協会において「誘拐報道の取り扱い方針」が決定された。同年、日本民間放送連盟が、さらに、1980年(昭和55年)には、日本雑誌協会が、それぞれ報道協定制度を確立した。

冒頭陳述
冒頭陳述
刑事裁判の初公判において最初に行う裁判官による冒頭手続きの「人定(じんてい)質問」、検察官による「起訴状朗読」、被告人の発言を保障する「黙秘権の告知」、起訴状通りの罪を認めるのか、それとも争うのかどうかを被告人や弁護人に尋ねる「罪状認否」に続いて、検察官が冒頭陳述を行う。
冒頭陳述では前科や前歴、最終学歴や職歴、結婚歴など、被告人の個人情報を公開した上で、検察官が証拠から組み立てた犯行の筋書きを読み上げる。否認事件では弁護人も冒頭陳述を行う場合があるが、普通は省略される。
冒頭手続き
冒頭手続き

事件にもよるが、起訴からほぼ1ヶ月ほどで刑事裁判が始まる。裁判官が現れ「起立!」「礼!」が済むと、裁判官の開廷宣言に続いて、人定(じんてい)質問が始まる。本籍、住所、氏名、生年月日、職業を被告人にたずね、起訴された本人に間違いないかを確認する。

次に検察官による起訴状朗読がある。起訴状にある公訴(犯罪)事実(犯罪が行なわれた日時、場所、行為の様態、被害者名、被害品などが記載されている)と罰条(罪名と適用法令、条項が記載されている)を読み上げる。口頭による起訴は許されず、この起訴状という書面によらなければならない。起訴状に書かれるのは、被告人にかけられた容疑事実だけ。裁判官に予断を持たせるような書類や物品を添付したり、書類の内容を引用したりすることはできない。これを「起訴状一本主義」という。

起訴状の内容に不明な点があるときは、弁護人から検察官に対して裁判官を通して釈明要求がされることがある。起訴内容に不明な部分があったのではその罪状をどこまで認め、どこまで否定すべきか分からないからだ。

次に裁判官は被告人に対して、「被告人がこの法廷で述べたことはすべて証拠となります。被告人は答えたくないときは答えなくてかまいませんので、よく考えて述べるように」といった黙秘権の告知がなされる。

次に罪状認否に移る。裁判官が起訴状記載の公訴事実に間違いがないかどうかをたずねる。そのほとんどは「認めます」「間違いありません」と答えることになる。裁判官は弁護人にも意見を求めるが、たいていは「被告人の述べた通りです」という答えが返ってくる。

保護観察所
保護観察所

法務省保護局では、矯正施設(刑務所、少年院、婦人補導院等)に収容されている人の仮釈放等に関する事務及び仮釈放になった人、保護観察付き執行猶予になった人、保護観察に付された少年、あるいは、通院治療中や退院後の精神障害者の保護観察に関する事務を行なうほか、恩赦や犯罪予防活動に関する事務を行なっている。このような仕事を更生保護と呼んで、これらの仕事を保護観察所で行なっている。保護観察所は高等裁判所の管轄区域ごとに全国8ヶ所に設置されている地方更生保護委員会と地方裁判所管轄区域ごとに全国50ヶ所に設置されている。

法務省保護局更生保護を支える人々全国の地方保護委員会・保護観察所一覧

保護司
保護司
保護司は保護司法に基づき法務大臣から委嘱された非常勤の国家公務員であり、地域社会から選ばれた社会的信望の厚い方々である。保護司は民間人としての柔軟性と地域の実情に通じているという特性を生かし保護観察官と協働して保護観察に当たるほか、本人が刑事施設や少年院から社会復帰を果たしたとき、スムーズに社会生活を営めるよう帰住先の生活環境の調整や相談を行っている。保護司は全国に約4万9000人いる。
保護司組織(保護司会,保護司会連合会) 保護司はそれぞれに配属された保護区において保護司会に加入し研修、犯罪予防活動、関係機関との連絡調整、広報活動などの組織的な活動を行っている。また、各保護観察所及び地方更生保護委員会に対応して保護司会連合会及び地方保護司連盟があり、さらに、全国を統括する社団法人全国保護司連盟が組織されている。
法務省保護局更生保護を支える人々全国の地方保護委員会・保護観察所一覧
保釈
保釈

刑事訴訟法88条〜98条

保釈とは、刑事裁判の被告人の勾留を停止して拘置所から解放する制度。保釈された被告人は、決められた日程通りに公判へ出頭しなければならないが、それ以外は普通に生活を送ることができる。保釈にあたっては公判に必ず出頭するという保証が必要になる。それが、保釈金と呼ばれる保証金だ。理由なく公判期日に出頭しなければ、保釈金は没収される。

保釈には「必要的保釈」と「裁量的保釈」の2種類がある。「必要的保釈」は「権利保釈」とも呼ばれるもので、法律で定められた条件さえ満たしていれば、被告人は保釈される権利があるということ。

保釈が認められないのは、被告人が重い刑(1年以上の懲役または禁錮)に問われているとき。また、過去に重い罪を犯している前科者や常習者も保釈は認められない。被告人が証拠隠滅をしたり、事件の関係者に偽証するよう根回しをしたりするおそれのある場合も認められない。罪状が軽い初犯であっても、普通は第1回の公判で起訴事実を認めるまでは保釈は認められない。

一方の「裁量的保釈」は、裁判所が職権によって保釈を認めるもの。たとえば、殺人罪で起訴されている被告人は、その罪の重さから「必要的保釈」は認められることはないが、公判が進むにつれて、裁判官が無罪の心証を得ることがある。そういうときは、裁判官の権限で保釈されることがある。

保釈金の額は、被告人の経済状態や家庭環境などによって異なる。逃亡を防ぐのが目的だから、被告人が準備できるギリギリの高額になるように裁判官が設定する。だいたい数百万から数億円といった額になる。保釈金は現金で支払うのが原則だが、あまりに金額が多いときは有価証券で支払ってもかまわないことになっている。現金振込みはできず、裁判所に直接持っていかなければならない。

保釈金は「預かり金」だから、裁判が終わって判決が確定すれば、有罪であっても本人に返却される。返却するまでは雑収入として国庫に入れられる。返却するときは、裁判所の予算から支払う。ただ預かるだけでは無駄だから金融機関で運用することになるが、それで利子がついたとしても、返却のときに、利子つきで返却するわけではなく、最初に払った金額をそのまま返すことになる。

主な保釈金の例・・・

○竹井博友(元地産会長/所得税法違反) 15億円
○末野謙一(元末野興産社長/所得税法違反) 15億円
○カルロス・ゴーン(日産自動車前会長/金融商品取引法違反&その後の会社法違反[特別背任]) 合計15億円(2019年3月の保釈で10億円、再逮捕された後の4月の再保釈で5億円を追納して保釈された。後に海外へ逃亡した問題で東京地裁が15億円を没収する決定を出した)
○村上世彰(元村上ファンド代表/証券取引法違反) 7億円(逮捕後は5億円だったが、1審の実刑判決後は7億円となり、差額の2億円を追納して保釈された)
○堀江貴文(元ライブドア社長/証券取引法違反) 6億円(逮捕後は3億円だったが、1審の実刑判決後は5億円となり、差額の2億円を追納して保釈され、さらに、2審の実刑判決後は6億円となり、差額の1億円追納して保釈された)
○金丸信(元自民党副総裁/所得税法違反) 3億円
○井川意高(元王子製紙会長/特別背任) 3億円
○田中角栄(元総理大臣/収賄) 2億円
○江副浩正(元リクルート会長/贈賄) 2億円
○角川歴彦(KADOKAWA元会長/贈賄)2億円
○籔本雅巳(医療法人錦秀会<きんしゅうかい>前理事長/背任罪) 8000万円
○高橋治之(東京オリンピック・パラリンピック組織委元理事/収賄罪) 8000万円
○田中英寿(日大前理事長/所得税法違反) 6000万円
○井ノ口忠男(日大元理事/背任罪) 4000万円
○小室哲哉(音楽プロジューサー/詐欺) 3000万円
○ガーシー(本名・東谷義和/元参議院議員/常習的に脅迫した罪など) 3000万円
○河井案里(参院議員/公職選挙法違反) 1200万円
○籠池泰典(森友学園前理事長/詐欺) 800万円
○新井浩文(本名・朴慶培[パク・キョンベ]=韓国籍/俳優/強制性交) 750万円(逮捕後は500万円だったが、1審の実刑判決後は750万円になり、差額の250万円を追納して保釈された)
○籠池諄子(籠池泰典の妻/詐欺) 700万円
○ASKA(男性デュオ「CHAGE and ASKA」のASKA/本名・宮崎重明/覚せい剤取締法と麻薬取締法の両法違反) 700万円
○田中聖(元KAT-TUN/覚醒剤取締法違反[使用、所持]) 600万円(4度目の逮捕時)
○柿沢未途(前法務副大臣で衆院議員/公職選挙法違反 ) 600万円
○熊沢栄昭(元農水省事務次官/殺人) 500万円(殺人罪で懲役6年の実刑判決後の保釈は極めて異例)
○酒井法子(女優/覚醒剤取締法違反[使用、所持]) 500万円
○高相祐一(酒井法子の夫で自称・プロサーファー/覚醒剤取締法違反[使用、所持]) 500万円
○清原和博(元プロ野球選手/覚醒剤取締法違反[使用、所持]) 500万円
○沢尻エリカ(女優/麻薬取締法違反[所持]) 500万円
○槇原敬之(シンガー・ソングライター/覚醒剤取締違反[所持]) 500万円
○伊勢谷友介(俳優/大麻取締法違反[所持]) 500万円
○市川猿之助(本名・喜熨斗孝彦/歌舞伎俳優/自殺幇助の罪) 500万円
○押尾学(俳優/麻薬取締法違反[使用]) 400万円
○ピエール瀧(本名・瀧正則/俳優&ミュージシャン/麻薬取締法違反[使用]) 400万円
〇水原一平(銀行詐欺) 2万5000ドル(約380万円)=ロサンゼルスの連邦地裁
○吉澤ひとみ(タレント/自動車運転処罰法違反[過失傷害]と道交法違反) 300万円
○高橋祐也(女優・三田佳子の次男/覚せい剤取締法違反[使用]) 300万円(4度目の逮捕時)
○田口淳之介(元KAT−TUN/大麻取締法違反[所持]) 300万円
○永山絢斗(俳優/大麻取締法違反[所持])300万円
○田口翔(電子計算機使用詐欺) 250万円

ホスピタリズム
ホスピタリズム

Hospitalism 施設症とも言う。幼児期に親から離され、長期間施設や病院に預けられることによって起こる心身の発達障害。精神的側面の特徴としては、知能の発達の遅れや情緒的不安定、社会的不適応傾向が示される。原因は幼児期における母性的養育の欠如にある。

ぼったくり防止条例
ぼったくり防止条例

東京都の「ぼったくり防止条例」の正式名称は性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等の規制に関する条例といい、2000年(平成12年)10月13日に公布、11月1日に施行された。この条例で規制の対象になる営業は、東京都公安委員会が指定する東京都の区域内で次の2つの営業形態。

[ 1 ] 営業所を設けて、当該営業所において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業。
[ 2 ] 営業所を設けて、当該営業所において客の接待をして客に飲食をさせる営業のうち、バー、酒場その他客に酒類を提供して営む営業。

指定地域は、新宿、上野、池袋、渋谷の地区。

2000年(平成12年)12月10日、ぼったくり防止条例の初適用で、新宿区歌舞伎町1丁目の個室マッサージ店「ヌキペロ」の経営者や従業員ら計3人と、豊島区西池袋1丁目の「パブスナック トップイン」の店長ら2人が逮捕された。調べでは、2店の従業員らは10日未明、それぞれ店の近くの路上で男性2人に「若くてかわいい子がいる。1万円以下で遊べる」などと偽って客引きした疑いがあった。実際には、「ヌキペロ」は入場料8000円のほか、5万円以上の料金を請求しようとした。また、「トップイン」は客の懐具合を見て3万〜6万円を支払わせようとしたという。警視庁によると、4地区のぼったくり店は11月以前には約290店だったが、条例施行直前の12月初めには約60店に激減したという。

ポリグラフ検査
ポリグラフ検査

ポリグラフ Polygraph とはギリシャ語で「多くの事柄を描きとめておく」という意味。心脈波(血圧や脈拍)、呼吸、発汗状態を調べるGSR(皮膚電気反応)など本来別々の機械であったものをひとつにして、それぞれの身体的変化を同時に記録できるようにしたもの。「ウソ発見器」とは、警察が捜査の一助として使用する場合の俗称。

実際にポリグラフ検査を行なう場合、被疑者の「承諾」が必要になる。逆にいえば、供述拒否権があるのと同様、ポリグラフ検査に対しても拒否権があるということである。

生理的な変化は個人差が大きいため、その判定結果を信用することはできず、実際にはあまり使われていないのが実状。証拠能力はあっても証明力はきわめて低く、ポリグラフを使うときは、ウソを見抜くためではなく、むしろ犯人が動揺して自白することを狙っていることが多い。

2007年(平成19年)12月から民事上のトラブルにポリグラフを活用する取り組みが大阪府警科学捜査研究所(科捜研)のOBらで組織する「日本法科学鑑定センター」(大阪市北区)で始まった。民間でのポリグラフ導入は全国初の試みで、需要があれば、遺産相続問題で遺言書の真偽の判定を行うほか、社内に出回る誹謗文書の犯人捜しなどにも活用されるとみられる。

ポルノグラフィ
ポルノグラフィ
Pornography 古くは「左手で持って読むもの」と意味深長に定義されたことがある。右手は別の目的に用いる。文章、写真、絵、映画、ビデオ、コミックスなどがあり、性的な刺激や興奮や満足を与えるもの、あるいは「性的な表現物」と定義することもできる。
ポルノグラフィが犯罪や非行を誘発することを証明した科学的なデータはなく、むしろ、ポルノグラフィはそれに接する人に性的な体験を疑似体験させ、満足やカタルシスを与え、現実の性行動を抑制し、性犯罪を減少させると主張する説がある。
この点については、比較文化的なデータがある。日本のように性的表現が比較的自由で街にヌード写真集やアダルト・ビデオ、性愛小説などが氾濫している国では性犯罪、性非行の発生率が低い。一方、キリスト教的な倫理感からそのような情報を青少年から遠ざけているアメリカでは強姦の発生率が日本の40倍もある。また、未成年者の性非行の発生率が世界一高いのは儒教文化圏で性的表現を厳しく抑圧している韓国である。

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