ガー:ブリーディング

ガーは外見上のオスとメスの違いが無いので判断は皆無に近い。外来生物法が施行される前、繁殖狙いの人が「こっちのふっくら体型がメスだよ」と教えてくれたけど太ったオスかもと内心思ってたあのとき。 純粋に信じてなくてごめんなさい。

繁殖期は地域ごとに種が分かれているのでおおよそでしかありませんが、四季の温度変化がある地域では水温が上昇しはじめる頃。雨期・乾期のある地域では5~10月ごろの大雨による河川氾濫に促されます。 繁殖期に入るとメス1匹にオス数匹が集まり追尾して群れを成すため、先頭を泳ぐのがメスそれ以外がオスといった曖昧な性別判断になります。 一般家庭で群れさせるほどの飼育環境は住宅問題がからんでくるし、メスの成熟期間が長いことや多数飼いの必要があることから国内での繁殖例は少なかったようでです。

繁殖から孵化まで

ガーの卵

繁殖期になると1匹のメスに対し数匹のオスが集まります。オス同士はケンカする事なくメスを追尾するように取り囲み寄り添って泳ぎながら一婦多夫の群れを作り上げます。 群れのまま水深1m未満ほどの浅瀬に移動すると、高密度に茂る水草もしくは砂利や岩場・流木などに緑みを帯びた4㎜ほどの強い粘着性のある卵を産み付けます。 この産卵行動は3~9日間に何回か分けて行われます。

ガーの卵

ガーの卵はイクシオトキシンichthyotoxinsという厚いゼラチン状のタンパク質毒素で覆われています。 この毒素は魚が産生する化合物でウナギやアナゴなどウナギ目の血液に含まれる神経毒としても有名で、頭痛・嘔吐・下痢・めまい・血圧降下などの食中毒症状をひきおこします。 実験投与されたマウスが致死的に作用するほど毒性は強く、哺乳類の他にも鳥類やザリガニなどの甲殻類にも作用して死亡率は高くなりますが、ガーの卵を捕食する可能性の高いブルーギルやナマズ類などの魚類には無毒なので、生態学的にどのような意味をもつのか不明とされています。

ガーの卵

産卵から7日~10日後、体長1cmほどの短い吻と尾ひれ上葉部だけ伸びた姿の仔魚が孵化します。 仔魚の吻の先端には粘着性の吸盤があり、流木や水草の裏などに吸着してしばらくその場にとどまります。

ガーの卵は栄養価もカロリーも高く その1つ1つが約50kcalほどになります。イクラなら1つ約1kcal、鶏卵のLサイズの卵黄で約70kcalほどなので、これらと比べても非常に高い事が分かります。 その卵黄嚢を吸収して仔魚はグングン成長します。

約10~13日かけて卵黄嚢の全てを吸収すると、泳ぎ回ってボウフラやミジンコなど動物プランクトンを捕食するようになり、1日に1㎜~4㎜ほど大きくなります。 このように多くの魚類より栄養価の高い卵は孵化したばかりの仔魚でもより多くの栄養が得られるため飢餓耐性に強く、自ら捕食できるようになるまでの間に成長できるガーの仔魚は生存率は高いといわれています。

スポガーの稚魚

やがて小枝や水草に擬態して捕食者から身を守る数本の縦ライン模様や、硬鱗が目視で確認できるようになるので少しだけガーらしい姿になります。

日増しに食欲は旺盛になり成長スピードも加速して、水生昆虫や小型の甲殻類・魚類を捕食しときには自分より小さなガーの仔魚も狙いはじめます。