海風通信 after season...

プレ寝正月




◆第6話「プレ寝正月」の扉絵で、アルファさんが満足気に掲げていたお手製の正月飾りを再現してみました。
 夕凪の世界では、クリスマスとお正月が一緒くたになっているのでしょうか?なんとも不思議なフォルムをしています。それともクリスマスで使用した飾り付けを、アルファさんが再利用しているのかも知れませんね。ともあれ現在世界から根付く馴染みのある風習を、未来世界でもまだ垣間見ることができて、思わずホッとさせられる場面です。
 中央に飾られた果物は、当初アルファさんの好きなミカンであろうと勝手に思い込んでいたのですが、ミカンにしてはやけにまんまるとしています。(第5話「エンドレス町内会」で登場したミカンは、お饅頭のような楕円でしたよね?)これはひょっとしたら、意外にも柚子とかなのでは?と思って調べてみたら、慣習的に正月飾りで使用される果物は「子孫繁栄代々続く」という意味合いから、橙(だいだい)という柑橘類が用いられるということ。実は鏡餅の上に乗っけるのも一般的にはミカンと思われがちですが、本来は枝葉付きを乗っけるというのが正式なようです。なるほど、勉強になりました。

 ということで、橙が出荷されるシーズンである年末を待って実物を入手。たしかにミカンと比べると、明らかにまんまるに近くて枝葉付き。ここで改めて扉絵や作中の該当箇所を見返してみると、まさに橙であることが適当のように思えます。しかも良く見ると、葉っぱまで描き込んである!芦奈野センセイは、ここまで見越して作画したのでしょうか?漫画家さんの観察力と蘊蓄の深さには、まったく感心させられます。
 ところが、ここで問題発生!橙は外観的に再現性が高いのですが、いかんせんサイズがデカいのですよ。そもそもが比較的大きくて立派な正月飾りに使用されることが多いということから、橙も大きいものばかりで、小っちゃいのはあちこち探しても取り扱いがないのです…。
 計画の頓挫に焦りを感じつつ、それでもダメもとでフラっと立ち寄ったスーパーで見つけたのが、「葉付き小みかん」というもの。橙とともに仲良く陳列してあり、こちらも小さめの正月飾りとして需要があるということです。サイズも理想にピッタリ!形もまんまるに近いので、今回は急遽、こちらを採用することに決めました。葉っぱの付き方も、むしろこちらのほうが原作画に近い感じでグッドです。
 こうして企画を思い付いてから、ほぼ一年がかりで素材も集まり、ようやく完成へ!12月28日の飾り付けにギリギリ間に合うことができました。

 それでは皆様も、穏やかで良いお年をお迎えください。
▲これが由緒正しき風習での橙(だいだい)です。 ▲小みかん(左)と橙(右)で、こんなにも大きさが違う!
▲ミカンの葉っぱと角度に注目!ここまでこだわりました。 ▲カフェ・アルファの看板とともに。
(2024年12月28日撮影)