病名と対策

さくいん
穴あき病
症 状数枚ほどのウロコが白濁や隆起 または内出血で発赤している。重症化するとウロコが脱落し真皮や筋肉が露出
原 因淡水の常在菌として分布する非運動性のエロモナス サルモニシダAeromonas salmonicida
参照:エロモナス病
対 策水温・水質悪化・飼育環境などの体調不良、常温飼育では温度が日によって変化する春秋に発症しやすい。 A.サルモニシダの発育適温 20~25℃。2次感染を防止し体調を整えることを考慮して水温を上げる。薬浴には鑑賞魚用パラザンD、エルバージュエース、グリーンFゴールドリキッドで処置。 パラザンD、エルバージュに耐性をもつ「新穴あき病」が鯉に確認されている。
イカリムシ
症 状体表面やエラに細く短い糸状のイカリムシが突き刺さる。やがて周辺の充血・炎症を起こす。
原 因温水生の淡水寄生 カイアシ属の甲殻類 レルネアLernaea cyprinacea
頭部の寄生部分が船のイカリに似ていることから この名がついた。 イカリムシ幼生はミジンコによく似た姿で水中浮遊し、脱皮を4回ほど繰返しながら宿主へたどりつき、成虫になるまで宿主の体表面を自由に動き回る。交尾後はオスだけ死滅し、メスは頭部を突き刺し寄生を始めるため発見されるのはメス成虫。 メス成虫サイズは1㎝ほど 寿命は1.5~2ヶ月。越冬は寄生したまま過ごし約6ヶ月の寿命になる。胎生で1度に約300個の抱卵をし 一生では13~15回抱卵期間が訪れる。孵化温度12~36℃ 繁殖最適温度14~32℃
対 策新しくサカナを増やすときのボディチェック、運搬時の水は極力水槽に入れない。 かなりの高確率で増殖するが、幼生は魚体へ寄生できないと死滅するのでトリクロルホンで薬浴。幼生駆除の目的なので成虫には無効。寄生だけでは死亡することはないが、エロモナス菌感染などによる2次被害への被害が起こりやすい。 成虫はピンセットなどでイカリムシ頭部まで丁寧に抜き取ったあと、マーキュロクロムなどの消毒薬、細菌性に効果がある薬を塗布。
ウーディニウム病
別 名コショウ病、サビ病
症 状コショウやサビついた感じの細かいものが体表面に付着。体を底砂などに擦りつけて 痒がるような動作をする
原 因原生動物の繊毛虫 ウーディニウムOodinium pillularis
水質悪化・水温水質の急変・濾過バクテリアの分解が追い付かない場合などに発生。一時的に真皮やエラに鞭毛で付着した後 一端から糸足を出し組織内に侵入して寄生。組織増生するため宿主は出血・壊死・崩壊を伴い、エラの寄生では呼吸できず急死の危険がある。 ウーディニウムの幼生は水中浮遊して宿主を探し 48時間以内に寄生できない場合には死滅する。寄生期に入るとコショウのようなものが目視できるようになり、成熟すると繁殖分裂をして水中へ放出される。
対 策発見は容易。病原進行の速さ 強い伝染力があるため、ボディチェックや水換えなど普段からの水槽管理で防止できる。 薬浴効果を期待できるのは幼生期のみで、水温を上げてライフサイクルを早めて駆除する。水温25~30℃以上での塩水浴に効果が見られる。重症の場合にはメチレンブルー、グリーンF、マラカイトグリーンによる薬浴で処置。 幼生期の生存時間、寄生期、繁殖期などを考慮して7~10日の治療時間が必要。
ウオジラミ
症 状参照:チョウ
円形の5㎜前後のものが付着。体を底砂などに擦りつけて 痒がるような動作。
うきぶくろ病
症 状参照:転覆病参照
おなかを上にひっくり返り、水面に浮上 もしくは水底に沈んだ状態
エピスチリス症
別 名エピスティリス、ツリガネムシ
症 状ウロコに白点が生じる。次第に立体的になり白斑部のウロコが立鱗・ウロコの欠損、充血・炎症を起こす。綿状のものが体表面に付着。
原 因原生動物の繊毛虫 エピスチリスEpistylis sp.の着生。
初期症状は白点病に、進行後はミズカビ病に類似。個体は50~150㎛ほどの釣鐘状。繊毛で遊泳し水中細菌を捕食する。宿主に着生後は樹枝に分岐して増殖し群生体を形成するが、移動ができなくなる。ミジンコにも着生する。 群生体は始めに着生したエピスチリスの子孫。
活性汚泥が良好な12℃以上で発生、20℃以上で多発。低水温になると魚体から離れ自由遊泳体シストを作る。シスト後の患部は収縮するが、水温が上がり繁殖に適した環境になると再発する。
対 策エピスチリスの適温が低く水温対応は皆無。塩水浴、マカライトグリーン、メチレンブルーなどの薬浴。2次的被害防止のため傷ついた患部に抗菌剤を使用。 再発率が高く、発生後は水槽のリセット、念のため消毒。新しく追加するサカナのボディチェック。特にワイルド個体には注意。
エラ腐れ病
症 状参照:カラムナリス病
エラ周辺に2㎜程度の淡黄色の点が付着。やがて点は淡黄色の粘液物になり赤黒く溶けて腐敗した状態に。エラ呼吸が阻害され、より多く呼吸できるようクチと鰓蓋の開閉速度が速まる。水面での鼻上げ など。
エロモナス病
別 名穴あき病、赤班病、立鱗病、ポップアイ、松かさ病
症 状体表面が血色の悪いガサガサ状態、皮下出血による赤斑、ウロコ・ヒレの充血、逆立つウロコ、眼球突出、鼻孔が赤くなる、腹部の膨満、肛門の充血 など
原 因淡水系の常在菌で世界中に分布する真正細菌 エロモナス属Aeromonus
代表的なエロモナス菌は 鞭毛で動く運動性のエロモナス ハイドロフィラAeromonas hydrophila、鞭毛を持ない非運動性のエロモナス サルモニシダAeromonas salmonicida

ハイドロフィラサルモニシダ
発育可能温度5~40℃15℃
適温27~28℃20~25℃
発育可能pH6.0~11.06.8~8.0
至適pH7.2~7.47.2~7.4
発育可能塩分0~4%0~4%
菌サイズ1㎛前後1~2㎛前後
エロモナスはヒトも感染する病原菌でもあり、ハイドロフィラはソブリアAeromonas sobriaと並び厚生労働省指定の食中毒菌。 発生は環境汚染と増殖が活発になる夏期に多く、淡水系ではあるが沿岸海域にも分布するためエビ・カキ・海産魚介類からの発症例もある。
また、ハイドロフィラは「ヒト喰いバクテリア」として総称するうちの一つで、壊死性筋膜炎を発症する。
対 策エロモナスそのものは強い病原性は持っていないが、水温・水質悪化・飼育環境などによる体調不良で発症する。発症後の死亡率は高い。 数種の菌が複合して症状が複雑化する事もあるので水温は通常よりやや高めに設定、抗菌剤による薬浴を行う。原因がハイドロフィラなのかサルモニシダなのかにより若干の薬浴剤が異なる。 食欲がある場合には鑑賞魚用パラザン、食欲のない場合には鑑賞魚用パラザンD・グリーンFゴールド。発育可能塩分濃度より高めの 薬浴剤+塩5%(5g/L)にすると効果的らしい。
尾腐れ病
症 状参照:カラムナリス病参照
ヒレに2㎜程度の淡黄色の点が付着。点は淡黄色の粘液物になり、やがて赤黒く溶けて腐敗し、千切れて扇状の軟条骨だけ残る。最終的には軟条骨も分解されヒレの全てが欠ける。
さくいん