気功訓練法

このマニュアルは陳式太極拳の大家である馮志強老師の気功システムの抜粋です。北京中医学院で気功医師であった中国現代気功の父と言われている胡耀貞先生の直系のシステムです。この気功法は中医理論に彩られています。
私は「気」という存在を認識しなければ、針灸はただの対症療法的な物理療法になってしまうと考えます。多くの方にこのシステムを実践していただいて健康増進に役立てて頂きたいと思います。

【教学内容】
1.降気洗臓功
2.三元吐納功

【教学要求】
無極の意義と作用を理解すること
気を降下させて、内臓を洗い流すようなイメージを持つ事と
全身を緩める作用を理解すること
三つの丹田の位置と作用を体得すること
三元吐納(呼吸)の意義と作用を体得すること
功法を掌握すること

1.降気洗臓功

降気洗臓功は三焦を整え、濁気を取り去り、清気を体内にとどめ、五臓を補い、気を緩め、全身を緩める功法である。

【動 作】
(無極站トウ) 両脚が肩の幅で、平行で前に向き、体が真っ直ぐ立つ、全身を緩める。
(両手上挙)両手で上腕を導いて、体側からゆっくり頭頂の上方まで挙げる。
(両手下按)上記の動作を止めないで、両手は顔の前、胸の前、腹の前を経て下へ按する(押す)このように昇降を繰り返し、9回行なった後、収功する。

【意 念】
①身心虚静 三性帰一の方法を用いて体内にある丹田を想い、丹田を視、丹田の発する音を聞いていれば、徐々に心身が静寂に到達する。そうすれば空虚になり、物質なものも自我も全てなくなりやがて無極の境界に入る。その静寂の中で静かにしばらく佇む。(三性とは、目の作用である見性、耳の作用である霊性、心は勇気の性であり、その三性が一つに合わさったものが真性である)

②引気上行(意念で気を引き上げて上行させる)
眼の神性と心による意念の導きで、気を引き上げて両手を徐々に上げていく。

③降気洗臓(気を降ろして内臓を洗う)
意念と気を止めずに、大自然の混元の気を頭頂部の性宮から体内に引き込み、上から下へ徐々に下降させ、両足に沿って一直線に両足の湧泉まで降ろす。

【要 点】
無極站トウのときに、うなじを緩め頭が天に連なるように伸ばして、下顎は内に収めるように引き、口を閉じて歯をかみ合わせて、胸部を軽やかに緩めて腹部に充実感を与える。腰を緩め、臀部を軽く引き上げ背骨を真っ直ぐに保ち肩を緩め、肘を落とし更に腕を緩め、指を伸ばす、股は半円を描くように緩め、膝と脚は相対し全身を緩め、全身の中心線が片寄らないようにし、心身を虚にして静寂に入り、呼吸を忘れる。
動作は伸ばし広げ、緩め、関節は糸を紡ぐように綿々と緩める。ただ、注意しなくてはならないのは心の意念だけを用いるのであって、力を用いるのではない。
身体の姿勢は心の神性と意念の上昇に従って徐々に伸展し、心神意念の下降に従って徐々に下がり、上下は相従い、全身は全て調和する。
気を降ろす路線は、体内の路線を中心として、体表の路線を従とする。両手で気を誘導して体内と体表を合一させる。綿々と途切れず、段々と気を降ろし、同時に体内と体表が一環して協調し、気を緩め、身体を緩め、一直線に足の裏の湧泉に緩めて降ろす。呼吸は自然に行なう。

【提 示】
気を降ろす時に、意念で大自然の混元の気と体内の混元の気と、二つが融合して一つになるように思う。一般に、雨露が上から下に降り注ぎ、滴るようにイメージして、水蒸気が体表から体内に入り、全身を洗い流すようにイメージして行う。体内を透明に通過するようになり、それが極まると、伸びやかで奏でるようにな心地よい感覚になる。もし仮にどこかの内臓や器官に病気があれば、気を降ろすときに、意念を該当部位にしばらく気をとどめ、その後で再び、意念で気を引っ張り、足先と手の先から、濁気を排出する。

【作 用】
① 内臓を清く洗い流し、経路を伸びやかに通し、骨を洗い、骨髄を変化させ濁気を出して清気を取り入れ、五臓を養い、六腑を安らかにし、三焦を調節して、根本を固めて元気を培養する。

② 気を緩め、全身の気を緩め、筋肉を伸ばし、骨を伸ばし動かす。筋肉と骨を分かち、骨と関節を緩めて開き、皮膚を緩める。

③ 体を緩めて、"沈墜ケイ゛を培養する〝と太極十三勢の〝練習を兼ねている。

④ もし唾液が、口の中に溢れれば、気を降ろすにしたがって3回にわけ、飲み下しても良い。意念で丹田の中に送り込むようにし、内臓と全身を潤し、真元を培養することが可能である。

● 降気収功法
降気収功法の外形動作と、降気洗臓功とは似ているが、この意味は違う。眼の心包、心の意念によって、気を引っ張り、中丹田まで下降させるが、湧泉までは到達させない。降気収功は毎回3回行なう。

2.三元吐納功

三元吐納功は先天の元神・元気・元精を練習するものであり、先天の混元の気を培養する功法である。三元とは混元本体の中の霊的な作用のことである。第一に先天の元神を指す、第二に先天の元気を指す、第三に先天の元精を指す、これらは一体になっているが実体は三つである。そしてその三つの元神・元気・元精が一つになり、混元に戻る。

三元は、おのおの人体の三丹田内に分かれて所蔵されており、上丹田は先天の元神の竅であり「上元竅と呼ばれる。その位置は、眉の間の深い所にある祖竅の内にある。中丹田は先天の元気の竅であり「中元竅」と呼ばれる。その位置は臍の神闕穴の深い所にある。下丹田は先天の元精の竅であり「上元竅」と呼ばれる。その位置は性器と肛門の間にある会陰穴の深い所にある。
三元吐納功は、上元・中元・下元に分けて、順次修練する。そして最後に三つを中丹田に到達させ、三元合一に戻す。

【1】上元吐納功
【動 作】 
1.提手上抱(手を上に挙げて、抱え込むようにする)
両手を顔の前に上げて取り囲むようにし、指先を合わせ手のひらは両側に向ける。

2.先収後放(先に収め、後で放つ)
両手の先を内に向け、」そっと合わせて収め、再び段々と外に向けて放ちもとに戻す。

※この収放を9回反復させる。
( 意 念 )
1.静守上丹(上丹田を静かに守る)
三性帰一の方法を用いて、少しの間静かに上丹田を守る。
2.先納後吐(先に収め後で吐く)
眼の神性と心の意念で気をひき、祖竅を極めて、軽やかに内側に向けて吸い納め、その後自然に外側へと放松し吐き出す。

( 要 点 )
1.眼神心意の法であり、吐納が主であり両手は導引の補助にすぎない。心と体を調和させ緩やかに練綿を行なう。
2.意念の活動はあるようであり、ないようでもある。つかず離れず充実しているようでも虚しいようでもあり、意識を固着せず、離れてもならない。祖竅の感覚を追求してはならない。
3.口と鼻の呼吸を忘れ、自然にまかせる

( 提 示 )
意念で見(開眼でも閉眼でも同じように意念で見る必要がある)意念で思い、意念で聞くことを通しての収縮と開放によって段々精神も身体も空虚で静かな体験をする。物質もなく、ただ一つの本来的な精神が見え隠れするだけである。(心を空虚にすれば霊的が高まり、霊的が高まれば本来的な精神に通じるようになり、本来的な精神に通じれば量的な変化がおこり、量的な変化が起これば、質的な変化も起こる。質的な変化が起こればもとの形〈身体〉が失くなってしまう、身体が空になれば霞のように心も身体も漂うだけになる)このような感覚が訪れる。

( 作 用 )
1.主に先天の元神を練り、同時に日常の思い患う心を静め定めさせる。
2.本来的な精神を集め、収める練習を兼ねている。
3.太極十三勢の棚ケイと中定功、混元功の練習を兼ねている。

【2】中元吐納功
( 動 作 )
1.合手前抱(手を前に抱くように合わせる)
無極式から連続して両手を自然に下に移し、腹の前を取り囲むようにする。

2.先収後放(先に収め後で放つ)
両手を同時に先を内側に向け緩々と納めて、再び緩々と外側に向け緩める。
このように繰り返し、九回収めたり、放したりする。

( 意 念 )
1.静収中丹(中丹田を静かに守る)
三性帰一を用いて中丹田を少しの間、静かに守る。

2.先納後吐(先に納め、後で吐く)
眼神心意によって臍をきわめて軽く緩やかに内側に向けて吸い収めるようにし、腰の命門まで真っすぐに吸う、これを納と呼ぶ。また緩々と自然に緩めさせる、これを吐と呼ぶ。              

( 要 点 )
眼の神性と心の意念の修法と吐納を中心とする。両手は気を引き出す補助に過ぎない。心と身体を一つに合わせてゆったりと緩やかに連綿と行なう。
内へ向かって吸い収めることは意識的な導引であり、外へ向かって鼓くことは自然に緩み放つ。意念上は吸い納めには、命門の後丹田まで到達させる必要がある。
故意に腹を膨らませてはならない。形式的な腹式呼吸を追求してはならない。
口鼻の呼吸を忘れ、空気が存在しないことを意識する。

( 提 示 )
丹田を把握し、内功を練れば、阿哈(あうん)の二気の巧妙さは無限である。阿哈の二気は丹田内の先天の混元であり、自然な一呼一吸であり、これは先天の混元の気が発動したしるしである。それゆえ丹竅の内吸は意識的なものであり、緩め吐くときは無意識的なものである。振り子の原理同様に、まず手を一度推せば以後自然にまかせる。練功が一定のレベルに達すると自然に発動する。

( 作 用 )
主に先天の元気を練り、同時に呼吸の気を自然調和さしめる。先天の混元の気を培養し、丹田に気が満ちると自ずから充実する。
神と気を丹田で練り合わせる、練神の作用である。
気は力の根本である。内気の充足すなわち、内面の力が自然に厚みを増し逞しくなることであり功力が自然に増強する。
前後に吐納すれば任督二脈が流れ通じ、気が経路を通り、全身を流れる。
命門の腎気を強壮にし、精を強くして気に転化する。
太極十三勢の棚ケイ、中定功と混元功を培養する。


【3】下元吐納功

( 動 作 )
1.両手下抱(両手を下で抱える)
上述した形に続き、両手を下に移し腹部の恥骨の前で抱え込む、手のひらは上に向ける。

2.先提後放(先に持ち上げ後で放つ)
両手を同時に上に向け、緩々と持ち上げ収める。その後緩々と下に向け松放する。
これを9回反復する。

( 意 念 )
1.静守下丹(静かに下丹田を守る)
三性帰一法を用い、少しの間下丹田を静かに守る。

2.先納後吐(先に納め、後で吐く)
眼神心意で会陰を引きつけ、きわめて軽く緩やかに上へと吸い納め、一直線に中丹田に到らせる。これを納と呼ぶ。再び緩々と自然に緩めさせ、会陰・下丹田に至る。これを吐と呼ぶ。

( 要 点 )
1.眼神心意の提放と吐納を中心とし、両手は導引の補助である。心と身体を一つに合わせ、身体の上 下は相従う。
2.吸い納める時は、会陰部にある下丹田から吸い納め中丹田に到り、緩め呼する時は、中丹田から松 放させ会陰部にある下丹田に到る。
3.会陰で内吸する時は同時に微かに意念を用いて肛門を引き上げて尾閭も引き上げる。
4.口と鼻の呼吸を忘れ、自然に任せる。

( 提 示 )
意念の上での感覚としては、下丹田と中丹田は互いに連系している。下丹田の一宿一伸することを心で想い心のうちで下丹田の一提一放を視、心のうちで下丹田の一納一吐を聴く。しばらくして次第に下丹田が跳ね動き、伸縮し熱く膨らみ充実し、膀胱がスープを煮ているかのような体験をする。先天の元精が気と化して上にあがり、陽気が立ち昇る内景である。

( 作 用 )
1.主に先天の元精を練り、同時に交感の精を自ずから漏らさないようにする。先天の混元の気を培養する。
2.更に精液が生産されると勃起現象を起こすのが常である。これを「子の刻(pm11:00~Am1:00) には陽が生まれる」といったことの反映であり、精を練り気に変化させるのに有利である。
3.任督両脈を通じさせるのを助ける。(会陰は任督両脈の交わるところ)
4.太極十三勢の棚ケイ、按ケイ、中定功、混元功を培養する。

◎三元の合一
三元吐納功の練習を完遂させるには、最後に中丹田に到るよう気を回すことが大切である。上丹田の先天の元神を中丹田に向け納める。下丹田の先天の元精を中丹田に向け収める。三元合一はこのようなものであり混じり融け、相抱き、少しの間静かに守り、功を収め結束させる。

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