メイド・イン・ジャパンの新しい治療法

「チクチク療法」は、その名の通りチクチクッとした刺激を与えて病気を治す治療法です。脳外科医であった私が、のちほど紹介する福田―安保理論にヒントを得て生み出した、西洋医学の対症療法と異なる、しかも、東洋医学の鍼治療とも違うメイド・イン・ジャパンの新しい治療体系です。


約11年前に私は、「無血刺絡療法」という名で、痛圧刺激(チクチク刺激)を与えて病気を治す治療法を始めました。詳しい話は後でご紹介しますが、福田―安保理論でいう「嫌なもの反射」を利用して副交感反応を導き出す療法です。
この療法はその名の通り、チクチクするといっても注射針を使う刺絡と違って血を出さない、つまり体内に異物を刺入しない治療法です。
刺激する場所についても、西洋医学の神経解剖と東洋医学の経絡の考えをドッキングさせた独自の「デルマトーム理論」にもとづき、治療ポイントを探り当てたものです。最初は私自身の体を実験台に使い、チクチク刺激効果を確かめ、その体験をもとに、約11年間、この療法のやり方を進化させてきました。


私がチクチク治療の効果を確認できた疾患は、古典型片頭痛、そして頸椎ヘルニヤによる痛み、湿疹、こむら返り、腰痛、痺れ、排便の補助治療、ヤケド、虫歯……など、多岐にわたります。これらの症状のいくつかについては、のちほど詳しく述べます。

家庭療法としての「自己チク療法」

このようなチクチク刺激によってクリニックの患者さんを治療しているうちに、私は「患者さんの立場からすれば、自分自身の辛い症状をご自分でチクチク刺激して治せたらどれほどいいだろうなあ」と思うようになりました。そうなれば、患者さんにとって、どれほどの救いになるでしょうか。医療費の削減にもつながります。


養生法の基本は家庭療法です。それは医療機関ではできない治療を自らが実践して行い、かつ、効果の上がるものでなくてはなりません。
私のクリニックではさまざまな家庭療法を駆使して、医療現場ではできない養生法を伝授しています。クリニックにおける治療手技だけでは効果の持続時間に限界があるからです。
そういった点で、私が日常指導している家庭療法は「身近な道具を使い、しかもどこでもできる」ということを基本的なコンセプトにしています。


そこで進化した無血刺絡療法をより身近に感じていただけるようにチクチク療法とネーミングし、また患者さんがご自身で行うチクチク療法を「自己チク療法」と呼ぶことにしました。
すでに私のクリニックでは自己チク療法を実践されている患者さんがたくさんいらっしゃいます。
ある月の当クリニックの調査では通院中の約55%以上の人が経験していました。毎日実践している人もいます。


最も長い経歴の人は8年以上にもなります。この人は、何十年もの間、下腿と足のしびれの感覚を失っていましたが、自己チク療法を続け、最近になり足裏の感覚が回復し、米粒を踏んでも痛みがわかるようになりました。これから本書では、ご家庭で実践していただければ、必ずやその効果をその場で実感できるものばかりだと自負している家庭療法を紹介していきます。
最初にチクチク療法(自己チク療法)について詳しく説明し、次いで、それとあわせて実践すればさらに効果が高まる温熱療法(これも「嫌なもの反射」を利用する点で、チクチク療法と相通じる治療法です)、運動療法、顔もみ療法と指根っこ回しの順番に紹介します。そして、最後の章では、当クリニックにおける食事療法の基本についても触れてみます。

「爪チク療法」で爪の井穴を刺激

まず最初のステップは、両手指の爪の生え際にある「井穴」を刺激する自己チク療法です。「爪もみ」という健康法をご存知でしたら、それをチクチク刺激に変えるだけと考えれば、わかりやすいと思います。
これをすることで手が温かくなる、神経性の胃痛がよくなる、レイノー症状が改善するなどといった即効的な副交感反応が見られることがあります。シェーグレン症候群では唾液が出る現象が見られた患者さんもありました。
皆さんが初めてチクチク療法に取り組むときは、この「爪チク療法」から始めることになると思います。ですから、この爪チクをチクチク療法の入り口、ウオーミングアップと考えて、練習する場所に利用するといいでしょう。

チクチク刺激の基本的なやり方(1)

■身近な道具でOK

身近な道具を使います。ごく狭い範囲を細かくチクチクする場合は爪楊枝1 本で行う、といった工夫をするとなおよいでしょう。


■刺し跡が残るくらい強く刺す

「痛み刺激」がチクチク療法のポイントです。最初はかなり「イタイッ」と感じる強さです。しかし、血が出たり、皮膚が破れるほどは刺しません。

やりながらチクチクと刺す刺激の強さなども覚えましょう。最初は「イタッ」と感じますが、その「痛み刺激」こそがチクチク療法のポイントなのです。
このさじ加減を爪チク療法で覚えて、次の頭や顔のチクチク療法のステップへ進むといいでしょう。きっと楽しく続けられると思います。

顔のチクチクポイントは、目・鼻・口の3つのパートから成っています。顔は脳幹とつながっており、その脳幹は自律神経中枢そのものなのです。
「顔もみ療法」は、この目・鼻・口へのチクチク刺激を家庭療法用にさらに簡単にしようということで考案したものです。あまり最初から理屈ばかりでは退屈でしょうから、なぜこの部位への刺激が有効かということについての詳細は、「顔もみ療法」の項をお読みいただくことにして、早速チクチク療法のやり方の説明に移りましょう。

①目パート

名前のごとく目の周辺を刺激するポイントです。目の疾患全てに対応できます。目に関わる神経のうち視神経、動眼神経、滑車神経などは中脳を経由しますし、中脳にはパーキンソン病の主病変である黒質細胞がありますので、鼻パートと並んでパーキンソン病には必須治療パートとなります。

②鼻パート

鼻疾患全てに対応します。鼻の周囲にはいくつかのツボがありますが、それらを含めて鼻を取り巻くポイントを大雑把にチクチクすればいいでしょう。鼻の尖端は顔のデルマトームからいうと脳幹の三叉神経核の最上方(大脳側)にあり、黒質細胞にもっとも接近する部位となります。ですからこの部位はパーキンソン病の治療ポイントの中でも、もっとも大事なポイントといえるでしょう。

③口パート

くちびる及び口周囲それに口腔内全ての病変を対象にします。例えば、口唇ヘルペス(この場合はヘルペス周囲をチクチクします)、歯周病である歯肉炎、虫歯、知覚過敏などやアフタ、口腔内腫瘤などです。


毎日2分間の習慣にする

 いかがでしょうか? ここまでの爪・頭・顔の3ステップが基本のチクチク療法です。手順を覚えるまでは、少し時間がかかるかもしれませんが、習慣化して慣れてくれば一連のチクチク刺激を1分半から2分でできるようになります。
これらのチクチクポイントは、チクチクした部位そのものに効果があるだけでなく、離れた場所にある疾患にも効果があります。その理由には、尖った道具で痛圧刺激を与えるという「手法」による効果があるとともに、私独自の「デルマトーム理論」にもとづく治療ポイント、つまり刺す「場所」による効果があるのです。

顔のチクチク療法

目パート・鼻パート・口パートの順にチクチク刺激を加えます。全体で40 〜50 か所(回)を目安にし、回数が多くならないよう気をつけましょう。

■目のチクチクポイント

瞳孔の上下のライン上を細かくチクチクします。上側はまゆ毛の中央から上へ1cm、下側は下目袋から鼻孔のラインまでを刺します。

■鼻のチクチクポイント

鼻筋のセンターライン、また、鼻の周囲を取り巻くようにチクチクします。

■口のチクチクポイント

くちびるの周りをチクチクします。くちびるから0.5 〜1cm 離れたところが、治療ポイントです。


自己チク療法に使うのはごく身近な道具です。真っ先に頭に浮かぶのは爪楊枝。過去にも爪楊枝療法というのがありました。ほかの道具として、シャープペンシル、インクのなくなったボールペンなど、尖端がとがった道具なら何でも使えます。しかし、間違っても出血させたり、皮膚を傷つけたりするような刺し方はしないでください。あくまで「ソフトに瞬時に、しかし痛みは感じるように」です。あとで詳しく説明しますが、このチクチク療法に必要なことは痛み刺激を与えることです。痛み刺激によって副交感反応を呼び起こすのが肝心なのです。東洋医学の刺絡はあえて血を出す(瀉血といいます)ように体内に針を刺し入れますが、チクチク療法(無血刺絡)は血を出さないように刺しますので、その点では危険はありません。

前向き、かつ気楽な気持ちで柔軟に実践することが大事

チクチク療法は、前向きな気持ち、つまり、治すという気持ちを持っているかどうかで、効果が左右されます。
疑ったり、不安がったり、嫌だなと思ったりしては副交感反応が誘導されません。痛いばかりが増幅されます。
特に、薬を服用している人は、チクチク刺激をしても反応が乏しくなりがちです。そこで不安を持ってもいけませんが、かといって、効果が表れるまでとむきになって、過剰な刺激から入るのは戒めてください。
前向きで、かつ、気楽な気分で少しずつ始めることです。最初から5分も10分もと、たくさんすることだけは避けてください。繰り返しますが、不都合と感じたらすぐに中止してください。ちなみに私は、今までに全身くまなくチクチクしてきました。していない部位は、唯一、肛門だけかもしれません。歯肉へも歯間フロスでツンツンしています。

毎日2分で健康になる基本のチクチク療法

爪→頭→顔の3ステップ刺激で健康の維持・改善

私のクリニックでの施術やチクチク療法(無血刺絡療法)の講習会で、ほとんど必ず行っている基本的なチクチク療法があります。
それは爪→頭→顔の3ステップを1セットとして行うチクチク刺激です。習慣的に毎日行うチクチク療法として、この3ステップを実践すれば、病気の改善や健康維持に役立つことは間違いありません。今まで当クリニックの患者さんが日常的に行ってきて、その効果を日々感じておられるからです。


副交感反応が活発になり、血流も促進

爪・頭・顔の3ステップのチクチク療法を行うと、よく眠れる、体が軽くなる、動きやすくなる、目がはっきりする、体温が上がってくるなどといった感想を聞くことがあります。
このとき患者さんの体内では副交感反応が活発化し血流が改善(循環が好転)し、ホルモンバランスがよくなり、代謝が亢進し、その結果、免疫力が高まり、病気に対する抵抗力が増しているのです。それは多くの患者さんの改善効果から見て取れます。具体的には高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病から始まって、諸種の難病疾患の改善に結びついているからです。
神経難病であるパーキンソン病や関節リウマチ、それに膠原病、ガンなど、多岐に渡る疾病で改善した結果を得ています。

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