長田裕先生パーキンソン治療症例

1.超早期例のパーキンソン病症例。

【患者1】
タナカM 74歳女性
【主訴】
1.膝が曲がってくる。
【既往歴】
7年前に乳がんを患い一昨年再発した。パンを朝食に食べている(「乳がん患者の8割は朝、パンを食べている」幕内秀夫著という本が在り)。乳がん治療薬(タモキシフェン)、降圧剤、高脂血症降下薬、プロトンポンプ阻害薬服用中。
【現病歴】
平成29年2月7日初診。
1.ここ1-2週間前から歩くと少し前かがみで膝が曲がってくるという。良く聞くと1年位前からあったらしい。
小股/すり足歩行があり、動作が鈍い。右手の振戦あり字が書きにくくなってきた。突進歩行ちょっとあり。
出始め第一歩出にくい、手の振り欠如、回れ右しにくい、すくみ等あり。
【現症】
身長は146.8cm、57.9kgBMI26.9の肥満。仮面用顔貌と歯車様固縮が両側にあり。
肩こりは無い。後方転倒現象なしもパーキンソン病のヤールⅢ度と診断した。血圧134/90、96/m
【診断的治療】
パーキンソン病のルーチンチクチクは顔と頭、それに首・肩・腰・仙骨パートである。
チクチク直後に仮面用顔貌が改善し笑顔が出た。歩行も普通歩きになり、すり足なく、動作ノロノロもなくなった。腕の振りも出た。これでパーキンソン病であると診断確定した。
【経過】
再診2月14日(7日後)、朝起床時、動きが良くなり、軽くなったという。また、すり足・小股歩行が楽になった。初診時に膝が痛い、という訴えがあったがSaNニューロパチー の治療を行ったところ再診時には10→2~3となっていた。目方が1.5㎏減っており食養が効いた。初診時にすべての薬を断薬して135/87、68/mと改善していた。
21日第3診目。字が書けるようになった。振るえが無い!すり足・小股歩行改善中。
3月21日第4診目、一か月ぶりに来院。パーキンソン病らしくなくなっていた。
4月5日第5診目、初診時に調べたヤールステージⅢ症状が消えたどころかⅠ度の症状まで消えた、または改善した。この時点でヤールゼロ度と診断した。
4月19日第6診目、完全にスタスタ歩きになっており、不自由さは無い、と述べた。
5月19日第7診目も変わらず。このように一か月も間隔を空けて不変なのは、緩解した可能性がある(チクチク療法の臨床、100pの「症状安定型治癒である。)。
【まとめ】
超早期発症のパーキンソン病である。発症後2年以内の症例ならば、チクチク療法でヤールゼロになる可能性がある、と述べてきた。ヤールゼロになった症例はこの例で10例目と記憶している。

2.ヤールゼロになったと思われるパーキンソン病例

【患者】
ヤマサキK 79歳女性
【主訴】
① 脊椎骨粗しょう症 ② 右腰痛 ③ 肩こり・肩甲間部のこり ④ 左手振戦
【現病歴】
平成29年2月10日初診
整形外科病院に1年来骨粗鬆症と腰痛で通院中だった。約2年前くらいから左手が震えてきている、というので当院通院中の患者さんの紹介で来院した。
【現症】
身長138.cm/47.6kg、約3cmほど低下していた。また猫背で姿勢が前かがみだった。振戦は、何かしようとするときや何かを持っているときに震えるという。この時は老人性振戦ではないか、と推察した。
腰痛は脊柱管狭窄症によくでる両側骨盤上部に訴えがあったが早歩きと反り返り可能、間欠性跛行無かった。肩こりは僧帽筋緊張が認められなかった。
【診断的治療】
それぞれに於いて診断的治療を加えた。
まず①においては背・肝胃パートとチェストパートで背が伸びた。②は腰パートをチクチクしたが横ばい、③は首・肩・背パートをチクチクし楽になった。④については 頭パートのみチクチクした。
骨粗しょう症に対し乳製品とカフェインの摂取を控えるよう指導した。
【経過】
2月15日再診(5日後)、背を伸ばすのが楽になった。肩こり良くなり「編み物してもスジ引くのが無くなった」という。左手振るえはちょっとましになったという。腰痛は 変わらずだが、30分かけてクリニックまで歩いてきたとのことであった。この日のチクチクは前回に加え顔パートを追加した。
2月22日第3診、身長が8mm伸びていた。腰痛は不変。
3月1日、第4診目、139cmと9mm伸びた。腰痛が変わらないのでパイオゼロを置いた。歩くと腰が痛いという。
4月7日第7診目、10分歩いたら休憩する、と打ち明けた。
4月14日第8診目、安静時振戦が両手にあり、左がきつい。筋強剛テストで歯車様の固縮が誘発テストで認められた。これは5-6年来あったという。下肢にも振戦があり左が 優位だった。 ここで両四肢振戦と初期の筋強剛からパーキンソン病と診断した。
ヤール分類Ⅱ度である。そこで糖質制限を指導した。また40分の歩行ができた。
4月24日第9診。手の震え気にならない。腰痛不変も25分歩けるが長く歩くと痛い。
5月10日第10診。左手振戦無し、という。行動そのものがあらゆることで楽になった、という。これは本人の自覚が無かっただけで、寡動(無動、動作が遅い)の改善ではないか、と考えた。となると、振戦、寡動、筋強剛の3つが揃うパーキンソン病である可能性が高いといえる。
5月19日第11診、5月29日第12診とも振戦無し。
6月12日第13診。振戦に気付いていない、分からない同時に下肢の振るえも気にならない、という。
この状態では、その後のフォローが必要だが、ヤールゼロのパーキンソン病が緩解した状態と言えるのではないか、と考えた。前回の報告例に続く11例目のヤールゼロの可能性が高くなった。
腰痛はその後仙腸関節に圧痛があり、同部のチクチクとパイオゼロの設置で、歩く距離が伸びている
【まとめ】
パーキンソン病が、偶然治療途中で発見したパターンである。わずかな症状ではパーキンソン病の有無を判定するのは不可能である。しかし、私は40年以上もパーキンソン病と向き合ってきて、わずかな変化も察知することが出来るようになった。これは有り難いことである。こうした超早期のパーキンソン病を診断出来、そしてチクチクできる医療者が排出できたら、激増しているパーキンソン病の患者に朗報ではないか、と思っている。

3.ヤールゼロの期待を抱かせるパーキンソン病の報告

【はじめに】
初回治療で症状が改善し、治療を継続してくれたならヤールゼロへの期待を抱かせる症例です。
【患者3】
タカハシE 75歳女性
【主訴】
① 背中が丸くなって歩くようになった。 ② 腰が重い。 ③ 立つときに膝を曲げて立つようになった。
【現病歴】
平成29年6月15日初診
昨年夏くらいから前屈みになって背中が丸くなってきた。同時に腰が重だるくなり、膝を曲げて歩くようになった。10日前に労災病院を受診し、神経内科にてパーキンソン病と診断された。MRI、CTでは何もないと言われた。診断後ドーパ剤パキストン配合錠L100x3Tを処方されたが良くなったかどうか分からないという。義兄がパーキンソン病のため心配になり、この2-3週間1日二回ストレッチをしてきたという。
のどが最近渇き、寝不足でフラツクという。バランスを崩して転んだことが一回あった。
動作緩慢で仮面様顔貌あり、小刻み方向があるもすり足はなし。前傾歩行で手の振り欠如、回れ右がし辛いが「すくみ」はない。
【現症】
身長148.6cm/42.3kg。血圧135/72mmHg、80/m。
振戦無し、鉛管様固縮が両腕にわずかにあり(これだけでヤールⅡ度)、誘発テスト(患側の固縮を確かめる際に対側の手を大腿部にトントンと手打ちさせる)で両側鉛管現象が強くなった。後方突進現象なし。ヤール分類Ⅲ度と診断した。
【診断的治療】
まず爪チクを行い、次いで顔面パートのチクチクを行った。直後、歩行改善し廊下をスタスタ歩いた。
同時に手の振りが出現した。また仮面様顔貌も改善した。さらに頭パート、首・肩・腰・仙骨パートをチクチクし、再度歩いてもらうと歩行はさらに改善し笑顔が見られた。左手の振りだけは弱かったが右側は自然に振っていた。ここまでは通常のチクチク治療で見られる典型的な改善パターンである。
【まとめ】
まだ初回治療の段階で、これからの経過を予測するのは無謀と思われるが、今までの経験から「症状安定型治癒」へ導ける可能性があると期待している。その理由は発病10か月前後で2年以内の発症であり、早期受診である。次いでチクチク反応が良好で、治りたい意欲が十分ありと拝察した。
また薬を飲まずに治りたい、治したいという気持ちは自然治癒力を高めることに役立つものと思われる。
ここまで3例続いて、ヤールゼロ症例、またその可能性の期待できる症例の報告は終わりますが、引き続き経過を見守りたいと思います。

ご質問にお答えします。

回復の度合いの差は 一般的に、それ以外になにか理由や原因はあるのでしょうか?

まず服薬量ですね。薬を早々から飲んでいる人は、薬の効果に隠蔽されていてチクチク効果の発現を阻害するような気がします。
しかし薬を多量に飲んでいても効果が著しく、投薬量の半分または三分の一くらいまで減量出来てくる人もいます。そしてこれは特異的なことですが、チクチク治療の初回時にその反応が見られます。
従って、初回治療で無反応または効果を実感できない人は脱落するようです。
芝山先生の言うように、期待してクリニックに来るか、疑心暗鬼で治療を受けるか、患者の前向きな気持ちが反映しているように思われてなりません。

施術に当たる際の注意点や心掛けなどございましたらご教授していただけたら幸いです。

まずは先入観抜きで施術を行います。その反応を見てその後の経過を占います。
自信を持って治療に当たります。やはり患者に信頼される治療家であるかどうか、それは治療者の態度に現れるのではないでしょうか。
そのあとは信頼関係の構築を心がけます。私には100例以上のパーキンソン病治療の実績と、40年以上の神経科医としてのパーキンソン病を診る目があります。
その裏付けは、残念ながら皆様には授けられないものです。その実績の安心感を患者さんが感じ取るのではないでしょうか? ですから一例一例の積み重ねのなかで診療実績を築きあげていってもらうことが大切と考えます。
従って、勝負は初診時のチクチク治療の反応如何で決まると言って良いでしょう。
本日もパーキンソン病の初診患者が来ました。顔パート施術しただけで、仮面顔貌、歩行、前かがみ、腕の振りが改善しました。発病後9か月の患者ですが、ドーパ剤を飲んでいましたが、薬の効果を実感できていない感じだし薬を飲みたくない、という人は良く効く人が多いです。薬を離脱できない人は何年通ってもゼロには持っていけませんでした。
この患者さんのご主人の顔つきが帰りには変わっていました。職員が言うには不安と疑心暗鬼で来院したに違いありません。それが施術直後の変わりようでいっぺんに信頼感を持って頂けたのだと思います。直感ですが、この人もヤールゼロにもっていけると感じています。

以上がお答えですが、難病治療には薬という敵がいますので、自然治癒力を発動させる我々は、実績を共有する以外に方法はない、と感じています。自信をもって治療に当たって頂きたい、と願っています。

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